全アイテムを商社に丸投げするSPAブランド
2011年8月22日 未分類 0
先日、某中堅商社のインタビューを原稿にした。
この商社は、SPAブランドや大手チェーン店のPB(プライベートブランド)などで、ジーンズアイテムを中心としてシェアを伸ばしている。
いわゆる大手ブランドのOEM生産を請け負っているのである。
友人にデニム類のOEM事務所社長がいるのだが、企業規模の差であろうか、彼とはまったく違う営業スタイルだった。
アパレル業界には小規模OEM事務所が無数にある。
だいたい社長を中心として数人で運営しているケースが多く、社長ただ一人ですべてを運営するというワンマン事務所も珍しくない。
これらの場合、各事務所で得意分野が決まっており、例えばデニム、カットソー、ニット、薄手布帛トップス、スポーツアイテムなどなど、という風にである。
そのため、各事務所は、己の得意分野のアイテムを大手ブランドに営業プレゼンすることになる。
筆者の友人ならジーンズ、チノパン、ミリタリーパンツ、厚地生地のショートパンツなどを持って各社と営業する。
ところが、この商社はジーンズアイテムの生産請負で業界シェアを伸ばしているにも関わらず、
全課がチームを組んで、ブランド側にプレゼンを行うという。
ジーンズ課がメインとなるが、カットソー課、ニット課、スポーツ課、雑貨課などすべての課が一丸となって、フルアイテムをブランド側に提案する。
商社の担当者に言わせると「今季の売り場のイメージをトータルな世界観で提案するため」ということになる。
これでオーダーが入れば、そのブランドのほとんどのアイテムを請け負うことになる。
ブランド側からすると、今季の売り場イメージを丸ごと提案してくれた上に、商品のほとんどを商社側がプランニングしてくれるので、これほど楽チンなことはない。
まったく商社の努力には頭が下がる。
一方、小規模OEM事務所がこれに対抗するのはなかなか容易なことではないとも感じた。
もし、可能であるなら、小規模事務所がそれぞれの得意分野で連合を組んでプレゼンするのが最も良い方法だろう。
しかし、こういう便利なシステムに乗っかっていれば、ブランド側・チェーン店側のマーチャンダイジング力や企画力が低下するのも肯ける。もはや、自分たちで商品について考えることは必要でない。
これでは、日本のSPAやチェーン店の商品力はますます低下するばかりではないだろうか。
ファッション専門学校では相も変わらずデザインやパターンを教えており、以前ほど多くはないとは言え、物作り志向の学生が少なからず集まっている。
彼らはSPAブランドやチェーン店に、企画職として就職することを考えているが、狙う先が間違っている。商社やOEM事務所、あるいはアジア地区の縫製工場を狙うべきである。
売り場の世界観作りまでを商社に丸投げする日本のSPAブランドやチェーン店が、どこまで外資ブランドと戦えるのだろうか。甚だ心もとないとしか言いようがない。