月別: 8月 2011 (1ページ / 3ページ)

アイデア商品「靴スリッパ」

 先日、6年越しで初めて靴職人の今井宏樹さんにお会いした。
今井さんは兵庫県姫路市林田町で、ご自分の靴ブランド「イマイ ヒロキ」を製造しておられる。

8月27日、28日と阪急メンズ館1階靴売り場で臨時出店されており、今井さんによると、過去に数回同じ場所で出店したことがあるという。

今夏もっとも数多く製造したのが「靴っぽいスリッパ」とのこと。
レザー製だと3万円を越えており、布製でも2万円を越える高額品だ。

ちょっと、画像を見ていただきたい。

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こんな感じである。
ゴム底を貼ってあるので、近所のコンビニくらいまでは出かけられる。

従来流通している靴っぽいサンダル(サボと呼ぶのだろうか?)とどう違うのかと、疑問に思い尋ねてみると
「うちのスリッパはヒールがありません」との答えが返ってきた。
サボでヒールがあると、踵部分がホールドされていないため、段差のあるところでは引っかかることが多いらしい。そういう意味では、このスリッパはアイデア商品だといえるだろう。

今井さんのことを初めて知ったのは6年ほど前。
当時、筆者は大阪の小さな編集プロダクションで雑誌の編集、ライター、広告営業を行っていた。
その時にたまたま今井さんの靴を雑誌に掲載したことがある。
取材や画像のやり取りは電話とメールとファックスだけで終わってしまい、
直接お会いすることはなかった。

雑誌の仕事を離れてからは、まったく音沙汰を耳にすることはなかったが、
昨年ツイッターを通じて再会することができた。
そして今回6年越しで初めてお会いすることが出来た次第だ。

今井さんは「このスリッパは夏だけで終わりです」とおっしゃっておられたが、
履き口にボアを貼ったり、中敷きにフリースを貼るなどすれば十分に秋冬にも販売できると思う。
ちょっとした工夫で年間定番になりうるのではないだろうか。

助成金・補助金で一息吐こうとする繊維産地の姿勢は間違っている

 普段、生地メーカーや産地側に立っての記事が多いが、今日は、産地側にNGを出してみたい。

生地メーカーや染色工場、整理加工場などの製造業が集積している場所を産地というが、
安価な製造が可能な、中国をはじめとするアジア各国に押されて疲弊している。
300件も倒産した産地もある。

最近では、行政が助成金や補助金で支援して、自立化や海外進出を目指させる事業が増えている。
行政の助成金や補助金は様々な形態があり、単年度の物もあれば、例えば3年という複数年に跨るものもある。

さて、先日、某産地が申請した複数年の助成金が認可を受けた。
当然、今年だけではなく来年以降の活動の詳細をある程度決めなくてはならない。複数年の認可を受けても毎年事業計画は提出しないといけないので、年々その内容は変わる。今からすべての計画を立てる必要はない。
しかし、この産地はどうやら来年以降の活動を継続するつもりがないらしい。今年の助成金をもらえばそれで良いというスタンスだ。

これでは、助成金詐欺に等しいのではないかと思う。

よく耳にするが、助成金目当てのコンサルが数多く存在し、助成金申請を手伝ってその上前をハネるという。
これも許し難い行為ではあるが、個人の活動である。この個人の心情が間違っているだけのことであり、大多数の方々が悪いわけではない。
しかし、今回は産地である。複数の企業がその企みに乗っかっている。不心得な個人が勝手に引き起こしたものではないだけに、罪も深いと思う。

もちろん、産地企業各社のおかれた苦しい立場は理解できるが、一時しのぎに今年だけの助成金を掠め取ったところでどれほどの利益になるのだろうか。まったく発展性がない。
それならいっそのこと廃業して工場を売れば良い。土地付きであれば最低でも何百万円かでは売れるだろう。
先日、経営破綻したワイキューブの安田佳生社長は、その著書「千円札は拾うな」の中で、先祖代々の斜陽家業を夜も寝ないで守り抜こうとして、疲労困憊した友人に「それなら廃業して違う商売を始めれば良い」とアドバイスしたことが記されているが、まさにその通りである。

一時しのぎで助成金を手にしたところで、来年以降はどうするのか?
日本の繊維産地を巡る状況は悪化することはあっても良くなることはない。

こういう助成金詐欺、補助金詐欺のような案件を今後は一切許してはならない。

現実味を帯びてきたアパレル不要論

 今年もいよいよ和歌山県の高野口産地のヒアリングの時期が始まった。
全13社を3日に分けて巡回する。
高野口産地は、フェイクファーとかカットパイル、ベロアなど毛足の長い織物・編物を得意とする産地である。
初日は5社を廻った。

その中の1社の社長が、朝からかなりのハイテンション。
「ビールでもひっかけて来たのか?」と思ったがどうやら素面のご様子。

社長いわく「日本の大手企業には、まともな物作り担当者がおらんようになっとる」とのこと。
東京を拠点に上場している某大手雑貨メーカーと取り引きのある香港企業のスタッフから、直接、社長に電話があったという。
「生地のことで相談したいと、某大手上場企業に電話したところ、まったく話にならない。担当者が物作りを知らなさすぎる。この大手企業では役に立たないので、直接生地製造を担当する貴社に連絡した」。

この大手はアパレルではないが、繊維製品の雑貨も相当数扱っている。
上場しており、日本でも有名な企業ではあるが、企画担当者が生地のことをまったくわからないのは論外だ。
大手アパレルと同様に丸投げ企画と中抜き体質丸出しである。

賛否はあるが「日本は物作りを大切にしなくてはならない」という意見が経済界でも主流を占めている。
これに同意する方々も多いと思う。

しかし、アパレルも雑貨も大手の「物作り丸投げ体質」は年を追うごとにひどくなる一方である。
もういっそのこと、小売業やブランドライセンス管理業に徹すればどうか?
このままでは、アパレルも雑貨メーカーも要らない。

先述の香港企業のように、海外企業が直接、日本の工場と話を詰めて製品開発を進める。
また、工場側も進化しており、若い経営者が自社の生地を使って、オリジナル商品の製造をすでに開始している。いわゆる「ファクトリーブランド」へと進みつつある工場が少なからず存在し始めている。

OEM/ODMや工場に企画開発を丸投げにするようなアパレルも雑貨メーカーも後少しすれば完全に存在意義をなくす。
手抜きの企画開発しかできない企業は、そろそろ市場から退場させられる。

メンズスーツも画像データ転送で製造依頼する時代に

 今は亡き、児島の大手洗い加工場、共和に取材でお邪魔したことがある。
共和は2009年に営業を停止して廃業となった。

今から思えば、共和は悲運の洗い加工場である。
もともと、メインとしていたラングラージャパンがヴイエフジャパンとなり、さらにそのヴイエフジャパンも解散し、「ラングラー」ブランドもエドウイン商事の子会社のリージャパンに吸収された。
さらに、もう一本の柱であった帝人ワオも親会社によって解散となっており、大口のメイン顧客を2社とも失った。

さて、もう数年前になるが、共和を最後に取材したときのこと。
大口顧客を失った状態で、共和は東京のSPAブランドやセレクトショップのPBなどの洗い加工を手掛けるようになっていた。
共和の福岡社長に見せていただいたのだが、明らかに他社ブランドの店頭商品を写真に写して、画像データをメール添付して送りつけるブランドがあった。
東京の某SPAブランドである。
そのメールには一言「こんな感じでジーンズに洗い加工を施してください」と。

これほど楽で頭を使わない業務もない。
他社ブランドの店頭で気に入った商品を写真に写して、そのままメール転送して「同じように仕上げてくれ」と頼むだけである。

今ではこんな発注のやり方は業界でスタンダードとなっている。
企画担当者はデザイン画を描くこともないし、パターンを考えることもない。指示書すら書く必要がない。

レディースブランドも一般カジュアルもそんな時代である。

先日、ある展示会で「メンズのテイラードスーツも同じですよ」という話を聞いた。
他社ブランドのスーツを写真に撮影し、それをメールにデータ添付して工場に送るらしい。

これにはさすがに驚いた。

メンズのスーツは、微妙なミリ単位の差がブランドやショップの味である。
もともとメンズスーツは、ほぼデザインが固定化されている。それをブランドやショップの持ち味として、
ウエストを何ミリ単位で広くしたり狭めたり、パンツの太さをミリ単位で太くしたり狭くしたりするものである。
他社のスーツを写真撮影し、「これと同じで」という発注で済むならこれほど楽な作業はない。

そこまで手抜きがしたいのなら、メンズのスーツは業界全体で統一パターンを採用すれば良いのである。
どうせデザイン的には変わり映えのしない商品である。
全社統一パターンで製造すれば縫製工場も助かる。

オンワードグループのオフィスユニフォームもミッシェルクランもポールスミスも同じパターンを使えば良い。

こだわりを楽しむはずのメンズスーツまでが、画像データ添付の発注に代わるとは実に嘆かわしい。
これ見よがしにスーツの蘊蓄を語るオッサンもうっとおしい存在だが、他社ブランドの撮影だけでパターンも引かず、指示書も書かないお手軽発注スーツなど、オフィスユニフォームよりも劣る。

日本のアパレル企業の物作り精神は本当に死に絶えてしまったようだ。
今、店頭に並んでいる商品は死骸であり、残骸である。

ピークを過ぎた「山ガール」ブーム

 散々、既出かもしれないが、「山ガール」ブームのピークは過ぎたようだ。

先日、ティムコのアウトドアブランド「フォックスファイヤー」の展示会にお邪魔した。
ティムコは釣り具メーカーから、ウエアも含むトータルなアウトドアブランドへと転換した異色の会社である。
担当者によると「山ガールブームによって女性客が大幅に増え、アウトドアのすそ野は広がったが、当社ではブームのピークは過ぎたと見ている」という。

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「山ガール」という呼称には以前から非常に違和感を持っている。
どう見ても「ガール」でも「女子」でもない年代の女性が多数含まれているからである。
「山女(やまおんな、やまじょ)」「山オバ」「ヤマダム」あたりの呼び名がしっくりくるように思う。
ちなみに渓流魚のヤマメは漢字では「山女」と書く。

閑話休題

山ガールブームのピークは終わったと言っても、女性のアウトドアファンはある程度の人数を維持したままになる。
彼女らの次の興味は魚釣りに移るのか、山の風景を撮影するアウトドアカメラに移るのかはわからない。
あるいはその両方に分散するのかもしれない。

山ガールというブームが盛り上がったおかげで、アウトドアウエアもずいぶんとデザイン化が進み、カラフルにそしてスマートに進化した。そういう意味では女性ファンの存在は大きかったと言える。

そんな中、アウトドア業界関係者によると、「ザ・ノースフェイス」の売り上げが好調であるという。
もちろん女性客にも支持されている。
「ザ・ノースフェイス」の好調が特筆されるべき理由は、通常の「山ガール対応」をしていないからだ。
山ガール向けに各ブランドは、色柄をカラフルにかわいく変化させてきた。
しかし、「ザ・ノースフェイス」は、シャープでスマートではあるものの、それほどカラフルな色は多用しない。
むしろ、今季はダークでシックである。

通常のアパレル業界に置き換えれば、
「カラフルというトレンド」を無視しているにも関わらず、トレンド層の消費者から支持を集めているという状態にある。
これが可能であるなら、アパレル業界の各ブランドは何も苦労しないだろう。

消費者は「ザ・ノースフェイス」というブランドに特別なステイタス性を感じていると思われる。

そこに至るまでには長い時間が費やされている。
「ザ・ノースフェイス」を日本で展開し続けてきたゴールドウィンの粘り勝ちと言えるかもしれない。

釣り具メーカーから転身してトレンド性と機能性を兼ね備えた自社ブランド「フォックスファイヤー」を開発するに至ったティムコ。
長い年月を費やして、「ザ・ノースフェイス」のステイタス性を確立したゴールドウィン。

この2社の取り組みをアパレル業界各社は参考にすべきではないだろうか。

20年間物作りを継続する小規模ブランド

 繊維・アパレル関係のニュースで圧倒的にシェアを持っているのは繊研新聞だろう。日経新聞、日経MJも多くの人が目を通されていることと思う。
それらで報道されているネタは、ほとんどが大手企業である。
ユニクロであり、ポイントであり、しまむらであり、ワールドであり、オンワード樫山でありという具合に。

ところが、繊維・アパレル業界は中小零細企業の方が圧倒的に社数が多い。
大手企業の全国的な、もしくはグローバルな取り組みは知識として必要不可欠なものではあるが、中企業はまだしも小企業・零細企業では、自社の企業活動に対して大手の事例を当てはめることは、かなり無理がある。
平たく言えば、小・零細企業にとって、大手企業が繰り広げるマクロな活動は、規模が違い過ぎてあまり参考にならないケースも多い。

10年来の交流がある、デザイナー平井達也さんと雑談した。
12年間も「スー ヒライ」という自分のブランドを運営している個人経営者である。
彼が今後、新しく直営店出店を考える際に、どのような方向性を採れば良いのか、大手企業情報では「資金的にもスケールが違い過ぎて、まったく参考にならない」という。

数年前まで東京では代官山や中目黒、大阪では南北堀江や南船場など、中規模路面店が集積したエリアが人気を集めていた。しかし、現在は東京も大阪もそれらのエリアは寂れており、ターミナル駅前の大規模ファッションビルが人気を集めている。JR東日本の「ルミネ」やJR西日本の「ルクア」などはその象徴だろう。
しかし、これらの施設にテナント出店するためには莫大な資金が必要であり、個人経営ブランドでは大スポンサーが現れない限り、不可能である。

先日、大阪市旭区大宮に直営店を構える「グラド」の展示会に伺った。
初めて伺うので、福山社長には基本的なところからいろいろと教えていただいた。
「グラド」は直営店が4店舗あること、元々はイタリアのファクトリーブランドを直輸入するブティックであったが、20年前からオリジナルレディースブランド「カヨ・フクヤマ」を立ち上げたこと、そのオリジナルブランドは直輸入した欧州生地を関西近郊の縫製工場で製造していること、などである。

筆者の不勉強は今に始まったことではないが、展示会の案内を頂戴するまでは「グラド」の存在を知らなかった。また、あまり業界紙や経済紙にも登場されていない。

しかし、直営店を4店舗も経営し、メイドインジャパンのオリジナルブランドを20年間続けられていることには、驚かされるとともに、素直に「凄い」と感心させられた。
商品の価格は、高品質ではあるが、現在の衣料品平均価格と比べると高い。
ジャケットが7万~8万円である。

こんな「高い」商品を20年間作り続けられているという継続性が凄い。
ある程度の採算が取れていないと20年間も継続することは不可能である。

大手企業から鳴り物入りしたブランドでも20年間継続できるブランドなどほんの一握りであろう。
ポイントに買収されたトランスコンチネンツは、買収後わずか1年で解散しているし、同じくポイントのアンダーカレントも5年くらいでブランド自体が消滅している。
たまたまポイントだけを例に挙げたが、こんな事例は業界には掃いて捨てるほどある。

個人経営の事務所や、小・零細企業にとっては、
この「グラド」のような事例は、かなり参考になるのではないだろうか。
失礼だが「グラド」自身も小規模企業である。従業員もそれほど多くない。
展示会場にも社長と専務を合わせて、スタッフは4人くらいしかおられなかった。

「グローバルな」「マクロな」情報も必要ではあるが、
大多数の人が勤務する小・零細企業が参考にしやすく、手が届きやすい「ミクロな」事例情報ももっと必要ではないだろうか。
例えば、継続性の高い小・零細企業を集めた「列伝」のような読み物があれば、かなり需要があるのではないだろうか。

全社参加体制で失敗する繊維産地ブランド

 大阪も含めて各地方都市では、組合や連合会、協会団体ベースで共同ブランド作りを進めることがある。
早いところだと7~8年前には、繊維の産地ブランドが立ち上がっている。

しかし、知る限りでは、この「繊維産地ブランド」が発展したのを見たためしがない。

個別名を出すのは忍びないが、滋賀県高島産地に産地ブランド「高島いろは」というものがある。
楊柳やクレープ素材の産地である高島の特色を生かした、繊維製品作りがこのブランドのコンセプトである。
出来上がったのが数年以上前だから取り組みは早かった。
しかし、現在は開店休業状態である。ほとんど活発な動きは見られない。

問題点は様々あるのだが、
個人的には、産地組合加盟全社での商品作りという体制がまずかったと考えている。
通常、組合とか協会団体は、最低でも20社前後の加盟がある。
この20社全社に統一した動きを取らせることなど不可能に近い。
たった数社でも全員そろっての動きは難しい。

できるなら、1社ないし2社くらいがリーダーシップを発揮して、
それを3~4社くらいの協力企業がフォローするという体制でないと、統一感のある製品ブランド作りは無理だろう。

にも関わらず、高島以降も産地ブランド、または組合加盟企業全社での活動模索は各地方都市で続いている。
同じく、滋賀県湖東産地で、産地ブランド「麻香(あさがお)」が3年ほど前に立ちあがっているが、今後の展開がまことに心配である。

もちろん産地ブランドを否定するつもりは毛頭ないし、どちらかと言えば応援したい気持ちである。
しかし、全社が納得できる方向にしか動けないのであれば、そのプロジェクトは早晩潰れる。
まずは、1社か2社でテストケースを作り、それが成功した後に、全組合員を参加させるという体制が理想的である。
この体制が採れない限りは、産地ブランド作りは何度やっても成果は出ない。

そして、酷な現実だが、先頭に立ってブランド作りを行える気概ある企業は、すでにリスクを負って、製品作りや自社ブランド開発に取り組み始めている。

かつてホンダの創業者である本田宗一郎さんが「補助金や助成金によって成功したビジネスはない」と言い放ったそうであるが、産地ブランド作りも実際その通りになりつつある。

全アイテムを商社に丸投げするSPAブランド

 先日、某中堅商社のインタビューを原稿にした。
この商社は、SPAブランドや大手チェーン店のPB(プライベートブランド)などで、ジーンズアイテムを中心としてシェアを伸ばしている。
いわゆる大手ブランドのOEM生産を請け負っているのである。

友人にデニム類のOEM事務所社長がいるのだが、企業規模の差であろうか、彼とはまったく違う営業スタイルだった。

アパレル業界には小規模OEM事務所が無数にある。
だいたい社長を中心として数人で運営しているケースが多く、社長ただ一人ですべてを運営するというワンマン事務所も珍しくない。
これらの場合、各事務所で得意分野が決まっており、例えばデニム、カットソー、ニット、薄手布帛トップス、スポーツアイテムなどなど、という風にである。

そのため、各事務所は、己の得意分野のアイテムを大手ブランドに営業プレゼンすることになる。
筆者の友人ならジーンズ、チノパン、ミリタリーパンツ、厚地生地のショートパンツなどを持って各社と営業する。

ところが、この商社はジーンズアイテムの生産請負で業界シェアを伸ばしているにも関わらず、
全課がチームを組んで、ブランド側にプレゼンを行うという。

ジーンズ課がメインとなるが、カットソー課、ニット課、スポーツ課、雑貨課などすべての課が一丸となって、フルアイテムをブランド側に提案する。
商社の担当者に言わせると「今季の売り場のイメージをトータルな世界観で提案するため」
ということになる。
これでオーダーが入れば、そのブランドのほとんどのアイテムを請け負うことになる。

ブランド側からすると、今季の売り場イメージを丸ごと提案してくれた上に、商品のほとんどを商社側がプランニングしてくれるので、これほど楽チンなことはない。
まったく商社の努力には頭が下がる。

一方、小規模OEM事務所がこれに対抗するのはなかなか容易なことではないとも感じた。
もし、可能であるなら、小規模事務所がそれぞれの得意分野で連合を組んでプレゼンするのが最も良い方法だろう。

しかし、こういう便利なシステムに乗っかっていれば、ブランド側・チェーン店側のマーチャンダイジング力や企画力が低下するのも肯ける。もはや、自分たちで商品について考えることは必要でない。
これでは、日本のSPAやチェーン店の商品力はますます低下するばかりではないだろうか。

ファッション専門学校では相も変わらずデザインやパターンを教えており、以前ほど多くはないとは言え、物作り志向の学生が少なからず集まっている。
彼らはSPAブランドやチェーン店に、企画職として就職することを考えているが、狙う先が間違っている。商社やOEM事務所、あるいはアジア地区の縫製工場を狙うべきである。

売り場の世界観作りまでを商社に丸投げする日本のSPAブランドやチェーン店が、どこまで外資ブランドと戦えるのだろうか。甚だ心もとないとしか言いようがない。

格安品は2年寝かせると効果的

 先日、こんな短い記事を見つけた。

真のユニクロマスターは服を買ってもすぐに着ずに1年間寝かせる
http://rocketnews24.com/2011/08/17/122373/

タイトルだけで中身がわかる「良記事」なのだが、
少し引用する。

街を歩いていて、同じユニクロの服を着ている人がいると恥ずかしいと感じる人もいるようだ。しかし、ユニクロを極めたユニクラーは、「ユニクロを着用していながらユニクロを着ているようには見せないテクニック」を使っているという。そのテクニックとは……。

ユニクロで服を購入してもすぐに使用せず、1年間寝かせてから着るのである。つまり2010年8月に購入したユニクロの服を2011年8月に着るわけだ。そうすることにより、街を歩いても同じデザインのユニクロを着ている人と出会うことがないのである。(引用終了)

わざわざ指摘した方はいないが、これってけっこう多くの方々が無意識のうちに使っていたワザなのではないだろうか。
筆者の手持ちの服で言うと、3年くらい前に買った「ライトダウンジャケット」がある。
そう、ウルトラライトダウンの1つ前の形で、羽毛量はウルトラライトより多い。
黒の無地という非常にベーシックなデザインを4990円に値下がりしたときに買ったのだが、難点が一つある。
前身頃を止めるファスナーが白で着色されている。
このため、黒の中に、白いラインが一本縦に走ることになる。

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当然、2008年はこの前身頃を白いラインが縦断する「ライトダウン」を多く見かけた。
見かけるたびに「ああ、あなたもユニクロですね」と心の中でつぶやき、奇妙な連帯感を感じたものだった。
さて、1年後だが「ウルトラライトダウン」が発売され、「ライトダウン」は廃番になった。
当然だが、着用している人の割合は減った。さらに2010年はもっと減った。
この調子で行くと、2011年の冬はさらに目立ちにくくなるだろう。

こう考えると、ユニクロのセールで買った服は1年どころか2~3年寝かすとさらに使い勝手が良くなる。

そしてこれは、無印良品やGAP、ライトオンなどのセール品にも同じことが言える。

筆者の全身は、だいたいユニクロと無印良品とGAPで固まっており、一部にレイジブルーとライトオンとジーンズメイトが挿入されている。もちろんいずれもセール品だ。定価で買った服など一枚もない。
無地のチノパンなどは、買った翌日に穿いていてもそう目立たないが、チェックやストライプなどの柄物や、無地でも目立つ色彩の物や特徴のある形は、どこの商品なのかが丸わかりである。
同じ服を着ている人を何人も見かける。

これが2年くらい経過するとほとんど同じ服の着用者を見かけなくなる。

現実的には1年も2年も着用せずに寝かせることは経済効率が悪いので、登場回数を少なめにする程度だろうと思うが、2年くらい前に買ったセール品を重点的に着用すると、同じブランドで被る人がかなり少なくなる。

経済効率優先で服を買う方はぜひ一度試してもらいたい。

日本にオールドネイビーは必要か?

 先日、米のオールドネイビーが2012年末に日本に進出することを発表した。

米Gap Inc.(ギャップ)が展開するカジュアル衣料ブランド「OLD NAVY(オールド・ネイビー)」が、2012年末に日本へ出店する計画を発表した。北米以外の店舗として初出店。新たな事業計画によると、日本を含む国外において100万人規模の新規顧客獲得を目指すとしている。

http://www.fashionsnap.com/news/2011-08-11/old-navy-japan/

感想だけを述べるなら、
「上陸が遅すぎたのではないか」と思う。
4~5年前に上陸すべきだったと感じる。

よく言われるように、「オールドネイビー」はGAPよりも安い価格帯の商品を扱う。
ユニクロ、ジーユー、H&M、しまむらなどが犇めく中で、低価格ブランドがさらに1つ増えることをそれほど消費者は求めているとは思えない。

それと日本ではGAP自体がオールドネイビーの客層も獲得しているのではないかとも感じる。
というのは、GAPの定価は中価格帯である。高額ではないが、決して低価格でもない。
ジーンズを例に採ると、シーズンによってばらつきがあるが、価格帯はだいたい7900~12000円くらいの間が定価である。
しかし、GAPは時期が来れば定期的に全商品が値下がりする。
例えば定価10500円のジーンズなら、
7900円→5900円→3900円→2900円→1900円

とこんな感じで段階的に値下がりする。
GAPを定価で買う人間は少数派だと思っているが、それでも7900~5900円くらいで購入する消費者はそれなりに存在すると思う。この層が米国でいうところの本来の「GAP」支持層だろう。

筆者はGAPでジーンズを買う際には2900円に下がるまで待つ。
在庫が多ければ1900円まで待ってみる。
この手法によってGAPで3900円以上のパンツを購入したことがない。過去の最高価格が3990円だった。

で、筆者のように日本のGAPには超低価格支持者が少なからず存在していると思う。
Tシャツ類は990円、シャツ類は990~1990円で買う。
ちなみに先日は無地のナロータイを290円で購入した。

すでに超低価格消費者も日本GAPが相当数を取り込んでいる。
これは本来、米国「オールドネイビー」の支持層であろう。
オールドネイビーが日本に上陸して、GAPとどのように住み分けるのだろうか。
GAPは超低価格まで値下げをしない中価格帯ブランドへとその性格を変えるのだろうか?
それとも今と同じ値下げ戦略を採り続けるのだろうか?

その場合は、オールドネイビーとの顧客争奪戦が始まるのではないか?

実際にまだ日本に店舗が出来ていないので、現段階では仮説のみとならざるを得ないが、
ここを読み違えるとオールドネイビーの上陸は失敗に終わるだろう。

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