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南充浩 オフィシャルブログ

作業服デニムパンツをカジュアル使いする若い男性をちょくちょく見かけるようになった話

2021年11月11日 ジーンズ 1

衣料品産業には、トレンドの変化は不可欠であると思っている。

しかし、そのトレンドが長続きするものと、短命に終わってしまうものがあって、その分かれ目はどこにあるのかを分析することはなかなかに難しいと感じる。

ただ、トレンドが短命で終わった場合、後から振り返ってその原因のいくつかを抽出することは可能で、個人的には「不便さ」が要因の一つではないかと思っている。

長続きしたトレンドはマス化し、やがて定着する。

短命で終わったトレンドを思いつくままに挙げてみると、例えば「クラッチバッグ」。2020年になってからすっかり見かけることが減ったように感じる。

クラッチバッグの廃れた理由は「圧倒的に不便だから」ではないだろうか。

何せ常に片手が塞がっている状態である。不便なことこの上ない。おまけに今の人たちはショルダーバッグやリュックサックといった両手が自由になるバッグ類に慣れている。いくらトレンドアイテムだから使ってみたとはいえ、あんな不便な物を長期間使い続けるほどの根気はないだろう。

おまけに、クラッチバッグは手のひらで常に抱えるため手垢が付きやすい。どんなに綺麗な色・柄でもすぐに手垢まみれになって黒ずんでしまう。

こういう非合理的なアイテムはどれほど勢いがあっても短命に終わる場合が多い。

あと、クラッチバッグは、40代以上の人には往年のバブル期の「セカンドバッグ」「ポーチ」と同様に見え、そのマイナスイメージから中高年層には広がりにくかったという側面もあるだろう。

 

最近、個人的に注目している着こなしの傾向がある。まだまだプチトレンドみたいな域を出ないが、これが長期化して定着するのか、それとも局所的で短命に終わるのか、に興味を持って眺めている。

それはワーキングユニフォーム(要するに作業着)用のデニムパンツのデイリーユースである。

いつも小指の爪ほどの小さい話をしているが、今回はそれよりもさらに小さい。

 

以前にもこのブログで書いたことがあったと思うが、今年の夏に、大阪のアメリカ村を歩いている時、作業服用のデニムパンツを穿いた若い男性(推定二十歳前後)が歩いていた。最初は、工事現場の作業員が休憩中なのかと思ったが、作業員にしては華奢な体格であり、トップスはどう見ても作業服ではないカジュアル服を着ている。

長く業界に毒された当方の目にはそれはひどくアンバランスなコーディネイトだと映ったが、「これはもしかして作業服デニムパンツを通常のカジュアルとして着ているのか?」と思い至った。

 

蛇足ながら付け加えておくと、ワーキングユニフォーム業界の最先端マストレンドはストレッチデニム生地を使ったブルゾンとパンツのセットアップで、上下ともに往年のピタピタタイトシルエットである。

自重堂、バートル、アイトス、などなどワーキングユニフォームメーカー各社がこぞって発売している大ヒット商品群である。

その時には「変わった選び方をする子だなあ」と思ったのだが、そこから、毎週アメリカ村を通るたびに、同じチョイスで作業服デニムパンツを穿いた若い男性を1人か2人は見かけるようになった。もちろん夏に見かけた人とは別人である。

 

あれ?もしかして、若者間の隠れたブーム?

 

と思い始めるようになったわけである。

 

で、先日、このブログのレギュラーでもあるブリッツワークスの青野社長と電話で話している際、この作業服デニムパンツのカジュアル使いの話題となった。

青野社長の事務所は先日、東京の北千住に移転したのだが、北千住には大学がいくつかあって若者が多いのだそうだが(北千住には行ったことがない)、その大学生たちの仲にも何人か作業服デニムパンツをカジュアルに穿いている者がいるとのことだった。

BMCのサイトから画像をお借りすると、こんなイメージの商品である。

さすがに上下セットをカジュアルとして着ている人は見かけたことはないが、ズボンだけをカジュアルに着ている人は東京・大阪ではそんなわけでチラホラと見かけるようになった。

それも、決まって着用者は工事現場とは無関係そうな二十歳前後の若い男性に限られている。

作業服デニムパンツを一部の若い男性がカジュアルに穿き始めた理由を考えてみた。

 

1、価格が安い(2900~4900円が中心価格帯)

2、ベーシックなジーンズとは異なりデザインパンツっぽい見た目

3、ワークマン効果によって作業服とカジュアルの垣根が低くなった

4、ストレッチ生地や切り替えによる機能性

 

辺りではないかと思っているがどうだろうか?

まず、1についてだが低価格だからというのは、かなり確実性が高いのではないかと我ながら思っている。ジーンズブランドにこだわる人にとっては違うだろうが、こだわらない人にとってはユニクロジーンズ(定価3990円)よりも安く買える(ブランドによっては2000円台)となると、魅力的と映るのではないかと思う。

2に関していうなら、ありふれた5ポケット型ジーンズとは異なるデザインデニムパンツと見えなくもない。

3のワークマン効果もあって、実際にワークマンの商品をカジュアル使いするかどうかは別として、カジュアルの一選択肢として作業服の一部が定着しつつあるのではないだろうか。

そして4の機能性である。ストレッチデニム生地使いは通常のジーンズでも同じだが、カーゴポケットや撥水・防水機能、切り替えによる動きやすさ、など作業服ならではの機能性を持った商品が多い。

 

このプチプチトレンドが果たして定着するのかどうか。少なくとも「不便さ」はないから、長く使われ続ける可能性はある。

もし、定着化すれば、ワーキング業界にとっては歓迎すべき風潮となるので、作業服業界は一丸となって販促を仕掛けるべきではないかと思うのだが。

 

そんな作業服デニムパンツをどうぞ~

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 comment
  • BOCONON より: 2021/11/12(金) 3:35 AM

    こちらの画像ほど細くはないけど僕も昔買ったのを1本持っていますね,ホームセンターで買った作業着デニムパンツ。作業ズボンはチノパン風のものもあるけど,大方は化繊丸出しでおしゃれな普段着にはなりそうもない。作業用デニムPはカーゴP風のディテイルが面白いしちょっとカッコいい気もする。ジーンズより穿き心地が柔らかいし,色もそんなに安っぽくもないし,なぜジーンズメーカーが作らないのか不思議(デニムとは違う生地のような気もしますが)。こういうの,ドカタ用ニッカボッカ同様欧米白人も好きそうですねw

    とは言え持っていても実際はあんまり穿いたことはないです。洗濯するとちょっとびっくりするほど色落ちがすごく,洗濯時以外でも着ているとTシャツなどに色移りしそうな気がするので。
    その辺の問題が今の作業着デニムでは解決されている事が確認できたら僕も改めて買うつもりであります。安いしw

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