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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品業界人が仕掛けるブームに踊らない人が増えているのではないか?

2022年12月16日 お買い得品 3

衣料品業界に携わっていると、目新しい商品は試してみたくなるし、買ってみたくなる。

ただし、試着してみないと似合う似合わないはわからないし、店頭で試着してみたところで気持ちが高揚していて正確な判断ができにくい日もある。

事実、過去に何度も「あれ?店で試着した時はそこそこ似合ってる気がしたんだけどな」という服が何度もあった。こういう失敗は年を取ることに減ってきたのだが。

2005年以前だと、DCブランド系や百貨店アパレル系ブランドしか買っていなかったので、こういう失敗をした時に精神的ダメージが大きかった。もちろん夏冬のバーゲン時に買っているとはいえ、スーツ類は最安値でも3万~4万円くらいだったし、ウールセーター類も5000円くらいはした。ジーンズだけはナショナルブランドの型落ち品を買えば3990円くらいで済んでいたが。

2005年以降、ユニクロ商品のデザインがかなりマシになり、デザイナーズインビテーションという名のコラボが始まってからはデザインがさらにマシになった。

ユニクロ価格なのと、それを値下がり時に買うので、例え似合っていなくて失敗しても精神的ダメージは大いに軽減されるようになった。

 

秋口から趣味と実益を兼ねて、いろいろなブランドのサイトを物色しているが、どうやら、ファッション業界は「スタジアムジャンパー(スタジャン)」を新トレンド商品の一つとして仕掛けているようで、様々なブランドから発売されていた。

もちろん、アダストリアにもあるし、ジーユー、ユニクロにもある。

ただ、スタジャンというのはどうにも学生っぽい雰囲気が強いアイテムで、多くの中高年ジジイには厳しい。例外があるなら、顔立ちや肌が若々しい人である。

そんなわけで、1万円を越える金額を払ってまで試してみる勇気はない。

最近はそんな分別はできるようになっている。

 

冬の防寒アウターとすれば、近年はダウン系一辺倒である。何せ、軽くて暖かいから、軽量ダウンを含めると多くの人はそれで事足りているのだろうと思う。当方もなんやかんやで軽量を含めるとダウンを何枚も持っている。しかし、仕方がない要素が強いとはいえ、ダウンはどの商品もある程度似通ってくる。着ている側のわがままとしても、ダウンばかりでは飽きてくる。

そういう観点からすると、スタジャンというのは目先が変わる部分はある。これを業界が推すのも分かる気はする。

当方の個人的記憶で言うなら、中学生のころに母親が珍しくスタジャンを買って来た。恐らくどこかで安値で叩き売られていたのだろう。洋服好きだが、バーゲン品を買うことに至上の喜びを見出す母親で、この辺りの嗜好を当方は引き継いでいる。個人的にはあまり好きではない母親だったが、顔立ちも体型・体格も似ているのだから笑わせてくれる。似ていないのは、母親が高野豆腐が嫌いなところくらいだろうか。

そのスタジャンは胴体がワインレッドで、袖が白だったと記憶している。胸には何かデカイロゴのワッペンが縫い付けられていた。

3年間くらいはそれを着て過ごしたのだが、それ以降は身体が大きくなったので着用しなくなった。

スタジャンを着用しなくなって40年くらいになるのだが、スタジャンにはそういう「学生イメージ」を抱いている。

 

で、横目で眺めていたのだが、昨日、ユニクロのスタジャンがついに3990円にまで値下がりした。定価7990円の51%オフである。

何枚も持っているダウンアウターに飽きていた部分もあるので、3990円なら試してみようと思って胴体が紺で袖が黒の物を買った。袖は合皮なので何年くらいで剥離し始めるのかが不安ではあるが、3990円なら惜しくはないかと思う。紺×黒ならジジイでも似合いやすいだろう。

 

 

このほかに胴体がグレーで袖が白の物もある。

物としては7990円の割にはよくできている。3990円ならお買い得品と言っても言い過ぎではない。2019年までのユニクロなら胴体はウール混のメルトンだったのだろうと思うが、この商品はメルトン風合繊生地である。ただし中綿が入っているので防寒性がある。逆に真冬以外は当方は暑くて着用できないだろうと思う。

 

しかし、定価7990円が何週間か前に5990円に値下がりし、2~3週間前には4990円に値下がりし、12月15日には3990円に値下がりした様を見ると、よほど売れ行きが悪く在庫がダブついているのだろうと考えられる。実際に各店の店頭には在庫が豊富に陳列されているし、公式通販サイトの在庫も普通にある。

で、実際に買ってしまってからこの商品の評価はどうなのだろう?と思ってレビューをネットで検索してみると、いろいろと出てきた。インフルエンサーのYouTube動画もたくさんでてきた。全てを読んで視聴したわけではないが、ザックリと数えたところ好意的なのが8割、低評価が2割、という体感である。

また口を極めて褒めそやしているインフルエンサーもかなり多かった。それこそ8割方は褒めている。いずれの動画もだいたい3カ月くらい前の物である。

個人的評価でいうと物性は価格の割にはかなり良いと思う。また、シルエットは華奢な若者には物足りない部分はあるのだろうが、逆に当方のような175センチ、75キロのオッサンには合いやすいと感じた。だからインフルエンサーが褒めるのも十分に理解できる。

 

その上で、インフルエンサーという洋服好きの判断と、ユニクロが対象とするマス層ではこれほどに嗜好が異なるということではないかと感じる。

よく「インフルエンサーに採りあげられたら完売する」というが、ユニクロのスタジャンに関してはインフルエンサー諸氏の賞賛は何の効果もなかったということになる。

ここから考えられる要素は2つある。

 

1、インフルエンサー諸氏の影響力が低下している

2、影響力は低下していないが、ユニクロの生産数量が多すぎるので、影響力で踊る人数を大きく越えている

 

である。

当方はどちらの要素もあるのではないかと思うが、1の要素が3割で2の要素が7割くらいなのではないかと思う。

 

最近の池袋西武の問題でもそうだが、業界人とマス層の嗜好の乖離が2010年以降大きくなっていると感じる。2005年くらいまでは、業界人が提案したファッションに対して熱心に追随しようとするマス層が今よりも多かった。その証拠がビッグトレンドの生まれやすさである。しかし、2015年以降はそこまでのビッグトレンドは生まれていない。インフルエンサーブランドが売れていると言っても以前のようなビッグヒットでもない。

衣料品への興味が薄れている人は業界人(インフルエンサー含む)が思っている以上に多いのだろう。

ユニクロは1型で最低でも何十万枚か生産するから、スタジャンに注目する服好きの人数やインフルエンサーの影響下にあるファンの人数よりも、格段に生産量が多かったのだろうと考えられる。

実際、スタジャンというアイテムも必需品ではないし、ダウンほどの機能性もない。またビジネススタイルにも兼用できる服でもない。となると、完全なる趣味の一品ということになる。

そういう物はインフルエンサー諸氏が褒めそやしたところで、買う人数は知れているということだろう。

各衣料品ブランドは、洋服に興味の無い多くの人にどうやって売るか、が今後はさらに大きな課題になるのではないかと思う。

 

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/12/16(金) 1:09 PM

    スタジャンのイメージと違って、紺x黒は渋くて大人も普通に着られそうっすね。
    でも、やっぱ個人的には買わないな。だって、しょぼいオッサンだから(´・ω・`)

    南さんがツイートしていたんで、12,900円が5,990円になったダッフルコートを
    ネットでチェックしてみましたが、ブラウンは最小と最大以外のサイズは全部在庫あり、
    ネイビーは最小以外の全部が在庫ありで、売れてないのか造り過ぎなのか大変そうっすね。
    ブラウンとかちょっと欲しい感じですが、ポリエステル67%、ウール33%なのは微妙。
    あと、やっぱりオッサンだからダッフルコートも二の足を踏む(´・ω・`)

    しかし、ちょっと待ったら半額になるとか、最初に買った人はションボリだし
    次のシーズンも「半額になるまで待っておこうっと」って人が増えて良くないっすよねぇ。
    ま、売れ残るのも困るんだろうけど・・・

  • BOCONON より: 2022/12/18(日) 5:28 PM

    僕らジジイから見ると,ユニクロはたまに定番商品的なものをユニクロ的にアレンジして(≒お金かけずに作って)売り出す事がありますね。
    比較的出来の良いものもあるけど,安っぽくて無理なものもある。

    ・数年前の紺ブレザーは良かった。比較的誰にでも合うようなシルエットで,生地は化繊だけどあまり目立たず,さほどボタンも安っぽい感じがしなかった(良いボタンは大変に高価で1セット3,000円~5,000円くらいするので,安いブレザーはたいてい釦を見れば分かってしまう)。
    同年のツイード風ジャケットにも「普段着ならこれでたくさん」レベルのものがあった。

    ・大分昔の話だけれど,ユニクロのダッフルコートはかなり重厚感があって良い感じだったのだけれど,去年(?)の J.W.Anderson とのコラボ商品は(軽くするためだろうけど)生地がペラい上に裏地のチェックが安っぽくてあんまり見られたもんじゃなかった。

    ・数年前のバブァー風ジャケットは大量に売れ残っていたなw バブァーも今期のスタジャンも元来かなり高価(今でもあるVANヂャケットのスタジャンだと3万円~くらいはする)な上に,特徴的なデザインの服だから,安上がりに済まそうとすると安っぽい感じの “の、ようなもの” にしかならない。ちょっと前のスイングトップ風ジャンパーも同様ですね。
    特徴的な見た目ということは,見ればもろに “ユニかぶり” しているのが丸わかりだから,それを嫌う人は決して少なくないと思う。

    ・南さんやおっさん氏が言及している言う今期のダッフルコートは,ネットで見るとちょっと極端なくらいのオーバーサイズのようで,クセが強すぎてオジサンはおろか若い人でも着こなすのは難しそうに見える。もともと近年「ダッフルコートなんてダサい」って風潮があって,高校生でもあまり着てませんから,ユニクロがこういうものを推す理由が僕にはわかりませぬ。

  • BOCONON より: 2022/12/18(日) 6:04 PM

    ところで南さんが11月30日の記事で “オペラパンプス” と言っているものは,GU 的呼称だと “オペラシューズ” のようで,でも僕は「女はまだしも,さすがに男が(タキシードでも着るならとも角)普段オペラなんちゃらいうような靴は履くまい。実際は言うなら “ヴァンプシューズ” じゃあるまいか」と思った。
    まあヴァンプシューズなんて言ってもどんな靴やら,たいていの人は分かるまいからわざと言っているのかも知れませんが。

    ついでに自分の発言を訂正しておくと「GU の靴は本革になってからむしろ安っぽい感じになった,というのは,紐靴については今もそう思うけれど,このオペラシューズに関しては(この画像を見る限り)例外な気がする。質感も形も良い感じだし。
    MA₋1 に合うかはとも角。
    ヴァンプシューズは好みでないから「買わんけどw」。

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