月別: 11月 2015 (1ページ / 2ページ)

海外進出が成功に結びつくとは限らない

 先日、こんな記事を拝読した。

タイトルに興味を持った。

アパレルの常識を変えたワールドとZARA、
なぜ明暗が分かれたのか
http://diamond.jp/articles/-/81941

である。

随分と興味深い比較論のようだ。
これまでファストファッションとよばれるグローバルSPAブランドとの比較対象となった国内ブランドはユニクロだった。

「ユニクロ帝国の光と影」でもその著者はZARAとの比較を行っている。

そのグローバルSPAと国内アパレルの大手、ワールドとの比較はなかなか興味深い。
そう思って記事を読み始めた。

が、期待外れも良いところだった。

3ページ目にこんな結論が出されている。引用しよう。

ザラとワールド、
明暗が分かれた最大の要因

佐藤 近年、ワールドの業績は低迷し、現在、リストラを推進しています。ザラとワールドはともにオペレーションに優れた会社でありながら、業績に差が出た理由は何だと思いますか。

ラマン 海外戦略だと思います。今、成功しているアパレルメーカーは海外進出によって成長しています。ザラがスペインの国内市場だけでビジネスをしていたら、これほど成長していなかったでしょう。

とのことであるが、アホらしくて話にならない。
海外進出をしていないからワールドがダメになったということらしいが、ワールドはすでに90年代後半に海外進出をしている。
ワールドだけじゃない。イトキンもオンワード樫山も大手は90年代後半に海外進出している。

進出先は中国だった。

結果をいうと2005年くらいまでで全社失敗している。
オンワード樫山のICBというブランドはこれはアジア進出のためのブランドだったが、2005年以降はどうだ?
ICBなんていうブランド名は業界ではほとんど耳にしない。


近隣国への進出は海外進出と言わないなんて詭弁を弄されそうだが、たとえば、日本に上陸して話題を集めた北欧の雑貨ブランド「フライングタイガー」だが、ふれこみとしてはグローバル雑貨ブランドだったが、日本以外のほとんどの直営店はヨーロッパにしかなかった。
近隣諸国にしか進出していないのに、グローバルブランドを名乗っていたわけである。
自発的に名乗ったのか、また例のごとくメディアがピントのズレた冠をかぶせたのかは知らないが。

フライングタイガーが近隣国にしか出店していないのにグローバルブランドを名乗れるのなら、ワールドらの中国進出も立派にグローバルブランドを目指した海外進出といえるだろう。
彼らは結果的には失敗したが。
失敗した理由は彼らが現地にローカライズできなかったからだ。

ローカライズできなくて撤退したグローバル企業なんて掃いて捨てるほどある。
カルフールとテスコはその典型だろう。
ウォルマートも鳴かず飛ばずだ。
別にローカライズが下手くそなのは日本アパレルだけではない。米国企業も英国企業も仏国企業も下手くそな企業はとことん下手くそなのである。

ワールドとZARAを分けたのは海外進出ではない。

ワールドはPOSレジとそれに連動したQRシステムでどんどんと売れ筋商品を深追いするシステムを確立した。
POSで読み取ったデータをQR対応で生産して10日後とか2週間後くらいにはまた店頭に並べる。
売れ筋をとことん追求するのはビジネスの基本ともいえるが、ファッション衣料ではとことん補充することが逆にマイナスに作用することもある。

10日後にはまた店頭に補充されるとわかっていたら、消費者は「今すぐに」買わなくなる。
どうせ後日来ても商品は残っているのだ。
今、わざわざ買う必要はない。
夏冬のバーゲン時期まで待ってもおそらく残っているだろう。
だったらバーゲンまで待った方がお得である。

ZARAの商品は売り切れ御免である。
店頭で売り切れた商品を追加補充することはめったにない。
だから今買わないといけないという危機感を覚える。

ZARAの店頭を見ると、メンズはけっこう投げ売り価格まで値下がりしていることが多いが、ZARAのメインはレディースである。レディースではメンズほど投げ売り商品がない。
ある商社関係者によると、ZARAの全世界売上高の男女構成比は圧倒的にレディースが多いそうである。
その人によると、売上高の8割~9割がレディースだそうだ。

各店舗にはおそらく1型あたり30枚とか50枚くらいを配布しているのだろう。

個人経営の専門店から見れば、多いと感じる枚数だが、ZARAからするとそんなに多くない。
通常、30枚とか50枚なんて小ロットを縫製したら、縫製工賃は割高になるのだが、ZARAは世界中に店舗があるから、たとえ1店舗50枚ずつ配布しても生産数量からいうと何万枚という枚数になる。

だから縫製工賃を安く抑え、店頭販売価格も安くできる。

ZARAとワールドを比べたいのであれば、売り切れ御免とPOSとQRで売れ筋をとことんまで追求した体制とを比較すべきである。
その上で、ファッション衣料にはどちらの方法が適切なのかということを考えなくてはならない。

そうでなくて、「海外進出」にその答えを見出すのなら、それは業界をミスリードするだけに終わる。
今回の記事なんて素直に読めば「成功するには海外進出すべき」としか読めない。

海外進出が成功のカギなら、なぜ2000年代前半に中国へ進出したワールドがこれほどまでにボロボロになっているのか。

過去にどれだけの企業がこういう無責任な海外進出論に踊らされたことか。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20




ウェブサイトを開設してもすぐには集客できない

 衣料品の店頭の販売不振を打開する一つの方策としてウェブ通販が注目されて久しい。
たしかにウェブ通販全体の売上高は伸び続けている。

最近では、ウェブ通販なんて利用したこともないであろう、ナンタラ組合とかナンタラ協議会のおエライサンまでが、ウェブ通販こそ消費不振を一気に解決できる魔法の杖のように思っているかのような発言が続いており、笑えてしまう。
下手な漫才を聞くより笑えるのではないか。

現在、かなりの小規模ブランドでもウェブ通販を行っている。
アマゾンやら楽天に出品している場合もあるし、自社サイトに通販機能を持たせている場合もある。

また産地組合やら生地製造企業がオリジナル製品を自社サイトで通販しているというケースも増えた。

しかし、実際のところ、ウェブサイトというのは開設しただけでは誰も訪問してくれないのが実情である。
開設したばかりのサイトは極めて訪問者が少ない。
当然、通販を利用してくれる客も極めて少ない。
訪問者が少ないのにそこで物を買ってくれる人が多いはずがない。

実際にいくつか自社サイトで通販を行っている小規模ブランドと話をしたことがあるが、ほとんど売れていないと答えたところが多かった。
売れているとしてもかなり少額で、実店舗販売や卸売りの方が売上高が圧倒的に多く、ウェブ販売は補完的役割だった。

現に、産地組合やら生地製造企業のウェブ通販もあまり売れていない。
なぜエライサン方は自分のところのウェブ通販がほとんど売れていないのに、ウェブ通販に対してそんなに期待できるのだろうかと不思議でならない。

たしかに全体的に見ればウェブ通販はまだ伸びしろがある。
どこかで限界点に達するとしてもまだ何年間かは伸びるだろう。

けれども現状を見ると、比較的新しいウェブ通販という分野でさえも大きな売上高を稼いでいるのは大手企業に限定されている。
先ほども書いたように、新規参入組や小規模事業者は苦戦しているのが実情といえる。

実店舗でも同じだが、結局開設しただけでは物は売れない。
なぜなら集客ができないからだ。
実店舗でも集客してそれが顧客化するまではある程度の時間がかかる。

いくらウェブサイトが全世界に向けて公開されているとはいえ、それは他社も同じである。
実店舗以上に競合が多いのがウェブの世界だともいえる。
その無数にあるサイトの中から選ばれなくては集客もままならない。

エライサン方の中には、ウェブが全世界に向けて公開されているがゆえに、開設したらすぐに何百人も集客できるかのように思っている人が少なくない。

じゃあ、集客するにはどうすれば良いのかということになるが、莫大な費用をつぎ込んで、広告を出稿しまくるほかない。
ニュースサイトとのタイアップ記事も増やそう。
そうすれば新参者でも一気に訪問者数は増える。
その中からひょっとしたら顧客化する人も出てくるかもしれない。

小規模企業や産地製造業はどうすれば良いのか。
とてもそんな金はない。まあ、借金して広告出稿を増やすという手もあるが、自己責任でどうぞ。

とすると、地道にサイト更新を積み重ねるほかない。
サイト更新頻度が高ければ高いほど、そのサイトは検索すれば上位に表示されるようになる。
サイトを更新するのは手間がかかるから、サイト内のブログを毎日とか一日に3本とかアップした方が手間がかからない。
それでも効果が出るまでには時間がかかる。

そこを我慢してやり続けるしかないのではないか。

となると、ウェブ通販は魔法の杖なんかではなくて、結構な苦行難行であると思えてくる。
訪問者数の少ないブログをコツコツ更新し続けるのはかなりの精神力が必要となる。

実際にこのブログも書き始めた当初は閲覧(PV)数が1日に100~300くらいだった。
書き続けていると、今ではだいたい1日のPV数は4000前後になった。

本当にコツコツ積み重ねるほかない。

ウェブ通販こそ「消費不振を解決する魔法の杖だ」と安易に考えているようなエライサンが君臨する団体や企業のオムニチャネル化が成功する要素は微塵もない。




縫製工場にとっての最良案件は毎月一定数量のオーダーがあること

 ある起業家からの相談を受けている。
「国産のカットソー類を作って売りたい」という内容だ。

まあ、これだけならありふれているが、起業家はあちこちに相談に行っているらしく、
そこで言われたことをいろいろと総合してみると、

・高額化しろ
・量産はするな
・わかりやすいストーリー作り(気仙沼ニットのような)
・高品質を謳え

などなどである。
だいたい今、大手アパレルやセレクトショップ、こだわり系ブランドが使っている手法といえる。
どういう物を作るかにもよるが、手法としては陳腐化している。

そしてそれが必ずしも的中するわけではない。

上手く行っているブランドとそうでないブランドがある。
個人的にはメディアが煽っている割には「メイドインジャパン」の洋服は予想より盛り上がっていないと感じる。

そりゃそうだ。
メイドインジャパンは必ずしも高品質ではないし、出来上がった洋服の見た目が特別違っているわけではない。
それでいて高いとなると、よほどの愛好家しか買わないし買えない。

洋服の見た目を劇的に変えたいならデザインに工夫を凝らす方が手っ取り早い。
先日、日登美の「日本製ハイブリッドポロシャツ」をご紹介したが、あれだって説明されなければ、単なる大柄なチェック柄のポロシャツである。

「先染めでチェック柄の生地を編むと肉厚になってしまう。薄い編み地でチェック柄を表現するためには、先染めで横縞を作ってから、縦のストライプ柄をプリントした。その際に生地の斜行を抑えるには国内の製造・加工業の技術が必要だった」ということを説明された。

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説明を聞かずに以上のことが理解できる人は、繊維の製造・加工業者に限られるのではないか。
まず一般消費者には無理である。

となると、何の変哲もないデザインの商品を作って、「日本製」というふれこみだけで「高くても買うよな?」という姿勢はかなり俺様なドSプレイだといえるのではないか。

起業家は縫製工場との取り組みを考えている。
縫製工場と取り組む場合、気を付けなくてはならないのは、一時期にドカンと大量の発注をして、それ以外の時期には発注がゼロであることである。
これは縫製工場にとっては有難迷惑である。

例えば、7月だけ1000枚のオーダーを出して、残り11カ月のオーダーがゼロというのは、縫製工場にとって何のメリットもない。

それよりも毎月、100枚ずつのオーダーがもらえる方がありがたい。
縫製工場にとっての優良顧客はこちらの方である。

なぜなら、幾人かの工員を雇用・契約している工場にとって、仕事がない月が生じるのが一番困る。
その月は工員を遊ばせておくことになってしまう。
それよりも毎月わずかずつでもオーダーがある方が良い。

上の例で行くと、年間発注数は1000枚と1200枚だから大きな差はないが、工場側にとっては後者の方が何倍もありがたい。

となると、縫製工場と取り組むのであれば、毎月最低でも一定数量の生産ができなくてはだめだ。
毎月、買ってもらえるような商品ということになるとむやみやたらな高額化をしてはいけない。
かといって、超低価格だと逆に怪しさが増すから、中価格帯ということになる。

国産Tシャツをオンライン通販で販売する京都イージーの価格帯は2000~4000円弱である。
Tシャツを毎月一定数量を買ってもらおうと思うならこのくらいの価格帯が適正ではないかと思う。

鎌倉シャツの場合は5000円だ。
ワイシャツを毎月1枚か2枚買ってもらうとするとこれくらいの価格が適当ではないか。
1000円だと安すぎて国産かどうかが怪しまれるし、1万円を越えると毎月買える人は少なくなる。

となると、縫製工場と密に取り組みたいのであるなら、このあたりの価格帯を考えるべきではないか。

近年、雨後の筍のように現れた「日本製」を売りにするブランドは、高価格化でイメージアップを狙っているのかもしれないが、それはブランド側の理屈であって工場側の理屈ではない。
なにも工場側のことのみを考えて商品展開をする必要はないが、社会貢献として国内工場維持を掲げるのなら、工場の業務活動を維持しやすいような施策を講じるべきではないか。

今のブランドの施策の多くは工場にとっては、一時期だけの「スポット」商品でしかない。

工場との取り組みを真剣に考えるなら、スポット商品だけではない、毎月一定数量をオーダーできるような商品施策を考えるべきである。

まあ、「煽るだけ煽って、ブームが終わったら次のことを考えるわ~」というのなら、今のスポット商品販売に終始していれば良いのではないか。


 




新しいことをやれば必ずどこかから批判はある

 新しいことを始める際には必ずどこかから批判なり非難される。
それは利害関係にある、同業他社からだったり他業種からだったりする。

例えば、某産地は助成金をもらったりもらわなかったりしながら長年、一般商業施設で展示会を開催しているのだが、なぜ直接販売をしないのか不思議で仕方がない。

ファッションビルの催事スペースや地下街の催事スペースで業界関係者だけではなく、一般消費者にも見てもらうことを目的としているのである。
なら、ほんの2~3日のことなのだから、「サンプルセール」とでも銘打って直接販売すれば良いと思うのだが、それをしない。

理由は2つある。

1つは助成金を受け取っている期間は、営利目的の販売活動ができない
もう1つは、主要な卸先である問屋から有言無言の圧力がある

この2つである。

助成金の縛りによってというのは仕方がない。
それが不満なら助成金を受け取らなければ良いだけの話である。
受け取った限りは従うべきである。

問題は後者の方である。
助成金を受け取っていない期間なら直接販売することは可能である。
しかし、その際には問屋からの圧力がある。
新しいことを始められるかどうかはこういう圧力に屈するかどうかである。

衣料品業界だけを考えてみても過去様々な企業が新しい分野に進出している。
まあ、小売店が自主企画製品まで製造するようになったユニクロの例は有名だがそれ以外でもさまざまある。

アパレルで見ても、もともと卸売り主体だったのが、直営店も複数オープンさせている企業も何社もある。
以前一度取材したレディースの直営店では、やっぱり直営店初出店の際は、卸売り先の小売店から「ちょっとやめてもらえませんか」という有言無言の圧力はあったという。

また地方の問屋が自主企画によるブランドを立ち上げたケースもある。
その際はやはり卸売り型アパレルからの何らかの圧力やクレームがあったという。

だからやめるのか、それでもやるのか、さまざまな利害得失は計算するにしても、最終的には経営者の判断ということになる。
経営者の腹が据わっているのか、据わっていないのか、だけではないかと思う。

従来通りのやり方をルーチンにこなしていて売上高が伸展する、または維持できるのならそれでも良いだろうが、アパレルも含めた繊維産業の場合は、放っておくと売上高は減少する。
また従来の業界構造が時代を越えてもずっと適正であり続けるとは限らない。

問屋なんてまったく不要にはならないが、年々売上高は減少するほかない。
もしくは同業他社がつぶれまくって残存者メリットを享受するかのどちらかである。

となると、自社を存続させるためには、新たな手法を模索するほかない。
他業態へ進出するのは侵略ではなく自衛である。

いくら、業界全体が平穏に過ごせても自社がつぶれてはどうしようもない。
自社が存続するために業界が騒然となるなら、自社の存続を選ぶのが普通の考えだ。
その意思がなければ余力があるうちに廃業すれば良いのである。

さて、件の産地だが、助成金を受け取っていない期間は堂々と直接販売をすれば良いのではないか。
どうせ、催事期間なんて2~3日しかない。
これが常設店ならまあ、問屋の危惧もわからないではないが、2~3日程度なので「すみませーん。ちょっとの期間ご迷惑をおかけしまーす♪」とかなんとか言いながら販売会をやってしまえば良い。

もし仮にその販売が積み重なって産地や製品のブランド知名度が向上したら、そうやって圧力をかけてきた先ほどコロっと態度を変える。
実績に弱いのがこの業界の常態だ。

そういう先ほど、産地の知名度が上がれば「以前から良い製品作りをする産地だと評価してたんだよね~」と言い出すのである。
現金な輩である。

そんなわけで筆者は産地もどんどんと新たな取り組みに挑戦すれば良いと思う。
何もしないなら「国が悪い、景気が悪い、業界構造が悪い」なんて文句はいわずに淡々とルーチンをこなせば良い。ストレスは飲酒だかゴルフだかで発散して。

業界構造が悪いと思うなら自ら打ち破る努力をすべきではないか。
それ以外に業界構造が変わることはあり得ない。ある日突然目が覚めたら業界構造が変わっていましたなんてことはあり得ないのだから。




 

ユニクロのジーンズの色合いは随分マシになったと思う

 今日は久しぶりに今月に買ったお買い得品を。

まず、ユニクロのストレッチセルビッジデニム生地を使ったスリムストレートジーンズで、定価3990円が1290円にまで値下がりしていた。

素材組成は綿99%・ポリウレタン1%となっている。

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ワイドシルエットのパンツに注目が集まっているといわれているが、マス層のベースとなるのは変わらず細身シルエットだからストレッチ混素材の方が快適である。

今後もワイドシルエットがマス層、とくにメンズにまで広がるとは思えないから、ストレッチ混素材は必須ということになるだろう。

綿100%の風合いが云々という需要はもちろんあるが、それはどちらかというと少数派である。
少数派対応のブランドはその需要を取り込むべきだろうが、マス層に売りたいブランドは慎重に対応すべきである。
まったく切り捨てるという施策もあるだろうし、経営を圧迫しない程度に対応するという施策もあるだろう。
これがマス層になると判断するのが一番不味いのではないか。

それにしてもユニクロのジーンズは随分と見た目がマシになったと思う。

98年のフリースブームの頃、2900円ジーンズもひそかに注目されていたが、正直なところあれがカッコイイとはまるで思わなかった。
通常のナショナルブランドジーンズや他のブランドジーンズに比べて、インディゴブルーの色合いがなんだか変だったからだ。
変な色合いのブルーだから当時、ユニクロジーンズの着用者は一発でわかった。

そこから10年ほど経過したころ、亡き母がユニクロジーンズを「ためしに」という理由で買ってきたことがあったが、ずいぶんマシになったとはいえ、やっぱりブルーの色合いが変だった。
もっと正確にいうと、濃色で買ってきたときはさほど変だとは思わなかったが着用して色落ちしていくごとに変な色合いになったというべきだろうか。

やっぱりユニクロのジーンズは買うべきではないと思った。

今回のジーンズはかなり見た目は良い。色合いも変ではない。
これが初めて買ったユニクロのジーンズである。

今秋から一部のジーンズが4990円に1000円値上げされてしまったが、今後の売れ行きはどうなるのだろうか。ひそかに割高感が出始めていると感じる。
エドウインやリーバイスの廃版品は5900円くらいに値引きされるから、こちらを買った方が良いと考える消費者も増えるのではないか。とくに男性客は。

もう一枚は、ジーンズメイトのプライベートブランド「ブルースタンダード」の裏毛スエットの襟なしジップアップジャケットである。

これは定価4000円のところが2000円に値下がりしていた。
素材の組成はポリエステル65%・綿35%である。

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たまたま店頭に1枚しか残っていなかったので買ったわけである。

ポリエステルを多めにして生地値を安く抑えたと推察されるのだが、その割には合繊特有のキラキラがなく、良さそうな見た目に仕上がっている。
あと合繊が多いので、洗濯しても早めに乾くという特性もあった。まあジーンズメイト側はそんなことを意識はしていなかったのだろうが。

ブルースタンダードというプライベートブランドは割合にデザインが良い。
その割にはあまり好調ではないようで、期末近くになると大概が値引きされる。
半額に値引きされた物をときどき買うのだが、デザインが良いだけにもったいないと感じる。

ブルースタンダードのコンセプトは37・5歳の大人服ということだが、通常のジーンズメイトの顧客は学生が多い。とくに中高生・大学生くらいが多い。
また店作りもそちらに向けた品揃え、内装となっている。

このため、ターゲット顧客とブルースタンダードの商品テイストがマッチしていないといえる。
そのため売れ行きがすごく好調というわけではないのだろうと考えられる。

このミスマッチを解消するには、既存ジーンズメイト店の品揃え、内装を変える。
もしくは、ブルースタンダード向けの店を改めて作る。以前に何店舗か出店したが、軌道に乗る前に凍結・撤退してしまっている。
このテイストでこのターゲットのブランドは、いきなり爆発的に売れることは考えにくいからじっくり育てるという姿勢が必要となる。
またこれをオペレートする人材の確保も必要となる。育てるにせよ外部から獲得するにせよ、だ。

ただ、半額に値下がりする商品が大量に発生するというのは、個人的にはありがたい。
ユニクロにはないテイストの商品を安く買えるからだ。

もし売れ始めたら、筆者が買えることはかなり減るだろう。
いやはや痛し痒しである。




都心旗艦店やスタイリスト起用などの手法は必ずしも有効ではなくなった

 ワールドの中間決算が発表された。
数字の推移よりは、どのブランドが廃止され、どれだけの店舗が閉鎖されたのかの方が今回は興味があった。

ワールド、上期に181店を閉鎖 「アニマ」「ジンジャーエール」終了
https://www.wwdjapan.com/business/2015/11/17/00018727.html

店舗の閉鎖数とブランド廃止を報じているのはこれくらいしかない。
他メディアは遠慮したのだろうか?

中身を見てみよう。

 ワールドは17日に開催した2015年4~9月期決算の会見で、「アニマ(ANIMA)」「ジンジャーエール(GINGERALE)」の2事業を終了したことを正式に発表した。上山健二・社長が掲げた抜本的構造改革の一環で、10〜15ブランドの撤退と400~500店舗の閉鎖する方針を5月に公表していた。

「アニマ」は12年春にスタートしたスポーツ・ライフスタイルブランドで、14年度の売上高は3億円、15年度上期は1億円。原宿・明治通りに面した旗艦店を含む計7店舗を閉店した。

「ジンジャーエール」はスタイリストの百々千晴を起用し13年秋に始動。14年度の売上高は2億円で、15年度上期は1億円に満たない状況だった。こちらもすでに駅ビルを中心に開いた4店舗を退店している。

とある。

どちらも年商規模が1億円程度の泡沫ブランドであるから、廃止はまったく不思議ではない。
もっと有名なブランドも今秋冬商品で廃止が決まっていると言われているが、その発表はなかったらしい。

年商1億円と書かかれているが、アニマの場合は7店舗で1億円だから1店舗あたりの年間売上高は1500万円くらいしかなかったことになる。
かなり売れ行きが悪かったことが容易に想像できる。

個人的に注目したのが、両ブランドの販売方法である。
アニマは原宿・明治通り沿いに旗艦店を出店している。
一方のジンジャーエールはスタイリストの百々千春を起用して商品づくりをしている。

アパレル業界では極めて王道というブランド戦略だが、この王道の戦略がまったく通じなかったことが印象的だと感じる。
おそらく、その手法は過去の遺物に成り下がっており、消費意欲を喚起するものではなくなってしまったということではないか。

東京都心に旗艦店を作る、スタイリストと提携した商品企画、どちらもこれまで、売れるためのブランド作りの手法として疑いを持たれたことのない手法である。

正直に言って、ファッションには疎いのでこのスタイリストが有名なのかどうなのかぜんぜんわからない。
まあ、わざわざ起用されたくらいだからそこそこは有名なのだろうと推測する。

個人的には、スタイリストという職種の人が上手く商品企画をできるとはあまり思えない。
なぜなら、スタイリストの能力というのは、市場に提案された商品を組み合わせて再編集する能力だからだ。
今現在、市場にない物を構想したり形にしたりする能力とはまったく別種の能力である。

もちろん例外的なスタイリストもおられるだろうが、多くのスタイリストに商品デザインや商品企画能力が備わっているとは考えにくい。
商品企画ができたとしてもそれは、おそらく「いつかどこかで見たことのある商品の焼き直し」であろう。

となると、それはどこかのブランドの後追い企画でしかないということになる。

商品、売り場の同質化について危機感が出始めている現在の状況下において、スタイリストの起用がそれを打破する切り札にはなりえない。おそらく今後はスタイリスト起用ブランドというのは減っていくのではないかと考えている。

さて、閉店内容も見てみよう。

上期は百貨店流通で66店、駅ビル・ファッションビル流通で55店、ショッピングセンター流通で41店、その他19店の計181店を閉めた。下期はショッピングセンター流通の店舗の退店が増加する見通しだ。

とのことである。

ワールドの撤退店舗はショッピングセンターが中心になるということである。

そして、実は、業界内では「某大手GMSにワールドが切られた」という噂があったのだが、これはかなり信ぴょう性が高い噂なのではないだろうか。

それにしても、これまで有効とされていた手法が突如としてその効力を失う。
消費者の変化というのは実に恐ろしいと改めて思う。





これまで通りのやり方では雑誌も服も売れない

 昨日、こんなブログエントリーを拝読した。

80万部が11万部になった「cancam」。売れない雑誌の共通点とは?
http://toriaezutori.com/marketing/658.html

タイトル通りの内容である。
一般的に雑誌が売れなくなった理由を考察しており、なかなか的を射ている。

そして、最後になりましたが最も部数を減らしているのは、20代前半〜後半向けのファッション誌です。例えば、「cancam」も、エビちゃんや押切もえが看板モデルだった2006年当時は80万部にせまる発行部数があったと言いますが、2013年には11万5千部と驚異の落ち込みを見せています。そのほかにも「with」が2008年時には50万部を超えていたものの2015年時には21万部と半分以下に、「MORE」も2008年時に50万部となっていたのが2015年には27万8千部と約半分になっているのです。

考えられる要因としては、以下が挙げられると思います。

・若い人の雑誌離れが顕著なので、20代前半〜後半ターゲットの雑誌は部数の落ち込みが著しい
・ファストファッションの台頭により、雑誌を見なくてもある程度着こなしができるようになった
・ファッションコーデを閲覧できるアプリや、ファッションについてのキュレーションサイトなどウェブで無料閲覧できるサービスが増えた

とある。

挙げられてる要因分析はどれも適切だといえる。

これに筆者が思いつく要因を付け加えるとするなら、

・月額料金が低価格で何誌もまとめて閲覧できるファッション雑誌の電子書籍サービスができた
・最新の衣料品を身に着けることがカッコイイことではなくなった
・トレンドが何年間も大きく変化していない
・掲載されているブランドが、広告スポンサーだったり編集者との親密度合だったりで決められていることがバレた
・掲載されている商品を買える人が減った
・企画内容が陳腐化している

くらいだろうか。

正直に言って、多くの人のタンスの中に衣服は溢れている。
トレンドがそんなに大きく変化していないから、毎年洋服を買う必要がない。
昨年とか一昨年買った服で十分おかしくない。
レディースでこうなら、もともと変化の少ないメンズ服ならなおさらである。

現に筆者だって10年くらい前に買った服をいまだに着ている。

一方、このエントリーではほとんど部数を減らしていない雑誌も紹介されている。
Hanakoである。

その1つの例が、マガジンハウスの「Hanako」です。2008年時に9万部だった発行部数は2015年時に8万7千部とさほど部数を減らしていません。

とある。

雑誌を「雑貨化」することで雑誌でしか提供できない価値を作ることに成功したというような分析があるのだが、それよりも筆者は、もともとがニッチ市場を狙っており、大部数でなかったためにそのままファンを固定化できたのではないかと思う。

そういう意味では大当たりはしなかったが売上高も減っていないというニッチ市場への正しい取り組み姿勢だったといえる。

先日からいくつかの中小規模のアパレル合同展を廻ると、主催者や出展者から口々に「洋服が売れない」ということを聞いた。
たしかに売りにくい時代になっている。
しかし、道行く人は裸で歩いているわけではないから、まったく買っていないということでもない。

また大手アパレルの決算内容が悪化しているが、売上高はゼロではない。
いまだに何億円もの売上高があるのだから、ぜんぜん売れていないということでは決してない。

ただ、バブル期のように簡単には売れなくなったということである。

では売るためにはどうするのか?

そこを考えないと状況は打開できない。

タレントとのタイアップも新鮮味がない。
製法やスペックへのこだわりもありふれている。
ファッション雑誌への広告効果もかなり低下している。
ウェブ通販が伸びているが大手と小規模ブランドの格差がすでに開いてしまっている。
商業施設はどれも同質化している。

ざっと今はこんな状況だろうか。

今までのやり方で通用しないことはみなさんが身に染みてわかっておられるのではないかと思う。
いろいろと新しい手法を試してみるほかないのではないだろうか。



雑貨バイヤーは洋服を仕入れない

 近年、雑貨を扱っていない洋服店というのは皆無だといえる。
洋服自体の売上高が年々減っているのでその穴埋めとしてバッグ、靴、帽子、アクセサリーなど何かしらの雑貨を必ず販売している。

嘘でも「ライフスタイル提案型」という標語を掲げて、洗剤だの芳香剤だのコスメなどを置いている洋服店も珍しくなくなった。
逆に洋服しか置いていない店の方が珍しいだろう。

そんな状況なのでさまざまな合同展示会も雑貨ブランドを出展させないと来場者を集められなくなった。
これがここ10年くらいの大きな流れといえる。

筆者が大型合同展示会主催会社の社員だった2005年~2008年はちょうど雑貨を取り込むことで、来場者を集めるという手法が定着し始めた時期だったと感じる。

それから7年が経過して。

今度は雑貨を集めすぎると来場者は増えるが、アパレル出展者は減るらしい。

まさに、過ぎたるは及ばざるが如し、亢竜悔いあり、である。

先日から何度か複数のアパレル合同展示会主催者と雑談を交わしている。

彼らによると、雑貨というジャンルの取り扱いが難しく、出展が多すぎても少なすぎてもダメだという。
洋服関係者からすると、洋服は売れにくいが雑貨は比較的売れやすいので、洋服店に占める雑貨の比率は統計は取ったことがないが、おそらく年々高まっていると考えられる。

ということは、洋服店は雑貨を仕入れるということである。
当たり前のことだが。

一方、洋服までを販売するようになった雑貨店はあまり例を見ない。
繊維製品というとせいぜいが靴下、手袋、帽子、マフラー、ストールくらいまでだろうか。
あとは布製のバッグ、がんばってTシャツくらいか。

雑貨店は洋服をほとんど仕入れないということである。

雑貨バイヤーが何万人増えようと、洋服ブランドの受注額はあまり増えないということになる。
そうなると、洋服ブランドの出展は減る。
これも当たり前だ。受注が見込めないような合同展示会に出展するなんてカネの無駄遣いもよいところである。

こうなると運営サイドとしては難しい。

出展者数も来場者数も増やしたい。
洋服は売れにくいから雑貨を増やせば来場者数は増える。

これが2005年くらいの話だ。

そして2015年の今は、雑貨を増やせば増やすほど、アパレルブランドの出展者数は減る。
結果的に舵取りを誤ると、アパレル合同展がいつの間にか、雑貨合同展に変貌してしまっているということにもなりかねない。

噂ではすでにそうなってしまったアパレル合同展もあると聞く。

しかし、雑貨という点でいえば、東京ギフト・ショーという大合同展がある。
ピーク時より出展者数は減っているとはいえ、このジャンルでは今でも国内最大といえる。
ちまちました雑貨合同展へ行くよりもこちらの方が欲しい物がなんでもそろう可能性が高い。
となると、単なる雑貨合同展では東京ギフト・ショーに負けてしまうということになる。

そういう意味では合同展示会という形態はなかなか難しい状況に差し掛かっているといえるのではないか。

そういえば、最近、通常の展示会ホールでは商品の見え方があまり良くないということで、ちょっと変わった会場で開催する合同展示会も増えた。
カフェとかパーティーホールとかそういうところである。

筆者のような素人には、いつもの無味乾燥な展示会専門ホールよりもそういった会場の方が、確かに商品の見映えが良いように感じる。

そのように感じる来場者も多いとのことであながち筆者の感覚も間違いではないのかと安心した次第だが、いわゆるバイヤーという人たちも同じなのだとしたら、いわゆる「目利き」ではないバイヤーも数多いということである。

会場の雰囲気やしつらえ、内装によって並べられてる商品の評価を変えるということは、商品そのものを判断しているのではなく、それ以外の外部要因を判断しているということになる。

若かりし頃は、バイヤーというのは「目利き」ぞろいだと勝手に思い込んでいたのだが、そういう人はごく一部で後は近所に住んでる異業種のオッチャン連中とあまり変わらないということが年を取るとともに分かってきた。

外部要因やら、契約しているタレントやら、取扱い店舗やらで、商品に対する評価が著しく左右されるということは、商品を見ずにそれ以外の情報しか評価対象にしていないということである。

漫画やドラマなどでは、瓶に貼られたラベルによってワインや日本酒の評価を変える似非食通を皮肉に描いてくことが多いが、それに近しいバイヤーも数多く存在するということであろう。

本当の「目利き」になるのはかなり難しいということは承知しているのだけど。



 


ファッション用途の高級素材はその「良さ」がわかりにくい

 連続テレビドラマ「下町ロケット」の視聴率が好調だそうだ。
筆者も毎回楽しく見ている。

佃製作所というエンジンメーカーが町工場(と言っても100人以上の社員を抱えている)として物作りに打ち込む姿を描いている。

ひたすらに高品質なエンジンとその部品作りに励んでいる姿に、胸アツになる視聴者も多いのではないかと思う。

佃製作所は大手による嫌がらせにもめげることなく、自社の製品の高性能さを突きつけることで様々な困難を突破していく。

昨今、物作りについて日本製が見直されているが、衣料品や生地、素材に関していえば、佃製作所のようにはなかなか行かない。

一口に生地と言ってもさまざまな切り口があるが、機能素材はその性能の高さを証明することは簡単である。
様々な実験データでそれを証明することができる。
あとは再現性が確保されていれば良い。

製造コストの高低はあるが、製造コストが高い機能素材なら、競技用とか専門職用などの販路へ、製造コストが低い機能素材ならこちらは量販店系へ販売できる。
また消費者にも説明しやすいし、消費者も理解しやすい。

「これはこれだけの機能があって、この値段になります」と言われると大概の消費者は納得する。
それでも値引き交渉をするかどうかは消費者個々人の性格の問題である。
前提条件は共有化されている。

一方、ファッション用素材はわかりにくいと感じる。
風合いが良いと言ったって、そんなものは主観によって差異が生じる。
すごく風合いが良いと思う人がいる反面、そうでもないと感じる人もいる。

また高額素材だからと言って耐久性や機能性に優れているわけでもない。

むしろ、劣っている場合も多い。

例えば、仕立てれば20万円とか30万円になるようなスーツ生地は耐久性が無い場合が多い。
1日着用したら何日か寝かせる必要がある。
その昔、そういうスーツを仕立てたという業界の先輩によると、2~3日、連続着用しただけで袖口が擦り切れ始めたという。
その先輩によると「こういうスーツは5着くらい所有して、毎日ローテーションで着まわさないとダメだった。勉強になった」とのことだった。

おそらく、大手総合スーパーで販売されているような7000~1万円くらいのスーツ地の方が耐久性は高いのではないかと思う。

デニム生地にしてもそうだ。
厚手でごつごつした凹凸感のあるデニム生地が高額である場合が多いが、機能性が高いとは言えない。
またその生地で作るジーンズの形にもよるが、よほどにゆったりとしたシルエット以外は、着用すると動きにくい。
ハートマーケットあたりで1900円で売られているスキニージーンズに使われているストレッチデニム生地の方がよほど機能性が高くて快適である。

高級素材とされるシルクにしてもそうだ。
シルクには様々な優れた性質もあるが取り扱いが難しい。
洗濯や保管にはとくに気を使う。

言ってみればかなり「不便」な素材だといえる。
ユニクロがシルクを大々的に打ち出したことがあったが、それほどの反響がなく、取り扱いも終了していることを見ると、ユニクロで買うような層には「不便」なシルク素材のアイテムは必要なかったのではないかと思う。

こうして見ると、一般大衆に高級なファッション素材をアピールすることはひどく難しいと感じる。
単に「高い糸を使っているから」とか「希少性の高い素材で」とか「伝統の技法で織りあげた」とかそういう文言で納得する人は少ないのではないかと思う。

そういう物を欲しいと思わせるには、きっと違うアプローチ方法が適切なのだろう。

どういうアプローチが適切なのかはまだ筆者自身が見えていないのだが、今までのように「高い糸を使ったから」とか「伝統の技法で織りあげた」とかいうような説明をいくら繰り返してもそれが購買につながる決定力にはならない。

もちろんそういう事実は説明する必要があるが、それを説明したから購買につながるというわけではないということを頭に入れてアプローチ方法を模索するべきではないか。

佃製作所が扱う工業部品のように、性能と機能性とコストだけですべてが決まればラクなのだが。


下町ロケット (小学館文庫)
池井戸 潤
小学館
2013-12-21


下町ロケット2 ガウディ計画
池井戸 潤
小学館
2015-11-05


下町ロケット
池井戸潤
小学館
2015-08-14


下町ロケット2 ガウディ計画
池井戸潤
小学館
2015-11-05



「物」自体での差異はほとんどない

 少し前のことになるが、短パン社長として有名になりつつある奥ノ谷圭祐さんが、自身で立ち上げたメンズブランド「Keisuke Okunoya」で紺色のオックスフォードボタンダウンシャツを発売した。

価格は1万数千円だった。

紺色のオックスフォードボタンダウンシャツは、物自体としては珍しい部類に属するが、同じような物が絶対にないとは言えない。
現に同じ商品をチラホラといろんなブランドで見かける。

極めつけはユニクロだ。
2490円で販売されており、つい先日は期間限定価格で1290円に下げられていた。

通販サイトのレビューを見ると、襟が少し低いとか丈が少し短いという批判はあるものの、批判者自体がこの値段なら納得ですと書き込んでいる。
パーフェクトではないが、価格を考えると納得できるということである。
たしかに2490円なら納得だろうし、1290円で買えたらもっと納得である。
少々丈が長かろうが短かろうが許容範囲である。

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ユニクロの紺色のオックスフォードボタンダウンシャツが極端に粗悪品かというとそうではない。
そこらの大手アパレルが展開するショッピングセンター向けSPAブランドに比べたらはるかに品質が良い。

割合に希少性の高い「紺色のオックスフォードボタンダウンシャツ」という商品ですら、最早、ユニクロと差別化はできないということである。

業界全体で見ると、よほどの特殊なブランド以外は、すでに商品自体では差別化できなくなっているのが現状である。

細かく見ると差異はある。
例えば、高級品はもっと使用している生地が良い。
しかし、そこまでの高級生地を多くの人が求めてはいない。
そういう人に向けたブランドは存在してしかるべきだが、それは購買人口が限定されるので、自ずとそのブランドの事業規模は限定される。

そこを自覚して展開するならそれはそれでブランドとしてのポジションである。

しかし、業界を見渡すと、その自覚がない人が意外に多いように感じる。
それは主に製造業・デザイン業に多いのではないか。いわゆる「物作り系」の人々である。

彼らは「高品質商品を誰もが欲しがっている」とか「良い生地をみんなが求めている」とか勘違いしがちである。
そういう物を求めている層は確かに存在するが、そこまでの人数ではない。
そういう物をみんなが求めていると考えるから話がおかしくなる。

確かに粗悪品よりは高品質品の方が良い。
しかし、それも価格との相談である。

シャツ1枚が2万円を越えるようだとどんなに高品質だろうと買いたいという人は少ない。
反対に5000円とか6000円くらいなら買ってみたいという人の数は格段に増える。

じゃあ、5000円とか6000円でその価格で実現できるくらいの高品質商品を供給するのが、大規模に売るなら正解ということになる。

物作り系の人の姿勢で疑問なのが、「みんなが欲しがらないのは、物の良さを伝えていないからだ」と考えてさらに声高に叫ぶ点である。
たしかに伝わっていない部分はあるだろうが、それも価格との相談だろうし、そこで「この糸が~」「この生地の織り方が~」「このボタンの材質が~」といくら熱弁をふるったところで、そういうことはマニア層にしか響かない。マニア層は人口が少ないからマニア層なのである。

もちろん、自社の物作りについて語ることは大いに結構だが、それが購買の決め手にはならないということである。

「ほお、ボタンに〇〇材質を使っているのか。だったら価格が2万円を越えるけど買うよ」

こんなお客はまず存在しない。

現在は「物」自体は低価格から高価格までほぼ同質化していると感じる。
見た目だけでいえば間違いなく全価格帯で同質化している。

低価格帯商品の見た目は20年前と比べて明らかに向上している。

これは業界内にOEM・ODM請負会社が無数に存在していることによるものだろう。
業界内のインフラが極度に整備されすぎているからだ。

有名ブランドとほぼ同じような見た目で作ってほしいと依頼すると、確実に作れてしまう。

こうなると、自社ブランドを選んでもらうためにはどうすれば良いのかということを、真剣に考えるべきだろう。

最早、物自体での差別化はほぼ不可能である。
トレンドを取り入れる早さも変わらない。

使用素材には差があるが、それが選ばれる決定打ではない。

色柄・デザインで差別化するという手はあるが、それはよほど変わったデザインをする必要があるし、そういう変わったデザインを好む層は少数派である。

多くの人に売りたいなら、どうするべきか。

大手アパレルはここをもう一度考え直さないと復活はあり得ない。
低価格競争でユニクロやしまむら、無印良品、ウィゴーあたりにボロ負けを続けるだけである。


製造業が日本を滅ぼす
野口 悠紀雄
ダイヤモンド社
2012-04-06


日本の製造業よ、強くなれ (文藝春秋企画出版)
鈴木 德太郎
文藝春秋企画出版部
2015-08-28


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