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南充浩 オフィシャルブログ

20年間物作りを継続する小規模ブランド

2011年8月24日 未分類 0

 繊維・アパレル関係のニュースで圧倒的にシェアを持っているのは繊研新聞だろう。日経新聞、日経MJも多くの人が目を通されていることと思う。
それらで報道されているネタは、ほとんどが大手企業である。
ユニクロであり、ポイントであり、しまむらであり、ワールドであり、オンワード樫山でありという具合に。

ところが、繊維・アパレル業界は中小零細企業の方が圧倒的に社数が多い。
大手企業の全国的な、もしくはグローバルな取り組みは知識として必要不可欠なものではあるが、中企業はまだしも小企業・零細企業では、自社の企業活動に対して大手の事例を当てはめることは、かなり無理がある。
平たく言えば、小・零細企業にとって、大手企業が繰り広げるマクロな活動は、規模が違い過ぎてあまり参考にならないケースも多い。

10年来の交流がある、デザイナー平井達也さんと雑談した。
12年間も「スー ヒライ」という自分のブランドを運営している個人経営者である。
彼が今後、新しく直営店出店を考える際に、どのような方向性を採れば良いのか、大手企業情報では「資金的にもスケールが違い過ぎて、まったく参考にならない」という。

数年前まで東京では代官山や中目黒、大阪では南北堀江や南船場など、中規模路面店が集積したエリアが人気を集めていた。しかし、現在は東京も大阪もそれらのエリアは寂れており、ターミナル駅前の大規模ファッションビルが人気を集めている。JR東日本の「ルミネ」やJR西日本の「ルクア」などはその象徴だろう。
しかし、これらの施設にテナント出店するためには莫大な資金が必要であり、個人経営ブランドでは大スポンサーが現れない限り、不可能である。

先日、大阪市旭区大宮に直営店を構える「グラド」の展示会に伺った。
初めて伺うので、福山社長には基本的なところからいろいろと教えていただいた。
「グラド」は直営店が4店舗あること、元々はイタリアのファクトリーブランドを直輸入するブティックであったが、20年前からオリジナルレディースブランド「カヨ・フクヤマ」を立ち上げたこと、そのオリジナルブランドは直輸入した欧州生地を関西近郊の縫製工場で製造していること、などである。

筆者の不勉強は今に始まったことではないが、展示会の案内を頂戴するまでは「グラド」の存在を知らなかった。また、あまり業界紙や経済紙にも登場されていない。

しかし、直営店を4店舗も経営し、メイドインジャパンのオリジナルブランドを20年間続けられていることには、驚かされるとともに、素直に「凄い」と感心させられた。
商品の価格は、高品質ではあるが、現在の衣料品平均価格と比べると高い。
ジャケットが7万~8万円である。

こんな「高い」商品を20年間作り続けられているという継続性が凄い。
ある程度の採算が取れていないと20年間も継続することは不可能である。

大手企業から鳴り物入りしたブランドでも20年間継続できるブランドなどほんの一握りであろう。
ポイントに買収されたトランスコンチネンツは、買収後わずか1年で解散しているし、同じくポイントのアンダーカレントも5年くらいでブランド自体が消滅している。
たまたまポイントだけを例に挙げたが、こんな事例は業界には掃いて捨てるほどある。

個人経営の事務所や、小・零細企業にとっては、
この「グラド」のような事例は、かなり参考になるのではないだろうか。
失礼だが「グラド」自身も小規模企業である。従業員もそれほど多くない。
展示会場にも社長と専務を合わせて、スタッフは4人くらいしかおられなかった。

「グローバルな」「マクロな」情報も必要ではあるが、
大多数の人が勤務する小・零細企業が参考にしやすく、手が届きやすい「ミクロな」事例情報ももっと必要ではないだろうか。
例えば、継続性の高い小・零細企業を集めた「列伝」のような読み物があれば、かなり需要があるのではないだろうか。

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