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南充浩 オフィシャルブログ

そろそろ軌道修正が必要では?

2014年9月8日 未分類 0

 筆者は仕事でもプライベートでも欧米に出かけることはないから、現地の情報はメディアから仕入れるしかないのだが、最近、米国で高額プレミアムジーンズの市場が苦戦しているという報道が増えた。

まず、8月29日の繊研プラスだが、

米プレミアムジーンズ、生き残り模索

という記事が掲載されている。

本文を引用する。

米ラスベガスのカジュアル合同展では、プレミアムジーンズのブランド再構築が目立った。再構築の方向性は「ライフスタイルブランド化」「低価格化」「開発力の強化」の三つ。5ポケットジーンズが販売低調な中で、プレミアムジーンズの生き方が分かれてきた。

 米ジーンズ関係者によると、5ポケットジーンズで売れているのは「AGアドリアーノ・ゴールドシュミット」「ラグ&ボーン」ぐらいだと言う。トレンドもまさに底。

リラックス・スポーツテイストのストレッチ系やニット素材が強く、レディスの消費は価格志向が続いており、「ジーンズに2万円出すなら他に買うものを探す」といった環境にある。そうした中、複数のプレミアムジーンズブランドが「リブランディング」という言葉で、新たな成長への方向性を示した。

とある。

また、米国市場に詳しいマックスリーコーポレーションさんのブログでも
http://www.apalog.com/maxre/archive/167

ヤング層のジーンズ離れが深刻化している中、唯一、スキニージーンズは引き続き売れているが、かなり雲行きが怪しくなってきた。

とあり、さらには

苦戦を強いられる、プレミアムデニムのブランドでも

という一節もある。

少なくとも2~3年前までは「日本では高額ジーンズは苦戦しているが、米国では堅調」とされていた。
筆者は逆に、「どうして米国では堅調に推移することができるのか?」と疑問で仕方がなかったが、どうやら米国もようやく日本市場と同じ流れになったようだ。
この流れにおいては、日本は世界市場を一歩リードしていたと見なせるのではないか。

こうなると、苦しくなるのが我が国で盛んな「国産ジーンズ輸出」という取り組みである。
国内販売価格が2万円前後という高額国産ジーンズを欧米市場へ輸出しようとする取り組みが何年か前から盛んであるが、筆者は元々、この取り組みは成功するはずがないと考えており、そのことを何度かこのブログで書いている。

なぜなら、現地での販売価格は1・5倍~2倍程度には軽く跳ね上がってしまうからだ。
国内販売価格が2万円だとすると、現地販売価格は3万強~4万円強、場合によっては5万円になることも考えられる。
いくら、200ドル(1ドル=100円と仮定)のプレミアムジーンズが堅調な米国市場だといっても、300ドル強~500ドルのジーンズがそう簡単に売れるはずがない。
しかも、それらのブランドの知名度は米国では低いわけである。
無名の外国ブランドでしかも200ドル前後も高いジーンズをわざわざ買う米国人がそれほど多く存在するとは思えない。

逆に、日本でも、ルイ・ヴィトンやプラダ並みの価格の無名欧米ブランドが突然販売を開始したとして、そう簡単に売れるだろうか。同じ値段を出すなら、ルイ・ヴィトンやプラダを買う人がほとんどだろう。
それと同じではないか。

個人的には、この輸出論の背景には、「米国では200ドルジーンズが堅調」ということがあったと感じている。

200ドルジーンズが堅調だから、オールジャパンメイドで400ドル強するジーンズなら米国でも売れる。(かもしれない)

という理屈ではなかっただろうか。

個人的にはその理屈もどうだろうかと疑問視していたのだが、200ドルジーンズが苦戦ということになればその前提は根底から覆ることになる。

やはり、国内販売価格が8000~1万円くらいの国産ジーンズを輸出する方が売れやすいのではないかと考えられる。
これなら現地販売価格は1万円台半ばから2万円弱である。
200ドルを下回る価格で販売することができ、なおかつ、日本製だという強みもある。
400ドルジーンズよりははるかに売りやすいと考えらえるのだがいかがだろうか?

とはいうものの、繊維業界のお偉方は「高付加価値・超高価格」路線にまっしぐらである。
しかし、実際のところ彼らのいうところの高付加価値というのは、「製造工程の神格化」と「日本製」ということくらいしかない場合が多いのだから、それが超高価格で受け入れられるかどうかというのは甚だ疑問を感じる。

200ドルジーンズが苦戦に転じたという状況を踏まえると、そろそろ軌道修正を図るべきだと思うが、どうなることやら。

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