レディースファッションに特化した現在の百貨店に「文化」なんてあるの?
2022年12月15日 百貨店 1
そごう西武が米ファンドとヨドバシカメラ連合に売却されることが決定したことは広く知られている。
当方の感想としては「順当な売り先じゃないの?」というものしかない。池袋西武、横浜そごうの二本柱と、そごう千葉くらいしかまともな売上高を稼げる店舗が無い百貨店なんて独力で再建することは難しい。独力での百貨店再建が可能なら、それ以前に経営状態はここまで悪化しなかったはずである。
かつてセブンアイに買収された時点で、百貨店としては独力では成り立たなくなっていたといえる。そしてセブンアイに買収された後も大して業績も上向かず、セブンアイとのシナジー効果も何ら発揮できず今に至る。
そごう西武を買収できるような余力のある流通業者は限られてくるから、ヨドバシカメラに売却されることは極めて当然の結果だといえる。
現在の日本人の消費先としては、百貨店よりは家電量販店の方がマス層の支持を受けやすいと考えられる。当方を例に出せば、百貨店には仕事の商談以外には行かない。しかし、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、エディオン、ジョーシンには毎週のように行く。もちろんガンプラを買うためだが、それ以外の買い物をすることもある。電球の買い替えだとか、乾電池をまとめ買いするとか、である。
食い道楽の人なら、デパ地下の食品を買うという人も多い。もっとも当方は食に興味が無い。そこそこ美味くてそこそこ安ければ何でも構わない。スーパー万代とスーパー玉出の食で十分である。
食はデパ地下の強みがあるものの、それ以外の需要は家電量販店に負けているのが今の百貨店だといえる。
池袋西武がどのような施設へと変わるのかが話題が集まっている。
当方の知り合いの商業施設運営OBは
「低層階にヨドバシカメラが入るとその上の百貨店層が閑散とする、低層階が百貨店のままで高層階にヨドバシカメラが入ると高層階のヨドバシカメラの業績が伸びないだろう」
と予測している。
そんな中、昨日、異例ともいえる行政からの「アホなお気持ち表明」があった。
東京 豊島区長 “西武池袋本店の存続を”嘆願書まとめる|NHK 首都圏のニュース
嘆願書では「『西武池袋本店』は池袋の顔であり、まちの玄関だ。池袋のイメージは文化のまちとして大きく高まった。今後の『ヨドバシカメラ』の参入は池袋のさらなる家電量販店の激化につながり、長年育ててきた顧客や富裕層も離れ、今まで築き上げてきた文化のまちの土壌が喪失してしまう」として百貨店としての存続を訴えています。
とある。
ハッキリ言って何を言っているのか理解ができない。
この報道で御尊顔を拝する限りにおいて、相当の老齢の方のようなので極めて古い時代の認識のままでストップしておられるのだろうと考えられる。
この人に限らず、今回の買収に対して「百貨店の文化ガー」という意味の分からない主張を見かけることが増えた。しかし、百貨店の文化とは一体何なのか?全く意味不明である。
ヨドバシの低層階出店に反対 「文化の土壌喪失」 東京都豊島区の高野区長(時事通信) – Yahoo!ニュース
それによると、「海外ブランドショップの撤退をもたらし、顧客や富裕層も離れ、築き上げてきた文化のまちの土壌が喪失する」と指摘している。
との報道もあるが、海外ブランドショップがあれば文化なのか?アホらしい(笑)。
たしかに終戦後から1980年代末までは百貨店が大衆の憩いの場であり、ハレの場だったといえる。ここ10年間くらいはアニメ「サザエさん」を見ていないが、2010年頃までの「サザエさん」では必ず、日曜日に百貨店に行く回があって毎回大騒ぎをしていた。サザエさん一家にとっては、百貨店とは家族総出でしかも「余所行きの服」を着て出かける「ハレの場」である。これは戦後直後から1980年代末までの日本の大衆の姿である。かくいう当方の子供時代は両親や祖父母にとって百貨店は「ハレの場」だったことを記憶している。百貨店に行く際には「余所行きの服」に着替えて出かけていた。
大人は買い物をするとして、子供を連れて行っても子供もそれなりに楽しめる施設が百貨店だった。屋上には遊園地があり、店内には玩具屋や書店があった。また家族全員で楽しめる大食堂もあった。大人が洋服や家具を見ている間は子供の当方は屋上遊園地で遊んで玩具店・書店で時間を潰してから、大食堂で今からすると安っぽい定食を食べさせてもらった。
「文化ガー」連中はこの辺りの認識で時代が止まっているのだろう。
しかし、90年代に入って百貨店は採算と効率を重視して、屋上遊園地、大食堂、玩具店、書店、家電売り場などを百貨店から追放した。正確にいうと、家電量販店や大型書店に客を奪われただけかもしれない。そして、レディースファッションへ過度の集中と選択をし、レディースファッションに特化してしまった。
今の百貨店は家族連れで楽しめる商業施設では決してない。単なるレディースファッション集積ビルである。子供は退屈なので百貨店には行きたがらない。
今、家族で楽しめる施設は百貨店ではなく、大型ショッピングセンターである。玩具店・書店・ゲームセンターがそろっていて大食堂の代わりにフードコートがある。何ならアスレチック施設とか遊園地っぽい施設を併設している場合もある。何のことはない80年代末までの百貨店の機能がこちらに移管しただけのことである。
珍しくこのニュースのヤフコメにまともな意見があったのでご紹介しておく。
これまで百貨店が長きにわたり売上を落としてきた要因は、最盛期に数多く来店していた大衆ファミリー層の支持を失ったからである。かくいう自分は、昭和の子供時代、毎週のように池袋西武に行って、屋上遊園地で遊ぶのを楽しみにしていたのだが、今の百貨店にはそんな屋上はない。中高年レディスファッションに偏ったフロア構成、収益の薄い高級海外ブランドに依存した集客、こうした百貨店は、少なくとも大衆ファミリー層が足を踏み入れない施設になってしまった。そんな百貨店を巨大ターミナルの玄関口のレガシーとしておくのがいいという人もいるかもしれない。ただ、かつての横浜三越跡地は、ヨドバシマルチメディア横浜に替わって、その動線の人流は圧倒的に増えたということを覚えている。
とある。
まさにその通りである。今の百貨店は大衆はデパ地下しか需要がない。
横浜三越跡地に関しては知見が無いので何とも言えないが、百貨店をそのまま置いておくよりもヨドバシカメラを誘致した方が、多数の人が来るだろう。理由は簡単である。百貨店幻想派やファッション業界人が思っているほどにはファッションに熱烈な興味のある人間が減っているからである。だからレディースファッションに特化した百貨店という施設が凋落するのである。洋服に興味を持つ人間より、家電やガンプラ、趣味の用品に興味を持つ人の方が多い。だから大丸梅田店よりもヨドバシカメラ梅田店の方が平日昼間でも賑わっているのである。
文化ガー、ファッションガー、の言うとおりにしたところで、そごう西武の再建は永遠に不可能だから、ヨドバシカメラには思うとおりにドラスティックにやってもらいたいものである。
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました。↓
テレビに出演してみて感じたシーインへの薄気味悪さ(個人的体験と個人的感想と)|南充浩|note
区長さんは70年代80年代前半の西武パルコ全盛時代を
知ってる人です。確か下から立教で
ご実家はそこそこ成功した池袋の自営業です
そして21世紀~の役所付近の再開発を主導した自負が
あるんでしょう
ただ、あいだの20年近い空白は大きかった・・・
むかしは西武でないと買えないブランドがいっぱいありました
けど、その後のジャパン社設立で今は場所を貸してるだけ
当時は少年マニア・今ではソフトハウス代表取締役クラスが
集っていたパソコン売り場や音楽評論家が常連だった
オーディオコーナーもとっくに無くなりました
西武美術館もWAVEもリブロも存在せず
無印は郊外に池袋の5倍は売場面積があるお店がいっぱいある
PARCOも今となっては、ただの場所貸し業です
しかも建屋が古くてボロいから、買い物がしづらい
堤さんが引退されて、和田さんが死んで
本当にすべてが終わったという感じですね・・・
行政主導で再開発しようにも、地権者がメチャクチャだから
役所周辺にとどまってしまう。だから北口のように
駅出て10秒wで中華街・移民街・巨大露天駐車場へ
こうした事情を踏まえると嘆願書を出した
区長さんの気持ちも解らないでもないです
大資本主導による「虫くい再開発」がどんどん進む
それが今後の池袋でしょう・・・
そうこうするうちに街全体が儲からなくなるから
イケセイ建替えは22世紀まで延期www
となってオシマイ
権利関係を整理しないまま売買する方法が
発達しましたが「実質的にはフロア切り売りスキーム」
なんて上手くいく訳ないですよ
今回のヨドバシは「安もの買いの銭失い」では?
売り抜けも、まず無理でしょう
儲からない街ですから