都心旗艦店やスタイリスト起用などの手法は必ずしも有効ではなくなった
2015年11月20日 考察 0
ワールドの中間決算が発表された。
数字の推移よりは、どのブランドが廃止され、どれだけの店舗が閉鎖されたのかの方が今回は興味があった。
ワールド、上期に181店を閉鎖 「アニマ」「ジンジャーエール」終了
https://www.wwdjapan.com/business/2015/11/17/00018727.html
店舗の閉鎖数とブランド廃止を報じているのはこれくらいしかない。
他メディアは遠慮したのだろうか?
中身を見てみよう。
ワールドは17日に開催した2015年4~9月期決算の会見で、「アニマ(ANIMA)」「ジンジャーエール(GINGERALE)」の2事業を終了したことを正式に発表した。上山健二・社長が掲げた抜本的構造改革の一環で、10〜15ブランドの撤退と400~500店舗の閉鎖する方針を5月に公表していた。
「アニマ」は12年春にスタートしたスポーツ・ライフスタイルブランドで、14年度の売上高は3億円、15年度上期は1億円。原宿・明治通りに面した旗艦店を含む計7店舗を閉店した。
「ジンジャーエール」はスタイリストの百々千晴を起用し13年秋に始動。14年度の売上高は2億円で、15年度上期は1億円に満たない状況だった。こちらもすでに駅ビルを中心に開いた4店舗を退店している。
とある。
どちらも年商規模が1億円程度の泡沫ブランドであるから、廃止はまったく不思議ではない。
もっと有名なブランドも今秋冬商品で廃止が決まっていると言われているが、その発表はなかったらしい。
年商1億円と書かかれているが、アニマの場合は7店舗で1億円だから1店舗あたりの年間売上高は1500万円くらいしかなかったことになる。
かなり売れ行きが悪かったことが容易に想像できる。
個人的に注目したのが、両ブランドの販売方法である。
アニマは原宿・明治通り沿いに旗艦店を出店している。
一方のジンジャーエールはスタイリストの百々千春を起用して商品づくりをしている。
アパレル業界では極めて王道というブランド戦略だが、この王道の戦略がまったく通じなかったことが印象的だと感じる。
おそらく、その手法は過去の遺物に成り下がっており、消費意欲を喚起するものではなくなってしまったということではないか。
東京都心に旗艦店を作る、スタイリストと提携した商品企画、どちらもこれまで、売れるためのブランド作りの手法として疑いを持たれたことのない手法である。
正直に言って、ファッションには疎いのでこのスタイリストが有名なのかどうなのかぜんぜんわからない。
まあ、わざわざ起用されたくらいだからそこそこは有名なのだろうと推測する。
個人的には、スタイリストという職種の人が上手く商品企画をできるとはあまり思えない。
なぜなら、スタイリストの能力というのは、市場に提案された商品を組み合わせて再編集する能力だからだ。
今現在、市場にない物を構想したり形にしたりする能力とはまったく別種の能力である。
もちろん例外的なスタイリストもおられるだろうが、多くのスタイリストに商品デザインや商品企画能力が備わっているとは考えにくい。
商品企画ができたとしてもそれは、おそらく「いつかどこかで見たことのある商品の焼き直し」であろう。
となると、それはどこかのブランドの後追い企画でしかないということになる。
商品、売り場の同質化について危機感が出始めている現在の状況下において、スタイリストの起用がそれを打破する切り札にはなりえない。おそらく今後はスタイリスト起用ブランドというのは減っていくのではないかと考えている。
さて、閉店内容も見てみよう。
上期は百貨店流通で66店、駅ビル・ファッションビル流通で55店、ショッピングセンター流通で41店、その他19店の計181店を閉めた。下期はショッピングセンター流通の店舗の退店が増加する見通しだ。
とのことである。
ワールドの撤退店舗はショッピングセンターが中心になるということである。
そして、実は、業界内では「某大手GMSにワールドが切られた」という噂があったのだが、これはかなり信ぴょう性が高い噂なのではないだろうか。
それにしても、これまで有効とされていた手法が突如としてその効力を失う。
消費者の変化というのは実に恐ろしいと改めて思う。