子供服雑誌「マリア」が休刊
2011年6月20日 未分類 0
関西を拠点とする子供服ファッション雑誌「マリア」が6月15日発行号で休刊となった。
http://ameblo.jp/mariavc/entry-10923286446.html
これに先立って関西圏の雑誌「カジカジキッズ」も休刊となっている。
以前にも書いたことがあるが、子供服ファッション雑誌というのは実に成り立ちにくい。
通常、雑誌というものは、購読料のほかにスポンサーからの広告掲載料で利益を得ている。
これは新聞も共通したビジネスモデルであり、購読料だけでは会社の活動費が賄えない。
利益を得るためには広告掲載料がなくては無理なのである。
数年前、某有名雑誌の編集長のセミナーを拝聴したことがある。
この編集長は今は退職されて別の会社に移られている。
「うちの雑誌は広告掲載料がなければ、売れれば売れるほど赤字が増えます」と
席上でおっしゃっていた。
購読料だけでは製作費と社員の給料は賄えないということである。
ファッション雑誌も各ブランド、各メーカー、各ショップからの広告掲載料で収益が成り立っている。
子供服雑誌も例外ではない。
子供服雑誌が成り立ちにくいのは、スポンサーとなるべきブランド、メーカー、ショップがメンズやレディースに比べて企業規模が小さいから、広告掲載料が集まりにくいためだ。
かつて「ミキハウス」ブランドを展開する三起商行は売上高350億円弱で、業界最大の子供服メーカーだった。
トップ企業の売り上げ規模が300億円であるから、いかに業界規模が小さいかわかる。
レディースアパレルなら300億円企業は、小さくはないが大企業でもない。中堅企業である。
そして、子供服業界には3人前後で活動している小規模メーカーが無数にある。
知り合いの小規模子供服メーカーの社長は「年商1億円の子供服メーカーは、レディース業界なら10億円規模に相当する」とおっしゃっておられた。レディースの10分の1が子供服業界というわけだ。
これではなかなか広告掲載料は集まらない。
レディース雑誌並みに集めることは不可能である。
さらに「マリア」は「ミキハウス」「ファミリア」「べべ」「フーセンウサギ」などといったような大手老舗ブランドを掲載せずに、新興のマンションメーカーを掲載するというコンセプトを掲げていた。
このコンセプトは非常に斬新で楽しい物だが、収益という点で考えると、年商1億円規模の会社が年間にどれほどの広告掲載料を払えるのだろうか。広告営業がかなり厳しいものであることは容易に想像できる。
最近はレディース雑誌でも、洋服や雑貨以外に化粧品や飲食店など女性のライフスタイル全般にかかわる企業から広告掲載料を集めている。そうでもしないと広告が集まらないからである。
子供服雑誌にも「例えば、服と雑貨だけでなく、写真館とか保育所とか幼稚園とか遊園地からも広告掲載料を集めたら?」というアドバイスをされている社長さんもおられた。
良い視点なのだが、子供関連の施設も子供服メーカーと同じで、それほど潤沢な資金がない場合が多い。
そのため、広告を集めることは厳しいと推測される。
加えてバブル崩壊以降、一層、子供服業界は縮小している。
正確に言えば単価下落が止まらない。
バブル崩壊直後にデフレブームの先駆者となったのが「赤ちゃん本舗」である。
しかし、栄華は長続きせずセブンアンドアイグループに編入された。
次に現れたのは子供服チェーン店西松屋である。
残念ながら、リーマンショック以降沈静化している。
子供服は元来「もったいない」物である。
子供は成長するため1年か2年で服が着られなくなる。
また汚したり破ったりすることも多い。
となると「ある程度枚数は必要だが、すぐに着られなくなるため、できるだけ安い服を大量に持ちたい」と消費者は考える。
バブルのころなら、ステイタス性のある高額な服を買い与えたかもしれないが、
バブル崩壊、さらにリーマンショック以降は「少しでも安い子供服を」と考える消費者が大多数となっている。
西松屋が今一つ振るわなくなったのも「西松屋の商品ですら高い」と考える消費者が増えたからである。
「マリア」の休刊、それに先立つ「カジカジキッズ」の休刊は、
編集内容とか記事が悪かったわけではなく、
もともと基盤がぜい弱だった子供服業界が、さらに縮小する構図が顕在化したものであると言える。