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南充浩 オフィシャルブログ

低価格マス向けブランドに「素材と縫製の品質」は不要なのではないかという話

2022年11月7日 トレンド 5

2008年のH&M初上陸からファストファッションブームが始まったとされるが、H&M、旧フォーエバー21、合弁を解消して独資となったZARA、その後に進出し早期撤退してしまったオールドネイビーと、低価格の欧米ブランドがそのまま日本に持ち込まれるケースが増えた。

それまで2000年代半ばまでGAPの上陸以外はあまり例がなかった。ZARAとても97年の上陸は国内のビギと合弁会社を設立して進出している。

そして今回のシーインの上陸である。

 

自分は海外市場には全く興味が無いし、海外でのビジネスをやりたいとも思わないが、今回は海外向けのマスブランドというものを考えてみたい。

 

国内衣料品市場が頭打ちとなったことから、2000年代半ば以降、海外市場へ進出したいというアパレル企業が増えた。増えたもののあまり成功した例はない。

低価格の大手でいうとユニクロと無印良品くらいだろうか。デザイナーズブランドやその周辺の価格帯なら売上高規模はそれほど大きくないがもう少しあるだろう。

 

低価格というか、ある程度の買いやすい価格帯で海外市場へ進出したいというブランドはいくつもあったが、結局はあまり成功していない。

2020年からの物価高で、ユニクロやアダストリアは一段階価格をアップして、かつての中価格帯カジュアルブランド並みになったが、当方が見てきたのはそれ以前の中価格帯カジュアルブランドということで、その段で話を進めさせていただく。

 

2008年以降、現地と同じ商品が国内に入ってくるようになり、海外の低価格ブランドの商品というのはどういう物かというのが、海外に出かけなくてもわかるようになった。

海外市場への進出を真剣に考えている企業は、そのあたりをまとめて見る必要があるのではないかと思う。

 

【ZARA】

まず、価格帯だがファストファッションと呼ばれる中ではZARAが最も高い。すでに低価格とは言えないのではないかと思う。それこそかつての中価格帯くらいになっている。

その割には縫製は雑なものが多い。ビギとの合弁時代にも前立てのねじれたシャツとか袖の折り返し幅が左右で異なるシャツを買ったことがあるが、今でもあまり変わっていないようで、左右の脚の太さが異なるパンツを買った知り合いもいる。縫製工場出身の唯一のブランドだが、その割には縫製の手違いが多い。縫製に関していうとユニクロの足元にも及ばない。

 

【H&M】

価格はそれほど高くないジーユーより少し高いくらいだろうか。2000年代前半には欧米出張したバイヤーなどがよくお土産として軽衣料を買ってきていたが、その時よりは随分とベーシックカジュアルにシフトしている印象がある。同じベーシックカジュアルでもユニクロよりは素材の品質が低いが、定価は安いくらいなので割り切ることができる。デザインではユニクロやジーユーにない物がたまにある。

 

【旧フォーエバー21】

ジーユーと同じくらいの価格だが、生地と縫製はジーユーよりも品質が低いが、レディースではデザイン物も多くそこがある程度の人気を確保できた理由だといえる。末期には「2着目無料」という驚異的な投げ売りをしていた。それほどに在庫がだぶついていたのだろう。

 

【オールドネイビー】

レディース、とくにキッズでは可愛いデザイン物があったという声もあるが、メンズに関していえばGAPとほとんどデザインは同じで、その割にはGAPよりも素材の品質は悪かった(GAPも良いわけではないが)。「低価格」という触れ込みでの日本進出となったが、GAPの投げ売りセール価格やジーユーで「低価格」に慣れていた日本人からするとオールドネイビーの定価に衝撃は全く受けなかった。

 

そして今回のシーインである。

シーインの商品は値段相応で、ユニクロや無印良品くらいの品質を想像すると大いに肩透かしを食らう。しかし、日本を除く世界各国で2兆7000億円を越えると言われる年商があり、規模だけでいうと圧倒的に巨大になった。インターネット通販のみなので、親和性が高いウェブプロモーションやSNSプロモーションに凄まじく長けているといえる。

 

で、これらの外資低価格マスブランドに共通していることは

1、商品デザインの良さ(個人的な好みはいろいろとあるだろうが)

2、プロモーションの上手さ

の2点だろう。

前回にも書いたが、海外でマス向け低価格ブランドに求められていることは

1、価格の安さ

2、商品デザイン

ではないかと総合的に考えられる。そしてそれを支えるのがプロモーションである。

 

マス向けブランドが海外に進出するにはこの3点に注力する必要があるといえるのではないか。かつての国内マス向け値ごろブランドは、海外に進出するにあたっても素材や縫製の品質をある程度維持しようとしてきた。しかし、それによって現地価格は高くなり、おまけに「良い物は必ず売れる」的な謎の信念があるので、プロモーションにはあまり費用をかけなかった。かけたとしても一時的な支出で終わっていた。

それが失敗の要因ではないのかと当方は思っている。そして、国内では賛否両論はあろうが圧倒的強者に上り詰めたユニクロでさえ、この日本人特有の精神性を多分に有しているがゆえに欧米市場、特に米国市場では拡大に苦戦しているのではないかと当方は見ている。

先ごろ中国から完全撤退し「せいせいした」と語っているハニーズも現地では、現地の格安ブランドに価格では全く歯が立たず百貨店に出店していたと社長が語っている。ということは、日本人が好きな「品質」なんて捨ててとにかく安さとデザインを追求すべきだったのではないかと今なら考えられる。(それよって中国で売れても旨味があるのかどうかは判断の分かれるところだが)

 

中国はもとより米国も、マス向け値ごろブランドに「素材と縫製の品質」なんていうものは求められていないのではないかと各ブランドを照らし合わせると考えられる。

ということは、ユニクロも含めて国内のマスブランドが欧米中の3地域に進出するのであれば、日本に流通させる商品とは全く別で品質を格段に落として値段を格段に安くする必要があるのではないかと当方は考えている。

1、価格の安さ

2、商品のデザイン

3、プロモーション

この3つがこそが必要不可欠であり、「素材と縫製の品質の高さ」なんてマス層は全く求めていないのではないだろうか。

理由は「素材と縫製の品質の高さ」なんて最もわかりにくいものであり、値ごろ商品を求めるマス層には全く伝わらないからだと考えられる。

ただ、今後は日本でもこの傾向は若年層を中心に強まり嗜好は米・中化するのではないだろうか。

 

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/07(月) 1:33 PM

    物の悪さは当然として、気になるのは機能面です

    ズバリ「下着が透けないかどうか」

    今どきの女の子は下・特に下半身に一枚着る習慣が
    ないようで、低所得者街のモールにいくと

    「あちゃ~今日のショーツは柄物ですかぁ・・・」

    という子に出くわす事があります

    精度が上がったファストファッションなら
    デザインやデティールは、悪くない

    けれど、機能面それもアンダーが透けない
    といった基本的なところがおなざりです

    こういった側面から考察しても
    本場物・本物のファストファッションが
    一定のシェアを取る事は日本ではあり得ません

    裏を返すと1枚せんえんのニットでも
    こうした面をちゃんと気にして物を作る
    日本の会社が海外で受け入れられる事はない

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/07(月) 2:04 PM

    ちなみに小物はさらに危険です

    「財布の底が抜けていた」
    「スマホが落ちた」
    「と思ったら底がそもそも無かった」

    選べばデザインはそれらしいんですけどね・・・

    素材・縫製の悪さはおり込み済みでも
    包む対象の物が傷む・壊れるという報告を
    目にする事があります

    服ならだいぶいいんです

    というのもニット主体
    つまり芯が入らない服が大半

    という事は芯地を固定する際に使うノリや
    仕上げ・プレス時に使うノリで
    肌がやられる可能性がないからです

    さしずめSHEINはニットの厚手なワンピで
    決まりかと

  • ara より: 2022/11/07(月) 8:46 PM

    SHEINは中国の商品を個人輸入する形を取っており、一定額以下ならば関税・消費税を支払う必要がありません。
    繊維製品なら関税は10%前後が多いでしょうか。消費税と合わせて20%ほどを免除されていることになります。
    (販売を目的とした事業輸入であれば課税されます。)
    参考 https://diamond-rm.net/management/90339/

    さらに万国郵便条約による恩恵で極端に安い送料で輸送できています。
    しかもそのしわ寄せで日本郵政がコストを負担しています。
    参考 https://sbd-style.net/?pid=138867532

    また、海外からの故事輸入扱いとなるため、日本国内の法令が適用されません。
    例えば品質表示法により定められた洗濯絵表示の取り付けが必要ですが個人輸入ならその必要はありません。
    家庭用品規制法で乳幼児衣類のホルムアルデヒドが規制されていますが、個人輸入品には適用されません。
    (販売を目的とした事業輸入であれば規制されます。)

    これは日本だけでなく、欧米においても同様の問題を抱えています。
    このような法の目をかいくぐったような流通手法もSHEINが安い理由の一つだと思われます。

  • BOCONON より: 2022/11/07(月) 9:16 PM

    少し前,父親の仕事の都合で高校時代からアメリカに住んでいた女性の描いたマンガを読んだことがあります。その人がアメリカ高校に通っていてじきに気がついた事の一つは「アメリカ人の服装ってダサい ...」ということだったそうです。「一目で安物と分かるような変な色柄の(よれた)トレーナーに,洗いざらしを通り越してぞうきんみたいになったジーパン」なんて格好がフツーだったそうで。

    日本でも「最近ユニクロも高い」なんて貧乏くさい事を言っている5ちゃんねらーも少なくないようだから,上層階級でないアメリカ人にとってはユニクロだってじゅうぶん高級品の部類なのでしょう。
    もっともひと口にアメリカと言ったって上流階級と労働者階級では別の国みたいなものらしく,アメリカでも田舎ヤンキーとかはヒョウ柄とかが好きだったりするらしいから,ユニクロなんぞよりアベイルの方がアメリカ進出はし易いのじゃないか,という気もするw

    余談ですが,上記女性がアメリカで “How do you do?” とか “How are you?” “I’m fine, thank you.” なんて挨拶をすると相手はゲラゲラ笑いだし「お前は一体いつのの時代から来たんだw」と言われたそうであります。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/08(火) 10:04 AM

    ちうか系の話題モノだと、必ず沸くのが

    ・みょうちきりんなアンチ
    ・アンポそタンのもちアゲ組

    今回もみごとに両方が沸きましたw

    バカ話はサテおき、日本国内はシェア順に

    ・マスを確保済のウニクロGU
    ・次のマスなハニーズとコロス系
    ・ごく少数のラグジュアリー系

    となっていますが、SHEINは最下位すら
    取れないと思います

    安定して一定のポジションを得るまで
    いかない・だろうなぁ・・・

    ショーツすけすけワンピ
    スマホ落っこちポシェット

    では服として・小物として機能してないもん

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