MENU

南充浩 オフィシャルブログ

洗い加工の豊和が進める自動化・機械化(今回は画像あり)

2022年12月14日 製造加工業 2

今回、児島で久しぶりに洗い加工の豊和さんにも訪問させていただいた。

昨年秋に人口知能(Ai)搭載のシェービングロボットを導入されたのでその後の経緯を伺うためである。

 

洗い加工場の豊和が新たに「自動シェービングマシン」を開発したので見学してきた話(ただし画像は無い)

 

昨年秋の段階では4台が稼働し始めたということだったが、今回伺うと、さらにもう4台追加しており、物自体は出来上がっていて、あとは納入待ちという段階だった。

今回は画像も撮影させていただいた

こちらはガラス越しに撮影。先端のローラーブラシでジーンズをこすっている

 

 

 

1台あたり何千万円単位という投資だったそうなので、4台追加ということはそら恐ろしい投資額ということになるが、国内で今後もある程度の主導権を持ったまま生き残るためにはリスクを取ることも必要になってくる。

逆に投資する余力のない工場は今後さらに厳しい状況になるだろうともいえる。

 

また豊和は昨年秋に秋田の縫製工場を買収しており、縫製から洗い加工までの一貫生産が可能となった。

洗い加工場大手の豊和が縫製工場、秋田ホーセを買い取ったという報道

買収後いろいろと整備をすることもあったり、少し手違いなどもあったりして、今年夏以降に再度内部調整を行ったとのことで、最近の海外工場の乱れ(コロナ営業停止、電力不足、物流の乱れなどの要因)と円安基調で、秋田工場も現在の生産キャパは満杯だという。

 

児島、福山界隈の洗い加工場大手は、2000年代半ばまでは、国内の大手ジーンズメーカーと各社ごとに結び付いて安定的な操業ができていたが、2005年以降の国内大手ジーンズメーカーの衰えによって、SPA型ブランドや百貨店向け総合ブランド、セレクトショップオリジナル品などを取り込まざるを得なくなって今に至っている。

この過程で倒産した洗い加工場も数多くある。

豊和はこれまでエドウイン、ドミンゴの洗い加工をメインに手掛けてきたが、現在はそれらを残しつつも東京のSPA型ブランドやデザイナーズブランドなどの洗いも手掛けている。訪問した日も某デザイナーズブランドのジーンズを加工していた。

 

前回のブログでもアップしたように、海外工場の乱れと円安基調で、2年くらい前から国産回帰ムードが強まっている。2020年以前にも何度か国産回帰ムードは起きたがいずれも短期間でムードはムードのままで雲散霧消してきた。だから、国内の製造加工業者は、今回のムードにも懐疑的なのである。

もちろん仕事があることは嬉しいが、だからと言って設備投資も人員の雇用増員もやる気がないのである。投資したはイイが、円高基調に転じた途端に海外に注文が流出してしまえば、投資額が回収できなくなってしまうからだ。

実際に豊和の田代雄久社長も「今後、5年から10年くらい現在の生産注文があれば、もっと人員増も考えるが、2~3年後に海外生産に転じられたら、投資額が回収できないから、その辺りは慎重に考えている」という。

今回の自動シェービングマシンへの投資はどうなんだ?という声もあるかもしれないが、これはどちらかというと、少ない人員で生産効率を上げるためという捉え方をしておられるようだ。

 

自動シェービングマシン導入の効果をお尋ねすると、

「今までの人員のままで生産効率が高まったことは言うまでもないが、洗い加工の個体差が無くなっただけでなく、洗い加工の仕上がり具合もこれまでの手作業よりも良くなったと感じる」

とのことだった。

 

ジーンズの生産で最も怖いのは、個体差が如実に表れやすいことだった。

濃色のワンウォッシュやノンウォッシュなら、色の個体差はわかりにくい。しかし、洗い加工で色を落とすと色の個体差が現れやすくなる。

同じ品番なのに少し薄い物と、少し濃い物が存在してしまう。

またヒゲと呼ばれる穿きシワの色落ちや、淡色になった部分もそれぞれ個体差が出やすくなる。

 

百貨店や量販店はこれを「色ブレ」として嫌い、工場に対して返品や受け取り拒否、ひどい場合はペナルティを科す場合もあるが、大型洗濯機と手作業で色落ちをさせるので、同じロットで洗ったとしてもすべての個体が同じように色落ちすることは難しい。微妙な違いは個々に必ず生じるし、その違いが大きく出てしまう個体もある。

シェービングマシンの導入によって、この個体差がかなり無くなったのだという。

それだけならまだしも、色ブレ云々ではなく、洗い加工そのものの加工後の雰囲気が良くなったのだという。

この辺りはド素人たる自分にはあまり違いがよく分からない。実際に物を見せてもらってもよくわからない。

また、洗い加工関係の中にはそう思わないという人もおられるだろう。

とはいえ、豊和の田代雄久社長にはそのように感じられるということで話を進める。

 

結局、前回のブログでも書いたように経営者の視点から考えても投資額を考慮すると安易な人員増には各工場は踏み切れない。その一方で、工員を募集しても応募があまりないという工場も多い。

そうなると、少ない人員で同じ生産量をカバーしなくてはならなくなるので、機械化・自動化を今よりも進める必要性が強まる。

今回の自動シェービングマシン導入がその一例といえるだろう。

 

そういえば、田代雄久社長は、11月末に大阪で開催されたJIAM(国際アパレル機器&繊維産業見本市)の会場を回られたとのことだったが、外国の機械メーカーも多数出展しており、様々な新型の自動機械が提案されていたことに感心したとのことだった。

まあ、国内に限らず、経済発展した国ではどこも工員が集まりにくくなっており、中国や東南アジア諸国も例外ではないから、海外勢もアパレル・繊維産業の機械展には買う方も売る方も強い関心がある。

これまでも繊維・アパレルの製造加工業は出来得る限りの機械化・自動化が行われてきたが、今後はさらに一層自動化・機械化が世界的に進まないことには、いずれは製造加工ができなくなってしまう。

そんな意見交換をつらつらと田代雄久社長とさせていただいた次第である。

 

久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました。↓

テレビに出演してみて感じたシーインへの薄気味悪さ(個人的体験と個人的感想と)|南充浩|note

 

この記事をSNSでシェア
 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/12/14(水) 3:50 PM

    こんな産業用ロボット使ってまで、わざわざ使い込んだ感を出すとは驚愕。
    何千万とかの機械代をちゃんと回収できるんですかね。工賃いくら位なんだろう?
    人がやるよりは早くて均質なんだろうけど、機会にセットするのは自動化できなさそう。
    金属加工工場とかだと、素材~製品を着脱する下働きの人とかいるけど。

  • kta より: 2022/12/15(木) 11:08 AM

    もはやマス層は色落ちの感じを求めてたり、違いを認識しているかさえわからない気がします。
    生地の段階で薄い濃いの2色用意して生産するだけで十分なのではとも思う。
    周りにいるマス層に属する人達の判断基準は明るい暗いのレベルである事が多いです。潜在的に加工による違いを判別して明るい暗いに分類しているのかもしれませんが。
    色落ちや加工による労力を訴えるなら不均衡さも味とできる嗜好性高い層、より高額でクオリティも高い商品を求める層など、もっとマス層とハッキリ区別していいはずです。
    本来ならもっとハードル下げてもいいはずのものづくりを自ら中途半端にしているかもしれないと。
    マス層は新たな設備投資に見合う商品は求めておらず、「よりわかりやすく安く」でいいのかなと。
    どうなんだろか

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ