月別: 7月 2015 (1ページ / 3ページ)

トレンドが変わるたびにワードローブを総入れ替えするような消費行動には二度と戻らない

 今春夏は、レディースのジーンズに少し回復傾向がみられるという声が多い。

理由はトレンドが変わりつつあるからだ。
それまでのスキニー一辺倒から、テイパードストレートが浮上してきたからだ。

テイパードストレートとはどんな形かというと、スキニーよりは腰回りと太ももにゆとりがあり、つま先に行くに従って細くなっているという形だ。

スキニーの場合、本当に似合うのは足の細くて長い人に限られる(似合っていないのにトレンドだから穿いている人も多いが)がテイパードの場合、許容範囲がもう少し広がる。
スキニーに比べると間口はかなり広い。

しかし、トレンドとはいうものの、2~3年前にはすでにテイパードは店頭デビューしていたから、時間をかけてジワジワと浸透してきたという印象がある。

世間の景気に対する分析は各種あるが、個人的には2012年当時よりは上向きになりつつあると感じる。

今後、このまま景気回復が続いたとして、レディースの新トレンドであるテイパードジーンズが爆発的に売れるかというとそうではないような気がする。

毎年、毎シーズン何かのトレンドはあるが、待ちゆく人がそのトレンドの洋服一辺倒になることはないからだ。

例えば、ピークが過ぎたといわれているスキニージーンズだが、いまだに定番的な位置づけは変わらないし、待ちゆく人を眺めていても着用者も多くいる。
これが一挙にテイパードに変わるということはちょっと考えにくい。

また、非トレンドでちょっとダサいと思われ始めている、チュニック+レギンスという着こなしだが、これだって絶滅したわけではない。
都心でもちょいちょい見かけるし、郊外の住宅地なんかではむしろマス化したままのように見える。

復活したセーターの肩掛けスタイルだってそうだ。
今、わざわざそれをする人は少ないが、だからと言って、セーターを肩掛けしている人を見て「プッ ダサっ。3年前のままかよ」とは思わない。
「ああいうテイストが好きなんだな」とか「冷房が効きすぎて寒くなったら袖を通すために用意しているのかな」というくらいにしか思わない。

今後、どれだけ好景気になろうと、かつての高度経済成長期やバブル期のように、そのときどきにトレンドに応じてワードローブを総入れ替えするというような消費スタイルは絶対に復活しないだろう。

今、所有しているスキニージーンズをすべて廃棄して、テイパードジーンズを同じくらいの数そろえようという人はほぼ皆無だろう。

所有しているスキニージーンズを穿きつつ、テイパードジーンズを1本か2本買い足す程度だろう。

ガウチョパンツもしかりだ。
いくら今夏最大のトレンドとはいえ、毎日ガウチョパンツを穿いている女性はそれほどいないだろう。

一昨年に流行した花柄パンツだって、いまだに着用している人がいる。
「ああ、一昨年買ったのね」とは思うが「ダサっ まだあんなもんを穿いてるのか」とは思わない。
着用ローテーションの一つに登録されていたとしても不思議とも思わない。

2005年当時のようにレディースジーンズはブーツカット一辺倒ということにはなりえないし、今後もそういう消費行動にはならないだろう。

この10年間で日本人の洋服に対する考え方はある程度成熟化したのではないかと感じる。

なんだかんだといって、2005年ごろまではあるトレンドが圧倒的に支持された。
レディースのジーンズは全部ブーツカットだし、その前だと女性は全員神戸エレガンスだった時代もあった。

バブル崩壊後ですらああだったのだから、バブル期とか高度経済成長はトレンドへの狂乱ぶりはすさまじかったのではないか。

そして、アパレル各社やブランドの経営陣がああいう状況を創り出したいと考えて、事業を組み立てているなら、それは危険だろう。
むしろ会社やブランドが傾くのではないか。

トレンドが生まれてもそれ一辺倒にならず、それぞれのテイストを何となく使い分けるような消費行動は今後ますます定着するだろう。
驚くような突飛な服装にチャレンジするような人は今後も減り、それぞれのテイストの無難なアイテムを集積して上手くコーディネイトするような人はさらに増えるだろう。

となると、それに対応した企画・販売の形態を考える必要がある。

バブル期や高度経済成長期のような、ワードローブ総入れ替えのような消費行動が戻ることは二度とない。経営陣がそれを理想とし、追いかけているアパレル企業は今後ますます苦境に追い込まれる。




ユニクロの大ヒット商品の共通点は

 あれこれと考えてみたが、開き直ってユニクロを三連発でやってみる。

つい先日、ユニクロに対して、ヒートテック、ウルトラライトダウンに続くヒット商品がこの何年間か生まれていないという指摘の記事が掲載された。

まあ、これは事実なのだが、数百万枚単位で売れる大ヒット商品を定期的に生み出せというのも酷な話である。
そんなことができるんだったらワールドもTSIホールディングスも経営は傾いていない。

ちょっと無茶な要求だと感じる。

さて、ユニクロの大ヒット商品をつらつらと思い返してみる。

フリースジャケット
ヒートテック
サラファイン(現エアリズム)
ウルトラライトダウン

という感じになろうか。

共通点は低価格、機能性、イージーケア性ではないか。

逆にカシミアは毎年定番的に店頭に並ぶが大ヒットとまでは呼べない。
チャレンジしたシルクはあまり評判を聞かないので、ユニクロにしてはヒットではないのだろう。

カシミヤとシルクが大ヒットしない原因を自分なりにあれこれと考えてみた。

まず共通するのがどちらもイージーケア性がないことである。

両方とも洗濯機を使った通常洗濯はできない。
筆者からするとこれが何ともめんどくさくてたまらない。イラっとする。

次にそこそこに高価であること。

この2点ではないか。

カシミヤはだいたい9800円前後だし、シルクは記憶では3900円中心だったのではないか。
カシミヤもシルクも高級素材だということは世間的に知られているが、では、「ぜひとも欲しい。安くなったら何枚か買いたい」と思わせるような素材ではないのではないか。
少なくとも筆者はまるっきりそう思わない。
カシミヤもシルクも一生袖を通さなくても何ら痛痒は感じない。

9800円前後のカシミヤはたしかに安いと思うが、だからといって「絶対買いたい」とは思わない。
シーズン末期に価格が下がりきったところで買えば十分だし、何ならカシミヤセーターなんて一生買わなくても良いくらいである。

シルクも同じだ。
筆者の場合、シルクの方がカシミヤよりももっと親しみがない。
だから一生触らなくても何ともない。
今後、シルクの服を着ることは絶対にないだろう。

一般消費者もある程度は同じではないか。

シルクに縁があって、安く手に入るなら絶対に買いたいと思っている人は少ないのではないか。
むしろ、これまでの人生でシルクに縁のなかった人の方が多いのではないか。
そういう人はこれからの人生においてもシルクを手に入れる必要性を全く感じていないだろう。筆者と同じように。

となると、シルクをいくら3900円とか5900円に値下げしても無駄だ。

もともとの購買動機がない。
要らないものは10円に下がっても要らないのである。

そしておまけに洗濯が面倒である。

カシミヤセーターがそれでもある程度定番化するほどに売れたのは、同じ洗濯ができないアイテムでも、セーター類を頻繁に洗うという習慣がないからだろう。

セーター類はシーズン中にせいぜい1度か2度洗う程度である。

元から洗わないアイテムだから洗濯の難しい素材でも気にならない。

ちなみにカシミヤは本来洗濯可能である。
ただし洗濯機ではなく、水で手洗いである。
あとは軽く絞って整えて陰干しをすれば終わりである。

ユニクロはこれまで高額品を低価格に引き下げることで大ヒット商品を生み出してきた。
ジーンズもこれに入れても良いだろう。

しかし、カシミヤやシルクを見ると、一概に低価格化しただけでは大ヒットにつながらないともいえる。

だったら、そこそこの低価格で、機能性とイージーケア性のある商品を考え続ければそのうちに大ヒットにつながるのではないか。
さらにいえば元は高額品というイメージがあればなお良い。

それはなんだろうか。

それが思いつくくらいなら、今頃ユニクロに売り込んでいくばくかの金を手に入れている。

毎年の猛暑のこの時期に夢想する。
ヒートテックの逆で、汗を吸って服そのものの温度が1度くらいさがるような冷却服があったらなあと。
暑さが苦手なのでそういう肌着が1000~2000円くらいであったら絶対に買う。
もしそんな素材をユニクロが開発できたら大ヒット間違いなしだろう。

まあ、暑がりのオッサンの単なる妄想である。





単月の結果でユニクロ失速と決めつける危険性

 ユニクロの6月度国内既存店売上高が前年比11・7%と大幅に落ち込んだことから、「ユニクロ失速」という記事がチラホラと出始めた。

結論からいうと、その兆候はあるかもしれないが6月度だけの結果でそう決めつけるのはいささか早計ではないかと感じる。
判断を下すのは7月度以降の推移を見てからの方が賢明だろう。

ただ、この記事はそれなりにユニクロの現状に対する消費者の雰囲気をうまく抽出していると感じる。

マクドナルドの二の舞か? 
なぜだ! ユニクロが突然、売れなくなった

「飽きた」「高くなった」「もう欲しい物がない」……
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44266

しかし、タイトル通りにすぐさま低迷し始めるとは思えないのも事実である。

この記事に示されているような可能性はあるだろうが、それでもユニクロの売上高がすぐさま大幅に減少することは考えにくい。逆に5000億円規模や3000億円規模に縮小するなら堅調に推移するだろう。
むしろ2000億円規模の大手総合アパレル各社の方がよほど経営危機に瀕している。

それに仮にユニクロがつぶれたとしてもそこら辺の苦戦続きのアパレルブランドの売上高が劇的に増えることは考えられない。ワールドやイトキン、ファイブフォックス、レナウン、TSIホールディングスが劇的復活することはありえない。それこそぬか喜びに終わるだろう。

それはさておき、先ほどの記事の中身を紹介しよう。

このあたりの分析は的確だと思う。

だが、日本の消費者は全く違う。誤解を恐れずに言うと、多くの日本人にとってユニクロは、お世辞にも「背伸びして買う服」ではない。

確かに、生地も縫製もしっかりしていて長持ちする。ヘンな柄やイラストのついたものが少なく、シンプルだから誰にでも似合う。何より、いつ店に行っても安かった。

しかし今、こうしたユニクロの美点が「強み」ではなく「弱み」に変わろうとしている。円安や材料費上昇などの要因で、値上げを余儀なくされているのが、最大の理由だ。マーケティングが専門の、慶應大学商学部教授の白井美由里氏が指摘する。

「誰もがユニクロには『高品質で低価格』というイメージを抱いています。しかし、数年かけてアンケート調査を行ったところ、実は『品質がいいのに安い』のではなく『安いわりに品質が良い』と評価されていることが分かりました」

また、消費者がユニクロ製品の何を重視して購入しているかを調べてみると、「品質の良さよりも安さのほうをより重視している」との結果が出たという。つまり、

「ユニクロの商品の主な『売り』は安さであり、ゆえに値上げが難しいということです。マーケティング戦略の一般論として、高級ブランドのほうが価格の自由度が高い。高いものは安くできますが、もともと安いと思われているものを値上げするのは困難なのです」(前出・白井氏)

とある。
まあ、納得である。
ただし【「品質が良いのに安い」ではなく「安いわりに品質が良い」と評価されていることが分かりました】とあるが、そんなことはわざわざ分析せずとも初めからわかっていたことではないか。

さらに

ほんの2年前までユニクロは、ジーンズ1本を1990円、2990円、3990円の3プライスで売っていた。だが昨年、柳井社長は創業以来初めての一斉値上げに踏み切った。現在、ジーンズの主要ラインナップには4990円の値札もつく。さらに今年の秋冬商品では、一部で大幅な値上げを予定しているとも発表した。値上げ幅を全商品で均すと、およそ1割に達するという。

とある。

記事の誤解を指摘したいが、ユニクロがUJとして1990、2990、3990円ジーンズを打ち出したのは2010年であるから5年前のことである。
そしてその期間は長くは続いていない。2011年には廃止されたので1年間しか続いていない。
2012年以降のユニクロは、ジーンズ3990円、それ以外のカラーパンツを1990円、チノパンを2990~3990円で販売している。

過去には何年間もかけてやっと完売できたメイドインジャパンジーンズ(企画的には失敗作だと感じる)があったが、あれは5990円~1万円で販売していた。

ただ、

「ユニクロと同じ価格帯には、世界中のファストファッションブランドがひしめいています。その中で1社だけ値上げが続けば、『この金額を払うなら、別にユニクロじゃなくていいや』と離れる消費者が増えるでしょう」

現に店頭では、「ユニクロ、なんか高くなったね」という客の声がすでに聞こえ始めている。

とあるのは事実に近いと感じる。
筆者の体感と同じだ。

スエットシャツ(いわゆるトレーナー)が1990円から2490円に、スエットフルジップパーカが2990円から3490円に値上がりしたのはどうしても「高ッ」と感じる。しかもこれは税別価格である。

原材料費の高騰、為替の円安基調、中国工場の慢性的な人件費高騰という3つの理由があるから値上げがやむを得ないことは承知している。

それでも「高いユニクロ」に対してそれほど魅力を感じない人が多いというのも事実である。

人は何かを買う時、無意識のうちに「内的参照価格」、つまり「このくらいまでなら出せる」という金額にモノの値段を照らし合わせるという。エルメスで服やカバンを買うときは「20万円出しても仕方ない」となる。だが、良くも悪くも「普通の服」ばかりというイメージが染みついたユニクロでは、1万円払うのも高いと感じる。どうしようもない現実だ。

これもほぼその通りだと思う。
そのための「+J」導入だったのだろうし、今秋からクリストフ・ルメールとのコラボなのだろう。
これまで上手く育たなかった外部デザイナーとのコラボが今秋から急に上手く行くとは考えにくい。
このラインを確立するためには少なからぬ時間が必要なのではないか。

ユニクロのくせに5000円もするジーンズは買いたくない—値段が許容できる水準を超えた瞬間、客はソッポを向き、何も言わず、何も買わずに店を出てゆく。

これもその通りだ。

そしてここまで高いならほかのブランドでも良いとも思う。
筆者もユニクロのジーンズに4990円支払うなら、エドウインの値下がり品か、ラングラーの定価商品を買う。

以上のような不満はこれまでずっと消費者の中にくすぶっていたもので、今、急に出て来たものではない。
実際に筆者だってずっとそう思ってきた。
今までくすぶっていたものが今後、さらに顕在化する可能性は高い。

あと、他メディアの中には、ヒートテック、ウルトラライトダウンに続くヒット商品がないと指摘する記事もあり、これもその通りだ。

しかし、ユニクロを弁護するわけではないが、何百万枚単位で販売できる大ヒット商品なんてそう簡単には生まれない。そんなに簡単に生まれるなら他のブランドがなぜここまで低迷しているのかということになる。
ユニクロに対してちょっと酷ではないか。

今のアパレル業界なら数千枚売ったらヒット商品である。
1万枚越えたら大ヒットである。
ユニクロとは販売枚数のケタが三つくらい違う。

不振といっても他のブランドなら超大ヒット商品並みの販売枚数があるのがユニクロである。

他の有象無象のアパレルブランドが束になっても敵わない規模がある。

話は逸れるがくだんの記事の中での柳井会長の考え方は賛成である。

柳井社長は、かつてこう語っていた。

「ファッションブランドはありもしないライフスタイル、いわば虚像を売っているようなもの」

「(既存のアパレル産業は)まず能書きとか自分たちに都合のいい情報をつくってお客を誘導するような商売でしょ」

細かい経営方針はコロコロ変える柳井社長にあって、この「ファッション」や「高級ブランド」といったものへの対抗心、批判精神は一貫している。

これはまったく同感である。
筆者もファッションブランドの能書きとか虚像作りは大嫌いである。
それ故にファッションがよくわからないし、ファッション業界には胡散臭さを感じる。

だからこそ、ユニクロに対しては共感する部分もある。

まあ、どっちにしろ他人の会社なので潰れようと身売りしようとどうなろうと構わないのだが、7月以降の推移を見つつ、是是非非で考えていきたい。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20


ユニクロ思考術
柳井 正
新潮社
2009-10-15


ユニクロ 世界一をつかむ経営
月泉 博
日本経済新聞出版社
2012-07-07


ユニクロに多くを求めすぎるのはいかがなものか

 一説によると日本国民の96%が所有しているといわれるユニクロ。
普及率だけでいえば国民服ともいえる。

それだけ普及率が高いということは様々な人がユニクロを所有しているということになる。

そこでたびたび話題になるのがユニクロの洋服のサイズ感についてである。

女性間での評判はしらない。
今回は男性間での評判をまとめてみる。

結論から言うと、「みんな好き勝手に無茶をいうよなあ」という感想である。

最近の若い男性はかなり細い人も多い。

そういう彼らからは「ユニクロの服はサイズ感が大きすぎる。Sサイズでも大きすぎるくらい」という声を聴く。
もうあまり若いとは言えなくなっているが、31歳の元美容師がいるが、彼は相変わらず細身である。
そんな彼はユニクロのサイズ感は大きすぎると感じるようだ。

一方、中高年の男性は太ましい人が多い。
飲酒を伴った暴飲暴食と運動不足が原因であることは言わずもがなである。

そういう彼らは、ユニクロのサイズ感は小さすぎるという。

稀に運動をしていたがために足や腕周りだけが平均値よりもたくましい人がいる。
そういう彼らはお気の毒だがどうしようもない。

筆者はだいたいユニクロのMかLサイズを着ている。
別にサイズ感にはなんの文句もない。

ユニクロの中にもゆったりしたシルエットの商品と、タイトなシルエットの商品が混在しており、試着をしてみてゆったりタイプならMサイズを買うし、タイトなタイプならLサイズを買う。
ただ、Lサイズは袖丈や着丈がちょっと長くなってしまう。これは仕方がないことなので我慢するほかない。

とくに筆者は腕が短いのでユニクロのLサイズだと袖丈が長すぎる。
そのため、どんなに気に入った色柄のシャツがあってもLサイズしか選択肢がない場合は絶対に買わない。

そんな太ましい中高年からはこんな意見を聴くことも多い。

「ユニクロのサイズ感は何年か前から小さくなっている」

と。

たしかにこれはその通りだと思う。

筆者は98年ごろのフリースブームには冷淡だった。
今でも正直いうとフリースという生地があまり好きではないし、それを使ったジャケット類も好きではない。
なんだろうか、あの手触りも好きではないし、世間が言うほどの暖かさも感じないからだ。
あと風が通り易いというのも嫌いな点だ。
同じ通風性があるならウールのセーターの方がずっと好きである。

しかし、それでもあれほどブームになっているのなら、業界紙記者として一度試してみなくてはならないと思って、99年ごろに1枚だけ購入した。
値段も当時、税込1900円だったので失敗してもそれほど惜しくなかった。
これが5000円以上なら絶対に買わなかった。

Mサイズを購入して着用してみると、今もはっきりと覚えているが、身幅が異様に広かった。

通常ブランドのMサイズより1回りか2回り大きかったように感じた。

そして何度か着用してみたが世間で言われているほど暖かいとは感じなかったので知人に差し上げた。

その当時のユニクロからすると今のユニクロのシルエットはだいぶとスマートになっていることは間違いない。

とくに2000年を越えたあたりからメンズの服は業界全般的にシルエットがタイトになっている。
これは2000年から2007年まで、ディオール・オムのディレクターに就任したエディ・スリマンの影響だと聞いたことがある。

2008年からスキニージーンズが流行したこともその流れが継続することを後押ししたのではないかとも思う。

2015年の現在、レディースの一部ブランドでドロップショルダーなど揺り戻しの動きは少しあるものの、タイトなシルエットが基本であることは変わりがない。
いずれ、ルーズシルエットの流行が来るだろうが、おそらくは80年代のアルマーニが提唱したようなシルエットではないだろう。今のタイトシルエットを基本としたルーズシルエットになるのではないか。

その証拠にレディースのドロップショルダーアイテムは、たしかに肩はルーズだが、アームホールは細い。
80年代~90年代半ばのような太い袖ではない。

実用品的要素が強いとはいえ、ユニクロもトレンドとは無関係ではないから、当然、シルエットもある程度はトレンドに合わせる。
タイトシルエットが業界的に基本となっているので、それに合わせざるを得ない。

逆に合わせなければ、ユニクロの売上高はもっと激減していただろう。

閑話休題

こういう流れであるから、ユニクロもトレンドには適合させなくてはならない。
太ましい中高年男性は周りをよく見てもらいたい。

いまどき、80年代~90年代半ばまでのように身頃もダブダブで、アームホールが大きくて袖全体が太い服なんてどこに売っているのか。
また、大多数の人間はそういう流行おくれの洋服を着たいとは思っていないし、今の目で見ると、あの当時の洋服の形はかっこ悪く見える。

あんなのを着ていたら、バブル期のオッサンのコスプレにしかならない。

逆に細身の若者はユニクロじゃなくてジーユーを買うべきだろう。
なんどか試着してみたが、同じMサイズでもジーユーの方が確実にユニクロよりも細身である。

結局、洋服なんてものは1つのブランドで万人の体型をカバーするのは不可能である。
ユニクロはXSからXLまでそろえているのだから、カバーしようと努力をしている部類である。

ほかのブランドになると多くてもSMLの3サイズ。
下手をすると2サイズとか1サイズのブランドも珍しくない。
3サイズあるブランドでも1サイズしかないアイテムもある。

もしかしたらジーユーの素材クオリティを上げた細身のブランドというのは需要があるかもしれない。
ただ市場規模がどれほどあるかはわからない。「そこそこ上質な細身の服」なんてどんなにがんばっても1000億円規模にはならないだろう。

一方、ユニクロがキツすぎると感じる太ましい中高年は、せめて今のユニクロのXLサイズが着られるくらいまでダイエットしてみてはどうか。

不満があるなら、昨今は太ましい中高年男性に向けた専門ブランドがあるからそちらを買ってみてはどうか。
ただし価格はユニクロよりも高くなる。

生産ロット数からいえば高くならざるを得ないほどに少ない。
それほどにニッチな市場だということになる。

最大公約数的なブランドのユニクロだから、効率を考えれば、そんな細すぎたり太すぎたりするようなニッチな市場に踏み込むことは今後もあり得ないだろう。

ダイエットするか、少し高額な専門ブランドを買うか、太ましい中高年男性の選択肢は二つに一つしかない。
「価格がそこそこに安いユニクロでビッグサイズを」なんて、そんな都合の良い美味しいところ取りは不可能である。



自社の常識は世間の非常識

 東芝ではないが、各企業で独特の仕きたりとか暗黙の了解とかがある。
長年の習慣で各経営者は何がおかしいのかわからなくなっているのだろう。

そういえば、国内繊維産地にも奇妙な習慣のある企業は多い。

先日、聞いた某産地企業では長年在庫にしている生地の評価を下げていないとのこと。
要するに、3年前のも5年前のも10年前のも20年前のもいまだのその当時の評価金額のまま在庫として積み上げているそうだ。
今度経営者に会ったら真偽のほどを直接尋ねてみたいと思う。

通常だと、衣料品だろうと生地だろうと在庫なんて何年抱え込んでいても定価で売れることなどない。
むしろ月日がたてばたつほど、定価で売ることはどんどんと難しくなってくる。

だから、在庫は徐々に価格を切り下げて損失として計上する。
何年間かするとその在庫評価はゼロになってしまう。
ゼロになった時点で産業廃棄物として「金を払って」処理してもらう。
衣料品なら古着屋やバッタ屋に流したり、ファッション専門学校に生地を寄付したりという場合もある。

これが普通である。

在庫の評価基準を下げないと、毎年資産が増えていくことになる。
どんなに良い商品でも完売することはない。
資産が増えれば増えるほどそれにかかる税金も増える。
これが絶好調で売上高が毎年ドンドンと増え続けている企業なら別だが、売上高が横ばい前後の企業ならゆくゆくは資金繰りが行き詰る。

なにせ、入ってくるお金が変わらないのに税金は毎年ドンドン上がっていくのだから。

抱え込んでいても構わないのは毎年一定数量が確実に販売できる定番だけである。
そして衣料品だけではなく生地にも定番は存在する。
在庫の評価を落とさずに済むのはそういう定番生地だけである。

何年も何十年も動かない生地は、定番とはとても呼べない。
ましてや将来においてそんな「死筋」の生地が突然動き始めることもない。

その噂が事実なら、この某産地企業は近いうちに経営破綻するだろう。

多くの産地企業はガチャマン時代(ガッチャマンではない)にため込んだ資産があるからそれを取り崩して延命することが可能だが、資産は無限ではない。
いずれその資産もすべて手放すことになる。
資産がなくなれば資金繰りが行き詰まり、経営は破たんする。

噂が事実だとするならなぜそんなバカな経営を続けているのだろうか。
まったく理解できない。
それこそ、この企業の常識は世間の非常識である。

もしかすると、バブル期以前はこの経営で通用したのかもしれない。

バブル期は大学生だったので当時の経営のセオリーは正直わからない。

その当時と今では時代が変わっているし産業を取り巻く環境も変わっている。
なぜ時代に合わせた経営手法に変えようとしないのだろうか。

産地企業の多くが危機に瀕している。

あらゆる努力を尽くしてもそれでも危機から脱せない企業もあり、それに対しては深く同情する。
しかし、この某企業のようにガチャマン時代とかバブル期の感覚をそのまま墨守し続けて危機に瀕する企業も多い。
それはいわば自業自得であり、市場から退場させられるのは当然である。
彼らに対してはまったく同情しない。
むしろ過剰な補助金だの助成金だので延命させる方が有害ではないかとさえ思う。

自ら変わるということはなかなかに難しい。
言うは易く行うは難しだということも承知している。
それでも変わらない企業が存続し続けることは不可能である。

いつまでも過去の常識にしがみついていても事態は好転しない。
それで好転すると思っているなら死ぬまでしがみついていれば良い






3倍の価格差では売れなくても当たり前

 ちょっと昔話を。
2000年~2003年のどこかの時点のことである。
正確な年を覚えていない。

我が家はテレビ番組を録画するのにビデオデッキを使っていた。

ついでにいうと、我が家はDVDを導入したのはかなり最近のことで2007年か08年ごろのことである。
もちろん液晶テレビに買い替えたのもそのころである。

そのビデオデッキの調子が悪くなった。
クリーニングテープを使って、ヘッドをクリーニングせねばならないらしい。

ところが録画用のビデオテープはあるが、クリーニングテープはない。

DVDしか知らない世代からすればなんのこっちゃ?の話だろう。(笑)

ビデオデッキを復活させるためにはクリーニングテープを買わねばならない。
我が家から自動車で30分ほど走れば大型家電量販店があるが、残念ながらその日は自動車がなかった。

仕方がないので最寄駅前にある家族経営の小さな電器屋に行った。
それまでクリーニングテープを買ったことがなかったので、価格相場はわからない。
インターネットも普及していない頃だから価格を調べることもできなかったが、周りの人に尋ねてだいたい1000円前後ではないかということがわかった。

家電量販店ではないから、その店で買うと幾分か高いだろうと覚悟を決めていたのだが、
まあ、せいぜい1500円程度ではないかと推測していた。

で、その電器屋におそるおそる入ってみた。
毎日通っているものの中に入るのは初めてである。

クリーニングテープありますか?

と問うと、店主のオジサン(おそらく40代半ば)が「ありますよ」との答え。

「じゃあ、おいくらですか?」と尋ねたところ、なんと

「3000円です」

という答えが返ってきた。

その時、予想以上の高価格ぶりに驚いてしまい、頭が真っ白になりながら

「(゚Д゚≡゚д゚)エッ!? すみません。だったら要らないです」といって店を出た。

最寄駅から電車に乗って隣駅まで行くと、中型のスーパーマーケットがある。
電池や豆電球くらいならそこに売っているからクリーニングテープがあるのではないかと覗いてみたところ、あった。

値段を見ると「980円」と書かれてあった。

念のためにいうと、このクリーニングテープは別に聴いたこともないようなアジアのメーカー品ではなかった。
銘柄は忘れたが国内家電メーカーの商品である。

もちろん980円のクリーニングテープを買ったことは言うまでもない。

先ほどの3000円のクリーニングテープも銘柄は違うが国内家電メーカーの商品だった。

いくら、個人経営の電器屋が苦しく、仕入れロットもまとまらないとはいえ、これほどの価格差があれば売れなくなるのは当然だと感じた。
980円と3000円ならだれでも980円の方を買う。

これを「個人経営の店を助けるんだ!」と言って、わざわざ3000円のクリーニングテープを買う人はよほどの変人だといえる。

しかも980円のも3000円のも両方とも同等の国内有名家電メーカーの商品である。
これで980円のが見知らぬアジアメーカーの商品なら、「やっぱり3000円のを買う」という人がいても不思議ではないが、両方ともが国内家電メーカーの商品であるなら、3000円のクリーニングテープを買う人は皆無だろう。

さて、昨今は安売りを異様に敵視する人が繊維・アパレル業界にいる。

たしかに安売りが蔓延してデフレに陥っていることは否定しない。
しかし、そういう人たちも生活をする上では消費しているわけであり、その時に「わざわざ高い方を買っているのか?」と問いたい。
おそらく、ほとんどの人が安い商品を購入しているのではないかと思う。

自分たちが企画・製造・販売に携わっている洋服だけはなぜ別物だと考えられるのかが理解できない。

一般消費者の目から見れば洋服も同じである。

筆者はこの後、この個人経営の電器屋に立ち寄ることは二度となくなったし、この先、二度と商品を買うことはない。
個人経営店が苦しいのは理解するが、いくらなんでも高すぎる。

反対に考えれば、同じ商品・同じような商品を高く売るためにはどうすれば良いのかということになる。
それを考えなくては安売り競争から脱却はできないだろう。

もしかしたら、この電器屋はアフターケアがものすごく良いのかもしれない。

それくらいの何かがないと、電器屋は淘汰されてしまう。
逆に何もない個人経営店は電器屋に限らず淘汰されて当然だとも思う。

価格で大手に敵わないなら、それ以外のサービスを強化するしかない。
サービスというのは別にアフターケアだけではない。店主の知識に基づいた発信や、店内の楽しい雰囲気作りもサービスに含まれる。
そういうものが一切なくて、商品価格が高いだけの個人経営店が淘汰されるのは当たり前である。

個人経営店が淘汰されることに対して、さまざまな意見があるが、価格以外の価値を作ろうともしなかった店は残念ながら努力不足と言わざるを得ない。
価値づくりに努力はしたけど報われなかった店には同情を禁じ得ないが。

努力不足の店が淘汰されることに対してはまったく同情しない。




入店客数が変わらないのに売上高を増やしたJR名古屋タカシマヤ

 7月8日発売の「週刊東洋経済別冊 動き出す世界の名古屋」で名古屋市内の商業施設の動向を4Pにまとめたことを以前にも書いた。

前回に書いたのは、三越伊勢丹グループが各有力ブランドと共同で新業態開発に乗り出す構想についてだった。
正直なところ、実現はなかなか難しいだろうし、よしんば新業態・新ブランドを開発できたとしてもそれが売れるようになるかどうかは未知数である。
結果的に売れなくて撤退という可能性も十分にある。

それでもそういう難事業に挑戦するという姿勢は評価したいと考えている。

今回は、取材で印象に残ったそれ以外のことをまとめてみたい。
業界にとって何らかの参考になれば幸いである。

この取材を開始する前に話題となったのが、JR名古屋タカシマヤが栄地区にある松坂屋名古屋店の売上高を追い越したという報道である。
昨年度の売上高は、JR名古屋タカシマヤが1260億円、松坂屋名古屋店が1256億円で、わずか4億円ではあるが、JR名古屋タカシマヤが松坂屋を上回った。

JR名古屋タカシマヤは2000年の開業なので名古屋市内の百貨店としてはもっとも新参者である。
一方の松坂屋名古屋店は栄地区にある老舗で、長らく名古屋市内の一番店だった。

新参者が老舗一番店の売上高を追い越したからニュースバリューが高かったというわけである。
ただ、この規模の店で4億円程度の売上高だったらすぐにでも入れ替わる可能性は高い。
今後も継続的にJR名古屋タカシマヤが松坂屋の売上高を上回り続けるかというとちょっと疑問である。

今回、JR名古屋タカシマヤの取材で印象的だったのが次のグラフで示された資料である。
開業以来入店客数はほとんど変わっていないのに、売上高は開業当初から比べて倍増している点である。

写真 11

写真 22

通常、商業施設の場合、入店客数を増やすことが売上高増につながりやすい。
入店客数が増えれば増えるほど、購買客数も増えやすいので、多くの商業施設は入店客数を増やそうと努力する。

しかし、よく考えてみれば、いくら入店客数を増やし続けても自ずと限界は生じる。

無限に入店客数を増やし続けることは不可能である。

となると、入店客数は横ばいで購買客数を増やす方が効率的である。
もしくは、購買単価を上げるかのどちらかである。

とはいうものの、入店客数は同じで購買客数を増やすことも購買単価を上げることもなかなか実行するのは難しい。

当然、広報担当者にその秘訣を尋ねたところ、

「常に売り場を変化させて新鮮さを出し続けた」とか「イベントを頻繁に開催して販促につなげた」とか言うような教科書的な答えしか返ってこなかった。

まあ、広報担当者からすると、詳細に説明して手の内を明かす必要もないのだからこの返答は当然だといえる。

で、取材後にタカシマヤの館内を上から下までくまなく歩いてみた。
何かがわかるかと思ったのだが、まったく何もわからなかった。
筆者の取材力と洞察力のレベルの低さである。

投げっぱなしで申し訳ないのだが、他の地方の商業施設も大いに見習うべき施策であろう。

他方、松坂屋である。

松阪屋は三館体制の巨大な売り場である。

本館はオーソドックスな正統派百貨店
南館はヤング向けブランドを集積しており、H&Mも入店している。
北館はシニア向けブランドと外商

という構成である。

松阪屋名古屋店の売上高に占める外商の割合は高い。
4割を占める。

一方のタカシマヤの外商の売上比率は低そうである。
担当者からは明確な数字は差し控えたいとの答えが返ってきたが、独自に聞きまわった結果は「だいたい2割台ではないか」という声が大勢を占めた。

そういう意味では名古屋地区の富裕層は変わらず松坂屋名古屋店を支持しているといえる。

その松坂屋の南館に11月にヨドバシカメラが入店する。
このヨドバシカメラは名古屋初出店なのだが、実は、本来は2017年に開業するJRゲートタワーに出店するはずだった。
JRゲートタワーは実質的にタカシマヤの増床となる物件で、ここには今のタカシマヤでは扱いにくいヤングブランドが集積される予定である。
ところが、この竣工が遅れたことからヨドバシカメラが出店をキャンセルし、代わりにビックカメラが入店することが決まった。

これは裏話でもなんでもなく公式に発表されている事実である。
ウェブで探してもその記事は出てくる。

タカシマヤをキャンセルしたヨドバシカメラが松坂屋名古屋店に今秋オープンするのだからちょっとおもしろい展開である。

「一番店の座奪回に燃える松坂屋名古屋店と、タカシマヤをキャンセルしたヨドバシカメラがガッチリとタッグを組んだ」

なんてコピーを付けたら昔のプロレスでよくあった因縁試合の打ち出しみたいになる。

まあ、それは冗談として、商況がどう推移するのかには興味をそそられる。

先日の名古屋取材の雑感は概ねそんなところである。

週刊東洋経済臨時増刊 動き出す名古屋2015 [雑誌]
週刊東洋経済 臨時増刊編集部
東洋経済新報社
2015-07-08



地方の繊維製造加工業は「横並び」志向を捨てろ

 東洋経済オンラインの「地方創生のリアル」という連載が面白い。

地方創生の失敗事例を毎回書いてあるのだが、繊維・衣料品の製造加工業にも通じる事例が満載である。

7月上旬には、

地方はどうすれば「横並び」から脱出できるか

「プレミアム商品券」では地方は生き返らない
http://toyokeizai.net/articles/-/75965

という記事が掲載された。

要するにプレミアム商品券は各地方で横並びの企画にすぎないから、そんなことでは地方経済は復活しないという内容であり、深く賛同する。

とくに記事中の次の一節には激しく同意する。

例えば、隣り合う自治体が似たような「B級グルメ」や「ゆるキャラ」に取り組んだり、同じような体育館や市民ホールを整備するケースが目立っています。結果として、互いに潰し合いをすることになってしまっています。

今、地域活性化事業に求められているのは、全国どこでもできるような「汎用性」ではなく、ここでしかできないという「希少性」です。

「やっぱり、あそこだよね」と「その地域」を選んでもらうためには、まわりの地域がやることとは、全く別のことをやらなくてはなりません。「その地域にしかないもの」があるからこそ、人々は観光でその場所を訪れたり、その地域で作られた商品を買っていくのです。

とのことである。

自分の身に置き換えてみると、昨今の地方の繊維製造加工業者や行政、一部の大企業は異様に「物語」を求めすぎており、いささかうんざりし呆れ果てている。

はっきり言ってしまえば、彼らは気仙沼ニットの成功事例を見て、単に横並び企画を夢想しているに過ぎない。
全国各地に疑似気仙沼ニットが乱立してどれもこれもが成功するはずがない。
もちろん、彼らがやろうとしていることはニットではない。Tシャツだったりジーンズだったり、様々である。

しかし、それなりの美しい物語を発掘(ときにでっち上げて)して、べらぼうな高価格を付けて少量を販売するというやり方は、気仙沼ニットを換骨奪胎したものであり、二番煎じ・三番煎じでしかない。

気仙沼ニットがそれなりの成功例であることは異論がない。
しかし、販売枚数は聴くところによると年間150枚~200枚程度である。
商品単価は高い。10万円を越えている。
15万~20万円くらいである。

仮に20万円の商品が150枚売れたとして、年間売上高は3千万円である。
200枚でも4千万円だ。

原価率は発表されていないからわからないが、仮に4割だとして、利益は1200万~1600万円である。
それを15人の編み手で分けたとして、一人当たりに分配されるのは最大100万円前後ということになる。
ここに事務局や仕掛け人たちの取り分も入るのだからそれほどの高い金額とは言えない。

気仙沼ニットの知名度だから年間200枚前後も売れるともいえるし、気仙沼ニットの知名度をもってしても年間200枚前後しか売れないともいえる。

どちらにせよ、地方の繊維製造加工業の工場が安定操業できるほどのロットには至っていない。

原因は超高価格である。
10万円を越えるニットを毎年買い続けられる日本人はそれほど多く存在しない。
それこそ一握りの富裕層くらいである。

その富裕層だってこれから何年間にも渡って、気仙沼ニットを毎年買い続けるわけにはいかないだろう。
衣料品は嗜好品の側面があるから、同じような服ばかりを何枚も持っていても仕方がない。
たまには違うテイストの商品もほしくなる。
肌着や靴下のように消耗する度合いが高い商品ならまだしも冬場しか着用しないセーターなんて5年着用してもそうそうは傷まない。
となると、よほどの変人でない限り、同じような商品を何枚も所有はしないし、損傷による買い替え需要は起きにくい。

さきがけとなった気仙沼ニットはそれなりの存在感があるとして、今からこれを真似しようとするようなブランドに存在価値はない。

何よりも、先ほどの記事ではないが、各地に超高額な疑似気仙沼ニットが乱立することで、富裕層の奪い合いとなることは目に見えている。
10万円を越えるニット、1万円を越えるTシャツ、3万円を越えるジーンズ、そんなものを多くの日本人が毎年何枚も買うことはできない。
買える層は限られてくるから必然的に顧客の争奪戦と化す。

美しい物語で立ち上げたブランド同士が血で血を洗う戦いを繰り広げるのだから、それを見物するのは一興でもある。(笑)

外国の富裕層に売れば良いという声もあるが、外国の富裕層にどうやって売るのか。
自社のウェブサイトもろくに持っていないような製造加工業者がまさか「ウェブ販売をすれば良い」とか言い出すのだろうか。ならば自社のウェブサイトを整備する方が先決だろう。

それに中国のバブル経済は弾けたと見られているから、今後はこれまでほど中国人の購買力はあてにできないだろう。

もし、地方の繊維製造加工工場が復活したいのなら、毎月安定的に工場の生産ラインを回せるような価格設定の商品を作るべきだろう。
それはどれくらいの価格か?
Tシャツなら2900~4900円、ジーンズなら8000~1万円強、セーターなら1万~3万円くらいではないか。
貧乏な筆者の相場ならこれくらいだ。

それ以上の商品は筆者は買わないし、買えない。
今後どれほどの金持ちになろうともそれ以上の商品はおそらく買わない。

それに「物語」を過剰に求めることによって、物語の捏造・偽造が生じる。
これは未来への予想ではなく、過去すでに起きている。

よくよく思い返してみれば、ビンテージジーンズブームというのも過剰に「物語」が求められた。
筆者ははっきり言って、ビンテージジーンズという商品が好きではないし、その業界も好きではない。
ブームの当初は、「〇〇年代のあのブランドのディテールを再現しました」程度だったのが、どんどんと加熱してきて、そのうちに、「〇〇という幻のデニム生地を云々しました」みたいなウソか本当かわからないような物語が次々と生み出された。

しかし、その中には捏造・偽造されたものが多数あったと聞くし、デニム生地メーカーからも「あいつらが言ってることはハッタリが多い」との声もよく聞いた。

山師のような連中と、「物語」を異様にありがたがるファッション雑誌が煽った結果である。

デニム生地メーカーやデニム生地問屋の中にはそのハッタリにちゃっかりと乗っかって、売上高と知名度を高めたハッタリ企業もあったのだが。

結局、過剰に「物語」を求めるという性向は、20年前のビンテージジーンズブームのころと何も変わっていないということになる。

それでもまだ、繊維製造加工業や行政、大手企業は「横並びの美しい物語」を下敷きにしたブランドを立ち上げたいのだろうか。

独自の新しい切り口のブランド構築を模索した方がよほど成功確率が高いと思うが。



なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか
辻井 啓作
CCCメディアハウス
2014-01-07


夏のバーゲンで買ったお買い得品

 なんだかんだと言って、夏と冬のバーゲンでは何かを買う。
通常の熱心な洋服ファンなら、「〇〇ブランドのアレを3割引きで買う」とか「ブランドはあまりこだわらないが、トレンドの〇〇というアイテムを買う」というようにターゲットがあらかじめ決まっているのかもしれない。
筆者も昔はそうだったが、年を取るごとにそういうターゲットはほとんどなくなってきた。
とくに5年ほど前からはカネもない上に老化が進んでいるのだろうか、「絶対にアレがほしい」と思うようなアイテムやブランドはなくなってきた。

「ユニクロで手ごろな値段に下がった手ごろなアイテムがないかな?」とか
「1000円以下で買えるTシャツないかな?」とか
「ストレッチ混の7分丈・8分丈パンツないかな。値段は1900円以下で」とか

そういう買い方しかしなくなっている。

しかもメンズの夏服というのは、種類が極端に少ない。
トップスならTシャツ、ポロシャツ、半袖シャツくらいしかない。
あとは色柄とパターン(型紙)の異なり具合による微細なシルエットの変化しかない。
それを楽しむのがメンズファッションだと言われればそれまでだが、それでも微細なシルエットの変化のこだわって同じようなTシャツを何枚も集めて楽しむというような性癖は筆者にはまったくない。

そんなわけで今夏のバーゲン品の買い物は筆者史上もっとも脱力した買い方をした。

まあ、誰得企画なのだが、7月1日のバーゲンスタート時に購入したアイテムを晒してみようと思う。
筆者の買い物の最重要点は価格であるから、価格を書きつつ紹介してみる。

まず、この夏のもっとも高額な買い物は、白いジーンズである。
白いジーンズが流行していたが、頑として購入しなかった。
その理由は、汚れやすいからである。
どんなに気を付けて着用しても、どんなにこまめに洗濯を繰り返しても白い衣服は絶対に汚れる。

通常のジーンズならその汚れも「味」ということになるが、白いジーンズにそんな「味」は要らない。

必ず定期的に廃棄しなくてはならないから、高額な商品を買うのがもったいない。
実際に、筆者の知り合いのオシャレーなデザイナーさんとか、オシャレーなデザイン会社社長とか、通常の衣服は必ずブランド物を着ているような人でも白いジーンズに関しては、ユニクロだとか無印良品だとかそのあたりの低価格品を購入している。

筆者が買ったのはエドウインのキープホワイトである。
これは防汚・撥水加工が施されているから汚れをはじきやすい。
その上にストレッチ混であるから動きやすい。
通常の白いジーンズよりは随分と長持ちするのではないかと思って購入した。

購入したのはジーンズメイトである。
5990円(税抜)にまで値下がりしていた。

写真 15

エドウインのウェブサイトで見ると、定価は9500円(税抜)となっており、ここではまだ値下がりしていない。

昔からそうだが、ジーンズメイトは独自に値引きをすることが多い。
それによって一時期は大きく売上高を拡大することができ、そのやり方は今もある程度は引き継がれているといえる。

次に買ったのはリーバイスの502のクロップドパンツである。
たぶん7分丈くらい。
これは3990円にまで値下がりしていたのをライトオンで買った。
一昨年くらいにリーバイスの502の同じ丈のもっとウォッシュのかかったジーンズを購入したが(記憶ではジーンズメイトで2990円くらいに値下がりしていた)、それは吸水速乾機能があるが、ノンストレッチだった。
今回のは吸水速乾機能はないが、ストレッチ混であり、ライトオンの店頭に1枚だけ残っていたのを買った。

写真 23

夏は汗をかく。筆者は大量に汗をかくから、すぐに衣服が体に貼り付く。
ズボンも同じで、汗で足に貼り付いたときこそ、ストレッチ機能があると動きが快適である。

トップスはかなり脱力して買い物をしている。

ライトオンでTシャツを2枚買った。
1900円の商品が900円に値下がりしていたからだ。
今はさらに値下がりして、900円のTシャツ2枚で1500円で売られている。

両方とも綿65%・ポリエステル35%の組成。

黒い方はライトオンのPB「バックナンバー」で、ブルーグレーの方は水甚の商品である。

写真 12
写真 21

ポリエステルが少し混じっている方が汗をかいてもすぐに乾くので快適だと筆者は感じる。
それとこの黒いTシャツはなかなか優秀で、かなり汗をかいても塩が白く浮き出てこない。
もう何度か着用しているが白く塩が浮き出てきたことがない。

あと、センスオブプレイスで買ったのが黒いヘンリーネックTシャツ。
これは2900円が900円にまで値下がりしていた。
綿100%強撚フライス生地だがかなり厚手である。
ここまで厚手なら汗を少々かいても白く塩が浮き出ることもないだろうと購入した。
何度か着用してみたがまだ塩が白く浮き出たことがない。

写真 31

最後にヤマトインターナショナルのファミリーセールでカットソー素材の迷彩柄ベストを買った。
肉体派ではない筆者は、ごまかすためにTシャツの上からベストを着用することが多い。
そのために毎年1枚か2枚くらいベストを買っている。
今回のこのベストはサンプル品扱いで1500円だった。
定価は5900円を設定されていたようだ。

写真11

写真ではわかりにくいが、ボタンの合わせのところを黒で細くパイピングしてある。
この黒いパイピングの素材は合皮を使用してある。

グレー地にブルーベースの手描き風迷彩柄なので黒でも白でも紺でも合わせやすい。

そんな感じで、きっと8月にはまた何枚か適当に安くなった商品を買うかもしれない。

今、多くの人がそこそこの価格で買うのは、冬の防寒アウターくらいではないだろうか。
とはいってもその防寒アウターだって探せば2900円とか3900円でダウンジャケットが売ってるくらいである。
品質は別としてその程度のダウンジャケットでも街着として着用するならそこそこ暖かい。

わざわざ高い商品を買ってもらうためには、何か異なる仕掛けを考える必要がある。
デザインの善し悪しやトレンド対応、製造地、そんなことだけではわざわざ高い商品を購入する動機づけにはならない。




それってどこが「お客様のために」なの?

 洋服が売れないのは平均所得が下がったり、可処分所得が下がったりと、消費者側の経済環境が変化したせいもある。
また、ファッションに対しての興味が平均的に減退していることもあるのではないかとも思う。

しかし、供給側の考え間違いによってさらに売れにくくしている側面も大きいのではないかとも思っている。

以前に何度か書いたことがある。

売上高2000億円規模の大手アパレルの幹部が、「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材を売ってくれ」と某素材メーカーに駆け込んできたことがあった。
この幹部は役員とか事業本部長とかそのあたりのクラスの人だったと耳にしている。

この人は、自社のブランドの顧客層をまるで理解していないといえる。

なぜなら、このアパレルのブランドなら、すくなくとも店頭販売価格はユニクロの1・5倍~2倍になる。
下手をすると3倍を越えるかもしれない。

またユニクロと同じ素材を使ったとしても商品のデザインとシルエットは異なる。

となると、いくらユニクロで何十万本売れた商品と同じ素材とはいえ、売れ行きは異なる。

なぜなら、価格も商品のデザインも異なるからだ。
当然、ユニクロと顧客層も異なる。
店舗の立地も異なる。百貨店やファッションビルがメインだ。

ブランドによってはテイストもまったく違うだろう。

これだけ違うのになぜ、ユニクロが売れたのと同じ素材を使ったら、自社のブランドも売れると考えられるのだろうか。まったく理解に苦しむ。

先日は逆の話を聞いた。

某大手GMSのプライベートブランド企画チームは、パリコレなどの最先端ファッションをベースにして企画を組み立てようとする悪癖があるらしい。

もちろん、企画をする上でパリコレの情報はそれなりには必要である。
しかし、900~4900円の低価格衣料品を企画するに当たってはパリコレ情報をベースに企画を組み立てる必要はない。必要はないというか逆に売れる商品を企画するためには害毒になる。

価格帯が違う、客層が違う、店舗立地が違う、ブランドイメージが違う。

これだけ違っていたら、いくらパリコレの最新ファッションをそのままコピーすることができても売れるはずがない。

パリコレに登場するブランドの商品の価格は最低でも何万円単位である。
GMSの平場にならぶプライベートブランドの価格帯は900~4900円である。

当然、パリコレブランドを買うお客と、GMSの平場で洋服を買うお客はまったく異なる。

パリコレブランドを買う人がGMSで食品や日用雑貨品を買うことはあっても、平場で服を買うことはない。
あったとしてもせいぜい肌着とか靴下とか寝間着くらいである。

某大手アパレルも某GMSもまるっきり異なる客層に向けて商品を提案しているのだから、それは売れなくても当然である。
逆に売れると考えられる人の頭脳構造を疑う。

バブル期のように、新作を店頭に並べたら売れる時代ではなくなっている。
何か違う仕掛けが必要であることは誰しも認識しているだろう。
しかし、それは既存の客層を完全に無視した企画を投入することではない。

某大手アパレルの商品が売れるとするなら、方法はただ一つ。

POPに「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材を使っています」と書くことである。
某大手アパレルにそんなプライドを捨てたことができるだろうか?もしそこまでプライドを捨てられるなら某大手アパレルの売上高は今後ぐんぐん伸びるに違いない。

結局、某大手アパレルも某大手GMSも顧客を見ずに、自分たちの願望・妄想・空想を押し付けているに過ぎない。
「お客様のために」とか「顧客満足」とか「お客様第一に」とかいうキャッチフレーズがうすら寒い。
ひたすらに「自分たちのために」「自分たち満足」「自分たちのオナニー第一」を実践しているだけである。

これでは売れる商品が作れるわけがない。

売れる商品が作りたければ、既存顧客をもう一度見つめなおしてみてはどうか。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20


ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)
横田 増生
文藝春秋
2013-12-04


ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03


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