月別: 3月 2015 (1ページ / 3ページ)

国産品としてのコストパフォーマンスに優れるエドウイン

 先日、エドウインの今秋冬展示会にお邪魔した。

エドウインのコストパフォーマンスを改めて認識した。

今春夏は「来るぞ、来るぞ」と言われ続けてきたデニムがやっとトレンドとなった。
この「デニムトレンド」はかれこれ3シーズンくらい言われ続けてきたことであり、正直「やっと来たのか」という感覚である。
ジーンズをわざと破るクラッシュ加工や、そのクラッシュ加工をもう一度補修するリペア加工が今春夏は人気である。
どちらも似たようなものだが、単に破っただけのクラッシュ加工だと、その破れ目から肌が見える。
一方のリペア加工は穴を当て布でふさいだり、破れ目を再縫製したりするので、肌が見えない。

エドウインの営業マンによると、今春夏、女性はクラッシュ加工、男性はリペア加工を好む傾向が強いという。

クラッシュ加工の商品は穴が開いているので、夏場に着用すると涼しい。
筆者も少し破れたジーンズを、かつて持っていたことがある。
生地がそこそこ分厚かったにもかかわらず、穴から熱が放出されるので、夏場でも割合に涼しい。
反対に冬はだめだ。穴から熱がどんどん逃げていくので、モモヒキを穿かないと着用は難しい。

リペア加工なら穴がふさがっているので冬でも着用できる。
反対に夏は通常のジーンズと同様に暑い。

こんな特性がある。

今年の正月に、両ひざに大きく穴が開いたジーンズを着用している若い男性を見かけた。
モモヒキを穿いておらず、両ひざが丸見えだった。
かなり寒いだろうと他人事ながら心配してしまった。

そのクラッシュ、リペア加工だが、エドウインでも好調で出荷ベースでは完売だという。
追加オーダーがあったのでこれから増産に取り掛かる。

10何年前にもクラッシュ・リペア加工ブームがあった。
クラッシュ加工もリペア加工も加工賃が高い。
破れるまで擦って、破れた穴をわざわざふさぐのだから、通常の洗い加工の何倍も加工賃がかかる。
以前のブームのときに聞いたことがあるのだが、加工賃が5000円もした商品もあった。

だからクラッシュ、リペア加工商品は店頭販売価格も高くなる。
加工賃が上乗せされているからだ。
店頭販売価格2万円とか3万円の商品も珍しくない。

それをエドウインは縫製、洗い加工とも国産で12000~13000円で発売している。
売れないはずがない。
圧倒的なコストパフォーマンスといえる。

写真 1

以前のクラッシュ、リペア加工ブーム時には一つの弊害が生まれた。
それは何かというと、洗い加工がジーンズの出来を左右するというような風潮が生まれてしまった。
各工程に貴賤はない。それぞれの工程は必要不可欠である。
どれか一つの工程がジーンズの出来を大きく左右するというようなことは本来ありえない。
今回のブームでかつての風潮が復活しないことを願うのみである。

話を戻す。

あまり出回っていないが、国産で5900円商品もある。

写真 2

一部の中・低価格チェーン店向けの商品だが、国産で5900円は圧倒的といえる。

エドウインは縫製、洗い加工で自社工場を所有している。
(洗い加工に関しては国内最大手の洗い加工場、豊和とも長年契約している)

このあたりのコストパフォーマンスは自社工場ならではといえる。
国産でこの価格帯で商品を製造できるのはエドウインだけではないか。

好き嫌いは別としてジーンズの販売数量でもっとも多いのは、ユニクロである。

エドウインの経営危機問題の際には、エドウインが直営店化すればユニクロに迫るジーンズ販売数量が見込めるのではないかと主張する人もおられた。(あくまでもジーンズに関してのみ)

その主張には大いに賛同するが、これから大規模に直営店出店をするのは資金的にもなかなか難しいだろう。
また卸売業のエドウインに小売店運営のノウハウが蓄積するまでにはかなりの時間がかかるだろう。

完成形態は容易にイメージできるが、そこに至る道のりが果てしなく険しい。

あまり知られていないかもしれないが、直営店への挑戦はこれまでも何度もあり、そのたびに失敗して撤退を繰り返してきた。
かつて某役員が主導したものの、見込みの甘さと計画の杜撰さから、すぐさま撤退した原宿店なんていうのもあった。

このコストパフォーマンスを生かした直営店というものを新生エドウインとして実現してもらいたいと思うが、それにはかなり時間が必要となるだろう。

それよりもこのコストパフォーマンスと、自家工場を抱えての物作りの姿勢を広く消費者に浸透させる方が先だろう。すでに物作りをアピールするプロジェクトが始動しているからそちらに大いに期待したい。

大塚家具の株主は至極まっとうな判断を下した

 大塚家具の株主総会が開かれ、話題となっていた父娘対決で、娘社長が勝利をおさめた。

創業者であり、家具のカリスマである父会長と、大手銀行やコンサルティング会社出身の娘社長との対立は、親子関係があるから世間の注目を集めたが、血縁が無ければどこの会社でも経営方針の対立だといえる。

金融機関は、娘社長を支持するのではないかと思っていたがその通りになった。

父会長がこれまで作ってきた高級品・接客重視の販売に対して、娘社長はイケアやニトリを視野に入れた中・低価格で接客を軽減したセルフ・カジュアル販売店を提唱した。
どちらも一長一短があり、ビジネスには、これをやったから確実に売れるということはない。
どっちの方策を採っても上手く行くかもしれないし、上手く行かないかもしれない。

今回は家具業界のことだが、同じような事例は繊維業界・アパレル業界にも数多くある。
産地の製造加工業者にだってある。

カリスマ親父と対立する息子役員なんてのは産地でもザラに見かける光景である。

カリスマである創業者や先代が年老いてくると、後継者が問題になる。
家具にしろ、服にしろ、繊維製造にしろ、カリスマと言われる人はセンスというか、嗅覚というか感覚に秀でている。
幾人かそういう方に直接取材をしたことがあるが、性格の好き嫌いは別にして、あの感覚の鋭さは天性であり、学んで近づくことはできるが、完全コピーすることは不可能である。

後継者に先代や創業者と同じくらいのカリスマ性があるというケースは滅多にない。
皆無といっても言い過ぎではないだろう。

となると、後継社長は先代や創業者と同じ企業経営はできない。
逆にカリスマをまねるととんでもないことになる。

とくに大塚家具の場合、長男を差し置いてなぜか、姉である現社長を後継者に選んでいる。
現社長は大手銀行やコンサルティング会社で育っているから、理詰めのビジネスを好むものと推測される。

そういう人を後継社長に選んだのだから、今後は、そういう方向性に流れるであろうことは、最初から分かっていたはずである。とくに家族なら。

ここからは個人的な意見だが、この娘社長が、逆に親父と同じ経営スタイルを選択したとしたら、そちらの方が経営危機に陥ったのではないかと想像してしまう。

これが家族数人で経営している零細事務所なら、潰れようとどうなろうと大したことはないが、大塚家具は上場企業であり、昨年末で1749人の従業員がいる。
当然、新社長としては1749人の従業員の生活を支えなくてはならない。企業もなるべく長続きさせなくてはならない。
「めんどくさいから事務所たたむわ」というようなことは許されない。

であるなら、新社長としては自分ができる範囲でのビジネスを企画構築するほかはない。
新社長が、中・低価格のセルフ販売路線を企画するのは当然だと個人的には思う。

株主総会の記事が掲載されている。

大塚家具、優勢だった父・会長はなぜ大敗したのか?具体論なき感情的発言連発の代償
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150329-00010003-bjournal-bus_all&p=1

この「知」対「情」アプローチが、株主総会で両者の明暗を分けたのである。

とある。
もちろん、娘社長が知で、会長が情である。

勝久氏は発言内で「私には5人の子供がいて、最初の子供はとても難産で」などと家族のことに触れ、それが一般株主に強い違和感を覚えさせた。その後、一般株主が何人も質問に立ったが、勝久氏の独善的な差配を指摘したり、今回の騒動を批判する発言が続いた。

さらに勝久氏の妻、千代子相談役も株主として発言したが、久美子氏を諌めるような長い発言の途中で一般株主から失笑が漏れたり、「もうやめろ」などと野次を浴びる有様となってしまった。勝久氏は最後に次のように訴えたのだが、将来のビジョンや方策を示すことがなかった。それが一般株主の支持を得られなかった最大の理由だろう。

とある。

親族間の話合いなら情に訴えかけるのは有効な一手段であるが、株主総会という場にはふさわしくない。
株主総会は会社の今後の方向性やビジョンを討議する場であり、家族間の情とか愛憎を見せつける場ではない。

この記事が事実なら、筆者が株主でも会長を支持することは絶対になかっただろう。

この記事は

単純に「自分を信じてくれ」では、他人である一般株主に対して通用しない。

と結んであるが、まさしくその通りである。

そして個人的には、情に訴える経営が可能なのはカリスマだけであると思う。
そのカリスマ会長の年齢はもう72歳である。あと10年ほどすればほぼ確実に引退せざるを得ないだろう。

娘社長はあと10年経ってもまだ56、57歳くらいである。

カリスマ会長が今、もし50代か60代なら、「俺を信じてくれ」でも良かったかもしれない。
あと20年~30年陣頭指揮することが可能だからだ。
しかし、あと10年くらいしかないなら、今のうちに次のビジネスモデルを模索するのは新社長としても株主としても当然ではないか。

やや的外れかもしれないが、ジョブズというカリスマを失ったappleだが、新CEOに代わってからの方が、iphoneの売り上げ台数を増やしている。
もし、新CEOがジョブズと同じカリスマを演じようとしたなら失敗した可能性が高いのではないか。
新CEOがジョブズとは異なる路線を採ったことが奏功したのではないかと思えてくる。

今回の事例は、アパレル業界や繊維業界にとっても他山の石となるのではないだろうか。

ファッション系メディアに飲食関連記事掲載がやたらと増えている

 洋服がなぜ売れないのか。様々な理由があるだろうし、様々な人が所属するクラスタに応じた分析をしているだろう。的中しているかどうかは別にして。

個人的に考えていることをまとめると以下のようになる。

1、見映えの良い洋服は低価格SPAと外資ファストファッションのおかげでいくらでもあるから、無理に高い服を買う必要がない。
(素材の良し悪しとか縫製の良し悪しは関係ない。あくまでも一見したところ)

2、かっこいい洋服を着ていることが特別なステイタスではなくなったこと。
(とはいえ、ボロボロ・ダサダサの服装では好感は得られない)

3、可処分所得が伸びなかったり減少している中で、他の分野を倹約してまで洋服につぎ込むことに対してナンセンスだと思う人が増えたから。
(そう思う人がいても構わない。個人の価値観だから。ただしそういう人は少数派)

バブル期にこぞってバカ高いDCブランドでトレンドの洋服を買い漁っていたのは、それを着ることでモテたり、ステイタス性を感じられたからである。
それに当時は低価格衣料品でDCブランドと同じような外見をした商品が無かった。
ある意味では仕方なしにDCブランドを買わざるを得ない部分もあった。

何度も書いて恐縮だが、略礼服ではない黒無地のメンズスーツは94年当時には、DCブランドの流れを汲むブランドしか販売していなかった。
洋服の青山もアオキもはるやまもコナカも販売していなかった。
必然的に、黒のメンズスーツを買おうと思うとDC系ブランドしか選択肢がなかった。

それが今では、黒の色の深みとかそういうことを度外視すれば、西友にも8800円で黒無地スーツが売っている。
ファッションにそこまで興味のない人からすれば、8800円の西友のスーツで十分ということになり、これを指して「感度が退化した」とか「考え方がおかしい」と非難するのは業界人の驕り、慢心、思い上がりだろう。
あんたら一体何様やねん。

さて、先日、某大手ウェブメディア系の社長とお会いした。
その社長は「ファッションウェブメディアは当社も含めて、PV(閲覧者)数を稼ぐために最近は飲食店・飲食物記事ばかりを掲載するようになってしまっているんですよね~」と反省とも嘆きとも将来への危惧ともとれる感想を述べておられた。

たしかに最近のファッションウェブメディアは、飲食店オープンの記事がやたらと多い。
ショップオープンなら掲載するのもわからないではない(500歩くらい心の中で譲って)が、新メニュー紹介の記事も多くて、これにはさすがに「一体何のメディアやねん」と突っ込まざるを得ない。

飲食に対してさして興味のない筆者からすると、「新メニュー〇〇パフェ登場」なんて記事は興味の対象外だし、PV数稼ぎで掲載することに対しても大いに違和感はある。

しかし、ファッションとは衣料のみならず、食・住、ライフスタイルすべてが含まれるという昨今の風潮に則るなら「〇〇パフェ登場」という記事もファッション記事だということになる。

逆に、グルメ情報サイトやグルメ関係の媒体が、「ユニクロ〇〇店オープン」とか「欧米から〇〇ブランド初上陸」なんていう記事を掲載することはない。
あるとするなら、それらのブランドがカフェやレストランを併設していた場合くらいだろう。
あとはブランドとコラボした新メニューを開発した場合だろう。例えば「ユニクロコラボの親子丼(仮)」とか。

ファッションという概念が広がって食・住をも取り込んでしまっているというのが実情だろう。
もしくは、衣料品だけでは食えなくなって、食と住をも取り込む必要性に迫られて概念を広げたのか。

筆者は後者だと見ている。

今後、クリエイター系の人々や昔ながらの業界人が思い描くような「衣料品重視」の風潮は二度と来ることはないだろうから、食品記事や住宅関連記事がますます掲載されることになるだろう。
現にファッション雑誌だって相当に食品関連・住宅インテリア関連記事が増えている。

マス層は低価格SPA、ミドル層は中間価格帯のブランド、トップ層のみがいわゆる「こだわり系ブランド」を買う。
そのトップ層の人数は限りなく少ない。
「こだわり系ブランド」を展開するのであればそのニッチな市場を相手にするのだという意識をより強く持つことが必要である。
どんなにがんばってもマス層が「こだわり系ブランド」を欲することはないのだから。

「こだわり系ブランドの良さがわからないマス層は退化している」なんて言ってみても無駄だ。
その良さをマス層に「的確」に伝えられないブランド側・業界側に責任があるとしか言いようがない。
職人やクリエイターの「独りよがりなこだわりの作り」とか、一部の玄人にすらわからない「こだわりの仕様」だとか、そういうことを伝えてもほとんど効果がない。

個人的には大いに違和感があるが、「〇〇パフェ登場」「〇〇ラーメン開発」なんていう記事は、今後もますますファッション系メディアに掲載されることになるのだろうし、それは仕方がないことなのだろう。
全然興味ないけど。

実を捨てて見栄えを取った近鉄百貨店あべのハルカスの苦戦

 昨年3月にオープンした近鉄百貨店あべのハルカス本店の苦戦はいよいよ本格的である。

あべのハルカス近鉄本店、開業1年で大幅改装 売り上げ不振で待ったなし
http://www.wwdjapan.com/business/2015/03/25/00015879.html

今春から順次改装、テナント入れ替えを図ることを発表したが、この記事中にもあるようにオープン1年で改装、テナントの大幅入れ替えは通常では考えられない。
それほどに苦戦しているといえる。

近鉄百貨店は、旗艦店「あべのハルカス近鉄本店」を今春から順次、改装する。昨年3月に全面開業したばかりの店舗の改装は異例だが、当初予想を大幅に下回る売り上げ不振でテコ入れが待ったなしになっていた。ウイング館にある専門店街のソラハ(2階、3階、3.5階、4階)の4階部分を百貨店の売り場に改装し、ギフトサロンや商品券売り場、催事場を移設・新設する。

とある。

また

ソラハ全体でもティーン向けの店舗を縮小し、20代以降のヤングやOL向けの専門店街として再整備するほか、集客力の高い大型テナントの導入も検討する。

ともある。

このブログや他の記事でも何度か書いたことがあるが、専門店街「ソラハ」がティーンズ(10代)女性を異様に重視していることに対して、オープン当初から不安視していた。
やはり危惧した通りの結果になったといえる。

なぜ、現在の業界でもっとも危険視されている10代市場を重視したのか理解に苦しむ。
百貨店の上層部や親会社の近鉄上層部は何を考えていたのだろうか。

今の10代は、洋服に金を使わない。可処分所得が少ないから使えないともいえる。
10代が愛用するブランドは、ユニクロ、ジーユー、H&M、しまむら、アベイル、ウィゴー、ハニーズなどの低価格ブランドばかりである。
実際に繊研新聞のアンケートでもファッション専門学校生の好きなブランドの上位はこれらの低価格ブランドばかりだった。

概して、ファッション好きが多いファッション専門学校生ですら、低価格ブランドを愛用しているのだから、それ以外の10代はどういう消費行動をとるのかは少し考えればわかることではないか。

「10代=ファッション」と考えるのは失礼ながら時代に取り残されたオッサンの認識でしかない。

売上高が稼ぎたいのなら客単価の低い10代向け売り場は極力少なくすべきである。
閉館したかつてのJR大阪三越伊勢丹だってそうだ。
それほど広くもない売り場に10代女性向けの「イセタンガール」が必要だったのか。
今の10代で百貨店で買い物をする層は少数派である。10代が買うのはファッションビルか郊外ショッピングセンターである。

今の10代を啓蒙したいというのなら話は別だ。
20年後の消費者育成を考えると、今のうちから若い層に良い物、そこそこマシな物を見せておく必要があるのではないかと思う。
ただ、それはだれがやるのか。
やるには少なからず費用がかかるし、売り場を続けていく上でのランニングコストもかかる。

各百貨店、各ファッションビル、各ブランドも慈善事業ではないのだから、リターンの少ない市場にコストを投下する行動はとれないだろう。
筆者だって嫌だし、それ以前にそんな金はない。

ちなみに近鉄百貨店あべのハルカス本店の売り上げ状況は以下の通りだ。

1450億円を掲げていた初年度(15月3月期)売上高目標を、昨年8月に1170億円に下方修正。だが、この目標にも届かない見通し

とある。

ここからは個人的な感想なのだが、苦戦はソラハだけが原因ではないのではないか。

かつての近鉄百貨店阿倍野本店(旧名)は、筆者も含めた利用者の中では「格安品が常に販売されている百貨店」という認識だった。
陸橋とつながった2階入り口部分の正面には、いつも3000円とか5000円均一のレディースバッグやレディースシューズのワゴンが設置されていた。
現に筆者の家族もこれを目当てに何度も買い物に出かけた。
電車賃を入れても他の百貨店で買うよりも安かった。

改装後にはこれがなくなった。
低価格利用者がなくなった分、高価格利用者が増えたかというと、ターミナルとはいえ、ローカルな天王寺にそういうお客が新規で多数増える要素は少ない。

また、某大手アパレルのベテラン営業マンは先日こんな指摘をしていた。
参考程度にご紹介したい。

近鉄百貨店阿倍野本店は毎月、木曜日に全館を閉鎖し、限られた入口のみから来場できる「お得意様ご招待デイ」というのがあった。
筆者の自宅にも招待状が送られてきた。
お得意様に限りとあるが、実際に招待された客数は相当なもので、いつも、入り口には長蛇の列が作られていた。

この時に買うと、各テナントで10%~20%くらいの値引きがされたと記憶している。

洋服でいうと新規入荷商品を10%~20%オフくらいで購入できる。
新作は欲しいけど定価で買うのはちょっと・・・・という大衆の心理をくすぐる販促キャンペーンだったといえる。

ベテラン営業マンは「改装後、このキャンペーンをしていないでしょ?ほぼ年中無休で営業してるでしょ?だから苦戦しているんですよ」と指摘した。

そういわれれば確かにそうだ。

毎日のように天王寺で電車の乗り換えをしているが、この1年、あの光景は見たことがない。

通常営業日だと物を買わない来場者も多い。
これは近鉄百貨店に限らずどこの百貨店でもそうだ。
しかし、「顧客招待デイ」に来た来場者は「買い物」目的だから、少なくとも何か1品は買う。
そうでなければ「わざわざ来た意味」がない。
来場者数は通常営業日よりも少なくなるが、買い上げ比率は高くなる。
もしかしたら全館売上高も通常営業日より高かったかもしれない。

結局、あべのハルカス本店への苦戦は、ピントのズレた10代重視政策に加えて、見た目ばかりを重視してこれまでの強みを捨てたということの相乗効果といえる。

業界関係者は「もっとファッショナブルに」なんて軽々しく指摘するが、そんな「ファッショナブル」な消費者なんて全国にどれだけ存在するのか。
そういう消費者は東京なら伊勢丹新宿店、大阪なら阪急うめだ本店で吸収できる程度しか存在しないのではないのか。

そういうニッチな消費者を新規獲得するよりも、従来顧客をさらに重視する施策を採るのが正しいビジネスだろう。
これは近鉄百貨店に限らず、どの分野でも言えることだ。

携帯電話なんてまさにそうだろう。
新規顧客獲得ばかりに血道をあげており、長年使ったユーザーはほったらかしである。

あるアパレルの営業マンがこう言った。
「2年ごとに携帯電話会社を変えるのが一番得ですわ。だからこの間変えました。2年後にはまた変えます」と。
今なら電話番号はそのままだからこの手法が一番経済的である。
それにどちらにしろ2年ごとに携帯機種を変える。ならそのときに携帯電話会社を変えれば手間はそれほどかからない。

別にドコモにもauにもソフトバンクにもそれほど熱烈なファンはいない。

ある程度料金が安くて、通話や通信に支障がなければ携帯電話会社なんてどこだって構わないのである。
そしてそういう風に考える消費者を増やしたのは携帯電話会社自身である。

機械化できる部分は機械化するというのも一つの解決策

 異業種のことだが、興味深い記事があったのでご紹介したい。

最高の酒に杜氏はいらない 「獺祭」支えるITの技
http://t.co/ZBz6im8zDd

昨今人気が高い日本酒「獺祭」の開発にまつわる経緯なのだが、獺祭の開発、仕込み、生産に杜氏が一切かかわっていないというのを恥ずかしながらこの記事で始めて知った。

獺祭を生産する旭酒造は山口県岩国市の過疎地に拠点を置く。
記事によると99年に新規事業を起こしたが失敗して、杜氏に逃げられた。
会社の経営が傾いたのだろう。杜氏だって生活があるから、経営危機に陥った会社と心中する必要はない。
経営の傾いた会社から去るのも当然である。

ここで会社側には三つの選択肢があったと思う。

1、それなりの資金を調達して(調達が難しいだろうが)他の杜氏(職人)を雇う
2、杜氏抜きで酒を造る
3、自己破産ないし廃業する

この三つである。

通常なら1を選択するケースが多いのではないかと考えられる。
繊維業界では1か3を選択するケースが多いように感じる。

ところが、この会社は2を選択した。

それ以前から、酒造りのノウハウが杜氏の頭の中にブラックボックス化されていることに疑問を抱いていた桜井社長は、ここで大胆な改革に踏み切る。

 象徴が検査室だ。酒造りの全行程で詳細なデータを取り、検査室のパソコンに蓄積して分析することで、酒造りの最適解を見つけ出してきた。日本酒は、米を麹で糖化させる工程などを経て「もろみ」にして、それを酵母で発酵させて造る。

とある。

その上で、

例えばもろみの発酵は、山なりの理想の発酵曲線(「BMD曲線」と呼び発酵日数と糖度などの関係を示す)に、可能な限り近づける必要がある。そのための微妙な温度管理や水の追加タイミングなどについてデータを活用して知見を積み上げた。

ともある。

何も勘と度胸だけで試験を繰り返していたわけではない。
理想の発酵曲線に近づけるようにさまざまな成分や温度などの要因を試して、最適と思われるものを選んだということである。

この方式で行くなら、今後も新しい味の研究・開発は杜氏抜きでも可能だと推測できる。

そのあと、

当初はデータ量も少なく、分かることは限られていたが、一番安価な獺祭は初年度から、杜氏の指揮下で造っていたときよりも品質が良くなったという。

とあるが、このあたりは味覚なんて人それぞれなので、本当に品質が良かったのかどうかはわからないが、少なくともそん色ない程度には仕上がったのではないかと考えられる。

昨今は、メイドインジャパンブームである。
手作業や職人仕事も見直されつつある。
また古くから現代に至るまで、日本は職人を一つの尊崇の対象としてきた。
これは酒造に限らず各分野に共通することである。

しかし、現在では職人のなり手が減少しており、その技術伝承が不安視されている。
職人になる人が少ないと嘆いているだけでは何の解決にもならない。
また、無理やりに若者を捕まえてきて「職人になれ」と強制することもできない。

例えば、ある程度はしっかりとした仕事のやりがいとか給与待遇とか福利厚生とか今後の成長性とかがなければ数多くの人材は集まらない。
「待遇は悪いけど日本古来の仕事だから、就職難で困っているなら我慢してやれ」というのもおかしな話である。

個人的には、この旭酒造のように、機械やコンピュータ制御に置き換えられるところは置き換えるというのも一つの解決策ではないかと考える。

もちろん、機械やコンピュータを管理するのは人間であり、旭酒造もその部分では人間を雇用している。
まるっきり自動操業ではない。
しかし、機械を管理する人間は杜氏ほどの職人性は要らないし、新人が入ってきても仕事を覚える期間は短くて済む。

これに対して味気ないという意見があるのはわかるが、こういう解決策もあるという事例としては認めるべきだろう。

ところで、記事の後半には

伝統の酒蔵では冬場にしか仕込みができないが、ここでは室温が一定に保たれ獺祭を1.8リットルの一升瓶換算で年間150万本も量産する。

とある。

杜氏抜きで作る技術を確立したことと同じくらいこの生産量にも驚かされる。
生産量そのものに驚いているのではなく、その量を販売できてしまう旭酒造の力にである。
150万本生産するということは、それを売り切る力がなくてはすぐに在庫過多に陥ってしまう。
卸売りするにしても直販するにしてもその販売力はすさまじいと感じる。

日本人は製造が大好きだから、ついつい製造に関してクローズアップしてしまう。
けれども工業製品は製造した限りは販売しなければならない。
作ってお終いなのは専門学校生までの話である。
そんな専門学校生レベルの認識で物作りを行う企業やデザイナーが多いから、その多くは苦戦しているといえる。

個人的には、今後は、旭酒造の販売についての分析記事を読んでみたいと思う。
いかにして販売力を手に入れたのか。どのような販売手法を採っているのか。
それは他の製造業者にとっても大いに参考になるものと思われる。

ファッション雑誌一辺倒のブランドは売り上げを伸ばせない

 2000年代後半くらいから、ウェブでの情報発信に力を入れているブランド・企業と、相も変わらずファッション雑誌に注力しているブランド・企業とでは露出に大きな差が出てきたように感じる。

2000年代半ばまでは、ファッション雑誌への露出こそが有力なブランド戦略といえたが、2000年代後半からはそうではないと感じる。
百貨店やファッションビルにそれなりの店舗数を構えるブランドでも近年さっぱり噂を聞かないところも数多くある。
そういうところの多くは、広報・プレス担当者が十年一日のごとくファッション雑誌を神聖視している。

以前にも書いたことがあるが、あるイタリアのジーンズカジュアルブランドで、取材窓口の担当者が「最近、ファッション雑誌に掲載しても反応がほとんどないんですよ」と嘆いたことがある。
このブランドは過去に、数多くのファッション雑誌との付き合いがあるからファッション雑誌の力を十分に認識している。
しかし、そういうブランドでもファッション雑誌による販促効果を疑問視し始めている。
ちなみにこのブランドの本社はすでにウェブによるプロモーションを大々的に開始している。

ファッション雑誌がすべからく不要とは考えていない。
今後も何誌かは確実に残るだろう。
ただ、ファッション雑誌の影響力は10年前と比べて著しく低下しているというのが現状である。

先日、なんばパークスのリニューアルオープンがあり、新興レディースセレクトショップ「ザ・コーナー・ストアルーム」が関西初出店をした。
この店舗が5店舗目となる。

このセレクトの最大の販促手法はウェブである。ブログ、インスタグラム、フェイスブックなどのSNSであり、SNSでの拡散によって、アイテムをオープン当日に2型完売させている。

取材時に担当者からは「即効性があるのはやはりウェブ、SNS。ファッション雑誌はジワジワという浸透力はあるが、掲載したことによって商品の動きが大きく変わるようなことはない」との返答があった。

5店舗という小規模なので他の大ブランドと単純比較はできないが、これが現時点での実情といえるのではないか。

ウェブだとたとえば、そのページに1万人の訪問者数があったとして、ほぼ全員がそのページを確実に見ている。
一方、ファッション雑誌は公称発行部数が20万部あったとして、実際の販売部数はそのうちのどれくらいになるかはわからないし、購入した数万人全員が全200ページを隅から隅まで読んだとは考えにくい。
となると、読まれないページが何ページもあるということになる。
その読まれないページに掲載されていたブランドは永遠に知られないままということになる。

情報を拡散させるということにおいては、SNSを利用したり、ウェブニュースに掲載される方がはるかに効率的といえる。

また、小規模なブランドやショップならファッション雑誌よりもウェブの方が料金的にも販促に使いやすい。

ファッション雑誌の純広告ならだいたい平均して1P掲載するのに50万~100万円、タイアップ記事なら見開き2Pで150~200万円くらいである。
一方、ウェブ媒体ならピンキリだが、20万円くらいから100万円くらいまでの間である。逆に200万円を越えるような価格の媒体をあまり耳にしたことがない。
100万円は無理でも20万円くらいならなんとかなるというブランドも多いのではないか。

しかも雑誌(新聞も含む)は、媒体の販売期間が終わればその広告なり記事は購入した人以外は新に目にすることはできないが、ウェブ記事は掲載期間が終わっても検索すれば表示されるし、そういう記事が貯まれば貯まるほど検索でそのブランドが上位に表示されることになる。

先日、長年付き合いのある広告代理店のベテラン営業マンと雑談をした。
彼は大口予算のクライアントを持っているのだが、このクライアントブランドをウェブ媒体ではほとんど見たことがない。
自社の情報を拡散するもっとも有効的な手段は、現時点ではウェブであるから、彼にもウェブ媒体への取り組みを勧めた。

すると「プレスがウェブを頑としてやりたがらない。ファッション雑誌一辺倒だ」という答えが返ってきた。

失礼ながらそのクライアントブランドは時流に相当乗り遅れており、今後、最低でも数年間は売上高を伸ばすことができないだろうと思った。

昭和的呉服屋は市場から淘汰されるべき

 知り合いでもなんでもないがこんなブログのエントリーが流れてきた。

年始めの出来事 ぼやき だから嫌がられるんだよ。呉服屋さんの嫌な所
http://ameblo.jp/acha-moyou/entry-12004187891.html

典型的な昭和の呉服屋さんの販売方法である。

筆者もこういう光景は何度も見たことがある。
亡き母が意外に着物好きで、けっこう高価な物を何枚か持っている。

50歳を越えるくらいまでは何年かに1枚は買っていたが、50歳を過ぎたあたりからはほとんど買わなくなっていた。
このブログで書かれているような呉服屋さんの光景は小さいころに何度か目にしたことがある。

それにしても呉服屋の押し売りはつくづくダメだと思う。
押し売りをするから消費者が離れる。
顧客が減るからさらに強力に押し売りする。
悪循環である。

もう少しスマートに売れないものか。
そこまで強引に押し付けずとも、自然と売れるデザインの商品を開発できないのか。

それに価格設定も高すぎる。
もちろん、着物と洋服とは製造工程が異なるから一概に比べることはナンセンスだということは承知しているが、洋服にしか親しんでいない消費者からするととてつもなく高額に見える。

文中にあるように、仕立てあがっていない振袖が10万円である。
10万円といえば三陽商会製のバーバリーのコートが買える。
ポールスミスのスーツだって10万円以下で買える。

着物にバーバリーやポールスミスほどのブランドステイタスがあるのだろうか。
筆者はないと感じる。
バーバリーやポールスミスはブランドステイタスを高めるための販促、広告、告知、広報活動を常に行っている。
ではそういう活動をこの呉服屋やそこに卸している着物メーカーは行っているのだろうか。

また文中でも触れられているように帯とセットで50万円である。
50万円もあれば相当に高性能な家電を何台か買える。
いまどきパソコンでも10万円以下で高性能な機種がたくさんある。
テレビだって冷蔵庫だって洗濯機だって、10万円もあればそこそこに高性能機が買える。

で、着物に親しんでいない人からすると家電製品の方が価値があると感じられる。

世の中に高額な商品はさまざまある。
中にはぼったくりじゃないかと思う商品も少なくない。

ただ、そういうぼったくり商品は当然のことながら、何かの拍子で消費者からの支持を失い市場から消えることがある。
その際、そういう商品に対してだれも保護しようとはしないし、業者側も保護を求めない。
まあ、損失が少しでも減るように画策はするだろうけど。

個人的に着物業界が好きではない理由の一つに、こういう旧態依然とした呉服屋でさえも、伝統的な着物を扱っているから保護されても当然だと考えている節があるところである。
場合によっては、着物文化の継承者の一人みたいな顔をしている場合もある。

そういうところに対して勘違いしていると感じてしまう。

こういう呉服屋を温存するために行政やら文化遺産やらの権威を行使するのはもっともナンセンスである。
思い上がりも甚だしいのではないか。
伝統だろうが何だろうが、需要がなくなった物は市場から淘汰されるのが当然だ。

最近では、昭和的売り方をしない呉服屋や着物屋が出てきた。
そういう新しい感覚の呉服屋、着物屋、着物ブランドは支持をしたいが、旧態依然とした着物業界は早いところ淘汰されるべきである。

業界関係者と消費者の評価点は異なる

 さて、先日、ユニクロのコットンカシミヤケーブルクルーネックセーター(名前長っ)を買った。
もちろん、期間限定で値下がりした価格でだ。
ユニクロで商品を定価で買うことは絶対にない。
定価2990円(税抜)が1990円(税抜)になっていた。

この商品は素材違いで昨年秋にも発売された。
雑誌とのタイアップ企画が功を奏したといわれており、メンズ商品でありながら、女性に大人気となり、SやMなどの小さいサイズが先になくなるという現象が起きた。

今回の素材は綿95%・カシミヤ5%という素材。
正直なところ、5%のカシミヤなんて入っても入ってなくてもほとんど変わらないレベルである。

この商品も人気が高く、各店頭とオンラインストアでは在庫状況が少しずつ異なるが、
赤、グリーン、オレンジ、黄色、ターコイズブルー、ロイヤルブルーなどの明るいカラーがほとんど完売状態である。紺も残り少ない。

白、グレー、黒は比較的残っている。

今回の商品は男性の購入が多かったのか、MとLが少なくなっており、Sが残っている。

筆者はグレーと赤を購入した。
筆者が訪れた店では赤、ロイヤルブルーはSばかりが残っており、赤は最後に残っていたMサイズをゲットした。

写真4

商品の出来栄えでいうと、セレクトショップのオリジナルとして並んでいてもおかしくはない雰囲気がある。
セレクトショップでなら5000円内外はするだろうから、定価の2990円でもお買い得である。

昨年秋に発売された同じデザインの商品は、ナイロンとポリエステルが合わせて70%、ウール25%、カシミヤ5%という組成だった。

ナイロンとポリエステルが70%入っているので、微妙に光沢があった。

合繊含有率が高いのと、生地が薄手なので真冬での着用はちょっと厳しいのではないかという印象だったが、上からダウンジャケットを着用すれば問題なかっただろう。

筆者の個人的な意見では、今春の素材の方が良いと感じる。
おそらく天然素材好きというバイアスもかかっているのだろうが、触感からしても今春の方が良いのではないかと思う。

ユニクロのオンラインストアを見ると、人気商品だけあって多数のレビューが書き込まれているが、その中で「昨秋の素材の方が良かった」という意見が少なからずあった。
これにはちょっと驚いた。
昨秋商品を評価する人の基準点は「伸びにくい、型崩れしにくい」「微妙な光沢が良かった」というものである。

うーん。
綿セーターは着用すれば必ず伸びる。
洗濯をしても伸びる。
素材にハリというかコシはない。

伸びたり型崩れしたりするのは綿セーターにとって避けられない。
逆にそれが味だともいえる。

合繊が70%も含まれたセーターは綿セーターに比べて伸びにくいし型崩れしにくい。

でもそれを評価する人というのが少なからず存在するのだということも勉強になった。
これが、ごく小規模なブランドのレビューなら「そういう少数派もいるのね」ということになるが、ユニクロの利用者なのでそれなりの数が存在すると考えられるのではないか。

もっともわざわざレビューを書こうと言う人の割合がどんなものなのかわからないが。
しかし、レビューを書いていないサイレントマジョリティーの中にも同様の意見を持っている人は確実に存在するだろうから、それを合わせるとやはりそれなりの人数になると考えられる。

業界関係者が思う「良い物」と一般消費者が思う「良い物」は往々にして異なるということになる。

一般消費者のニーズに沿わせることも有効な販促の手法である。
一方で、業界関係者が思う良い物を、広く啓蒙するのも有効な販促の手法である。

ある意味で告知の上手いユニクロでさえ、素材の説明を浸透させられていない部分があるのだから、他のアパレルブランドはまったく浸透させられていないと言っても言い過ぎではないだろう。

そしてその啓蒙活動とは、素材や製造工程を大げさに盛って神格化させることでは決してない。

このあたりのバランスを保つのはなかなかに難しいのだけど。

「YG」がベージュ・切りっぱなしメンズ肌着を発売

 先日開催されたグンゼの今秋冬展示会で見つけたおすすめ商品を紹介してみたい。

昨年夏、ヒット商品となったのがベージュの男性肌着である。
なぜヒット商品になったかというと、クールビズ対応である。

早ければ5月ぐらいからクールビズが始まるが、
その際、上着を着なくてもよくなる。

ワイシャツ1枚で仕事をしてもOKということである。

その際、白いワイシャツだとどうしても下に着用した肌着が丸見えになる。
そんなものかと思っていればそんなに気にならないが、気になる人にはひどく気になるらしい。

また

「ワイシャツの下に肌着を着るのは邪道( ー`дー´)キリッ」

という欧米かぶれさんも多数おられる。

気温35度、湿度70%以上になる日本の夏は、大量に汗をかく。
少なくとも筆者のトップスは常にボトボトである。

こんな状況で素肌にワイシャツを着れば、どうなるかは予想に難くない。
欧米かぶれさんがなんと言おうと、筆者はワイシャツの下に肌着を着る。

ファッションに気を使う人でも汗っかきさんは大勢存在する。
ワイシャツの下に肌着は着たくないけど、着なかったら汗でボトボトになるから着ている。
という人も多い。

そういう人たちが昨年ベージュの肌着を購入した。

理由はワイシャツの上から透けにくいからである。
以前、女性の肌着やブラジャーにベージュが多いのも透けにくいからだと聞いたことがある。

グンゼの百貨店向け肌着「シーク」のベージュが一部の人々の間で大人気となった。
「シーク」が受けた理由はベージュという色だけではない。
ネック部分と袖口が切りっぱなしになっていたからだ。
ネック部分と袖口が切りっぱなしになっていて段差がないので、ワイシャツからさらに透けにくい。

そんなベージュ・切りっぱなしのメンズ肌着だが、グンゼは量販店向けブランド「YG」としても、今春夏から発売を開始する。

写真3

昨年秋に開かれた今春夏展示会では出品されていなかったことから見ても、緊急で発売を決定したといえる。

この「YG」のセールスポイントは価格面にもある。
量販店の中では高額だが、「シーク」のほぼ半額に近い1500円に設定されている。

それにしても肌着分野でも低価格帯商品群のトレンド対応力はなかなかに素早い。
すでにユニクロの「エアリズム」でも、イオンのトップバリュの「ピースフィット」でもベージュ肌着が発売されている。
ただし、ネック部分と袖口は切りっぱなしではないが。

こういう素早い対応を見ると、20年前の低価格商品群とはだいぶ異なるといつも痛感する。

20年前の量販店向け衣料品はそこまでトレンド対応が素早くなかった。
トレンドブランドとの差は3年遅れくらいだったと感じた。
早い時期にトレンド物が欲しければそれなりのブランドで買わなければならなかった。

それが今ではほぼ同一時期に対応している。
ユニクロの場合は自前の企画だが、量販店の多くはOEM・ODM、商社の製品部門へ企画ごと丸投げである。
OEM/ODM、商社の企画部門のトレンド対応が素早いということだろう。
決して量販店が素早いわけではない。

トレンド対応が素早くて価格が安いなら、低価格ブランドで十分だと考える人は多い。
それは当然のことである。
低価格ブランドの存在を「悪」だという業界人は多いが、低価格ブランドが存在するのは今に始まったことではない。
30年前にはすでに存在していた。

それに低価格品が現れるのは衣料品に限ったことではなく、家電でも自動車でも工業製品なら全分野に現れる。これは自然な流れである。
衣料品が特別なわけではない。
衣料品がオートクチュールやオーダーメイドばかりになったとしても低価格品は必ず現れる。
今度はおそらく、低価格オートクチュールとか低価格オーダーメイドなんて商法が出てくるだろう。

だから、トレンド対応の素早さだとか、製品スペックだとか、そういうことだけのアピールでは商品は売れないし、すぐに低価格品にキャッチアップされる。

そうではないほかの価値を与えなくてはならない。それが付加価値である。

その付加価値は個々のブランドによって異なる。それを考えることがブランド化ということになる。

今日から第9回阪急テキスタイル・マルシェ開幕

 今日から23日までの6日間、阪急百貨店うめだ本店10階でテキスタイル・マルシェを開催する。
ご存じの方も多いかもしれないが、このイベントの主催チームに筆者も名を連ねている。

阪急百貨店での開催は、今回9回目となり、ちょうどまる2年を迎える。

産地企業による生地の切売り販売イベントとして2010年12月に第1回目を東京で開催したが、なんだかんだで開始から4年を越えた。

チームで主催しているのでなかなか意思統一が難しかったりするし、他のメンバーも本業を持ちながらなので人的にも金銭的にも制約が大きかったりもする。
やり始めた当初は果たしてどれくらい続けることができるのか正直不安だったが、だましだましやってるうちに4年を越えてしまった。
どんなヘッポコイベントでもやり始めて4年も経過するとそれなりに認知度は高まってくるもので、やっぱり継続は力なのだなと改めて実感する。

とはいえ、認知度はそれほど高いわけではない。

認知度が皆無の状態から少し高まったという程度である。

そういえば、この4年間で、産地企業による生地の販売イベントが業界のあちこちに増えた。
布博という大々的なイベントもあるし、東京の某百貨店でも似たようなイベントをやり始められた。

また昨年あたりから「日本製」が広く注目を集め始めたことから、このイベントを開催した4年前に比べると産地企業が個々にアパレルやブランドとつながるケースも増えてきた。
中には先日の某子供服ブランドのような付け焼刃的国産回帰もたくさん見受けられるのだけど。(笑)

なにはともあれ、これまで賃加工の下請け業に徹していた産地企業が、わずかでもそれとは異なる動きを始めたということは喜ばしいことである。

企業的な年度でいうと今月が年度末である。
阪急百貨店うめだ本店での「今年度末」のマルシェである。
筆者もたいがいは売り場に立っているので、この非イケ面を見たい方は売り場まで足を運んでいただきたい。

今回の出展者は9社。

宮眞(丹後)、Ys企画(京都)、川端商店(京都)、CHICA(岐阜)、林与(滋賀)、IPテキスタイル(奈良)、
松尾捺染(大阪)、細川毛織(大阪)

というラインナップである。

丹後ちりめんあり、プリーツ加工生地あり、カシミヤストールあり、草木染ストールあり、オーガニックコットンのがら紡あり、麻織物あり、プリント生地あり、ボンディング加工生地あり、という具合である。

一般のお客さん以外にも業者が来店されることもある。
これは大歓迎であり、そこで出展者の取引先が広がれば申し分ない。

こんな感じの売り場である。

写真

課題はまだまだある。時間をかけてでも解決しなければいけないことも山積みだし、永遠に解決できないことも山積みである。
解決できないことはまあ、解決する必要もないのだろう。

さて、宣伝ついでにもう一つ(笑)

テキスタイル・マルシェを4年半ぶりに東京で開催する。
5月21日~23日、場所は南青山の「ふくい291」である。

遅れに遅れた(笑)出展要項がようやく完成し、現在、過去出展者に送付したところである。
4年前と市場の雰囲気がどう変わっているのか主催チームとしても興味深い。

出展者や詳細はこれから決定していくので、報告はまた後日に。

今日は宣伝に徹してみた(笑)

そんなわけで、みなさま阪急百貨店うめだ本店10階でお待ちしております。

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