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南充浩 オフィシャルブログ

洗い加工場大手の豊和が縫製工場、秋田ホーセを買い取ったという報道

2021年11月10日 製造加工業 0

国内の繊維関係の工場は、小資本の場合が多く、これまでの生産拠点の海外移転から始まり、今回のコロナ禍によって経営状態の厳しいところが多い。

ほとんどの場合は、サイズダウンしたり操業頻度を下げたりして対応しているが、児島の大手洗い加工場、豊和は積極的な投資を続けている。

以前、このブログで紹介した自動シェービングマシンの開発・投入に続いて、縫製工場を買収した。

新会社進出で工場継続 ジーンズ加工の豊和 閉鎖の秋田ホーセ買い取り 大館で縫製事業 (hokuroku.co.jp)

 

ジーンズ加工の豊和(本社・岡山県倉敷市、田代雄久社長)は、9月に閉鎖した秋田ホーセ秋北工場(大館市)を買い取り、新たに現地法人を立ち上げて縫製事業に乗り出す。既存の設備をそのまま使用する予定で、11月中旬の操業開始を目指す。退職した同工場従業員の雇用も見込み、縫製の技術やノウハウを継承していく。

 

ジーンズ国内最大手エドウインの子会社・秋田ホーセの工場が閉鎖すると知り、これまでも取引のあったエドウインに相談。機材・設備も含めて買い取ることになった。9月上旬に売買契約を結び、同10日に現地法人「オオダテソーイングファクトリー」を立ち上げた。
同社では、秋田ホーセと同様にジーンズの縫製を主に行う。エドウインに限らずさまざまなメーカー、会社から受注し、依頼に応じて製造していく予定。

 

とのことである。

エドウインによって閉鎖された秋田ホーセを買い取り、傘下におさめたというわけである。

実は、シェービングマシンの取材に伺った際、この秋田ホーセ買収の話も説明を受けていた。また時期を見てご紹介しようかと思っていたが、北鹿新聞に掲載されたので、そちらを引用した。

 

洗い加工場の豊和が新たに「自動シェービングマシン」を開発したので見学してきた話(ただし画像は無い) – 南充浩 オフィシャルブログ (minamimitsuhiro.info)

 

 

これによって、豊和は洗い加工と縫製の両方を手掛けることが可能になり、生産の垂直統合を図ったということになるが、言葉で言うのは簡単だが、実際の運用はなかなかに難しい。

縫製工場を買い取ったということは、常に縫製の受注が無くてはならない。家族三人くらいの縫製工場であるなら「今月は受注がないから工場を閉めておこうか」ということもできるが、「従業員として40~50人を雇用する予定」とあるように、これだけの人間を雇っておいて「仕事がないから1か月お休み」というわけにはいかない。豊和の田代社長によると「秋田ホーセのほぼフルメンバーを再雇用する予定」とのことであるから、常に縫製の受注が必要になる。

縫製工場を回せるというのは、常にそれだけの縫製のオーダーを営業が獲得してこなければならない・獲得できる目途がある、ということになる。

名の通った大手セレクトショップのオリジナル品ですら1型50枚くらいのオーダーが珍しくないこのコロナ禍のご時世に「目途がある」だけでも大したものだといえる。

SNSで多く見かける業界ロマンチストの方々は、簡単に物作りを守れとか、工場を閉鎖するなとか、お気楽に口走っておられるが、物作りをするということは「売り先」が確保されている必要があるし、「売れる」ということが必要になるということをわかっておられるのだろうか?と疑問しか感じない。

オリジナル商品を作るのは勝手にすればいいし、勝手に量産すればいい。しかし、そのオリジナル商品はデザイン性も含めて「売れる物」なのだろうか?さらに量産した場合、その数を「売れる目途」があるのだろうか?売ることを考えずに作るのは、趣味の世界か学生の活動でしかない。

作るだけでよければ当方だってなんぼでも作る。

しかし、売れる物に仕上げられる自信はないし、量産した数量を売り切る自信もない。

 

だから、多くの場合、閉鎖する国内工場に救済の手は伸びない。

救済したところで、常に工場を稼働し続けられる(=商品が売れ続ける)可能性が極めて低いと見るからだ。

豊和の田代社長によると、今回に先駆けて実は何年か前に山形の縫製工場も傘下におさめているそうなので、縫製工場の運用と連動、営業活動にはすでにそれなりのノウハウを持っているとのことなので、これは安定した運営が見込めるだろう。

多くの国内工場は、コロナ禍によって「設備投資どころではない」という状況だが、豊和のこの設備投資と縫製工場買収は、ひとえにこれまでの内部留保の蓄積が大きいとはいえ、コロナ禍でも比較的堅調な受注があってのことだといえる。

以前、倒産したトーションレースの工場であるカツミ産業を佐藤繊維が買収したことが伝えられたが、今後は、体力のある国内工場が運営が立ち行かなくなった国内工場を買収して、そのグループの生産機能を拡充するというケースが増えるのではないだろうか。

強い国内工場はより強くなるということになる。

 

しかし、その一方で、忘れてはならないのが、生産機能を強化すればするほど、それを回すための受注獲得の営業活動も強化しなくてはならないということである。

もちろん、この厳しい環境下で積極策を打ち出せるほどの工場の経営者はそのあたりの手腕もずば抜けていることは言うまでもないが、蛇足ながら念のために付け加えさせていただく。

 

 

エドウインのジーンズをどうぞ~

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