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南充浩 オフィシャルブログ

ファクトリーブランドの商品説明文にありがちな悪例

2021年11月9日 ユニクロ 0

衣料品の製造加工工程が海外移転してから、国内の製造加工場は受注量の減少をカバーするために自社オリジナルブランド、いわゆるファクトリーブランドのようなものを立ち上げ始めた。

自活のためには当然ともいえる施策ではあるが、生地製造や染色、縫製という分野においてはプロだが、こと「オリジナル製品」を作るとなると、必要とされるノウハウは足りない。また、製品の営業や販売に慣れていないから、売れるオリジナル品もあれば、売れないオリジナル品も多数生み出すこととなった。

2010年以降、SNSの普及により、個々の発信がさらに楽になると、この動きは加速したが、成功率が高まったわけではない。そして2020年春、コロナ禍による長期休業や営業時短でさらに苦しくなった製造加工業者は、クラウドファンディングという手法を絡めて、オリジナル品に活路を求めた。

だが、やはりその成功率は決して高くないように、外野たる当方の目には映る。

 

成功しない理由はいくつもある。

製品のデザイン自体がイケてない、とか、知名度が低すぎる、とか、値段が高すぎる、とか、さまざまでそれらが混然一体となって売れないという状況を作り上げている。

そんな中に「商品説明が下手くそすぎる」というものも含まれている。

オリジナル品の説明のみならず、製造加工業者の発信の多くは、素人には難しすぎてよくわからない。

 

そもそも「繊維」「衣料品」というのはその一つ一つの工程の専門性がかなり高い。ただ、当方も含めてほとんどの人間は「衣服」を365日着ているので「身近な物」と勝手に捉えて「わかったような気」になってしまっているだけである。

現に、専門学生に講義をするために、糸のことを調べていても、調べれば調べるほど覚えるべき情報が多すぎて、とてもではないが自分も覚えられないし、それを学生に全部伝えることは不可能である。

学生はその道の素人だから、どの辺りまでなら理解ができるのかを考えながら、調べてそして話すようにしている。

もちろん、本格的に「糸の仕事」をやりたいと言うなら、当方の説明では到底足りない。しかし、そうではない素人に理解してもらえるきっかけを作るということなら、そこまでの詳細な知識は不要である。

 

先日、平山枝美さんがツイートでこんな記事を紹介されていた。

ユニクロのエアリズムの広告を、ダメダメな文章に書き替えてみた|平田けいこ/挑戦する社長の文章参謀/コピーライター|note

短い記事だが、これはかなり面白かった。

特に、製造加工業者には参考になることだろう。

短い記事なので、全文をお読みいただくのが良いと思うが、クリックがめんどくさいというものぐさ太郎向けに抜粋して引用する。

エアリズムのPOPの説明文では

 

1、さらりとした肌ざわりで快適さをキープ

2、テープ圧着で縫い目を減らして肌ストレスを軽減

3、UPF40のUVカット機能付きだから、紫外線を気にせず外出できる

 

と書かれている。

 

一読しただけでは、極めて普通だし、製造加工業者からすると「まったく物足りない」と感じるのではないかと思う。

ある意味で業界に毒されている当方も同様に感じる。

 

しかし、この筆者はさすがにプロのコピーライターである。

 

「当たり前じゃん」と思うかもしれません。
でも、世の中には商品の機能の説明に終始して、「お客様に起きる良い変化」がすっぽ抜けている広告がたくさんあります。

 

どうだろう?耳が痛いと感じる製造加工業者やメーカーは多いのではないか。そして、悪例として挙げている文章を見てもらいたい。以下に画像をお借りして貼り付ける。

 

いかにも製造加工業者のオリジナル品で書かれていそうな文言がこれでもかというくらいに並んでいる。(笑)

この手のやらかしを行っている製造加工業者やファクトリーブランドはこの30年間掃いて捨てるほどいた。そのほとんどは失敗に終わっている。

もう、個人的にはどの文言もツボに入っていて笑みがこぼれる。

いわく

「ユニクロと東レの共同開発 技術の結晶」

いわく

「究極の心地良さを追求するジャパンテクノロジー」

 

いかにもプレミアムテキスタイルジャパンとかヤーンフェアとかの各ブースに吊り下げられている看板にありそうではないか。

 

また、

「『カチオン可染型ポリマー』を使用したマイクロファイバーを採用」とか「UPF40のUVカット機能を追加」なんて文言は、当方は様々なメーカーやブランドの商品説明で日常茶飯事でお目にかかる。

製造加工業者目線でいうなら「わかりやすいちゃんとした説明文」ということになるかもしれないが、素人からすると「?」でしかない。

カチオン可染型ポリマーってなんやねん?破裏拳ポリマーしか知らんぞ?ということになる。

 

製造加工業者のオリジナルブランド、工場のファクトリーブランドはこの辺りに注意をしないと、はっきり言って素人である消費者には製品の良さは伝わっていない。

とはいえ、ユニクロ式のコピーだと工場らしさ、製造加工業者らしさが伝わらないと思うので、多少はミックスしてみると「プロ感」がでるのではないかと思う。

例えば、「さらりとした肌ざわりで快適さをキープ」ではなく「極細マイクロファイバーの使用によってさらりとした肌触りをキープ」みたいな方が「プロ感」がより強くアピールできるのではないかと思うがどうだろうか。

また、そのくらいのアレンジを工夫しないと「極めて普通の説明文」ということになり、ファクトリーブランドや製造加工業者としての差別化はできにくい。

個人的には、一部の例外を除いて製造加工業者のオリジナル製品や工場のファクトリーブランドというのは、即効性がないと思っている。売り方などを軌道修正しながら、時間をかけて成功してもらいたいと思っている。

 

破裏拳ポリマーのフィギュアをどうぞ~

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