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南充浩 オフィシャルブログ

全てはカバーできません

2014年1月9日 未分類 0

 日本マクドナルドの不振が続いており、いろいろな識者がいろいろな指摘をなさっているが、根本的な問題は100円のコーヒーやバーガーを愛用している層に、700円前後のセットメニューを買わせようという販売戦略が間違っているのだと思う。
彼らにしてみれば、700円のセットメニューなんぞ買わなくても、100円バーガー3つとコーヒー1杯で事足りるわけである。それなら使用する金額は400円で済む。

安さを好む層に中価格帯商品を買わせようとしているところにミスマッチがあると思う。

店頭のワゴンに500円や1000円のTシャツ類を並べている洋服店がある。
中に入れば3万円くらいのダウンジャケットもあるが、500円のTシャツを目当てに入店する客は多くの場合、3万円のダウンジャケットは買わない。もちろんダウンジャケットのブランドにもよるし、全員がそういう行動を採るわけではないこともお断りしておくが、大多数は1万円前後のダウンジャケットを買うだろう。
ユニクロのように5990円前後のダウンジャケットがあればそちらを買う人がほとんどだろう。

逆にいえば3万円とか5万円のダウンジャケットを買ってもらおうと思ったら、店頭で1000円Tシャツのワゴンセールをやってもあまり効果がないということになる。
日本の消費者は、低価格品も高額品も両方買うという特性を持つが、それでも高額品が好きな人が低価格品をわざわざ好んで買うケースは多くはないだろうし、低価格品を好む層が高価格品を買うことは金銭的理由からも年間に何度もあるわけではない。

高い層も安い層も両方取り込みたいというのは、よほどの仕掛けかブランド力がないなら実現はほぼ不可能だということになる。

さて、ここで一つのブログをご紹介したい。

「何かを取れば何かを失う」のが選択
http://ameblo.jp/tosboistudio/entry-11744125040.html

このブログ主は年初に始まった百貨店靴売り場のバーゲンセールの状況からこんなことを考えられたのだが、実に的確だといえる。

ウチは、安いですよ、でも、ボロいですよ。

ウチは、最先端のオシャレですよ、でも、来年は着れませんよ。

ウチは、最高のサービスで気持ち良くなりますよ、でも、高いですよ。

ウチは、いまセールですよ、でも、いつものように対応しませんよ。

ウチは、いろんなモノがあって選べますよ、でも、専門知識はないですよ。

ウチは、フレンドリーですよ、でも客に対する態度はなってませんよ。

ウチは、探検気分が味わえますよ、でも何がどこにあるか分かりにくいですよ。

ウチは、商品保障は10年ありますよ、でも値引きはしませんよ。

ウチは、専門的ですよ、でも品揃えはそれ以外はないですよ。

ウチは、上得意さんを大事にしますよ、でも一見さんには冷たいですよ。

などなど、そういうことです。

何かを取ったら、何かは取れないのですから、自分は何を取って、何を手放すかの

意思を明確にしておくということです。

私が経営者さん達と話していて困るのは、

「専門的なんだけど、品揃えもたくさんある。」とか、

「売上も大事だが、粗利率も大事だ。」とか、

「高額商品も大事でが、低単価商品も負けたくない。」とか、

「探検気分を味わえるんだけど、クレンリネスも行き届かせたい。」とか、

「大型店なんだけど、小型店のような魅力」とか、

「どこよりも安いんだけど、どこよりも最高のサービスで」とか、

そういう

「走るんだけど、歩け。」

みたいな訳の分からないことを真顔で言われる時です(苦笑)。

訳が分かりません(笑)。

もちろん、相反することにも意識を持つ必要はあるだろうが、両方を実現するとなるとかなり難しい。至難の業ではないか。

ここ数年、Jクルーというブランドがファッション関係者の間で注目されている。
以前、レナウンが国内で展開していたブランドである。皮肉なことにレナウンが手放した後から注目が高まっている。
筆者はレナウン時代のJクルーのイメージしか残っていないからこの注目度の高さに理解ができなかったのだが、この記事を読んで納得した。

「J.クルー」を救った、ジェナ・ライオンズと仲間たち
http://wired.jp/2013/12/21/jcrew-vol9/

筆者が知っていたころのJクルーとは経営陣もデザイナーもブランドのテイストもすっかり変わっていたということだ。しかもそれは日本撤退時期に近い2008年から起こっていたということである。

筆者の持つJクルーのイメージと言えば、ちょっと野暮ったいアメリカントラッドカジュアルでサイズ感もアメリカチックでデカイ。定価はそれほど高くはないが、衝動買いするほど安くもないという中途半端な価格。そんなイメージである。
さらにこのブランドの源流をたどれば、ファストファッションが流行る以前の米国で大衆向けに作られたブランドとして、筆者には記憶されている。

先に挙げた記事は長いので、簡単にまとめると新生Jクルーは、高価格で高感度なブランドとして再出発し、それがプロモーションとも相まって飛びきりお洒落なブランドとして生まれ変わった、ということになる。

Jクルーの場合は従来の顧客を捨てて、高感度高価格な顧客を選んだということになる。
もし、「そこそこの値ごろ感商品も高価格商品も」「ベーシックも高感度商品も」という戦略を採っていたならJクルーは再生しなかっただろうと推測してしまう。

老若男女が利用できる何でもある低価格カジュアル日常ウエアショップはユニクロだけで十分ではないのか。

大手とはいえ、ファーストリテイリンググループの3分の1ほどの売上高しかないアパレル各社がその部分でユニクロやジーユーと競争をする意味があるのか。
「まあ、そのジャンルで100億円ほど稼げたら本望ですよ」というなら話は別だが、真剣に「1000億円を狙います」なんて言うのは無理があるだろう。

その部分の取捨選択をはっきりしないうちは国内のアパレル企業が再生することはありえないのではないかと思う。

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