今からのロードサイド単独路面店強化は果たして有効か?
2021年10月4日 トレンド 2
さて、10月に入って今年も残り3カ月となってしまった。
10月1日から緊急事態宣言が開けて、予想通り、10月1日の夜から各地で凄まじい人出があったようだ。
10月2日・3日は暑かったものの、快晴で各行楽地は相当の人出だったと報道されている。それを見越して自宅に籠りウォーキングとストレッチに専念した当方は勝ち組である。
ワクチン接種率もアメリカを抜いてG7でもかなり高い位置につけていることが背景となって、国内だけで見ると、10月以降はかなりの反動需要が見込まれるだろう。
飲食、旅行などがメインになるが、衣料品もその恩恵にあずかる可能性は高い。
今後、また緊急事態宣言が発令される可能性も低くはないと思われるが、10月以降年末年始にかけては相当な反動景気があるだろう。
しかし、その一方で、各国の電力不足が懸念される。
すでに中国は電力不足で工場の操業が間引かれ始めている。我が国とて、昨年冬に電力不足の危機が叫ばれ、寸前で何とか回避されたことを忘れてはならないし、今冬も同様のことが起きるだろう。
厳冬の恐れ高まり中国の電力危機はさらに悪化も | ブルームバーグ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
個人的には、太陽光発電は各自宅の電力を賄うのが関の山だと思って甚だ期待はしていないが、太陽光発電がこれだけ普及しているにもかかわらず電力不足が起きているということは、社会全体を太陽光発電で賄うのは現時点では無理だということである。研究は進めればいいが、短兵急に太陽光発電に賭けるのは愚かしい。
一方、コロナ禍は世界的にはまだ収束していない。
これまで被害が少なかったアセアン諸国でも拡大しており、工場の操業も不安定である。
こうした要因から、11月以降は、国内反動景気に対して、商品供給が追い付かなくなる可能性があると当方は見ている。もちろん、衣料品だけではなくその他製品もである。
反動景気で売れ行きが良ければ尚更品薄となるため、店頭販売価格は上昇するだろう。
10月以降は各社さらに難しい舵取りが迫られるだろう。
衣料品に限っていえば、10月以降、これまでコロナ禍で苦戦していた既存実店舗が活況を取り戻すだろう。その勢いが長続きするかどうかはわからないが、緊急事態宣言が今後も発令されない状況だと仮定すると、このまま正月のバーゲン終了までその勢いは続くだろう。
10月中旬から日中の気温も低下するため秋物が本格的に売れ始める。またハロウィンもある。11月は恐らくブラックフライデーが始まるだろう。12月はプレセールとクリスマス、1月は正月バーゲンというスケジュールが続く。これまでコロナ禍で苦戦し続けていた大都市都心店も息を吹き返す可能性が高い。
そんな中、このニュースである。
アダストリア3〜8月期は計画未達 ロードサイド独立立地への出店も検討 | WWDJAPAN
業績に関してはあまり問題ではない。個人的に注目したのが以下の箇所である。
3〜8月期の振り返りとして、「(SC内を中心に)全国に出店することで成長してきた結果、現在国内には約1300店がある。しかし、(SCはコロナ拡大で強制的に休業となることも多いため、ロードサイドなどの)独立立地などへの出店や、ECの拡大など多様性を持たなければならない。今まさにさまざまな検討を進めている」と、9月30日に行われたリモート決算会見で福田三千男代表取締役会長は話した。
ロードサイド路面店の出店である。
たしかに昨年春のコロナ禍以降、大都市都心は密を避ける消費者から敬遠され、地方のロードサイド路面店や地方の大型ショッピングセンターがそれなりに集客できた。
ロードサイド路面店の多さで恩恵を最も被ったのは、しまむらである。
しまむら3〜8月期、過去最高業績を達成 商品政策やウェブ販促に手応え | WWDJAPAN
昨年春にコロナ禍が起きた途端、しまむらは復調し、それが1年半持続した。
もちろん、内部のMD改善やその他の施策もあっただろうが、最大の要因はコロナ禍による消費者のロードサイド路面店への回帰である。
ユニクロもまたロードサイド路面店がそれなりにあり、大都心グローバル旗艦店が休業中でもこちらが支えていた。
一方、アダストリアはショッピングセンター内と大都市都心店ばかりで、ロードサイド路面店がない。ユナイテッドアローズやビームスなどのセレクトショップも同様にロードサイド路面店が無く、コロナ禍で大苦戦が続いている。
そういうことから考えるとアダストリアがロードサイド路面店を今後出店していくことは当然の施策だといえるが、ロードサイド路面店はデメリットもある。そこを理解しているのだろうか?
また、コロナ禍がこのまま収束してしまえば、消費者は大都市都心店へ回帰し、ロードサイド路面店は閑古鳥が鳴く可能性もあり、そこも考慮されているのだろうか?
ロードサイド路面店の最大のデメリットは集客しにくいことにある。
というより、自店が積極的に集客をしないと、通りすがりの客はほとんど入ってこない。
ショッピングセンターも大都市都心店もファッションビルも通りすがりの客が入ってくる可能性が高い。各社はこれを嫌って、大都市都心店とファッションビル、ショッピングセンターへの出店に集中したという経緯がある。そしてロードサイド路面店への集客のノウハウは現時点では少なく、今後ある程度の期間を運用してノウハウが蓄積される。アダストリアに限らず、そこまで我慢できるのだろうか?
またコロナ禍が今後どうなるかはまだまだ不透明である。再拡大してロードサイド路面店が賑わう可能性もあるし、このままある程度収束してしまう可能性もある。ある程度収束すればロードサイド路面店の必要性は低下する。
衣料品も店舗もそうだが、作るには時間がかかる。今日言って明日できるわけではない。準備している間に外部環境は変わってしまう可能性がある。そのあたりも果たして吸収できるのだろうか?
もちろん、アダストリアの福田会長は優秀な経営者であるからそのあたりのことも当然考慮に入っていると思われるが。
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BOCONON より: 2021/10/06(水) 11:51 AM
うちの近所のユニクロも駅につながったビルからロードサイドに移転してしまいました。それもスーパー(ベルク)以外何もない住宅街の中,今まで用事がなきゃ誰も行かなかったような街はずれに。いくら地価が安くても田舎と言っても「学生とか,クルマのない人は来なくていいです」みたいな本末転倒なショウバイしていて売り上げが上がるわけもあるまいに。
最近のユニクロは,コロナのせいか何か知らないが,どうも何かおかしい。明らかにどうでもいいようなデザインの商品が増えていて,ユニクロGU推しの YouTuber もモード系コラボ商品しかネタにしなくなっている。一方あまり聞いた事もないアウトドア系ブランドと “コラボ” したり(一向に話題にもなってませんが)。
柳井マジックももうお仕舞いか・・・というのは気が早いかもしれませんが。
筆者も指摘しているようにロードサイド単独店は、自分たちで集客からなにから完結しないといけない。
面積も200坪以上はないと、現在の郊外では存在感がでないし、
設備投資も内装以外に外装、駐車場など投資額は大きくなる割には売上は郊外なのでそこまで取れない。
契約も15年から20年と長いので、だめなら撤退というわけにはいかない。
広い面積を埋めるには、ブランド複合でやる必要があるが、都心部で以前やっていた店舗は撤退した気がする。
まずは、小規模SCやパワーセンターで経験を積んでからのほうが良いのではないだろうか。