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南充浩 オフィシャルブログ

「場」の提供

2014年7月2日 未分類 0

 昨日、山田耕史さんが、ブログで「日本のアパレル企業は服を着て行く場を提供すれば良いのではないか」と提案されていた。

「出会い」がファッションの救世主になる?
http://t-f-n.blogspot.jp/2014/07/blog-post.html

ここでは、ギャル限定の街コンに会社員男性の申込が殺到したとの記事を受けて、上のことを発想された。
文中に引用されている記事には、

普段、ギャルと接点のなさそうな会社員男性を中心に申し込みが殺到し

飲み放題・食べ放題で男性は参加費1万円、女性は参加費2000円と男性側が5倍の金額となっているにもかかわらず、6月15日開催の同イベントは、総面積250坪の会場を来場客で埋め尽くすほどの盛況ぶり。単純計算で1日に数百万円の売り上げを計上したことになる。

とある。

筆者は仕事以外でわざわざカネを払ってまでギャルと話したいとはまったく思わないが、こういう「場」を作ることで衣料品の需要を喚起するという手法は一考に値するだろう。

文中にも書かれているように、一般的に

日本は欧米に比べ、お洒落をしていく場が少ないとよく指摘されます。

洋服が文化として根付いている欧米はパーティーや教会、スポーツ観戦など皆が着飾って出かける場が沢山ありますが、 日本に住む一般人が着飾って行くような場所は殆どありません。

とされている。

識者から指摘されるのは、パーティーが少ないということであり、平均的日本人である筆者は仕事以外でパーティーなんかに出席したこともないし、誘われたこともない。
このまま仕事以外のパーティーには出席せずに人生を終了するのではないかと考えているが、それで何の痛痒もない。

筆者の彩りのない生活シーンや嗜好はさておき、着飾る場がないというのは同意だし、それを提供することで需要を喚起できるのではないかという主張は賛同できる。

その代表例はコスプレ大会だろう。
あれはあの場にいくためにコスチュームを用意する。
自分で製作する人もいるし、それ専用の衣装を購入する人もいる。
製作するといっても生地や付属品は必要だから、最低限それは購入する。
需要を喚起しているといえる。

で、こういう取り組みは実は着物業界が洋服に一歩先んじている。
ご存じのとおり、着物業界は市場規模を年々減らしてきた。
矢野経済研究所によると2013年の着物市場は3010億円で何十年かぶりに前年比を1・7%上回った。

これを指して矢野経済研究所は「回復基調へ」と表現するが、筆者は回復基調ではなく「下げ止まり」「底打ち」だと考える。
今後どんなに景気が回復しても2007年の5000億円弱にまで回復するとは到底思えないからである。

3010億円というと、ワールド1社の売上高より少ない。
それほど極小な市場規模であるといえる。

そういう危機感も手伝ってか、数年前から着物業界では若手経営者を中心に着物を着用して集まるイベントが自主的に各地で開催されている。
普段から着物を着用し慣れている人は別として、そういう「場」がなければ洋服以上に着物を着用してみようという人は少ない。
正月や成人式でもないのにわざわざ着物を着用しようという人はごく少数である。

着物の市場規模を少しでも回復させるためには、着物の着用者人口を増やすほかない。
そのためには「場」の提供が最善である。
かつての成人式の振袖のようなわざとらしいキャンペーンは今の時代何の効果もない。

2005年ごろだろうか。

販促業界では「モノ」を売るな。「コト」を売れ。

という手法がもてはやされた。

着用して集まる場を提供するというのは、この「コト」需要の創設である。
洋服業界もイベントといえば、タレントを呼んで騒ぐばかりが能ではあるまい。

需要創設への取り組みという点では、洋服業界は着物業界有志に遅れているように思えるのだが。

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