月別: 6月 2013 (1ページ / 2ページ)

偶然の一致

 先日、某メンズアパレルの方が「トレンドアイテムを高く販売するというこれまでの手法は見直す時期に来ているのかもしれない」とおっしゃった。
このアパレルの売り先は百貨店やファッションビルが多く、商品の価格は全般的に中級より上である。

なぜそんな意見が出たのかというと、H&Mやしまむら、フォーエバー21といったあたりの低価格トレンドブランドが広まったので、これまでのような高価格帯でトレンドアイテムを販売することが困難になりつつあるためだ。

そこで「トレンドアイテムは安めに、ベーシックアイテムは高品質である程度高価格」という価格戦略を構想する。

一理ある考え方だが、これはペガサスクラブが提唱したチェーンストア理論の一端と同じ考え方である。
ついでに彼に「ペガサスクラブの理論を当てはめたのですか?」と尋ねると、ペガサスクラブを知らないとのこと。
偶然にも同じ結論に至ったというわけである。

大学を卒業してすぐに入社した低価格衣料品チェーン店がペガサスクラブの会員で、新入社員研修の教科書としてペガサスクラブの本を支給された。
一通りは研修で講義を受け、本も読んだが、当時はそれほど興味がなくうろ覚えのまま現在に至っている。
先日、読み直してみようと本を探したが、どうやら捨ててしまったらしく、見つからずじまいであった。

もう少しちゃんと読んでおけば良かったと後悔してみても後の祭りである。

さて、「トレンド品はある程度安めに、ベーシック品を高品質高価格で」という考えは理にかなっている。
トレンド品の着用期間は短い。
だいたい着用期間は1年~3年程度だろう。
現在、大流行しているレディースの花柄パンツなんて来年の春にも穿けるかどうかは怪しい。
物性的に問題が無いとしても、来春にはすっかり流行が終わっている可能性がある。
そんな状況で、今春購入した花柄パンツを穿いたら、「いかにも昨年物を穿いていますよ」と見えてしまう。

となると、それほど素材や縫製や染色堅牢度などの物性にこだわって高価格にする必要はなく、ほどほどの品質でほどほどの価格に抑えれば良い。

極端な言い方をすれば、1年間使用出来ればそれで十分といえる。

一方、ベーシックアイテムはできれば長期間着用したい。
毎年、黒の無地のセーターを買い直すのもアホらしい。
極端なシルエットや丈のトレンド変化が起きなければ10年間くらいは耐久してもらいたい。
ステイタス性の高いブランド品ならなおさらそう思う。

国内ブランドの店頭を15年くらい見ていると、これが逆だったブランドがかなりあったように感じる。
トレンド品が割高で、ベーシック品が割安という価格体系だ。

製造する側からすると、小ロットで販売期間が短いトレンド品は繁忙期に受注が重なるので工賃が高くなっても不思議ではないし、販売期間が長いためにある程度の製造を閑散期に回すことが可能なベーシック品は工賃が低くなるのも頷ける。

トレンドの花柄パンツは繁忙期にも関わらずドンドン受注が入る。このため工賃が高くなる。
一方、ベーシックなブルージーンズは緊急での製造がないために、閑散期にのんびりと製造ができる。だから工賃は安くできる。

ひどく単純に図式化するとこういうことになる。

けれども消費者心理に則って考えると、1年くらいしか使えないであろうトレンド品が高いとちょっと買いづらい。
一方、「一生物」に近いベーシックアイテムなら少々高くとも購入する。とくにステイタス性の高いブランドは。

このメンズアパレルの構想は有意義なのでぜひとも実現してもらいたいものである。

2年前も華々しかった

 媒体が違うと読者層も異なるとはよく言われることである。
ところがいざ、自分のこととなるとめんどくさいと感じてしまうのである。
先日、このような記事を書いた。

大阪でビール1杯800円は高すぎるか
好スタート「グランフロント大阪」が抱える不安
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130624/250103/?P=1

先日、グランフロント大阪の開業1カ月後の実績が発表された。
ご存知の方も多いと思うが、改めて書くと売上高50億円・来場者数761万人だった。
初年度目標は売上高400億円・来場者数2500万人なのでこのままのペースで残り期間を過ごせるなら、どちらも軽くクリアできるはずである。
そういう意味では「好調発進」といえる。

ところが来場者数の割には売上高が低い。
これもまた事実であり、その観点に基づいて産経新聞が次のような記事を掲載した。

グランフロント大阪は高級すぎる? 1人当たり売上高「700円以下」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130609-00000500-san-bus_all

グランフロント大阪の現状の客単価は657円とかなり低い。
これについては、このブログでも書いたことがあるし、ほかの識者のブログでも言及されている。
売上高を来場者数で割ったらそうなる。

本来の客数とは「買い上げ客数」であるため、来場者数で割ることはナンセンスだという批評もある。
それはもちろんその通りだが、「買い上げ客数」の目標値も実績も発表されていない現状では、一つの目安として来場者数で割るほかない。
あまりに低い「客単価」であるため、ほとんどの来場者が買わずに「見物に来ただけ」と推測できる。

ただ、お客は少ないよりも多いに越したことはない。
枯れ木も山の賑わいともいう。ガラガラの施設よりは見物客だけでもたくさん来場してもらったほうが活気が出る。販売員の方々のモチベーションも維持しやすいだろう。

とりあえずは「好調発進」と評価されているグランフロント大阪だが、実は2年前にオープンしたJR大阪三越伊勢丹のオープン1カ月後の実績とそれほど大差がない。
逆に客単価は当時のJR大阪三越伊勢丹の方が高かったのである。
2011年6月7日の記事である。

JR西日本/大阪ステーションシティ開業1か月で1000万人来場
http://ryutsuu.biz/store/d060709.html

5月4日から6月3日までの来館者数はJR大阪三越伊勢丹が約480万人、ルクアが約540万人で、合計で1020万人となった。
売上高はJR大阪三越伊勢丹が約45億円、ルクアが約41億円となった。

この数字から客単価を算出すると、45億円÷480万人=937・5円となる。

グランフロント大阪よりも280円ほど客単価が高かったことになり、こちらの方が効率は高かった。

もしJR大阪三越伊勢丹がこのペースで推移したなら年間売上高は11か月合計(2011年5月~2012年3月末)で500億円弱となるから、当初計画550億円に少し届かなかった程度で済んだはずである。
そうならなかったのは7月以降、大幅に失速したからである。当初の来場客の多くがリピーターにならなかったとも言えるだろう。

このJR大阪三越伊勢丹と同じ現象が、ほとんど隣接しているグランフロント大阪に絶対に起きないとは言い切れないのではないか。

その可能性も考慮してグランフロント大阪の売上高目標は400億円と少し低めに見積もられているのではないかと思ったりもする。
以前、取材した際にJR大阪三越伊勢丹の売上高目標は2008年のリーマンショック以前に立てられたもので、その後も下方修正しなかったと伺ったことがある。
もし、下方修正していればここまでの惨状とは見えなかったのではないだろうか。
結果論に過ぎるかもしれないが計画立案ミスだろう。

さて、そんなわけで猜疑心の強い筆者は、グランフロント大阪が400億円達成するかどうかはもう少し経過を観察してからでないと「決定的」とは言えないと感じている次第だ。

プレセールは前倒しされているのでは?

 今日は閑話休題。

ライトオンとジーンズメイトの6月度売上速報が発表された。
5月21日から6月20日までの実績である。

6月の前半は、関西では35度の真夏日が続き記録的なカラ梅雨であった。
関東は天気予報を見る限り、雨が多く、比較的気温が低かったようだ。

結果的にいえば、両社の6月度既存店売上高は前年並みから微増なので堅調だったといえるだろう。

「セールの後倒し」が昨年に続いて話題となっているが、商業施設内のテナント・路面店ともに全般的にプレセールは前倒し傾向にあり、すでに6月に入ると同時にプレセールが始まっているブランドが相当数あった。
昨年までだとプレセールは6月10日くらいからの開始が多かったから、今年は1週間近く早いことになる。

極端に言えば、

本セール=後倒し、プレセール=さらに前倒し

という構図になっており、一般消費者の目からするとセール開始時期はさらに早まっていると映るのではないか。

両社の店頭を見ていると、他社店舗と同様に6月頭から夏物の値下げ品が豊富にあり、それが順調に動いたのではないかと思う。
一方、気になるのはそれほど消化が良くなかったと推測される春物のトップス類だが、たまたま、ライトオンの店頭で春物トップス類を段ボールに詰めて出荷準備をしているのを見かけた。
おそらく出荷先は本社の倉庫だろう。

その春物トップスはどのように処分されるのだろうか。
1店舗だけでも数箱の出荷があったようだから、これが全店(479店)になると相当数の在庫になるのではないか。
同社のアウトレットは2店舗しかないから、大量に処分できるというわけではないだろう。在庫負担が心配である。

それはさておき。

ライトオンは
既存店売上高が前年比4・6%増
既存店客数が同1・0%減
既存店客単価が同5・6%増

ジーンズメイトは
既存店売上高が前年比0・5%増
既存店客数が同1・2%減
既存店客単価が同1・8%増

だった。

6月28日ごろからルミネと三越伊勢丹を除くほとんどの商業施設が本セールに入る。
6月頭からのプレセールを加算すると、8月末までの90日間という長い長いセール期間が本格的にスタートするわけだが、果たして売れ行きはどうなるのだろうか。

ブランドのファンではなく、無料商品のファン

 先日、こんなイベントがあった。

原宿にビキニの長蛇の列、無料服プレゼントイベント
http://www.afpbb.com/article/economy/2952062/10955096

スペインのカジュアルファッションブランド「デスイグアル(Desigual)」原宿店で22日、アジア初となる「セミ・ネイキッド・パーティー」が開催された。

このイベントは、水着を着て来店した先着100人に店内の商品2点を無料でプレゼントするもの。

店の前には約350人の列ができ、中には前夜から並んだ人も。開店を待つ間、集まった人たちは水着の上に店から提供されたバスローブをはおり、朝食として配られたチュロスや飲み物を楽しんだ。

という内容だ。

このイベントは、

同イベントはバルセロナやニューヨーク、パリなど世界各国のセール初日に開催され、今まで4,000人以上が参加。ショップの前に半裸の客が列を成すことで毎回話題になっている。

だそうだが、無料で服を配るという販促のメリットとデメリットについて考えてみたい。

まず、メリットであるが、こんなふうにニュースになるのだからそれなりに知名度を高める効果がある。
とくにデシグアルは日本に上陸して間もないため、ブランドの知名度を高めるためにはどのような形でも良いから媒体に掲載される必要がある。
このイベントもほぼ所定の目的を果たしたと思われる。

一方、デメリットの方だが、今後「ファン」になってくれるであろう以外の層を多く呼びこんでしまう点である。
無料配布に並ぶ人々は「そのブランドのファン」ではなく「無料配布のファン」である場合が多い。要は無料配布してくれるならブランドは何でも良い。

デシグアルはグラフィックに特徴のあるブランドで、無難な無地アイテムはほとんどない。
すべてのアイテムに独自のグラフィックがプリントないしは刺繍されている。使い勝手の良いアイテムとは言い難い。おそらく好き嫌いははっきりと別れる。

値段は驚くほど超高価格でもないが低価格では決してない。
だいたい、メンズのジーンズは1万数千円、メンズの半袖Tシャツが6000円以上、メンズ半袖シャツが1万円前後という定価設定になっている。

無料で配布された人が「着用してみて良かったから来月は定価で買うぞ」とはなかなか思えない価格帯である。
例えば、ユニクロやジーユー、しまむらあたりの低価格品であれば、多くの人々が「着用してみて良かったから来週にもう1枚買おう」と思える。
1枚990円とか1990円程度だからだ。
しかし、デシグアルの商品をそう気軽に買える人は少ないだろう。ましてや若い層には厳しい。

さて、2009年にフランスの宝飾ブランド「モーブッサン」が銀座店オープン時に5000円のダイヤモンド(石のみ。台座などは無し)を無料配布したところ大行列ができたというニュースが流れた。

これについて、販促コンサルタントの藤村正宏さんはメールマガジンでこう指摘しておられた。

ブランドの認知度を高め、
新たな顧客を増やすのが狙い

だそうですが・・・・

暴挙!です!

無料ダイヤで集客して

それに5000人以上が並んだんですけど
1日に300名くらいしか渡せなかった。

どうしてかと言うと、

ブランドのコンセプトを説明したり
住所氏名を聞いたりするため。

結局整理券を渡し、めちゃめちゃクレームが出た。

無料のダイヤが欲しい人がその店の「顧客」になるか?

そういうことです。

別に「モーブッサン」にブランド価値を見出している人わけではなく

「無料のダイヤ」が欲しい人たちです。

とのことである。

追記すると、「モーブッサン」はダイヤモンドの石のみを配っており、これをネックレスや指輪に取りつけてもらうためには何万円かの加工費が必要になるとのことで、この日、並んで手に入れた人々はその後ちゃんと加工してもらったのか気になるところである。
結局、ブランドのアクセサリーは完全無料では手に入らないということになる。

4年前にこの騒ぎをテレビで見ていると、行列に並んでいる何人かがインタビューされていたのだが、

「仕事を休んで並びました」

くらいは序の口で

「義母(嫁の母親)にプレゼントするために並んでいます」とか
「関西から来ました」とか

答える人々がいて驚かされたものだった。

関西、仮に大阪とすると、東京までの新幹線往復代金は2万8000円ほどだ。
夜行バスかもしれないし、飛行機かもしれない。飛行機なら早割とか得割かもしれない。
それでも往復に2万円弱はかかっていることだろう。
2万円あれば普通の店でノーブランドの貴金属アクセサリーが買えると思うのだが、わざわざ銀座くんだりまで出かけて無料のダイヤモンドをもらう意味がわからない。

わざわざ往復2000円の電車賃をかけて出かけて行って、500円のランチを食べて「安かったわ~、得したわ~」と悦に入っている近所のオバちゃんにも似た非効率さがある。
それなら歩いて行ける近所の店で800円のランチを食べる方がずっとお得である。

義母は銀座で無料で配布されていたダイヤモンド、しかも石のみをもらってうれしいと感じるのだろうか?

いろいろと疑問は尽きない。

閑話休題

デシグアルの無料配布イベントは4年前のモーブッサンと同じように「顧客作り」という点に関してはほとんど意味が無いだろう。

無料配布といえば同じく2009年に新店オープンの際、EドウインとLーバイスのジーンズを無料配布したジーンズカジュアルチェーン店があった。タイミングから見ておそらく「モーブッサン」の報道に触発されたのだろうと思う。
で、このジーンズカジュアルチェーン店は顧客作りに成功したのかといえば、そんなことはなく、あえなく閉店撤退している。

オープン当時に無料配布されたお客は固定客にはならなかったようだ。
固定客化していれば2,3年後に閉店するようなことにはならなかっただろう。

このジーンズカジュアルチェーン店の手法は、モーブッサンよりもさらに拙劣である。
どこが拙劣かというと、自社企画商品ならまだしも、配布しているのはナショナルブランドから仕入れた商品なのである。もし、無料配布されたお客が「ファン」化してもそれは店舗のファンではなく、ナショナルブランドのファンになるだけである。
そして、ナショナルブランドはこのジーンズカジュアルチェーン店だけではなく、ライトオンにもマックハウスにも他の地域密着型チェーン店でも販売されているので、わざわざ2本目をこの店で買う理由がない。近所のライトオンで買うことになるだろう。

飲食物や化粧品などの試供品無料配布は、消耗品であるため、味や使い心地が良ければリピーターになってくれやすい。しかし、衣料品やアクセサリー類はある程度の耐久性があるのと、飲食物・化粧品などに比べて単価が高い。このため、すぐにリピーター化することはよほどの場合でないと考えにくい。

衣料品やアクセサリーブランドが「無料配布=固定客作りに直結、リピーター獲得」と考えているなら、それは絵に描いた餅に終わる可能性が高いのではないか。

ちょっと料金が高くないですかね?

 筆者の知人で長らく、雑貨問屋に勤務し、東京ギフトショーに出展担当をしていた人がいる。
今は違う業種に移られたが、彼の体験談によると「2小間くらいの出展で経費は200万円くらいかかったが、毎回、期間中に1000万円前後の受注が取れた」という。

東京ギフトショーの出展料は1小間=367500円(税込)である。
2小間なら735000円で、ブースを飾るための装飾物やら運送費やら交通費やら宿泊費やら出張手当やらもろもろが加算されて必要経費はだいたい200万円内外になるというわけである。

しかし、200万円の投資で1000万円前後の受注があればそれは十分である。

出展したのは良いが、さほどの受注がなかったと嘆く他の知り合いもいたが、それは仕方が無いとしか言いようがない。
なぜなら、同じ条件でそれなりの受注額を叩きだしている企業がいくつもあるからだ。
彼らの出展物が悪かったのか、ディスプレイが悪かったのか、商談トークが悪かったのか・・・・・・・・・。

ほかにも大型合同展示会がいくつかあるが、こと雑貨類に関していえば、東京ギフトショーがもっとも経費効率の良い展示会の一つだといえる。
ピーク時よりは出展社数が減ったとはいえ、2424社(今年2月展実績)もの出展があるのはそのためである。

さて、先日、テキスタイルの展示会プレミアムテキスタイルジャパン展が開催された。
筆者はこれは産地合同展だと捉えている。
ジャパンクリエーションと同じで産地の年間恒例行事なので、今後もお好きに続けられたら良いのではないかと思う。
ただし、この展示会で大型受注が決まったという話は筆者の知る範囲では聞いたことがない。

個人的に驚いたのが、出展料が1小間42万円(税込)という高額さだ。
東京ギフトショーよりも6万円も高い。
この金額で1小間出展するなら、ブース代にその他経費を加えて100万円くらいは必要になる。
出展物が異なるので単純比較はできないことは重々承知している。
それでも、同じ金額の経費を払うなら東京ギフトショーの方がはるかに効率的であろう。

しかもこの1小間は8平方メートルで、東京ギフトショーの1小間・9平方メートルより狭い。
たかが1平方メートルくらい広くても見た目はさほど変わらないが、それでも割高感はある。

東京ギフトショーはビジネスガイド社という民間企業が運営している。
一方、ジャパンクリエーションとプレミアムテキスタイルジャパンは日本ファッションウィーク推進機構・ジェトロという行政系の団体が運営している。
行政系の団体が運営していて、何故、ビジネスガイド社という営利目的の民間企業が主催する展示会の出展料金よりも高額な出展料金に設定されているのだろうか。
どうにも疑問である。

「見せるだけの祭り」で、しかも行政が関与しているにしては少々出展金額が高すぎるのではないかと思った次第だ。

何か妙手はないものか?

 国産ジーンズを欧米に輸出しようという動きがあるが、関税などの内外価格差を考えると1万円台後半以上の商品は高額になりすぎてなかなか厳しいのではないかと思う。

だいたい国内価格の2倍強以上になることが多いため、為替レートにもよるが関税やその他経費が加算されて1万9000円のジーンズは5万円弱という現地価格になる。2万数千円なら7万円弱だろう。

この価格帯で勝負するとなると相当に厳しい。
イギリスに輸出したが、現地価格が7万円相当にもなり、あえなく撤退した国産ブランドの例もある。
もう10年以上も前の話になるが。

何よりもその価格帯は欧米のラグジュアリーブランドのジーンズと競合することになる。
国産のジーンズブランドの場合、トータルアイテム化しているブランドが少なく、単品志向での商品開発が主体である。ジーンズもしくはカジュアルパンツのみの単品ブランドがトータルイメージを打ち出す欧米ラグジュアリ―ブランドと競合して勝てるのだろうか。どうも勝算は低いように思える。

さらに欧米の各ラグジュアリーブランドはすでに長期間ビジネスを展開してきており、ブランドイメージが確立されている。そこにいくら「ジャパンデニム」でそれなりに名高いとはいえ、日本からやってきた「馴染みのないブランド」が同等の高価格商品を販売してもそう易々とは売れないだろう。

「デンハム」というオランダ発のジーンズブランドが日本に上陸している。
日本の誇るデニム生地メーカー、カイハラのデニム生地を使用したジーンズが8万円前後で販売されている。
しかし、取材をしてみると、実際の売れ筋は1万円台半ば~1万円台後半の商品群だという。
8万円の商品はそれほど数が出るわけではない。
ブランド側もこの商品をそれほど大量に売るつもりはなさそうだ。
この辺りの割り切りがビジネス的に優れていると感じる。「エエもんやから高くても売れるで」と考えてしまう国内の製造系ブランドとは大違いである。

舶来物、とくに欧米物が大好きな日本人ですら、8万円のジーンズはなかなか手が出せない。
中心価格はやはり1万円台半ば~2万円台前半というところだろう。
おそらく欧米でも同じような売れ行きになるのではないだろうか。
こう考えると、日本のジーンズブランドは、現地価格で2万円弱になるようにするための工夫が何か必要となるのではないか。

米国の西海岸では200ドルジーンズの市場が相変わらず活況だと耳にする。
活況だといっても価格は200ドルなわけで、500ドルとか800ドルではないということである。
1ドル=100円だと換算すると、200ドルだと2万円になる。
高額ジーンズ市場がそれなりに活況な米国西海岸でもボリュームが2万円であるなら、他国は推して知るべしだろう。

さて、日本のジーンズブランドを現地価格200ドル台に抑える妙手は何かないものだろうか?

お役立ち情報の提供が重要

 日経ビジネスオンラインのネット通販の連載を毎回楽しみに読んでいる。

続・「売れる」ネット通販と「貧乏」ネット通販の違い
ネットマーケティングの“常識”はウソばかり(後編)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130606/249289/

ネット通販のことだけを書いているのではなく、凡百な広告代理店の無機能ぶりやインターネット広告全般についても鋭く分析されているところに興味を持って拝読している。

今回は、ネット上で拡散されやすい情報という箇所が目を引いた。
これは何もネット通販だけに限ったことではなく、企業のネットでの情報告知にも役立つ考え方である。

以下引用する。

なぜあなたの「情報拡散」は淡い期待で終わるのか

売れるネット通販は、ランディングページの「完了ページ」でクチコミを狙う。
貧乏ネット通販は、ランディングページの「トップページ」でクチコミを期待する……。

 どの通販会社も広告費を使わずに、自社の商品をfacebookやtwitter、ブログなどソーシャルメディアで拡散(クチコミ)させ、広めていきたい、と思っている。そして、商品ページやランディングページに「いいね!」ボタンや「ツイート」ボタンを設置し、お客がそこから拡散してくれるのではないか、という淡い期待を抱き続ける。

 実際、多くの通販会社が自社の商品ページやランディングページに「いいね!」ボタンや「ツイート」ボタンを設置していたりする。しかし、ほとんど拡散されないのが現実だ。

 たとえ何人かが拡散してくれたとしても、それはきっと社内の人間か、広告代理店の担当者か、制作会社か身内だけだと考えた方が良い。

 ニュース情報だったり、エンタメ情報だったり、iPhone/iPadのような画期的な商品だったりすると拡散は起こるが、通販企業の普通の商品、しかも自ら申し込んでいないよく分からない商品を、お客は自分のソーシャルに載せようとはしないし、ましてや拡散などしない。ランディングページに「いいね!」ボタンや「ツイート」ボタンを設置しても、ほとんど意味がないのだ。

 ランディングページを拡散させるポイントは、お客が自分のメディアの読者に伝えたいと思うタイミングに、簡単に“お得な情報”や“役立つ情報”を提供できるようにすることだ。

とのことである。

例えば企業の担当者による企業公式ブログがある。
しかし、そこが自社の商品やサービスの宣伝告知のみに終始していたらどうだろうか?
そのブログは多く読まれないし、もちろん拡散などしてもらえない。

上で書かれているように「お得な情報」や「役立つ情報」を提供することが必要となる。

クリーニング屋なら「家庭洗濯ではどの洗剤が良いか?」とか「家庭でもできる衣類のお手入れの方法」というような「お役立ち情報」が必要だろう。
繊維産地の生地メーカーブログでも同じだろう。

「すごく良い生地ができました~」

というブログがある。
まあ、それはそれで良いし、何も書かないよりは書いた方がずっと良い。

けれども、何が良いのか?通常品とはどこが異なるのか?ということを説明しないと読者には伝わらない。

こういうことを言うと「当たり前のことをクドクドと説明したら同業者や仲間から笑われる(バカにされる)」と危惧する人がいらっしゃる。
しかし、その生地メーカーのお客は同業者でも仲間でもない。

お客は商社だったり問屋だったりアパレルブランドだったり、昨今だと一般消費者だったりするわけである。
ブログの読者だって同業者や仲間ではないだろう。
そういう目的でブログを書いているなら話は別なのだが。

消費者も含めたお客は生地のことを知っているようで意外に知らない。
だからキチンと説明する必要がある。

それを踏まえた上で自社のサイトやブログをもう一度見直されてはいかがだろうか?

いくら仲間ウケが良くてもね・・・・・・・・・

 先日、トレンド系のメンズカジュアルブランドを運営する役員の方からこんな意見を聞いた。

「ネット通販を開始して分かったことがある。ファッショニスタと呼ばれる人々に対しての打ち出しは一般大衆にはまったく響かない。ファッショニスタは人口が圧倒的に少なく、一般大衆は圧倒的に人口が多い。なら人口の多い一般大衆に向けた打ち出しを強化すべきだ」

これはなかなかに良い視点だと思う。

ここでいうファッショニスタとは

ファッショニスタとは、新しい造語でファッションに敏感な人たちのことをいう。特に、ファッションライターやバイヤーなどファッションの業界に携わる人達のことを指す場合が多いようです。

日本の女性誌などでも最近は見かけるようになってきている新語。一般的に、ファッションのセンスがあって、「実際にかなりの労力をおしゃれにつぎ込んでいる」人のこと。ときに賞賛の言葉として、ときに軽い軽蔑の言葉として使われます。

http://www.fashion-j.com/mt/archives/002373.html

とある。

業界関係者やファッション最先端の人々のことだから、人口比率は圧倒的に少ないし、いわばお仲間である。
仲間受けがいくら良くても一般大衆に売れなくては企業としての商売は成り立たない。
そしてその手の人々が好むアイテムが一般大衆の好みとはかけ離れているのはテレビや雑誌を見れば一目瞭然だろう。

一見するとコスプレと見間違うようなコーディネイトで登場される方々も多くいらっしゃる。
この手の人々にいくらアイテムが絶賛されても売りにつながらないことがあるのは至極当然のことといえる。
ファッショニスタと一般大衆では明らかに嗜好性が異なるからだ。

さて、そう考えると現在、売上高が伸び悩んだり低下したりしているブランドも過度にファッショニスタに向けた打ち出しをしすぎたのではないかと思えてくる。
また、鳴り物入りで登場した割にはあっけなく消滅した新ブランドの数々もそういう打ち出しが過剰だったのではないだろうか。

5億円とか10億円規模の売上高が目標ならファッショニスタに向けた打ち出しを強化しても良いだろう。
それくらいの金額ならファッショニスタたちが買い支えてくれるはずだ。
しかし数十億円とか百億円規模の売上高を目指すならターゲットは一般大衆である。彼らに支持されなければ売上高の増加は望めない。

カッコヨサを打ち出す必要はもちろんあるが、それは味付け程度で良く、カッコヨサをどっぷりと追求する必要はないのではないか。

試着のできないインターネット通販ならそれはなおさらだろう。
カッコイイサイトよりも使いやすいサイト、わかりやすいサイトの方が支持が集まりやすい。
やたらと動画があって重かったりとか、ブランド名すら満足に判読できないようなデザインだったりするサイトには支持が集まりにくい。

そういう意味では先ほどの役員の発言は的確である。

そしてファッショニスタの批評や予想がほとんど的中しないのは、これまでの商業施設評論やブランド評論を見ても明らかだろう。
あっけなくブランドが消滅したけど、登場時のヨイショの嵐はなんだったのだろう?と疑問に感じることもしばしばである。

先ほどの役員が言葉のままに一般大衆に向けた打ち出しを行えば、メンズカジュアルブランドの売上高も増加する可能性は高いでのはないだろうか。

ストールが非トレンドアイテム化?

 最近、セーターを肩からかけている男女を大阪でもよく見かける。
某メンズアパレルの役員によると、「今春、セーターやカーディガンを肩からかけるスタイルが東京では大流行している。その煽りを受けてストールが非トレンドアイテム化してしまった」という。

たしかに肩からセーターをかけていて、さらに首にストールを巻いているのでは、肩と首にボリュームがありすぎる。

彼は「その証拠にストール巻いている人が減ったでしょ?」と続ける。

セーターを肩から掛けるというスタイルは、20年以上前のバブルの頃に流行ったもので、筆者にはまるで若き日の石田純一さんかテレビ局のプロデューサーにしか見えない。
「ザギン(銀座)でシースー(寿司)を喰う」とか言ってたころのテレビ局のプロデューサーである。

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ストールが非トレンドアイテム化したということは産地の生地メーカーにとってはなかなかの逆風である。
なぜなら、産地の生地メーカーはオリジナル製品開発の第1ステップとしてストールを選択することが多いからだ。
産地合同展を覗いてみれば各生地メーカーのオリジナルストールで溢れかえっている。

なぜ、生地メーカーがオリジナル製品の第1ステップとしてストールを選ぶかというと、洋服とは異なり、複雑なパターン(型紙)が必要ないからである。
生地作りのノウハウはあっても洋服作りのノウハウのない生地メーカーからすれば、長さと色柄にさえ注力すればそれなりの見た目に仕上がりやすいストールは、打ってつけのアイテムだといえる。

それにストールは季節に関係なく販売可能な商品であったから、少々売れ行きが悪くても店頭やネットショップに長期間出品し続けることが可能だった。
秋冬ならマフラー代わりに使えるし、春先にも使える。真夏でもシャレオツな人は汗をかきながら首筋を保護していらっしゃった。

季節性が問われやすい洋服は販売期間が短く、ノウハウを持たない生地メーカーにとっては、いまだに手を出しにくいアイテムである。
真夏にウールの厚手セーターはなかなか売れにくいし、真冬に半袖シャツはなかなか売れにくい。
極言すればそういうことである。

その頼みの綱のストール人気が下火になれば、当然需要は減る。けれども生地メーカーの製品開発件数は増えており、供給量はむしろ増えている。
こうなると供給過剰に陥るため、生地メーカーの製品開発にとっては厳しい状況の始まりになるのかもしれない。

バブルオヤジの象徴として忌み嫌われていたセーターの肩かけスタイルだが、80年代ファッションがリバイバルしたことで復活したようだ。
そういえばレディースのハイウエストパンツもバブルっぽいスタイルだが、今の20代~30代前半世代はバブル当時を知らないため、それが新鮮に映るのだろう。

そういえば、今春流行している花柄パンツもバブルというか昭和の香りがするアイテムである。
あれは大阪のオバちゃんの御用達アイテムだった。

http://vippers.jp/archives/7177311.html

先日、大阪環状線の電車に乗っていたら、60代と思しきオバちゃんがピタっとした花柄パンツを穿いているのを見かけた。彼女のもともとの手持ちアイテムなのか今年買ったトレンドアイテムなのかまったく判別ができなかった。
大阪のオバちゃんの時代が来たということだろうか。

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大阪のオバちゃんといえば、動物の顔、とくにネコ科の大型肉食動物(トラ、ヒョウなど)の顔がデカデカとプリントされたトップス類が大好きだが、これも今春はトレンドアイテム化している。
フォーエバー21ではそういうTシャツ類がふんだんに販売されているのだが、わざわざ新品を買わなくても「オカンのお古を借りたらええんとちゃうの?」と思わないでもない。

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花柄パンツ+ネコ科の大型肉食動物の顔をプリントしたトップスという大阪のオバちゃんの定番スタイルがトレンドになっているが、10代後半から60代までが同じ服装をしているというのはなかなかの壮観さである。

バブルオヤジと大阪のオバちゃんスタイルがトレンド化したことに、40代というオッサン世代の筆者には何だかすごく違和感がある。

旧態依然とした百貨店

 繊維・ファッション関係の情報サイトとして、ここ数年ですっかりメジャーになったものがいくつかある。
イベントを行ったり、新ブランドを開始したりする場合にはこの手のサイトにニュースリリースを送付すれば、掲載してもらえる場合がある。

多くの場合はニュースリリースをほぼ、そのまま掲載したり、一部を手直ししたりして掲載されるが、掲載された場合の効果は大きい。
繊維・ファッション業界の情報に興味のある人は定期的にそれらのサイトをチェックしているし、ツイッターやフェイスブックなどのSNSでさらに拡散される。
その拡散による波及効果は、新聞や雑誌などの紙媒体よりも大きいのではないだろうか。
とくに繊維・ファッション業界の業界紙やファッション雑誌に掲載されるよりも。

先日、ある業者がある大手百貨店に期間限定で出店するに際して、新聞・雑誌類のほかにインターネット媒体にもニュースリリースを送付した。
これは筆者でもやることなので通常多くの業者が使っている手段だろう。
ただ、百貨店でのイベント類を行う場合は、百貨店側にも発信前にリリース内容を確認しておいてもらう必要がある。
内容を百貨店側が承知していないと大変なことになるし、文章の文言が百貨店側からすると受け入れることができない場合もある。
そういうトラブルを回避するためにも百貨店側には事前に一度文面をチェックしてもらうに越したことはない。

この業者は口約束ではリリース発信を確認していたが、最終文面の確認には行き違いがあった。
そのためちょっと面倒なことになったようなのだが、その際、百貨店広報は「リリースそのものを全文掲載するようなインターネット媒体など認めていない。当社ではリリースというのは新聞・雑誌に送付して、記者に来店取材を促すためのメッセージだと認識している」と言い放ったという。
交渉の行き違いからの売り言葉に買い言葉という側面もあろうが、この発言には意外に百貨店の本音が含まれているような気がしてならない。

百貨店広報がいまだにその認識だとすると、ちょっと時代の流れから取り残されすぎではないだろうか。
広報がインターネット媒体の波及効果を認識していないというのは驚くほかない。
だからあの大手百貨店はイマイチ情報発信が下手なのだろうか。

そういう認識だからショッピングセンターやアウトレットモール、ファッションビルの後塵を拝する今の状態に陥っているのではないのだろうか。

昨年の春、高島屋の鈴木弘治社長が「(百貨店の市場は)今後5年間で1兆円減り、2016年には5兆2000億円まで縮む」と語ったことが話題となった。
なぜなら、量販店大手のイオンは計画通りに推移すれば2014年2月期には売上高が6兆円となり、百貨店全社の売上高がイオン1社に届かないことになるからである。

百貨店が小売業の王様だった時代はとっくに終わっていることはこの数字を見ても明らかだ。

それほどの衰退産業であるにもかかわらず、何故それほど呑気に構えていられるのかが不思議でならない。
しかし、先ほどの広報の言葉が本音だとすると、そういう気構えだからこそ現在の衰退があるのだろう。

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