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南充浩 オフィシャルブログ

実店舗・ネット通販ともに買いづらい状況にあるワークマンの過渡期

2022年10月20日 企業研究 4

ワークマンが現在過渡期であることは承知しており、中期的には何らかの改善策が結実すると思われるが、現時点では非常に実店舗・ネット通販ともに買いづらい状況となっている。

その一方で、ワークマン自身のメディア戦略の活発化の影響もあって、ワークマン商品をYouTube動画やブログ、インスタグラムなどで紹介するインフルエンサーやその予備軍の数は増加の一途をたどっている。

そのため、現場作業員ではなく一般カジュアル客からの需要は高まるばかりであり、行動範囲内の実店舗を見ても、ネット通販を見ても品切れの続出となっている。

冒頭で「買いづらい」と書いた最大の要因は実店舗とネット双方の極度の品薄状態にある。

オープン内見会に参加した「ワークマンシューズ」を定期的に覗いているが、今春のオープン時に話題となったレディースのパンプスは早々に売り切れてしまい、その後いくらかの追加投入はあったのかもしれないが、10月現在もほとんどディスプレイ用程度しか残っていない。

併設されているワークマン女子に並んでいる衣料品も同様で、例えばネット通販で「NEW」のマークが付いている商品でも店頭にはすでに売り切れている物が多数ある。さらに驚くべきことには、ネット通販も「NEW」商品が品切れがほとんどで「入荷案内申し込み」となっている。

これを普通に考えるなら、どういうことかというと、実店舗・ネット通販ともに入荷直後でなければ買えないということになる。

今のところ報道はされていないが、近々、開店前からワークマンの新商品入荷待ちの行列ができてしまうになるかもしれない。

ガンダムのプラモデルだって40年ぶりに極度の品薄状態が続いており(最近は少し緩和されつつあるが)、商品入荷日には開店前から行列ができてしまう時代である。ワークマンだって今のままならそうなる可能性は決して低くない。

 

ユニクロ、ジーユーと比べてワークマンが買いにくい理由として、過渡期であるとはいえ、圧倒的にカジュアル向け店舗数が少ないということもある。

当方なんて行動範囲内に1店舗か2店舗ある程度で、それ以外の主力は依然としてロードサイドの作業員用従来型店舗である。

それは他人も同様で、行動範囲内に店が少ないから集中してしまい、実店舗の品切れに拍車をかけることになる。さらにいうなら、実店舗の90何%がフランチャイズであるため、品揃えもバラバラであり、ネットで見たあの商品が必ず並んでいるとは限らない。

また作業員用従来型店舗では当たり前だがカジュアル向け商品が少なかったりする。

もう何度も書いているがあえて繰り返すと、店舗がフランチャイズであるため、何を揃えるかはその店のオーナー店長次第ということになる。理由はオーナー店長は自腹を切ってワークマンから商品を仕入れているため、何を選んで仕入れるかはその人の自由裁量ということになり、ワークマンが品揃えの内容を強制することはできない。強制するならワークマンが金を出してくれという話になってしまう。

カジュアル向けのワークマンプラス、ワークマン女子の出店ペースが他のSPA型チェーン店に比べて遅いというのもフランチャイズ制だからという部分が大きいだろうと見ている。

フランチャイズオーナーが現れないことには新規出店することはできないからだ。

 

実店舗で買いにくいとなると、ネット通販に期待が集まるのは極めて当然のことと言えるが、そのため「NEW」マークが付いている商品がことごとく「入荷案内申し込み」になってしまっている。

そして今春にはあった「実店舗在庫検索機能」が今秋には無くなってしまっているので、近隣の店舗にその商品が残っているのかどうかは不明となっており、ますますネット通販とフランチャイズ実店舗を消費者としては連動させにくくなっている。

ネット通販だけに残っている商品・ネット通販専用商品の場合、実店舗で試着ができないため買いにくい。もちろんサイズスペックは書かれているが、事細かに書かれているわけではないからそれだけで判断することは難しい部分がある。

ユニクロを筆頭にジーユー、アダストリアなどネット通販で大きい売上高を稼いでいる各社は、全商品にモデル着用画像を掲載している。それも正面の立ち姿だけでなく、横、後ろ、斜めと360度掲載している。さらに着用モデルの身長や体重、着用しているサイズも掲載されており、自分の体格と照らし合わせて、試着できなくても想像しやすいようになっている。

ワークマンのネット通販の現在の最大の欠点は、このモデル着用画像がほとんどない点である。商品画像は置き撮りばかりとなっており、サイズスペックだけでは判断できにくい。そのため、当方はちょっと利用する気にはならない。

ワークマンには即効性のある施策として、全商品、特にカジュアル向け・アウトドア向け商品には全てモデル着用画像とモデル着用服のサイズとモデルの身長と体重を掲載することを強く提案したい。

 

で、ワークマンのネット通販売上高はどれくらいかというと

ワークマン、EC売上高が20%減 2023年3月期は大幅増収の見通し | TECH+(テックプラス) (mynavi.jp)

ワークマンはこのほど、2022年3月期のEC売上高が、前期比約20%減となったことを明らかにした。2022年3月期のEC売上高は本紙推定で19億5200万円。

 

とある。21年3月期のEC売上高は24億円強という報道もあったため、この19億5000万円というのはほぼ実態に近いだろう。

そして23年3月期には「前期比で大幅増収になると予想している」と書かれているが、この大幅増収も100億円とか200億円という単位のプラスオンでは絶対にないだろう。恐らくは10億円~30億円くらいのプラスオンではないかと推測する。

 

理由は、先にも述べた着用画像が無さ過ぎて買いにくい上にあまりにも「入荷案内申し込み」商品が多すぎるからである。入荷案内申し込みの表示が出ている時点で諦める消費者も多いだろう。

そこで当方はこの「入荷案内申し込み」を会員登録してから何品番かでやってみると翌日とか翌々日くらいに通知メールが来た。諦める必要はないということなので、ぜひ試してもらいたい。ただし、着用画像が無いので買いにくいままであることは言うまでもない。

 

ワークマンが過渡期であると当方が書いているのは、カジュアル向け・一般消費者向けに大きくシフトしていく方針を打ち出した中で、これまでの黄金の勝ちパターンだったフランチャイズ制が適合しにくくなっている点や、ネット通販機能の不充実、商品の追加補充の少なさ、新規商品の投入速度など課題が山積みとなっているからである。

フランチャイズ制、現在のネット通販の機能、追加補充の少なさ、新規商品の企画速度の遅さ、などはいずれも作業服チェーン店としては問題の無いものばかりだったが、カジュアル向けとしては消費者ニーズに全くマッチしていない。もちろん、ワークマンは今後ニーズに対応するのだろうけれども、現在はその過渡期にあるといえる。

ただ、当方は作業服店とカジュアル向け店は同じ商品構成・同じシステムでは両立できないと考えており、カジュアル向けを主業務とするのであれば、それに適した仕組みを構築する必要がある。作業服店とカジュアルを同じ仕組みで運営できることは理想論ではあるが、すでにそのひずみは大きくなり始めており、ワークマンが掲げている成長計画を大きく阻害し始めているのではないかと感じられる。仕組みの再考を促したい。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/10/20(木) 11:02 AM

    工員の端くれとして、数年に一回くらいはワークマンで作業服買ってました。
    でも、行ってた店がカジュアル用品も増えてきて普通のお客さんが邪魔だし、作業服自体も細身でパツパツのやつとかが増えてきてカーゴパンツなのにわざわざ試着しないとダメになったので、もうワークマンには行かないことにして、別のホームセンターで作業服買っていますw(・∀・)

  • 元古着屋さん より: 2022/10/20(木) 7:34 PM

    あとFC店舗の多いワークマンのネット販売の弱点は、ネットとFC店が競合関係になるので、本部が売れるのをわかっていてもFCをないがしろにしてネット販売の強化出来ないところですね。
    USEDだと店舗毎に在庫が異なるためセカストのように店舗毎にネットで売れるのですが…。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/06(日) 9:49 PM

    >作業服店とカジュアル向け店は
    >同じ商品構成・同じシステムでは両立できない

    「カジュアル」という言葉の定義次第では
    今のワークマンでもまったく問題ないと思います

    ようはですね、

    ・安くてカッコよくて今っぽくて話題の服が欲しい

    これが南サンのいうところのカジュアルです

    しかし、もう1つ別のカジュアルを思い出して下さい
    10代前半の南サンや南サンのお母さまの層です

    GMSの売場にある服で安いのをひとまず買って
    家族に支給していた層です

    彼らからすれば今のワークマンで何ら問題ない

    化繊薄手メリヤス製品と化繊アウター製品に特化した
    品揃えは今のGMSではちょっと無理です。急ごしらえの
    モード的な路線に逝っちゃったママですからね

    かといってノースフェイスやアディダスは高いし・・・

    そこで「お!ネダンが安いワークマンがある!」と
    なる訳ですよ

    むかしの南サンのお母さまからすれば、話題のアイテム
    なんてどーでもよくて、ひとまず買える物の中から
    なるだけ安いもの、というそれだけが基準の筈

    そういう層をワークマンがかっさらっている印象があります

    彼らが主たる客層なら今のママでも何ら問題はありません

    特に年金生活者がワークマンに浸食されている印象があります
    あとはuberライダーに代表される新進下層労働者

    とても大事なことなので、繰り返しますが
    99.97%の人間にとって、服なんざ

    「近所で買えて、丈夫で、多少安けりゃどーでもいい」

    程度の存在です。話題のアイテムなり品切れなんざ
    どうでもいい。あるものを買えばいいだけの話ですから

    残りものが多少キバツでもダサくてもどうでもいい訳です
    大切なのは、耐久性とお値段。それだけです

    プラス、店舗の健全さとクリーンなイメージ/雰囲気
    この点ではドンキに圧勝中のワークマンです

  • ファッション好き より: 2023/04/05(水) 6:03 PM

    コロナの収束が全く見込めない状況でネット通販より来店者を増やすと公言しているので推して知るべしですね。
    FC店が多いということなのでFC向けの方針なのでしょうが、競合他者が市場を奪いに来たらあっという間にポシャるでしょう。
    現場仕事の人間にとってもとても使いづらい店舗なのでなぜここまで持て囃されているのかさっぱりわかりません。
    アホなネットメディアが持ち上げているだけでしょうか?

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