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南充浩 オフィシャルブログ

メリットの提示がなければ割り込みは不可能

2014年10月15日 未分類 0

 先日、トルコのデニム生地メーカーの相談を受けたという日本人の方から相談を受けた。
相談内容をつぶさに聞いてみたが、このメーカーの強みがまったくわからない。
彼の説明が下手というわけではない。
相談の会話を逐一再現してくれているのだが、先方は核心部分を何一つとして話していない。そんな印象を受けた。

彼らはまとまった生産ロットを期待しているためか、一様にユニクロや量販店と取り組みたいという。
その願望だけは伝わるのだが、その生地メーカーの得意とすることは見えてこない。
ユニクロも大手量販店もすでに取り組んでいるデニム生地メーカーがあるのだから、そこへ割り込むにはよほどのメリットがないと話にならない。

ユニクロや大手量販店がそのメーカーから生地を購入するメリットはなんなのか?
それを明確に打ち出さないことには永遠に商談はまとまらない。

メリットとは

価格が劇的に安いのか?
デリバリーが劇的に早いのか?
機能素材の開発が得意なのか?
不良品率がほとんどゼロに近いのか?
極小ロットでも対応できるのか?

などのことである。

このうち一項目でも当てはまらないことには、ユニクロや大手量販店が生地メーカーを乗り換えることはありえない。

その日本人も上記のようなことを質問したそうだが、帰ってきた答えは「言ってくれれば我々はどんな素材でも作る」というもので、筆者の個人的意見を言わせてもらうなら、「ダメだ。こりゃ」である。

言ってくれればどんな素材でも作る。

この答えは最悪である。
いきなり見ず知らずの生地メーカーがやってきて「言ってくれればどんな素材でも作るから仕事をくれ」と言ったところで、「そうですか。じゃあ〇〇素材を作ってください」なんて言うブランドが存在するとでも思っているのだろうか。

そもそもこの言い方は相手側にプランニングすることを要求しているわけだから、何を言っているのだろうということになる。

まず新規で取引がしたいのなら、自社でプランニングした素材やその案を持ってくるべきだろう。

「うちでこういう素材を開発しました。うちはこのジャンルの素材が得意です」

と言わないと、ブランド側からすると得意分野が見えない相手に依頼することは何もない。
もし、それ以外のいろいろなものにも対応できるのなら、

「○○がもっとも得意ですが、それ以外にも××とか▽▽や■■も対応できます」と言わなければならない。
これが言えない時点でこのデニム生地メーカーは問題外である。

日本の製造業者は海外勢に圧されっぱなしだから、どれほどの緻密な戦略を用意してきたのかと思ったら、何のことはない、日本の生地メーカーや生地商社の営業マンと何ら変わらないセールストークしか持っていないことが分かった。一口に海外企業と言ってもレベルはピンキリのようだ。

不振にあえぐ日本の繊維製造加工業者や生地問屋の営業マンも新規営業先でよくそう言う。
「言ってくれればどんな素材も作れます」と。

いやいや、それではまったくその会社の得意分野は伝わってこない。
それに、その言い方では相手に「プランニングせよ」と言っているわけだから、何を言っているのかということにもなる。
言ってくれればなんでも出しますよ、という先が欲しいのなら大手生地問屋の瀧定大阪、瀧定名古屋あたりと取引をすれば済む話である。わざわざそのメーカーや問屋と取引をする必要はない。

うちの得意分野はこれなので、一度見てもらえないか?
得意分野以外にもこういう対応ができます。

という言い方でないと、百件へ飛び込み営業をしたところで成約には結びつかないだろう。

ここ以外にも中国の中堅デニム生地メーカーのエージェントを務める人からも相談を受けたことがあるが、申し訳ないがそこの強みもまったく見えてこなかった。

先に挙げたようなメリットがまったく提示されなかった。

筆者の私見だが、残念ながら2社とも国内の大手と今のままでは取り組むことは難しいだろう。

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