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南充浩 オフィシャルブログ

概念だけが先走り過ぎて現実が伴っていないメタバース事業化

2023年5月24日 ファッションテック 0

急ぎの原稿の仕事が無い場合、ほとんどの休日は誰とも会わずに過ごす。

もとより家族はいないし、友達もいない。しかし特段苦痛でもない。ランニングをして洗濯をしてガンプラを組み立てているとすぐに夕方になる。

他人との会話はスーパー万代で支払いのときにレジのおばちゃんに「お願いします」と言うくらいである。これも別に苦痛ではない。

どうしても他人と雑談したくなれば、現在のところツイッターかフェイスブックというSNSで一定時間無責任に絡めばそれで満足できてしまう。

 

で、そんな自分からするとメタバースとやらの存在意義がまるでわからない。

イシキタカイ系メディアが散々煽ったメタバースが2022年後半くらいから失速(というより離陸失敗)が伝えられ始めたが「お~ん、そらそうよ」としか思えなかった。

以前から何度も書いているが、ゲームをする、音楽や演劇のライブを鑑賞する、映画を観る、くらいの用途でないとわざわざ仮想空間に入る意味を当方は感じられないからだ。

のんびりしたいのだったら、眼精疲労と肩凝りを蓄積させる仮想空間なんぞに入るよりは、近所のスーパー銭湯に行って半日くらい入浴とマッサージを繰り返した方が一億倍マシである。

赤の他人と軽い雑談をしたければツイッターなどのSNSのチャットで十分である。仮想空間である必要性をまるで見つけられない。

恐らく同様に感じるマス層は多いのだろう。この記事にその結果が出ている。

メタバース事業化、9割以上が失敗…人材不足などが要因に | 通販通信ECMO (tsuhannews.jp)

その結果、成功に該当する「事業化の社内審査がおりた」「事業として既に運営している」との回答は、合計8.1%に過ぎなかった。

一方、失敗に該当する「事業化に向けた検討が停滞している」「検討自体が中止された」は合計91.9%に上った。

とのことで、実際には成功は8%、失敗が92%と言える。

 

そしてその理由についてだが

失敗事例と成功事例を比較したところ、メタバースビジネスの事業化に失敗する特徴として、企画内容について「メタバースである合理性が説明できない」、検討プロセスで「ターゲットや課題・ニーズの明確化が不十分」、組織・体制では「専門性を持つ人材の不足」などが浮かび上がった。

とある。

人材云々というのは当方は後から何とでもなる要素が大きいと感じている。というのは、今のネット通販もそうだが人材不足と言いながら、一定規模の産業に成長した現在、その分野を志す人間は増えているからだ。メタバースとやらが上手く行けば学びたいという人間は増えるだろう。

それよりも「合理性が説明できない」「ターゲットや課題の明確化が不十分」と言うのは、メタバースとやらはイシキタカイ系の概念だけが先走りしてしまっているということが顕著に表れている。

例えば、買い物をしてもらうという目的があったとしてメタバースである必要性が無い。現状のネット通販で十分だしそれをブラッシュアップした方が効率的である。またターゲットや課題の明確化も同様だ。どういう人間がメタバースとやらを強く渇望しているのだろうか?少数派のイシキタカイ系だけではないのか。

その上で記事は

調査結果を踏まえて同社は、(1)メタバースに取り組む意義を見つめ直し、不明確なら撤退を視野に入れる、(2)ユースケース起点ではなく、顧客の課題・ニーズ起点で検討する――ことを提言している。

とまとめており、まさしくその通りだろう。

技術者の自己満足のために展開するのであれば趣味の世界としてやれば良いが、ビジネスとして取り組むのなら採算性は必要だし、顧客の課題解決が無ければ成り立たない。無理して続けたところで赤字を垂れ流すなら意味は無いから撤退する方が賢いというわけだ。

 

で、メタバースが煽られ始めたころ、当方もそうだが2000年代前半に注目された「セカンドライフ」を想起した人が多かった。あの頃も「これから流行る」と散々メディアは煽ったものの流行らないまま2023年になっている。

ところでこのセカンドライフはまだ細々と続いているらしい。これは2020年に書かれ、23年に更新された記事である。

2023年版【セカンドライフの現在】サービスは継続中《創業者も復帰》

この記事を読んでもらえばわかるが、アバターを作って仮想空間をブラブラする意味が当方にはまるで感じられない。ゲームなり音楽ライブなりが無ければ当方は絶対に使わないだろう。昼寝でもしていた方がマシである。

セカンドライフもビジネスとして成り立っているが、その中身について

  • 同時ログイン数は3~5万人
  • 1日のリンデンドル(通貨)取引額は、日本円にして2000万円前後(盛んな経済活動が行われている)
  • 17年続いていて、今現在も多く利用者がいる

とまとめられている。

同時ログインが3万~5万とされていて一見すると多いように感じるが、世界規模のサービスということであれば、少ない方だろう。取引額も1日あたり2000万円ということだが、月額では6億円となり、年間だと72億円ということになる。

世界規模での展開から考えると、決して多いとは言えないだろう。

 

となると、メタバースもこの程度の規模を想定するのであれば、採算可能なのではないかと思う。それをポジショントーカーとタッグを組んでいるからなのか「〇年後には何十兆円市場」なんて出来もしない数字をぶち上げるから期待外れと言われてしまうのである。

実現可能な事業規模を冷静に希望的観測抜きに見定めるというのは、メタバースに限らずどんな事業を展開するにおいても最も必要とされるのではないか。

 

 

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