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南充浩 オフィシャルブログ

販路や用途を変えれば活路が開ける場合もある?かも

2022年10月21日 企業研究 1

これはアパレルや繊維に限ったことではないのかもしれないが、自分たちの商品やサービスが別なターゲットの方がマッチしやすいということがある。

あとは事業規模をどれくらいに設定するのかである。無限成長というのはこのご時世ではあり得ない。

 

順番が前後するが、事業規模の設定というのは情報過多・モノ余り時代の現在は重要であると痛感している。バ2000年半ばくらいまでは、特に高度経済成長期以降2000年頃までは、アパレルブランドを立ち上げて上手くいけば売上高数百億円にも達するなんていうモデルが結構あった。例えばワールドなんていうのは、オンワードに比べると後発でありながら売上高3000億円規模にまで成長することに成功した。そこまでの規模成長でなくても100億円規模にまで成長したDC系ブランドも80年代には多かった。(その後も維持できているかどうかは別問題)

某ビンテージ系ジーンズブランドの企画マンが2000年代後半に独立したが、その際「もう、仲間数人とそこそこ儲かる数億円規模のブランドを目指しますわ」と言っていたことを今でも覚えていて、このブランドはさほど成長もせず大きく落ち込みもせず今も続いている。

 

スポーツ系の機能素材がメンズスーツに使用されるようになり、メンズスーツが機能素材だらけになったというのは、機能素材からすると売り先を変えて拡大に成功した類だといえるだろうし、作業服のワークマンが現在成長痛を感じる過渡期ではあるにせよ、カジュアル向け販路に進出して拡大できたのもそれに類するといえる。

先日、久しぶりにブルーモンスタークロージングを展開するブリッツワークスの青野睦社長と話すことがあった。

 

たびたびこのブログでも言及しているが、某大手ジーンズメーカーEドウインから独立する直前に当方の無料セミナーに来てくださって、いろいろと相談を受けたのでそれ以来のお付き合いである。

独立に際して全く違う分野で独立するのは、相当に下準備が必要となり、それまでのノウハウも生かせないので、独立後からジーンズを基本としたカジュアルブランドとして開始したことは当然だといえる。

その後、ジーンズ業界と非常に近しい関係にあるワーキング業界へと進出した。

だが、難点があった。ジーンズ業界もワーキング(作業服)業界もどちらも資本力の大きさが物を言うのである。そんなもんはどの業界でも同じなのだが、現状、チェーン店を相手にするジーンズ業界と、低価格と高機能を追求する作業服業界は大資本でないと勝負になりにくい。

ジーンズに関していえば、小規模独立ブランドも数多くあるのでやりようはあるのだろうが、ブランドステイタスの確立が重要となるため、長期的な取り組みが必要となる。

一方、低価格・高機能の作業服業界は独立系小規模ブランドはほぼ存在しないので、まさに資本力の勝負になっている。

 

そこで1年半くらい前からバイクウェアへ進出した。

これが案外うまく行っている。

バイクウェア市場というのは非常に小さい。現在バイク人口が久しぶりに増加傾向にあるとはいえ大市場に膨れ上がることはないだろうから大手ブランドが参入したところで旨味はほとんどない。大手ブランドからすればバイクウェアの売上高なんて焼け石に水程度である。だからこの分野で売上高100億円ブランドを目指しますと言ったところで、実現は限りなく不可能だが、目標を小規模に設定しているブリッツワークスなら利益率が良ければそれで十分ということになる。

で、バイクウェアというのは作業服や低価格カジュアルと比べるとはるかに高額だから低価格競争をしなくても良いというメリットがある。

このバイクウェアへの参入の先鞭を付けたのはヘビーオンスジーンズで根強いファンがいる「アイアンハート」だろうと思う。アイアンハートはバイクの中でもハーレーに特化した取り組みで功を奏している。正直なところ、重くて分厚いヘビーオンスジーンズは他のスポーツ系バイクとはマッチしにくいが、ハーレーにはよく似合っていると当方は感じる。

 

ブリッツワークスは逆に機能性アイデアを前面に出した商品をアピールしており、それはバイクというメカニックな乗り物とマッチしやすい。

バイクウェアというのは、機能性が無くては約に立たない。転倒したときに備えてプロテクターが内蔵できる方がいい。また冬は寒く、夏は暑いのでそれに向けた機能も備わっていればなおありがたい。

ただ、従来のバイクウェアというと、いかにもバイク用ですというデザインがほとんどだったので、デイリーには使いにくい。例えば、歩いて1分の近所のコンビニに行くときにちょっと着るとなると違和感しかない。

そういう点では、デザインを通常のジーンズカジュアルに寄せたブリッツワークスの商品はそのニッチな市場にマッチしたといえる。

 

試してみたかったが、完売のために試せなかったのが「空冷式ジーンズ」である。来年は完売する前にお知らせいただきたい。

生地に小さい穴(目に見えにくいが、繊維と繊維の通常の隙間よりは大きい)が無数に空いている素材を使用したため、バイクで走行するとめちゃくちゃ風が入って涼しいと言われる夏用の商品である。もちろん、膝にプロテクターを入れることができる。

生産数量がどれくらいかはわからない。多分、何万枚も生産はしていないだろう。何万枚どころか5000枚も生産していないのではないかと推測しているが、個人経営のブリッツワークスにとっては「完売」というのは大ヒットといえるだろう。

来年夏には空冷式ジーンズの新色と空冷式ジャケットが発売されるそうである。

今冬用には防風フリースジャケットやジーンズのインナーにスエットパンツを合体させ、分離させて別々に着用することもできる4気筒ジーンズなんていう機能性アイデア商品が発売されている。

フィルム用カメラが廃れたために消滅したフィルムメーカーのコダックと、フィルム製造のノウハウを異分野に転用して生き残ったフジフィルムがビジネス書ではよく例に挙げられるが、アパレルでも客層や売り先を変えることで事業を維持できる部分があるのではないかと思って眺めている。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/24(月) 9:04 AM

    タイトルの「かも」が南サンらしくていいなぁ

    生き残る道を探すのが必須ですが、
    もちろん「絶対」なんてあり得ませんからね・・・

    そして第2のキーワードが「事業規模」

    ・コアな分野≒特定の人に情報が届きやすい分野で
    ・既存つまり手持ちの技術が優れたものであれば

    という条件つきですが、これなら
    コアメンバーの数人が手取30万ぐらいなら
    手堅く稼げる可能性はあると思います

    それでも、単価最低3万~の商品裏を返すと、3万以上の満足感を与えられる商品を
    作らなければいけないから、難易度が高い分野です

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