作業着デニムは今後さらにカジュアルユーザーを増やすのではないかと思った話
2021年11月15日 ジーンズ 1
何個か前のブログで「作業着デニムパンツをカジュアルとして穿く人をちょくちょく見かけるようになった」という話題を書いた。
作業服デニムパンツをカジュアル使いする若い男性をちょくちょく見かけるようになった話 – 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info)
中高年男性でも穿かれているのを時々見かけるが、こちらはあまり違和感がない。(笑)それは恐らく容姿が作業着に適しているように感じられるからだろう。
一方、そこそこオシャレを気にしてそうな20代の若い男性が穿いているのを見ると、正直違和感がある。作業着ズボン+そこそこオシャレなトップスという組み合わせがおかしく見えるのだろう。
あとは、当方に「あれは作業着ズボンである」という強い先入観があるためだろうと思う。
しかし、通常のジーンズも元は炭鉱夫用の作業着ズボンだったことは広く知られている。恐らく、あれがカジュアルとして着用され始めたときには、当方のように違和感を持って眺めていた人も多かったのではないかと思う。そう考えると、作業着デニムズボンがカジュアル化するのは、ジーンズがカジュアル化したのと同じ道筋をたどっているのではないかと思うので、それはそれでありなのではないだろうか。
先日のブログにいつもコメントをくださる方が「自分も昔、作業着デニムズボンを買ったことがあり、また買ってみようかな」というような内容のコメントをくださったのだが、今後、我々業界人の固定観念とは逆に意外に作業着デニムズボンのカジュアル化は広まる可能性がありそうな気がするがどうだろうか?
例えば、この一例
まさか!まさか!の〜
【紳士服のコナカでBMCが展開スタート】
*東戸塚総本店
*上尾店
*宇都宮店
*木更津店
*水戸店
*高崎店
関東中心でのスタートです🤗
今後取扱店舗が増える?!
機能系デニムウェアとして展開中です👖 pic.twitter.com/VSkJ4tER0X— ローリー青野(青野 睦) (@urbangorilla298) October 25, 2021
仲良しのブリッツワークスの青野社長のツイートだが、コナカの数店舗にブルーモンスタークロージングが入荷し始めたとのことである。
10月25日のツイートで、先日尋ねてみたところ、追加発注が来たとのことだったので、まずまずの売れ行きだろう。
ご存知のように、青山、アオキ、はるやま、コナカの紳士服大手チェーン4社は、既存のメンズビジネススーツの需要減をカバーするために
1、カジュアルアイテムの取り扱い増
2、レディーススーツの取り扱い増
3、低価格パターンオーダーの導入
という施策を長年続けている。(このほかにもカフェやカラオケなどの異業種参入もある)
で、このうちの「カジュアルアイテムの取り扱い増」の中の一つとして、ブルーモンスタークロージングの作業着デニムセットアップが選ばれたということになる。
もちろん、大手4社の中では規模の小さいコナカによるセレクトなので、青山・アオキの上位2社には対抗できないコナカが苦し紛れでセレクトしたという可能性も否定はできない。
また、正直にいうと、コナカにわざわざ作業着デニム服を買いに来る客がいるのか?コナカに来た客が作業着デニム服を買うのか?という疑問もあった。
だが、11月に入って追加発注が来たということは、この厳しい状況下でそれなりに売れているということになる。
業界に毒されている当方は「ダサいオッサンが買っているのか?」と思ってしまうが、東京・大阪の都心の若者がちょくちょく作業着デニムパンツを穿いていることを考えると、一概にそうとは言えないだろう。
やはり
1、低価格(2900~4900円が中心価格)
2、機能性
3、デザインパンツっぽい見た目
の3つをそれなりに評価するカジュアルユーザーも少なからずいるのだろう。
コメントの方が「どうしてジーンズメーカーは手を出さなかったのだろう?」と書かれていたが、この意見にはハっとさせられた。
今の状況となってみれば大手ジーンズメーカーが進出しているべきだった。往年の大手ジーンズメーカーは8000~1万円以上の高額ラインと、量販店向けの2900~5900円ラインの2つをやっていた。例えば昔のビッグジョンとかボブソンである。
しかし、両方ともベーシックな5ポケットジーンズなので、区別はできにくかった。業界のプロが見れば「別物」ということになるのかもしれないが、それこそど素人の消費者が見ても区別はできにくい。
なぜ、数千円の値段差があるのかはわかりづらかった。
大手ジーンズメーカーとすれば高額ラインの方を売りたいから、量販店向け低価格ラインを強化したいとも思わなかったのかもしれない。
だが、コメント氏がおっしゃるように、量販店向け低価格ラインを作業着デニムパンツにしていたらどうだっただろうか?消費者にも区別しやすかったではないだろうか。
また、作業着デニム上下をジーンズメーカーが開発して作業服として売り出すというのも本来はやるべき施策だったのではないかと今にして思う。
結局、定番5ポケット型に異様に固執したため、ブランド間の競争がミクロなディテールとか、製造工程のクローズアップばかりになり、消費者には理解されづらかったし、ブランド間の商品の差異も分かりにくいものとなってしまった。
そして、ジーンズがファッショントレンドから外れてしまうと、売上高が急落することになった。
だが、もし、作業着デニム上下をジーンズメーカーが作業服として売り出していたらどうだっただろう。定番ジーンズの需要減少を少しは補填できたのではないだろうか。また、それこそ今のワーキング業界にプーマなどのブランドが参入しているように、ブランドのステイタス性で純然たる作業着よりも少し高めに売れたのではないかとも思う。
今となっては後の祭りだが。
原因はジーンズ業界の固定観念に加えて、当方も含めた外野(メディアやコンサル)の固定観念にもあるだろう。
ワークマン効果もあったとはいえ、逆に自重堂やバートルなどの作業服メーカー各社がデニム作業着というジャンルを作り上げてしまった。
早計かもしれないが、デニム作業服は今後、カジュアルウェアとしても一定のシェアを占めるようになるのではないだろうか。
バートルのデニム作業ズボンをどうぞ~
僕は普段はチノパンを穿いていますが,実はチノと同じくらいカーゴパンツが好きです。4,5年前エドウィンのライトブラウンのカーゴPを気に入って穿いていた時期があって、これはデニムと同じくらいの厚みがあった。「これなら “デニムでカーゴパンツを作ってもいいかも…” って発想するのはむしろ自然だろうに」と思ったことでした。
何しろ南さんの仰言る通りで,ジーンズは誰でも見てすぐわかる特徴と言えば細いか太いか/色が濃いか薄いか程度しかない。少しひねった感じのものが欲しいとなると,クセの強すぎるオーバーオールとか白 or 黒ジーンズ,カーペンターパンツくらいしかないというのでは実質選択肢はあんまりない。
あるいは凝ったジーンズなら探せばあったけど,ボタンフライなんてフツーの人間には面倒くさいだけだし,セルビッジとかどうでもいいようなもんだし(ユニクロもヘンなところで凝ったジーンズ作るもんでありますねw)。
まあしかし,以前 MACKINTOSH PHILOSOPHIY のショップで販売員女子と以下のような会話した事がありまして・・・
ぼく:ピーコートって重すぎるから,化学繊維でいいから軽いピーコート,マッキントッシュで作ってくれたらうれしいんだけどな
彼女:前はあったんですよー
ぼく:ああ,今どきああいうもの買う男ってコダワリが強くて昔通りでないと納得しないのかもね
彼女:そうなんですよー
ジーンズもこんなものかも知れないから,実際にデニムのカーゴP売り出していたらどうなったか,は不分明ですね。「一度試してみる価値くらいはあっただろうに」とは強く思いますが。