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南充浩 オフィシャルブログ

インフルエンサーの影響力で売れる洋服の数量をざっくりと考えてみた話

2022年12月19日 トレンド 2

関西では、土曜日に冷たい雨が降り、日曜そして今日と寒い日が続いている。

暑がりの当方でさえ寒いと感じる有様である。そんな中、早朝に可燃物のゴミを出しに行くとき、先日、ユニクロで3990円に値下がりして即決で買ったスタジャンを着てみた。

 

 

早朝のゴミ出しでも全く寒さを感じない。もちろん、腰から下は寒いが。(笑)

あと、もちろんのことダウンジャケットよりは重量感がある。ただ、耐えられないというほど重くはないし、20年前~30年前にはもっと重い防寒アウターが普通にあったからそれらと比べるとさほど重いとは思わない。定価7990円なら良く出来た作りだといえるし、3990円なら破格値のお買い得品と言える。

ユニクロ「今季の最高傑作」1万円以下には絶対に見えない傑作アウター

こういう記事が掲載されることにも納得である。

本当にこの記事に書かれている通りに1万円未満の物としては非常に良い。他のレビューやファッション系YouTubeの中からは「重い」とか「袖のアームホールをもっとタイトにしてほしかった」という意見も一部で見かけるが、そもそもダウン並みに軽くて保温力のある防寒アウターなどダウンとその類似品(中綿入り類)以外に存在しない(だったらダウン類を着ておけよという話)し、ビッグサイズのインナーを考慮するとアームホールをピチピチにするのは悪手でしかないから、この手の特殊な要望をユニクロが採りあげるはずもないし、一般人が気にする必要もない。

 

ただ、この記事が掲載されたのが10月9日である。

内容的には前回の続きになるが、10月上旬以降、検索をしていただければわかるが、あまたのインフルエンサーがユニクロスタジャンについてのYouTubeをアップしており、その8割方が賞賛している。

にもかかわらず、2か月半後の12月15日には51%オフの3990円にまで値下げされてしまうほどに売れ残ってしまったわけである。

この値下げでMサイズとLサイズは売り切れてしまうかもしれないが、それ以外のサイズは残ってしまい、さらにもう一段値下げされることもあるのではないかと当方は見ている。

このユニクロスタジャンの売れ残り方とインフルエンサーの温度差は、アパレル業界にとっては真剣に考慮するべきものがあるのではないかと思うので、しつこいようだが前回の続きを書いている。

 

まず最初に言えることは、防寒アウターではダウン類(機能性中綿を含む)かビジネススタイル兼用でないと、メンズのマス層は購買しないということである。カジュアル一辺倒、しかもコーディネイトにも工夫が必要なスタジャンなんていうアイテムはマスのメンズは求めていないということである。これなら、中綿入りMA-1 ブルゾンの方が売れやすいだろう。何せ軽量感もあるし、スタジャンほどコーディネイトを工夫しなくても済む。

その辺りの気質というか消費マインドはあんなヘンテコリンで着づらそうなDCブランドが争奪戦になった35年前とは違うし、マルキュー系やビンテージジーンズが大ブームになった20年~30年前とも異なる。

 

そして、次に言えることは、インフルエンサー諸氏の影響力で売れる数量には限界があるということである。

あまたのインフルエンサー諸氏が3カ月前から褒め続けているのに、3990円に値下がりしてもまだ完売していないという実態を考慮すると、インフルエンサー諸氏の影響力によって売れる数量を、ユニクロの生産数量がはるかに凌駕していたということになる。

当方の知人にはODM業者が多いのだが、彼らの話を総合すると、インフルエンサーブランドの生産依頼量は苦戦ブランドが多い業界内では多いと感じるレベルなのだという。だいたい具体的な数字を尋ねてみると、各インフルエンサーは1型あたり1000枚くらいの発注があるようで、1型50枚しか依頼できないアパレルが珍しくない中では、多い方なのだという。

それはその通りだろう。ユニクロ、しまむら、ジーユーを除いて万単位の生産数量があるブランドは珍しい。「1型3000枚も売れて大ヒットですわ」と言っていたレディースブランドもあった。

例えば、YouTubeのチャンネル登録者数40万人のインフルエンサーがいたとして、このうち何%の人が実際にその人の商品を買ったり、紹介している商品を買ったりするだろうか。

10%の人間が買っただけでも4万枚の服が売れるということになるが、ODM業界からそこまでの大ヒットを聞いたことがない。となると、10%未満ということになる。

仮に5%の人間が買っても2万枚となるが、そこまでの数量も耳にしない。となると、1~3%程度ということになるのではないか、1%なら4000人、2%なら8000人、3%なら12000人となる。だが、実際に業界で動いている数量は何千枚単位が多いから1%、多く見積もって2%くらいということになるのではないかと思う。実際のところは良くて1%強、標準では1%未満ではないかと当方は考えている。

アダストリアの通販サイトであるドットエスティにも時々「インフルエンサーご紹介ブランド」が掲載されるが、メンズだとこのご紹介アイテムが1年くらい残っていたり、いきなり半額に値下がりすることも多いので、インフルエンサー諸氏の影響力で売れる数量よりもアダストリアの生産量の方が多いということがわかる。

アダストリアの各ブランドはユニクロ、しまむら、ジーユーほどの1型1万枚を越えるような生産量はないだろうから、インフルエンサーによって売れる数量はせいぜい最大級で数千枚ではないかと考えられるわけである。

 

ファッション雑誌が影響力を落とし、その代わりとなる広告塔として業界が目を付けたのがインフルエンサーということになるが、何でもかんでもインフルエンサーを起用すれば確実に完売するというわけでなく、1型あたり数千枚を越えるような生産規模を誇る大手ブランドや大手メーカーは、インフルエンサーに期待しすぎない方が賢明で、確実に数千枚は売れると考える程度で取り組むのが正しいのでえはないか。

 

久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました。↓

テレビに出演してみて感じたシーインへの薄気味悪さ(個人的体験と個人的感想と)|南充浩|note

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 comment
  • キムゴンウ より: 2022/12/19(月) 11:45 AM

    筆者は専門学校で教鞭をとっておられたとかですね(今もそうならお許しを)
    ファッション販売の影響者として カリスマ販売員が扱われていましたが
    それも昔ですよね
    これからはそういう学校はインフルエンサーコースとか作って
    ばえるSNSの書き方とかを学ぶのでしょうか?
    あるいは流行の韓流コースかな

  • BOCONON より: 2022/12/19(月) 5:23 PM

    この手の5ch.のファッションまとめで象を撫でているいたいけな群盲たちは「30歳過ぎたらどこで洋服買えばいいの?」とか「スキニーはもう古い?」「オレのハイブランドのダウンジャケット,どう?」なんてことは飽きずに繰り返し話題にしているけれど,彼らがインフルエンサーを話題にしている例は僕は寡聞にして知りませぬ。
         ↓
    https://highfashionmens.com/

    MBクンを馬鹿にして彼のオリジナル商品の粗悪な品質を罵ったり,彼のセンスの悪さをひつこく笑いものにしているスレッドならずっと続いていますが。
    つまり南さんのおっしゃる通り,フツーの男はたぶんインフルエンサーなんてものには関心はない。

    それでも始めのうち,数年前はMBクンもMBチルドレンや大山旬氏も「敢えてユニクロ(だけ)でおしゃれ」という切り口を打ち出したのは新鮮でない事もなかった。けれど最近はユニクロが公然と直接インフルエンサーに依頼したり,自社販売スタッフをインフルエンサーに仕立て上げようとしている有様だから,これではインフルエンサーと言うより単なる提灯持ち/宣伝部隊だ。著しく信頼性に欠けるから,もうおしまいだと思う。実際ダサいし。

    ところで南さんがこういうものを本気でカッコいいと思っているのかは,正直僕ははなはだ疑問に思う。
         ↓
    https://nikkan-spa.jp/1861701/2

    まあ「MBはセンスが良い,格好良い」などとは記事のどこにも書いてないですが。

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