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南充浩 オフィシャルブログ

低価格衣料品でも楽しめるのならそれで良いんじゃないの?

2021年10月1日 メディア 3

服というのは、人間は全裸では暮らせないから必需品であると同時に、見映えを実物以上に良くする・悪くするという効果もある。

必需品であり嗜好品でもあるというめんどくさい存在だといえる。

だからこそ、それについての論争も多く、だいたいは交わらない平行線となってしまっている。

もちろん、食品にも同様のことがいえるが、こちらは何となくコンセンサスが取れており、住み分けもなされていて、あまり大きな論争は見られないと感じる。

先日、ツイッターだったかな?こんなYouTubeが流れてきたので拝見した。

平川武治さんという方がファッションデザイナーとファッションビジネスについてお話されている。当方のようなモグリでも名前を存じ上げている有名な方である。

 

 

ハッキリ言って、動画は長い。1時間くらいある。

イラチな自分としては、1時間も他人の会話を聞いている精神的ゆとりはないので、最近はこの動画に限らずYouTubeはすべて2倍速で視聴している。それでちょうどいいくらいのスピードである。なんなら2・5倍とか3倍も作ってもらいたいくらいだ。

しかもこの動画は1時間もあるので2倍速で聞いても30分強もあり、それすらクソダルいので、2回か3回に小分けして聞いた。

 

この中で平川さんは

 

「ユニクロは衣料品。(筆者注:多分ファッションではないと言いたいのだと思う)でも、それで楽しめる人がいるならそれはそれで楽しめばいい」

 

というようなことをおっしゃっている。

 

98年のユニクロブーム以来、衣料品業界ではユニクロ論争が数多く起き、だいたいが平行線をたどったまま、ユニクロの圧倒的売上高の前にうやむやになってきたという歴史がある。

98年当時から今にいたるまで最もポピュラーに見かけるのが

 

「ユニクロは実用品、当社はファッション」

 

というもので、これは、百貨店向けの大手総合アパレルから、国内ジーンズ専業メーカーまでありとあらゆる既存の衣料品ブランドが20年間言い続けてきたことである。

正直なところ、当方には当時も今もこの理屈がピンと来ていない。

国内ジーンズ専業メーカーのジーンズとユニクロのジーンズはどう違うのか?当初は明らかにインディゴブルーの色合いとか生地の風合いとか厚さとかに明らかに差があった。

しかし、今はどうか?ほとんど差がない。

そのうちにまたこのブログでご紹介させていただくが、とある企画のために、ユニクロの今秋のセルビッジジーンズを買ってみた。

 

 

 

例えば、リベットがだいぶ省かれていたり、革パッチがなかったりと、細かな点ではかつてのジーンズ専業メーカーの商品とは異なる点がある。

しかし、着用した人を見て明らかに大きな差があるとはいえない。

ユニクロのセルビッジジーンズをファッションとして楽しむ人がいるのも当然ではないかと思う。ジーンズに限らずだ。

ユニクロの無地のセーター、チノパン、などなども同様である。

 

いまだに柄物こそユニクロはあまり手掛けないし、多くの人はそれを求めていないと思うが、無地モノに関していえば、ユニクロ製品の見た目は年々マシになっているし、ユニクロUや+J、JWアンダーソンコラボなどのようにかなりファッション的にも楽しみやすい物も増えている。

たしかに98年当時のフリースなんかは、あれをファッション的に楽しめるとは到底思えなかったが、2010年代のユニクロはある程度ファッションとしても楽しめる物が増えている。

それに対して、いまだの旧業界からは「あれは実用品。当社はファッション」という主張が呪詛のように繰り返され続けており、当方の理解の範疇を越えていた。

その理屈に関しては、理解も納得もできない。

しかし、この動画の平川氏のお言葉はかなり納得できた。恐らく御当人はユニクロの商品なんて着用されないだろうが、そういう楽しみ方があってもいいというのはさすがの見識だといえる。

 

 

そしてこれは、ユニクロ以外の低価格衣料品ブランドにも言えることではないか。

80年代・90年代のジャスコ、イズミヤの平場に並んでいたカジュアル、青山・はるやまのスーツ、どれもファッションブランドとは一線を画していた。(悪い意味で)

だが、今の低価格衣料品ブランドは、ユニクロに限らず見た目は随分とマシになっている。使用素材や縫製仕様はイマイチなブランドも数多くあるが、それはそれで楽しめる人がいても当然だろう。

 

衣料品の価値というのは、実は非常にわかりにくい。

高い服・高い生地が必ずしも長持ちするものでもない。「高い服を長く着るのがエコ」なんていうのは、当てはまらない高額商品も数多くある。

 

世の中、価値がよく理解できないが高いという物は服に限らず数多くある。

例えば、当方からすると高い陶磁器や漆器なんていうのは、よくわからない。製造工程が〇〇だから高くなるというのは理解できるが、その陶磁器や漆器が無くても全く生活に困らない。だから全く欲しいとは思わないし、大金持ちになっても買うことはないだろう。(もしかしたら節税対策のために買うことはあるかもしれないが)

しかし、そういう物があっても良いと思うし、欲しい人は買えばいい。

 

洋服は耐久性という点からいえば、陶磁器や漆器よりも脆いから尚更価値が分かりにくい。

でもそれが欲しいという好事家のような人も一定数いるわけだから、そこに専念すれば良いのではないかと思う。

「ユニクロは実用品。当社はファッション」と呪詛を繰り返したところで、誰も呪殺することはできないし、神風が吹くわけでもない。

 

当方の知り合いの三重県の縫製工場の社長はこのようなツイートをしている。

まさしくその通りである。

 

そんなわけで、当方としては平川氏の仰るように「今の低価格ブランドでそれなりに楽しめてしまう」ので、カネもないことだし、今後もそこそこ楽しもうと思う次第である。

 

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 comment
  • 読者 より: 2021/10/01(金) 5:31 PM

    平川武治まだ生きてたのか!と動画がツイッタで紹介された時に自分は思いましたが、
    この動画は秀逸でした。面白い。
    専門学校もあんなのマジメにやっても意味ないととれることバリバリ言ってたし
    成功した今の東京のデザイナーはいい加減なヤツが多いとか。
    業界経験者なら頷けることを沢山喋ってましたが、専門学校生には伝わらないだろうなぁ
    とも思いました。
    他のマルジェラについての動画ではファッション業界のユダヤ人人脈について喋ってたり、
    色々暴露していてビックリ。年寄りで大御所だから誰も意見できないんでしょうな笑。

    平川さんみたいなじーさんがこれからはEC!EC!連呼してて笑ったが,
    平川さんの言ってるECは南さんが批判する
    いわゆるEC信仰とは全然ちがうんですよねえ。
    これからのECはこれくらいのレベルでやれってことなんだと思うけど、
    EC信者には伝わらんでしょうなぁ。

    南さんの感想読めて良かったです。

  • ヒデ より: 2021/10/01(金) 9:11 PM

    まぁ、僕はファッションには興味がないので、衣料品で充分。😁 最近リサイクルショップで服を探していると、ユニクロとGUの商品の縫製、生地の質が他のメーカーやブランドよりも良いと感じることが多い。デザイン性はあまりなくとも、商品としての質は高いと思う。特にカットソーやスウェットなどは、ユニクロとGUで充分だが、リサイクルショップの評価が低いので、300円から500円くらいで手に入るが、質はチャンピオンなどと比べても、全く遜色がない。特にユニクロUとアンダーソンコラボなど。他にも探せば掘り出しものはあると見た。

  • hitonotameni より: 2021/11/14(日) 6:30 AM

    ユニクロはボトムス安いからバーゲンの時によく大量買いします。ボトムスって消耗品なので。
    自分もヒデさんの意見に同意。リサイクル屋でユニクロより品質悪いセレショの商品によく出会います。ただ ユニクロのBDシャツとかは洗濯するとしわが凄いので、
    衣類スチーマー必須ですね。しかしリサイクル屋だと300円とか500円でユニクロのシャツは買えるので潰しで買います。しかしリサイクル屋は2000円もあれば、
    インポートブランド(ブルックスブラーズとか)のシャツ買えるので併用ですね。
    実はユニクロで新品を買う金額で、
    リサイクル屋だとインポートブランドやセレショの服が買えてしまう。

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