月別: 6月 2011 (1ページ / 3ページ)

H&Mの苦戦は、日本人消費者の良識の高さ

 先日、反対の立場から見て、海外ファストファッションの良いところを挙げてみた。
しかし、実際にはH&M、フォーエバー21は一時期のブームは別として、日本市場では苦戦している。

これについては、高名な小島健輔さんが、詳細なブログを書いておられるので
そちらをご紹介したい。

「H&M遠からず日本撤退か」
http://www.apalog.com/kojima/archive/747

タイトルはやや過激に煽り気味だが、
グラフ付きで実に科学的に分析しておられる。
H&Mは12店舗まで増えているものの、売上高が21・5%減少している。

またフォーエバー21は5店舗のまま増えていない。

この現象を見て、「日本人は意外に冷静なのだなあ」と変に感心してしまった。
例えばH&Mはオープン時にこそ数千人が並んだものの、それ以降はそれほど大混雑しているとは聞かない。
有名ブランドとのコラボレーション商品を発表して、ファッション雑誌などが盛んに採り上げたが、
それほど売れておらず、発表後も相当数店頭に残っていた。
とくにLANVINとのコラボレーションドレスは、かなり長期間店頭を埋め尽くしていた。

H&M

H&Mとフォーエバー21が日本市場で受け入れられない理由は、
たしかに価格は安いが、あまりにも使用素材の品質が悪く、縫製仕様も粗悪であるためだろう。
上陸後は物珍しさで購入した消費者も2度目、3度目は買わなかったということになる。
そうでなければ店舗数が増えているにも関わらず売上高21・5%減にはならない。
現在、このブランドを支えている消費者は「所得が低い若い層」と「もともとファッション好きで、品質が悪いのを割りきって購入している層」くらいではないだろうか。
ただ、「所得が低い若い層」はしまむらやジーユー、ハニーズとも競合するため、全部は取り込みきれていない。
品質で言えば、明らかにしまむら、ジーユー、ハニーズの方が上だ。

そのH&Mよりも品質が悪いと評価されているフォーエバー21はさらに厳しい状況にあるのではないだろうか。
原宿に行くと、H&Mとフォーエバー21の紙袋を下げた学生を多数目撃するのだが、
あれは地方から来た学生が「土産物感覚」で買っているのではないかと思う。

一方、価格がもう少し上のZARAは店舗数が増えて日本市場にはある程度定着しつつある。
品質については、こちらもかなり低くユニクロや無印良品とは比べ物にならない。GAPよりも下、H&Mと同等か少し上ではないだろうか。
使用素材も粗悪だし、縫製も歪んでいる。
それでもZARAが順調に店舗数を増やしているのは、テイストの差ではないか。
H&Mとフォーエバー21よりももう少し大人っぽいテイストでまとめているため、定職のある20~40代の顧客を掴んでいると推測される。
H&Mとフォーエバー21は明らかにヤング向けのテイストなので、10代の学生か定職のない20代が主要客層であろう。

グローバルブランドのH&Mとフォーエバー21は日本市場に商品を適合させる気もないだろうから、
国内4~5店舗体制が適正規模だろう。

ライトオンとジーンズメイトの6月売上速報

 関西は6月20日の月曜日まで冷涼な気温が続いていたが、
翌日火曜日からいきなり夏日が始まり、ついに猛暑日に突入してしまった。
天気予報で見ると、東京は先週も涼しい日があったようだが、いよいよ最高気温30度越えが続くようになってきた。

ライトオンとジーンズメイトの6月売上速報が先日、発表された。
5月21日~6月20日までの1ヶ月間の商況であり、涼しい気温が続いたため、両社ともに厳しい数字となった。

ライトオンは
既存店売上高が前年比13・0%減
既存店客数が同16・8%減
既存店客単価が同4・6%増

ジーンズメイトは
既存店売上高が前年比19・4%減
既存店客数が同31・7%減
既存店客単価が同18・0%増

だった。

この期間は梅雨寒だけでなく、6月16日からのセール開始を待つための買い控えもあり、
プロパーで夏物が動きにくかったのは事実である。

しかし、ジーンズメイトの客数減少幅は酷過ぎる。
以前にも書いたように「客数」と示されているが、
これは「入店客数」ではなく「買い上げ客数」である。
買い上げ客数が3割以上も減っているということは、消費者の支持を失っていると見なさなくてはならない。
かなり厳しい状況だ。

ジーンズメイトは、新業態としてメンズの「PLAINN(プレイン)」とレディースの「ブルーベルマーケット」を開始している。「プレイン」が4店舗、「ブルーベルマーケット」が2店舗なので育成途中である。
両店ともにジーンズメイト本体とは一線を画したナチュラル系カジュアルを提案しているものの、店舗規模が小さいためにメーカーからの仕入れ品に頼らざるを得ない。
また、テイストが異なるにも関わらず価格はジーンズメイト並みに低く抑えられている。

ゆくゆくは、ジーンズメイト本体をメンズコーナーを「プレイン」に、レディースコーナーを「ブルーベルマーケット」に改装するのではないかと推測している。
ただ、大々的な改装まで、ジーンズメイトという事業が維持できるかどうかは、難しい局面に突入したのではないかと思う。

物性の高さだけがファッションだろうか?

 日本人の特性として、議論・批判・批評を嫌うところがあると思う。
司馬遼太郎さんの著書によると、幕末の長州藩士は例外的に議論好きだったとあり、反対に薩摩藩士は上の命令には絶対服従だったとある。

さて、前回は、日本は「物作り志向」が強いという話題をしたかったのだが、
何時の間にやら日本の繊維産業の特殊技術を紹介し、それに対して共感している自分があった。

今回は、反対の立場に立って書いてみようかと思う。
いわゆるディベートというやつの脳内練習だと思ってほしい。

個人的見解ではユニクロは「物作り志向」が強い日本人的SPAブランドだと思う。
ユニクロが万人に受けた理由は、低価格高品質にあると考えている。
あの価格の割には品質はそこそこ高く、下手な百貨店アパレルのSPAブランドと同等の品質がある。
この品質とは何かというと、使用している素材や縫製の質であり、物性においてのスペックは高い。
シナジープランニング代表の坂口昌章さんによると「日本人はこの20年間、ひたすらに低価格高品質の商材開発に明け暮れていた。それは一種狂信的ともいえる状況にあった」とおっしゃっておられ、ユニクロは、その「低価格高品質」の一つの到達地点と言えるのではないだろうか。

反対に海外ファストファッションを考えてみたい。
主にファストファッションとは、開発までの時間が短く流行を早く採り入れ、価格が安いことと定義されるため、
GAPやアバクロは含まれず、ファストファッションの定義に当てはまる海外ブランドはH&Mとフォーエバー21となる。
この2ブランドは、低価格ではあるが、使用素材と縫製という観点では著しく低品質である。ファストファッションとは言いづらいがZARAもまた低品質である。「物作り志向」の強い日本人にはまったく受け入れられていない。GAPのように100店舗まで出店することは到底不可能だろう。20店舗出店ですら成立する可能性が低い。

しかし、良いところを探すとするなら、デザイン性、色柄のトレンド性、イメージ打ちだしの上手さ、ということになるだろうか。これはユニクロに欠けている部分である。
そして、今回は敢えて反対の立場から書いてみるが「物性の高さだけがファッションだろうか?」という問題がある。ファッションとはブランドイメージ、広告宣伝の上手さ、見た目のカッコよさなども含まれており、逆にこれらがないブランドはちっとも「ファッショナブルではない」と言うことにもなる。
それは実用品の世界である。
H&M、ZARAが多くの諸外国で受け入れられているのは、様々な経済的要因もあるが、一つには「ファッショナブル」だったからという要素もあるだろう。その意味では、海外ファストファッションは品質は著しく低いものの、「ファッションブランド」だと位置付けることも可能ではないだろうか。

逆説的だが、H&Mやフォーエバー21が日本国内で支持され、20~30店舗体制まで拡大できたとき、初めて日本人は過度の「物作り志向」から脱却することができるのではないかとも思う。

超ハイスペックな日本の細番手綿糸

 日本の産業は、繊維に限らず、スペック重視の「物作り志向」が多い。
個人的には「ムード」とか「スピリット」「マインド」というフワフワした要素で商材を選ぶのは苦手なので、
この「物作り志向」は肌に合っているのだが、逆に日本製品が世界市場向けの販促で苦戦するのも「物作り志向」に偏り過ぎているためだと思う。

それはさておき。

やはり、日本の物作りはすごいと感心させられた。
先日、寝装・リビング関係の小規模なセミナーに参加した。
参加人数は20人くらいだっただろうか。

その後の懇親会で、各社の出席者からいろいろとお話を聞かせていただいたのだが、
羽毛布団のガワ地を製造している会社によると、綿糸で「経糸245番、緯糸300番」を使っているという。
また別の企業は「緯糸に330番の綿糸」を使っているという。

これには非常に驚いた。
業界関係者ならご存知だが、糸の太さは「番手」という言葉で表される。
番手の前には数字が付き、数字が大きければ大きいほどその糸は細いということになる。

一番太い番手は「1番」だが、最近ではその上の「0番」という糸もある。
イタリアやフランスからの高級インポートブランドの細番手のシャツでもだいたい「100番~120番」くらいである。

この「245番、300番、330番」という糸がいかに細いかがわかるだろう。

さらに布団用の生地なので、横幅は162センチある。
通常の生地幅はだいたい150センチくらい。セルビッジデニムは狭幅なので75センチくらいである。
布団用の超超細番手生地は、通常の生地幅よりも12センチ広い。

ついでに言うと、業界関係者なら周知の事実なのだが、
太い糸を紡績するよりも細い糸を紡績する方が難しい。だから高級シャツには細番手が使用され、太番手の織物であるデニムはもともとは安価な生地であり、作業服に使用されていた。
200番を越える糸を紡績することができるのは、おそらく日本の紡績だけだろう。

布団のガワ地は、スペックだけで見ると、他国の追随を許さない最高水準である。
まさに日本的な「物作り志向」を体現しているといえる。

そこで、セミナー講師が、
「その超超細番手の糸を使い、生地の密度を低くして、色柄を工夫したら布団以外の用途(例えば高級シャツ地など)にも進出できますよ」とアドバイスなさっていたが、まさに的確なご意見だと思う。
ただ、問題はこれまでにない用途向けの生地を開発する場合には、別のコストが発生する。
この別のコストとは、デザイナーとの契約費用だったり、試作品の製作費用だったり、そこから次の段階に進むと販促費用が必要となる。
製造業者がこれを捻出する気があるかないかである。

ここを乗り越えるのが苦しいところなのだが、もし、乗り越えられる企業が多数現れれば、
斜陽産業と目されている繊維製造業にも、まだ活路があるのではないかと思うがいかがだろうか。

「+J」が消えたユニクロ心斎橋店

 周知のことであるので、今更だが、
昨日、ユニクロの「+J」が終了することが発表された。
今秋冬商品の販売で最後になるという。

今週の火曜日、偶然にもユニクロ心斎橋店を覗いた。
そのとき、1Fの「+J」コーナーが無くなっていることに気が付いた。
階層表示板の「+J」にもご丁寧にビニールテープを貼り付けて消してある。

そのとき、「今後、かなり『+J』を縮小するだろう」と感じた。
なぜなら、心斎橋店は「グローバル旗艦店」だからだ。
ユニクロのすべてのアイテムを販売するのが「グローバル旗艦店」であり、
あまり世間に知られていない「大型店限定アイテム」まで販売されている。

「+J」は当然販売されてしかるべきだが、そのグローバル旗艦店から消えたとなると、
大幅な縮小を予想せざるをえない。

その2日後に、「+J」終了が発表された。

世界的デザイナー、ジル・サンダー氏を迎えて始まった「+J」だが、
注目を集めた割には、常に季末まで大量の在庫が店頭に並んでいた。
そう、業界の内外が注目した割には、売れ行きは芳しくなかったと推測される。
とくに驚いたのが、今年の5月末まで、昨年の春夏物を大幅値下げして販売していたことである。
一例を示すと、夏物の薄手綿ジャケットは2990円、ときどき期間限定で1990円にまで下がっていた。
ブルーのチェックのジャケットを1990円のときに買おうかと何度か悩んだが、
某知り合いがまるっきり同じ物を着ていたので、購入を中止した。

これまで「+J」を4枚購入した。
薄手のプルオーバーパーカと半袖ポロシャツ、ジーンズ2本である。
プルオーバーパーカは1990円に下がったときに、
半袖ポロシャツも1990円に値下がりしたときに、
ジーンズは2990円に下がったときに購入した。

自分から見れば、「+J」はネームバリューがそこそこあるものの、
シーズン末に大幅値下げしたときに、各安で買えるブランド
という位置付けだった。

さて、「+J」の販売は今秋冬も続くのだが、
心斎橋店に並んでいた今春夏物の大量の在庫はどこへ移動したのだろうか?
ついこの間まで、ネットで「+J」の期間限定値下げ販売を行っていたので、
ネット販売用の在庫として格納してあるのだろうか?

また、最終商品となる今秋冬物は、「グローバル旗艦店」である心斎橋店では販売されないのだろうか?
だとしたら全ラインナップがそろわない「グローバル旗艦店」とは一体何なのだろうか?

リーバイスの型数半減は大賛成

 リーバイ・ストラウス・ジャパンが今秋冬から型数を半減させる。

http://hibiryutu.blogspot.com/2011/06/blog-post_5753.html

記事によると、1万円以下の商品減らして、百貨店・セレクトショップ向けに1万~2万円の商品を増やすという。
また「505」「511」「551」の各シリーズでは生地製造から縫製、加工まで一貫して日本で手掛けるともある。

リーバイスが型数を減らすことは大いに賛成である。
逆に言えば、これまでの型数が多すぎた。
リーバイスに限らず、ジーンズ専業メーカーの悪い癖なのだが、非常に事細かにデザイン別・シルエット別の商品が企画される。
例えば、スキニー、スリムフィットストレート、タイトストレート、レギュラーストレート、リラックスストレート、ルーズストレート、タイトブーツカット、ルーズブーツカットなどなど、というように太さ細さのシルエットだけで何種類もある。ここにさらに、ポケットの仕様違いだとか、ファスナーの仕様違いだとか、少し切り替えの入った物だとかのデザイン違いの商品が上乗せして企画される。

しかし、冷静に考えてもらいたいのだが、そこまで微妙なシルエットの差が必要だろうか?
上の例で見ると、スリムフィットストレートとタイトストレートはどうちがうのか?おそらく、太さで1センチ前後の差しかない。フィットするためには「この1センチが重要」という意見もあるのは承知しているが、その「1センチ」に固執するマニア層が一体どれだけの人数存在するのだろうか?
おそらく、ごくごく少数であり、大半の消費者はスリムフィットとタイトストレートの違いをほとんど気にしていない。
同様にリラックスとルーズもさほど大きな差がない。
ならば、スキニー、細めストレート、レギュラーストレート、太めストレートの4つのシルエットに集約することが可能であろう。
ここにブーツカットを1種類だけ差し込んでも、シルエットは5種類に抑えられる。
極端な言い方をすれば、これまで10種類もあったシルエットはまったく無駄だったことになる。

しかし、リーバイスの今秋以降の戦略で問題点となるのが、型数を半減させ取り引き販路を絞るということは、必然的に「利益率は改善されるが、売上高が減少するだろう」ということになる。
これについては、リーバイ・ストラウス・ジャパンの首脳陣はある程度覚悟の上だと推測されるが、米国本社がどのように評価を下すか懸念が残る。
これまで米国本社は、日本市場の特殊性・地域性をあまり認めて来なかった経緯がある。

そして、販路を百貨店、セレクトショップへと絞るということだが、これも売上高は「良くて横ばい」ということになろう。彼らのジーンズ販売数量は、さほどに多くないからである。数量だけならライトオンやマックハウスなどのジーンズカジュアル専門店に遠く及ばない。
百貨店はおそらく、自主編集ジーンズ売り場での取り扱いになると思われるので、一定のまとまった数量が販売されるだろうが、委託販売であることが大きな懸念材料である。

また、セレクトショップにも問題がある。
たしかに、ショップ自体の訴求力はジーンズ専門店を上回るが、ことジーンズの販売数量と言うことになると極端に少ない。近年、ビッグジョンも「ビッグジョン」ブランド、「ディッキーズ」「ワールドワーカーズ」の3ブランドをセレクトショップで販売しているが、ブランドステイタスは向上したものの、販売数量はそれほど大きく伸びていないのではないだろうか。

以上の点から考えて
リーバイスの今秋冬戦略には賛成だが、問題点もいくつかある。
それをどう乗り越えていくのか、注目したい。
個人的見解では、リーバイスは、トータルアイテム化して直営店20~30店舗体制となったときが、一つの到達点だと考えているのだが。

異業種オーナーが考えるほどには、出版は儲からない

 先日、惜しまれつつも子供服雑誌「マリア」が休刊となった。
出版元のアンジュパブリッシングも解散となる。残念だが、創刊されたばかりの「フリッカ」も休刊である。

数年前に関西圏のエリアファッション雑誌「カスタマ」も休刊となった。

「カスタマ」と「マリア」に共通することは、出版社のオーナーが異業種であることである。
個人的には「異業種の出版参入はかなり難しい」と考えている。
正確に言うなら「参入することに対してはそれほど難しくはないが、異業種出身のオーナーが考えるほど、現在の出版業は儲かる仕事ではない」ということになる。

まず、参入するためには誌面を作らなくてはならないのだが、これは意外に難しくない。
出版業界出身でフリーのライター、編集者、カメラマンは全国に腐るほどいる。
OEM/ODM業者が無数にあり、素人オーナーでも商品を作ることが簡単にできるアパレル業界と似ている。
さて、先日も書いたように、現状の雑誌の利益はほとんどが広告掲載料によるものである。
バブルの頃なら広告は勝手に集まっていたが、バブル崩壊から10年後の2000年代には、広告は血のにじむような営業でも獲得できないものになってしまった。
これは、出版社の営業マンや広告代理店の営業マンが悪いわけではなく、スポンサーとなるべきメーカーやショップの売上高が激減しているためである。「無い袖は振れない」というやつだ。

先日、知り合いから聞いた話だが、1985年ごろのバブル期、30歳手前のヒラの銀行員が独立した。
同年代の知り合いと2人で、広告代理店のようなものを起業すると同時に、顔見知りだった某超大手企業の社長に営業したところ「毎月1000万円だけで良かったら広告費を任す」と言われたそうで、起業直後に早くも年間1億2000万円の売上高を確保したことになる。
「さすがバブル」としか言いようがない。
現在ではこうはいかない。各雑誌とも1ブランドから30万円の広告料を得るために必死である。
30万円の広告料でも出さないブランドは出さないし、出せないブランドは出せない。(無い袖は振れないから)

こう見ると、バブル崩壊までは、たしかに出版業は「金のなる木」だったといえる。
しかし、バブル崩壊以降、さらにリーマンショック以降は、すっかり「儲からない職種」となってしまった。

出版の「文化産業」的側面に憧憬を抱く、異業種の経営者は多い。
今後も異業種からの参入はあるだろうと思う。しかし、くれぐれも「大儲けできる」とは考えない方が良い。
あくまでも「文化産業」に、見返りを求めず「投資」する程度のスタンスでないと、期待が失望に変わってしまう。

余談だが、「出版は儲からない」というブログを書いていて、気が付いた。
現在は、アパレルも「儲からない業界」である。その出版とアパレルの両方に足を突っ込んでいる自分は、二重に儲からない立場にいるようだ。

小規模メーカーが増え、売り上げが分散したジーンズ業界

 先日、某商業施設のリーシング担当の方と雑談させていただいた。
雑談の内容は、ジーンズブランドの集積はどうかというものだった。

結果から先に言えば大々的にジーンズブランドを商業施設内に集積するのは「難しい」と言わざるを得なかった
順々に考えてみたいが、
まず、ジーンズ専業アパレルはどうだろうか?
ここにはエドウイン、リーバイス、ビッグジョン、ボブソン、タカヤ商事、ベティスミス、ブルーウェイ、カイタックインターナショナル、コイズミクロージングなどが含まれる。
この中で、直営店志向が強く、企業規模が比較的大きいのはエドウインとリーバイスくらいであろう。
カイタックインターナショナルはすでに直営店を多数持っているが、それはすでに直営店展開していたブランドをM&A(企業買収)したものや、海外インポートジーンズだったりする。

次に、ビンテージレプリカを得意とするブランドはどうだろうか?
エヴィスは別格として、それ以外がほとんどない。
以前も書いたが「シュガーケーン」の東洋エンタープライズとウェアハウスくらいだろうか。
それ以外のブランドは経営基盤がぜい弱で、売上規模が小さい。
年商数億円というレベルである。

最後に、近年登場したこだわりの物作り系の新ブランドはどうかというと、
これもまた年商数億円レベルであり、直営店出店が難しい。

と見てくると、ジーンズブランドを集積した商業施設と言うものは
「極めて実現不可能に近い」という結論に達してしまった。

ジーンズは消費低迷とはいえ、それでも年間9000万本前後の国内流通量がある。
そのため、消費者にもなじみが深く、またマスコミも採り上げ安いが、
経営基盤が弱く、直営店出店は一部のブランドを除いて難しいのが実情である。
こう書くと、先日の子供服アパレルと一種通じるものがあるような気がしてきた。

ジーンズブランドは、かつては先に挙げた専業アパレルが業界で大きなシェアを占めていた。
しかし、そこからの独立組が立ち上げたブランドが乱立し、
また別の独立組はOEM/ODM事務所を立ち上げ、それまでジーンズを展開したことのないブランドがジーンズを手掛ける手伝いをするようになった。
ジーンズはブランド数が増えた割には、1社ごとの売上高は小さくなってしまった。
小規模ブランドが無数にある子供服アパレル業界と似たような状況にあるといえる。

そう考えると、ジーンズブランド各社の先行きはなかなか厳しいのではないかと思うが、杞憂だろうか。

子供服雑誌「マリア」が休刊

 関西を拠点とする子供服ファッション雑誌「マリア」が6月15日発行号で休刊となった。

http://ameblo.jp/mariavc/entry-10923286446.html

これに先立って関西圏の雑誌「カジカジキッズ」も休刊となっている。

以前にも書いたことがあるが、子供服ファッション雑誌というのは実に成り立ちにくい。

通常、雑誌というものは、購読料のほかにスポンサーからの広告掲載料で利益を得ている。
これは新聞も共通したビジネスモデルであり、購読料だけでは会社の活動費が賄えない。
利益を得るためには広告掲載料がなくては無理なのである。

数年前、某有名雑誌の編集長のセミナーを拝聴したことがある。
この編集長は今は退職されて別の会社に移られている。
「うちの雑誌は広告掲載料がなければ、売れれば売れるほど赤字が増えます」と
席上でおっしゃっていた。
購読料だけでは製作費と社員の給料は賄えないということである。

ファッション雑誌も各ブランド、各メーカー、各ショップからの広告掲載料で収益が成り立っている。
子供服雑誌も例外ではない。

子供服雑誌が成り立ちにくいのは、スポンサーとなるべきブランド、メーカー、ショップがメンズやレディースに比べて企業規模が小さいから、広告掲載料が集まりにくいためだ。
かつて「ミキハウス」ブランドを展開する三起商行は売上高350億円弱で、業界最大の子供服メーカーだった。
トップ企業の売り上げ規模が300億円であるから、いかに業界規模が小さいかわかる。
レディースアパレルなら300億円企業は、小さくはないが大企業でもない。中堅企業である。

そして、子供服業界には3人前後で活動している小規模メーカーが無数にある。
知り合いの小規模子供服メーカーの社長は「年商1億円の子供服メーカーは、レディース業界なら10億円規模に相当する」とおっしゃっておられた。レディースの10分の1が子供服業界というわけだ。

これではなかなか広告掲載料は集まらない。
レディース雑誌並みに集めることは不可能である。

さらに「マリア」は「ミキハウス」「ファミリア」「べべ」「フーセンウサギ」などといったような大手老舗ブランドを掲載せずに、新興のマンションメーカーを掲載するというコンセプトを掲げていた。

このコンセプトは非常に斬新で楽しい物だが、収益という点で考えると、年商1億円規模の会社が年間にどれほどの広告掲載料を払えるのだろうか。広告営業がかなり厳しいものであることは容易に想像できる。

最近はレディース雑誌でも、洋服や雑貨以外に化粧品や飲食店など女性のライフスタイル全般にかかわる企業から広告掲載料を集めている。そうでもしないと広告が集まらないからである。
子供服雑誌にも「例えば、服と雑貨だけでなく、写真館とか保育所とか幼稚園とか遊園地からも広告掲載料を集めたら?」というアドバイスをされている社長さんもおられた。
良い視点なのだが、子供関連の施設も子供服メーカーと同じで、それほど潤沢な資金がない場合が多い。
そのため、広告を集めることは厳しいと推測される。

加えてバブル崩壊以降、一層、子供服業界は縮小している。
正確に言えば単価下落が止まらない。
バブル崩壊直後にデフレブームの先駆者となったのが「赤ちゃん本舗」である。
しかし、栄華は長続きせずセブンアンドアイグループに編入された。
次に現れたのは子供服チェーン店西松屋である。
残念ながら、リーマンショック以降沈静化している。

子供服は元来「もったいない」物である。
子供は成長するため1年か2年で服が着られなくなる。
また汚したり破ったりすることも多い。
となると「ある程度枚数は必要だが、すぐに着られなくなるため、できるだけ安い服を大量に持ちたい」と消費者は考える。
バブルのころなら、ステイタス性のある高額な服を買い与えたかもしれないが、
バブル崩壊、さらにリーマンショック以降は「少しでも安い子供服を」と考える消費者が大多数となっている。
西松屋が今一つ振るわなくなったのも「西松屋の商品ですら高い」と考える消費者が増えたからである。

「マリア」の休刊、それに先立つ「カジカジキッズ」の休刊は、
編集内容とか記事が悪かったわけではなく、
もともと基盤がぜい弱だった子供服業界が、さらに縮小する構図が顕在化したものであると言える。

6月16日、夏のセール始まる

 昨日の6月16日から、一部で夏のセールが始まった。
関西の昨日の最高気温は22度。関東の今日の予想最高気温は21度、どちらも四月ごろの気温で「夏」というには程遠い。本格的な「夏」が来る前に夏物セールが始まるのだから、消費者としてはうれしい限りだ。
気候で言えば、昨年よりも今年の5月・6月は平均気温が低い。

今回のセールで話題となったのは、ルミネだが、
ルミネは各テナントが3グループに別れてセールがスタートする。
先行組は6月16日から、その次は6月24日から、
最後は7月1日からとなる。
そうは言っても7割くらいのブランドが昨日からセールをスタートさせている。

ちなみにビームスも各店舗で、昨日から店内一部セールを開始している。
セールになった商品はだいたい店内の3割~4割程度を占めるという目測である。
値下げ幅はそれほど大きくなく、メンズのシャツ類で5500円~、となっており
だいたい30%オフ程度だろうと計算される。

CA3G0118

さて、今回の夏セールだが、
「震災の影響もあり異例の早さで、来年以降常態化するものではない」とルミネは発表しているが
果たしてそうだろうか?
個人的には「来年以降も常態化するのではないか」と考えている。
ルミネやビームスが「来年以降も常態化したい」と思っているわけではないことは重々承知の上だ。

牛丼の価格が一度下がると、なかなか値上げしにくいのと同じで、
一度、セールを早期に開催してしまうと、なかなか7月スタートには戻しにくい。
今回は「震災の影響」もあって16日スタートだったが、昨年も6月25日スタートというショッピングセンターやブランドも数多くあった。
それ以前でいえば、8月にセールだったのが、7月末になり、それが7月中旬になり、7月1日スタートへと20年かけてジワジワと早まってきた。
正確ではないかもしれないが、3年ほど前から、ついに6月25日ごろにスタートするようになった。

売上がおもわしくない時、もっとも手っ取り早い打開策の一つにセールがある。
洋服の消費がおもわしくない現状では、早い時期にセールをすることでなんとか在庫を消化せざるを得ないブランドがほとんどである。

来年以降も6月半ばスタートが固定するかどうかは不透明だが、まちがいなく6月25日スタートは常態化するだろう。
夏と冬にセールをするという業界の商習慣はそろそろ意味をなさなくなってきており、
GAPやポイント、ユニクロのように「入荷後一定期間を過ぎた商品は一律に値下げしていく」という販売方法の方が、現在の消費動向に即したものではないだろうか。

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