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南充浩 オフィシャルブログ

美術品ではなく工業製品

2014年1月27日 未分類 0

 若いデザイナーやデザイナー志望の学生さん、専門学校の教員の方々と話していて「アレ?」と思うことがある。
何となく、彼らが洋服を芸術品や美術品のように認識していると感じることがあるからだ。

洋服には大きく分けてオートクチュールとプレタポルテがある。
オートクチュールは手作りによる1点物なので芸術品や美術品に近い側面がある。
「400年前の○○の茶碗」じゃないけれども、同じ物が2つと存在しないという部分は似通っている。

一方、プレタポルテは既製品と訳されるわけだから、ある程度の量産が可能な商品である。
そう、作品というよりは製品、商品である。
どんなに名前の通ったブランドであろうが、どんなに高額な商品だろうが、それは工業製品であり商品である。
例えば、レアなデニム生地で作られたレアなジーンズなる物があったとしよう。
しかし、そのレアなデニム生地とやらも最低でも1反(50メートル)は織られているわけである。
それが広幅のデニム生地だったとして、ジーンズを縫うための用尺は2メートル~2・5メートルなので、1反で20~25本のジーンズが生産されていることになる。

また既製品である限りは、縫製工場のミニマムロットをクリアにしているはずだから、例えば1型あたり100本くらいは最低でも生産されている。
中にはミニマムロットを下回ったが、縫製工場が「ちょっと厳しいですが引き受けます」と言って生産した商品もあるが、それでも40~50本程度は生産されている。

プレタポルテとしてブランドを立ち上げ、デザイナーとして活動をするなら、衣料品は「工業製品である」と認識しないとビジネスとしてはなりたたない。
これは芸術品や美術品とは対極にある量産品の世界である。

で、そういう世界がイヤだったとして、日本でオートクチュールなる世界があるのかというとほとんどない。
まだオーダーメイドの方が需要があるだろう。
しかし、オーダーメイドのデザインはベーシックであり、オートクチュールコレクションに見られるようなシルエットやデザインの独創性などは必要ない。
通常の街中やちょっとした会食にあんなオートクチュールコレクションのような物を着用していけば、仮装大会の出席者と間違えられてしまう。

なるほどオートクチュールの技術伝承は必要であるが、国内の衣料品業界で若者が職を得たいのなら、プレタポルテの仕組みを学ぶことの方が重要になる。デザイン画やパターンの作成を学ぶことが無駄だとは思わないが、経費管理や市場の調査と分析、プロモーション手法、生産背景に対する知識などに比重を置いて学ぶ必要がある。

この辺りを変えることができないと、ファッション専門学校はいつまで経っても洋裁教室の域を大きく超えられないだろう。
しかし、残念ながらファッション専門学校に通う生徒さんの多くは、経費管理とか市場の分析、プロモーションなんてことにあまり興味を持たれていないのが現状である。

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