「サイズが合う服」と「似合う服」は異なる場合がある
2019年12月17日 TOP SELLER . STYLE 0
当方の身長は175センチ、正確にいうなら174・5センチである。
体重は増減はあるが、だいたい75キロ周辺をうろうろしていて、80キロを越えると手持ちの洋服がキツクなってくる。
洋服のサイズを試着なしで選ぶには非常に中途半端な体型である。おまけに腕と首は短めで、肩幅広く胸も厚い。
クレッチマーの体質論でいうなら恐らく「闘士型」に分類されるのではないかと思う。
あと4センチ背が高ければレングスは確実にLサイズだろうし、もう少し細身なら確実にMサイズだろう。
しかし、残念なことに中途半端な体型なので、商品によってLサイズを着たりMサイズを着たりしており、試着は欠かせないと感じている。
ユニクロのアプリには便利な「マイサイズ機能」が付いている。気付いた方はおられるだろうか?
身長、体重、年齢、体型の特徴などを登録すると、その商品は何サイズが適切なのか表示してくれる。その表示も詳細に切り替えれば、「Lサイズが52%、Mサイズが48%」みたいなファジーな形式で表示される。
「ずばりLサイズ」とか「Mサイズが絶対」という表示ではないところがよく出来ていると感じる。
なぜなら、「サイズが合う服」と「似合う服」は必ずしも同じではないからだ。
フェイスブック内の某シークレットなグループで、自動採寸システムについてのディスカッションがあった。このグループはまたいずれ公開できる時期が来るだろうと思う。
技術は日進月歩だから、将来はどうなるのかわからないが、現在までのところ、自動採寸システムは精度が高いとは言えない。また、自動採寸システムを使用しての消費者満足度もそれほど高いとは言えない。
ユニクロのマイサイズ機能についても同様だ。目安にはなるがそのサジェスチョンは絶対ではない。
先日もこのブログで書いたが、マイサイズ機能でLサイズと表示されたのでLサイズを買ってみたら、ゆとりがありすぎて似合わなかった。
ユニクロアンダーソンのフェアアイル柄タートルネックセーターが1290円に値下がりしたので、試しに買ってみた。Lサイズが表示されたので、買って、帰宅して試着してみると、今流行のゆとりあるサイズ感ではあるが、当方の体格と顔の大きさでは似合わなかった。
単に上半身が大きいオッサンに見えてしまう。実際はその通りなのだがそれがより強調されて見える。
Mサイズに交換したところ、今流行りのゆとりあるサイズ感ではなく、数年前のジャストサイズになったが、タートルネックセーターというアイテムだと当方はこちらの方がマシに見える。
体格からするとMサイズでもLサイズでもどちらでも着用できるが、商品のデザイン、当方の体格・体型・首の長短・顔の大きさ・顔の輪郭・顔立ち・顔付きなどが相まって似あう・似合わないが決まる。
これはすべての洋服に通じる。
今の自動採寸システムはそれが表示されず、テック系は「サイズが合う・合わない」という点にのみ意識を集中しすぎている。
似合う・似合わないを判断できるのは、今のところ人間だけである。そのため、販売員やスタイリストの重要性はより高まっているのではないかとすら思える。
スタイリストになるには免許や資格は要らないが、いろいろと厳しい世界なので希望者全員がなれるわけではない。
一方、販売員の場合は人手不足も手伝っていて、希望すればほぼ全員がなれてしまう。そのため、良い販売員とそうでない販売員の格差はすさまじい。
そして残念ながら良い販売員も多数存在するが、それ以上にド素人同然の販売員が存在してしまう。
ある知人が昔、こんな販売員に遭遇したという。
シャツの裾をタックインするか出して着るかで随分と印象が異なる。一口にシャツと言っても、裾を出して着るシャツは着丈が少し短めか物凄く長めになっている。
一方、タックインして着るシャツ、例えばワイシャツなんかは着丈は少し長めで、出して着ると不細工に見える丈感になっている。
知人が某有名セレクトショップでシャツを試着した際、タックインしても出してもどちらでも着られそうな丈感だったので、販売員に
「このシャツはタックインした方がいいですか?出して着た方がいいですか?」
と尋ねたところ
「どっちでもいいですよ」
という返事だったので失望したとのことだった。
販売員からすると「どちらの着方でも利用できます」という意味だったのかもしれない(善意に解釈すれば)が、知人からすると、「より似合う方はどちらかを尋ねているのに適切な答えが返ってこなかった」と感じたわけである。
しかし、もし悪意に解釈するなら、この販売員はどちらが似合っているかを判断する力、サジェスチョンする力がなかったのかもしれない。
人間は誰しもわざわざカネを払って服を買うからには、他人から良く見られたいという願望がある。
似合ってなくてもそれを着ていれば満足だという人はごく少数だろう。
だから、他人からの評価は重要で、試着段階での販売員からの評価というのは、本来であれば非常に重要で参考になる。
しかし、その能力がないのなら、販売員など要らず、それこそ外国の空港に設置してあるヒートテックの自動販売機で十分である。
業界もメディアもこぞってネット通販に目を奪われているが、自動採寸システムもバーチャル試着システムも現段階ではさしたる成果は挙げていない。販売員不要論も目にすることが増えたが、現時点で「似合う・似合わない」を適切に判断でき、場合によっては本人も気付かなかった新たな着こなしを提案できるのは販売員だけである。その能力を磨けばネット通販比率がもっと増えても仕事を奪われることはないだろう。
そこに気付いている販売員、ショップ、ショップ運営会社はどれほどあるだろうか。そうでなければ、ネット通販会社や似非システム屋の食い物にされるだけである。
平山枝美さんの販売員のための著書をどうぞ~