MENU

南充浩 オフィシャルブログ

無印良品の衣料品の苦戦は「男女兼用服」の強化が理由ではないか?

2021年11月8日 トレンド 3

ユニクロ、ジーユーのネット通販の使い方としては、目ぼしいアイテムを「お気に入り」に登録し、定期的に値下がりしたかどうかを確認し、値下がりしたら店舗在庫検索でどの店に残っているかを確認することにある。

先日、ユニクロのネット通販を見ていて、ヴィンテージレギュラーフィットチノ、ユーティリティーワークパンツがなかなか良いのではないかと思ってお気に入りに登録した。

サイズを見ていて、まあ多分このくらいで穿けるだろうと思ったが、このアイテム、どう見てもメンズテイストが強いのに「男女兼用」と書いてある。男女兼用の場合、果たして書かれてあるサイズ表記で本当に穿けるのかどうかを強く疑問に感じ始めた。

恐らく、買おうと思っても、まず店舗で試着してからでないと絶対に買わないだろうと思った。

理由は簡単だ。男女兼用だからだ。

男女は身長や股下、体格が異なることはもちろん、体型も異なる。

両方に合わせようとすると、これは至難の業である。

 

男女兼用、ユニセックス服を最大公約数で売ろうとするなら、できることは

 

めちゃくちゃビッグサイズに作る

 

である。

昔から「大は小を兼ねる」というように、小さすぎる服は袖さえ通すことができないが、大きすぎる服を着られないということはない(かっこいいかどうかは別として)。

日本人の平均身長は、男性171センチ強、女性158センチ弱くらいであり、身長差は13センチくらいある。もちろん平均だからこれをそのままで考えることは無理があるが、それでも最大公約数的に考えるなら13センチの身長差があるのに兼用で着用させるなら、最も失敗が少ないのはめちゃくちゃダボっとした服を作ることである。

 

Tシャツやセーター、トレーナーならめちゃくちゃダボっとした男女兼用企画というのは理解できる。しかし、ボトムスとなると男女兼用というのはマスに売るのは難しいのではないかと思う。

そもそも、ユニクロのような超マスブランドが「男女兼用」を打ち出してもそのアイテムは特別に売れる理由にはならないだろう。逆に当方のように「男女兼用」を打ち出されることで、ちょっと待てよと買い控える人も多いのではないかと思う。

少なくとも、当方には「男女兼用」「ユニセックス」服は何の魅力もない。

元からそういうコンセプトで小規模なブランドなら売れるとは思うが、マスブランドが「男女兼用」を積極的に打ち出して売れるとは思えない。

 

 

無印良品の衣料品部門が苦戦を続けている。

一時期、持ち直したかに見えたが、見えただけだった。すぐさま崩れた。

今年10月の既存店+オンラインの衣料品売上高は、前年比21・0%減である。2020年春から異例のコロナ禍が継続しているので、単純な前年比増減では論じにくいので、さかのぼって見てみる。

ちなみに10月の既存店+オンライン全部門合計(衣料品+食品+雑貨)では、売上高は前年比9・6%減、客数は同1・1%増、客単価は10・7%減となっており、客単価の減少が売上高が減少に直結している。

2020年の10月既存店売上高では、衣料品は前年比6・5%増と好調だった。2019年10月既存店売上高では衣料品は前年比5・4%増と好調で、昨年10月はコロナ禍にもかかわらず、秋商戦が好調だったといえる。2020年10月既存店売上高は、2018年10月に比べて12・3%増ということになるからだ。

そこからの21年10月の21・0%減なので、激減したということがわかる。

ちなみに、2021年の月次既存店売上高では、衣料品は6月から苦戦し続けている。3月・4月が異常な伸びだがこれは昨年の同時期はコロナ禍で店舗が長期休業していた反動である。5月は1・8%減で切り抜けているが、それでも昨年5月上旬はまだ店舗休業していたことを考えると、実績としては物足りない。

6月は同19・6%減、7月は5・4%減、8月は23・1%減、9月は13・1%減と厳しい数字が10月まで並んでいる。

これは明らかに衣料品の政策がおかしいということだろう。少なくとも消費者には受け入れられていないということである。

コロナ禍以降、積極的に定価引き下げを続けてきたにもかかわらず、これだけ今年、既存店衣料品の売上高を落としているということは、極端に言えば「安くても無印良品の服は要らん」と消費者から言われているのと同じだといえる。

 

2021年4月8日の記事

「無印良品」衣料品や日用品98品目を価格改定、最大1000円値下げ (fashionsnap.com)

 

2021年8月31日の告知

「くらしを支える」約200品目の大規模価格改定のお知らせ | ニュースリリース | 株式会社良品計画 (ryohin-keikaku.jp)

 

これだけ定価引き下げを連続していても衣料品の売れ行きが下がるということは、売れない理由は値段ではないということだ。商品そのものも見直す必要があるのではないか。

そういう当方も今年は8月頭に無印良品の売り場を見ただけで、先日まで行かなかった。行きたいとも思わなくなっていた。

先日、3カ月ぶりに売り場を覗いたが、メンズ衣料品は買いたいと思う物はなかった。はっきり言って「茶色系」の色物が多すぎる。ブラウン、レンガ色、マスタード(黄土色)、ベージュ、薄グリーンである。トレンドだかなんだか知らないが、基本的に日本人は茶色が似合いにくいし、買う枚数が少ない。ベージュや薄グリーンはまだ買う人も多いが、レンガとか茶色は圧倒的に少なくどのブランドでも売れ残っている。ユニクロでもブラウンやダークオレンジは常に残っている。

茶色が多すぎる

 

 

 

この色合いをなぜここまで強化したのか理解に苦しむ。企画担当者とそれを決裁した首脳陣の根本的なミスだろう。

 

そして、もう一つの材料ではないかと疑っているのが、「異様なユニセックス強化」である。

 

無印良品が男女兼用のアパレルアイテム数を拡大 22年春夏には全体の50%へ (fashionsnap.com)

 

6月7日の日経新聞に無印良品が今春夏シーズンに全体の1割、25品目だったアパレルの男女兼用アイテムを秋には全体の3割、22年の来春夏には5割(250品目)に増やして行くことに関する記事が掲載されていました。

記事によれば、売場は既存のメンズやレディースコーナーに分散して置くのではなく、男女兼用アイテム専用コーナーを拡充して販売して行くようです。

 

とある。

今秋から男女兼用服を構成比で3割くらい増やしたと考えられるのだが、秋物の立ち上がる8月から既存店衣料品売上高は大幅減を開始している。

となると、これが理由の1つではないだろうか。もう1つは異様な茶色押しだろう。

 

この記事の筆者は常に割合に忖度することで有名で

 

ずいぶん前からですが、服のカジュアル志向が進むようになってから、メンズTシャツやスウェットなどのアメカジアイテムはユニセックス対応として、支持はありましたし(メンズで企画しても3~4割は女性に売れる)

 

と書いているが、男性にユニセックス企画、レディース服が売れることは考えにくい。

ただ、男性からしても「レディースのあの色、あの柄でメンズサイズを作ってほしい」と思うことはある。逆もしかりだろう。

しかし、「完全に男女兼用服を着たい」と考える男性・女性は少数派だろう。

理由は、先ほどにも述べたように体格・体型が全く異なるから、ダボダボ、ブカブカの服になってしまうからだ。

MUJILABOの男女兼用ダウンジャケット ビッグサイズ過ぎて不格好に見える

 

 

 

先述したユニクロのパンツだってサイズ表記を見るだけで買うのは不安だ。サイズ表記以上に、メンズとレディースではパターン(型紙)が異なる。パターン次第ではサイズは合っていても動きにくいとかカッコ悪く見えるということは日常茶飯事である。

 

たしかに、男女兼用服を増やせば、売れ残るサイズリスクは減る。ただしそれだけだ。

元からそういうコンセプトの小規模ブランドならそういう収益体質だろうが、無印良品のようなマスブランドが「男女兼用」みたいな少数派好みのニッチなアイテムを強化しても売れ行きが減ることはあっても伸びることはない。

茶色押しはまたトレンドによって変わっていくだろうが、男女兼用服を増やせば増やすほど無印良品というマスブランドの衣料品売上高は低空飛行を続けることになるだろう。

 

そんな不振の無印良品の服をどうぞ~

この記事をSNSでシェア
 comment
  • BOCONON より: 2021/11/08(月) 5:34 PM

    「なんでどこもセットアップなんてヘンなものを売りたがるのだろう? スーツなら分かるけど、カジュアルで」と思っていたら、今度は男女兼用の服ですか・・・
    無印良品に続いてユニクロまで男女兼用服を売り出すとはオドロキだ。以前紹介したように無印良品のそれも既に物笑いのたねになっているというのに。「パジャマにはいいけどなw」なんてね。ユニクロがそれならたぶん GU でも近々打ち出すに違いありますまい。

    どうも業界全体が何を考えているのか不分明になってきたな。 画像のようなおばはんのデブ隠し見た様な、誰が着ても同じような見た目になってしまうような服が流行るとは到底思えないし,もしはやったとしたらもうファッションもへったくれもないですな。

    僕はアースカラーが好きでカーキ色や茶色(と言っても黄色っぽい茶は肌が汚く見えるので赤系の茶)の服をよく着る。だから無印良品が茶系の服を打ち出すのは歓迎のようなものですが・・・ここのシャツは異様に細身だったり短丈だったり、最近は逆にオーバーサイズ気味な感じもしたり,でどうもサイズに信用がおけない。茶系の商品を多くしたのも「たぶんユニクロと違いを出したいのだろうけれど,印象としては相変わらずデザインが迷走気味って感じしかしないな」で買う気はおきませんね。

  • とおりすがり より: 2021/11/15(月) 9:02 AM

    ユニクロのユニセックスは「メンズで作ったけどレディースとしても大丈夫だな」というような後付けのものだと思われます。

  • 元むじらー より: 2023/05/09(火) 11:17 AM

    先日、無印良品の服売り場を見て、「ダボダボすぎる。これどこで着るの?パジャマにしか無理だわ。でも、パジャマにしては高いよね」と話したところでした。

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ