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南充浩 オフィシャルブログ

入店客数が変わらないのに売上高を増やしたJR名古屋タカシマヤ

2015年7月23日 未分類 0

 7月8日発売の「週刊東洋経済別冊 動き出す世界の名古屋」で名古屋市内の商業施設の動向を4Pにまとめたことを以前にも書いた。

前回に書いたのは、三越伊勢丹グループが各有力ブランドと共同で新業態開発に乗り出す構想についてだった。
正直なところ、実現はなかなか難しいだろうし、よしんば新業態・新ブランドを開発できたとしてもそれが売れるようになるかどうかは未知数である。
結果的に売れなくて撤退という可能性も十分にある。

それでもそういう難事業に挑戦するという姿勢は評価したいと考えている。

今回は、取材で印象に残ったそれ以外のことをまとめてみたい。
業界にとって何らかの参考になれば幸いである。

この取材を開始する前に話題となったのが、JR名古屋タカシマヤが栄地区にある松坂屋名古屋店の売上高を追い越したという報道である。
昨年度の売上高は、JR名古屋タカシマヤが1260億円、松坂屋名古屋店が1256億円で、わずか4億円ではあるが、JR名古屋タカシマヤが松坂屋を上回った。

JR名古屋タカシマヤは2000年の開業なので名古屋市内の百貨店としてはもっとも新参者である。
一方の松坂屋名古屋店は栄地区にある老舗で、長らく名古屋市内の一番店だった。

新参者が老舗一番店の売上高を追い越したからニュースバリューが高かったというわけである。
ただ、この規模の店で4億円程度の売上高だったらすぐにでも入れ替わる可能性は高い。
今後も継続的にJR名古屋タカシマヤが松坂屋の売上高を上回り続けるかというとちょっと疑問である。

今回、JR名古屋タカシマヤの取材で印象的だったのが次のグラフで示された資料である。
開業以来入店客数はほとんど変わっていないのに、売上高は開業当初から比べて倍増している点である。

写真 11

写真 22

通常、商業施設の場合、入店客数を増やすことが売上高増につながりやすい。
入店客数が増えれば増えるほど、購買客数も増えやすいので、多くの商業施設は入店客数を増やそうと努力する。

しかし、よく考えてみれば、いくら入店客数を増やし続けても自ずと限界は生じる。

無限に入店客数を増やし続けることは不可能である。

となると、入店客数は横ばいで購買客数を増やす方が効率的である。
もしくは、購買単価を上げるかのどちらかである。

とはいうものの、入店客数は同じで購買客数を増やすことも購買単価を上げることもなかなか実行するのは難しい。

当然、広報担当者にその秘訣を尋ねたところ、

「常に売り場を変化させて新鮮さを出し続けた」とか「イベントを頻繁に開催して販促につなげた」とか言うような教科書的な答えしか返ってこなかった。

まあ、広報担当者からすると、詳細に説明して手の内を明かす必要もないのだからこの返答は当然だといえる。

で、取材後にタカシマヤの館内を上から下までくまなく歩いてみた。
何かがわかるかと思ったのだが、まったく何もわからなかった。
筆者の取材力と洞察力のレベルの低さである。

投げっぱなしで申し訳ないのだが、他の地方の商業施設も大いに見習うべき施策であろう。

他方、松坂屋である。

松阪屋は三館体制の巨大な売り場である。

本館はオーソドックスな正統派百貨店
南館はヤング向けブランドを集積しており、H&Mも入店している。
北館はシニア向けブランドと外商

という構成である。

松阪屋名古屋店の売上高に占める外商の割合は高い。
4割を占める。

一方のタカシマヤの外商の売上比率は低そうである。
担当者からは明確な数字は差し控えたいとの答えが返ってきたが、独自に聞きまわった結果は「だいたい2割台ではないか」という声が大勢を占めた。

そういう意味では名古屋地区の富裕層は変わらず松坂屋名古屋店を支持しているといえる。

その松坂屋の南館に11月にヨドバシカメラが入店する。
このヨドバシカメラは名古屋初出店なのだが、実は、本来は2017年に開業するJRゲートタワーに出店するはずだった。
JRゲートタワーは実質的にタカシマヤの増床となる物件で、ここには今のタカシマヤでは扱いにくいヤングブランドが集積される予定である。
ところが、この竣工が遅れたことからヨドバシカメラが出店をキャンセルし、代わりにビックカメラが入店することが決まった。

これは裏話でもなんでもなく公式に発表されている事実である。
ウェブで探してもその記事は出てくる。

タカシマヤをキャンセルしたヨドバシカメラが松坂屋名古屋店に今秋オープンするのだからちょっとおもしろい展開である。

「一番店の座奪回に燃える松坂屋名古屋店と、タカシマヤをキャンセルしたヨドバシカメラがガッチリとタッグを組んだ」

なんてコピーを付けたら昔のプロレスでよくあった因縁試合の打ち出しみたいになる。

まあ、それは冗談として、商況がどう推移するのかには興味をそそられる。

先日の名古屋取材の雑感は概ねそんなところである。

週刊東洋経済臨時増刊 動き出す名古屋2015 [雑誌]
週刊東洋経済 臨時増刊編集部
東洋経済新報社
2015-07-08



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