雑貨バイヤーは洋服を仕入れない
2015年11月18日 考察 0
近年、雑貨を扱っていない洋服店というのは皆無だといえる。
洋服自体の売上高が年々減っているのでその穴埋めとしてバッグ、靴、帽子、アクセサリーなど何かしらの雑貨を必ず販売している。
嘘でも「ライフスタイル提案型」という標語を掲げて、洗剤だの芳香剤だのコスメなどを置いている洋服店も珍しくなくなった。
逆に洋服しか置いていない店の方が珍しいだろう。
そんな状況なのでさまざまな合同展示会も雑貨ブランドを出展させないと来場者を集められなくなった。
これがここ10年くらいの大きな流れといえる。
筆者が大型合同展示会主催会社の社員だった2005年~2008年はちょうど雑貨を取り込むことで、来場者を集めるという手法が定着し始めた時期だったと感じる。
それから7年が経過して。
今度は雑貨を集めすぎると来場者は増えるが、アパレル出展者は減るらしい。
まさに、過ぎたるは及ばざるが如し、亢竜悔いあり、である。
先日から何度か複数のアパレル合同展示会主催者と雑談を交わしている。
彼らによると、雑貨というジャンルの取り扱いが難しく、出展が多すぎても少なすぎてもダメだという。
洋服関係者からすると、洋服は売れにくいが雑貨は比較的売れやすいので、洋服店に占める雑貨の比率は統計は取ったことがないが、おそらく年々高まっていると考えられる。
ということは、洋服店は雑貨を仕入れるということである。
当たり前のことだが。
一方、洋服までを販売するようになった雑貨店はあまり例を見ない。
繊維製品というとせいぜいが靴下、手袋、帽子、マフラー、ストールくらいまでだろうか。
あとは布製のバッグ、がんばってTシャツくらいか。
雑貨店は洋服をほとんど仕入れないということである。
雑貨バイヤーが何万人増えようと、洋服ブランドの受注額はあまり増えないということになる。
そうなると、洋服ブランドの出展は減る。
これも当たり前だ。受注が見込めないような合同展示会に出展するなんてカネの無駄遣いもよいところである。
こうなると運営サイドとしては難しい。
出展者数も来場者数も増やしたい。
洋服は売れにくいから雑貨を増やせば来場者数は増える。
これが2005年くらいの話だ。
そして2015年の今は、雑貨を増やせば増やすほど、アパレルブランドの出展者数は減る。
結果的に舵取りを誤ると、アパレル合同展がいつの間にか、雑貨合同展に変貌してしまっているということにもなりかねない。
噂ではすでにそうなってしまったアパレル合同展もあると聞く。
しかし、雑貨という点でいえば、東京ギフト・ショーという大合同展がある。
ピーク時より出展者数は減っているとはいえ、このジャンルでは今でも国内最大といえる。
ちまちました雑貨合同展へ行くよりもこちらの方が欲しい物がなんでもそろう可能性が高い。
となると、単なる雑貨合同展では東京ギフト・ショーに負けてしまうということになる。
そういう意味では合同展示会という形態はなかなか難しい状況に差し掛かっているといえるのではないか。
そういえば、最近、通常の展示会ホールでは商品の見え方があまり良くないということで、ちょっと変わった会場で開催する合同展示会も増えた。
カフェとかパーティーホールとかそういうところである。
筆者のような素人には、いつもの無味乾燥な展示会専門ホールよりもそういった会場の方が、確かに商品の見映えが良いように感じる。
そのように感じる来場者も多いとのことであながち筆者の感覚も間違いではないのかと安心した次第だが、いわゆるバイヤーという人たちも同じなのだとしたら、いわゆる「目利き」ではないバイヤーも数多いということである。
会場の雰囲気やしつらえ、内装によって並べられてる商品の評価を変えるということは、商品そのものを判断しているのではなく、それ以外の外部要因を判断しているということになる。
若かりし頃は、バイヤーというのは「目利き」ぞろいだと勝手に思い込んでいたのだが、そういう人はごく一部で後は近所に住んでる異業種のオッチャン連中とあまり変わらないということが年を取るとともに分かってきた。
外部要因やら、契約しているタレントやら、取扱い店舗やらで、商品に対する評価が著しく左右されるということは、商品を見ずにそれ以外の情報しか評価対象にしていないということである。
漫画やドラマなどでは、瓶に貼られたラベルによってワインや日本酒の評価を変える似非食通を皮肉に描いてくことが多いが、それに近しいバイヤーも数多く存在するということであろう。
本当の「目利き」になるのはかなり難しいということは承知しているのだけど。