
ネット通販が伸びてもアパレル小売市場規模は伸びていない
2021年1月20日 ネット通販 1
新型コロナ感染症が昨年11月から再拡大しているが、非常事態宣言賛成派の言い分を聞いていると、何でもかんでもネットやオンラインでリモートできると勘違いしているように感じられ、個人的にはまったく賛同できない。
飲食店が苦境にあることは普通に考えればわかることだが、アパレル関連の店舗も苦境にある。
中には「ネット通販で代替できるだろう」「ネット通販は急成長している」と宣うお気楽な人も見かけるが、それが事実であるなら、アパレル業界はコロナ以前もコロナ以後も苦戦しているはずがない。(笑)
毎年、国内アパレル総小売市場規模の統計が発表されている。
コロナ禍に見舞われた2020年はまだ終わったばかりなので、統計は発表されていない。各種統計が1ヶ月くらいの最速で出てくるのは中国だけである。(笑)
最新の統計は2019年である。では内容を見て行こう。
国内アパレル総小売市場規模(2019年)は0.7%減。伸びているチャネルは「その他(通販など)」のみ | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)
2019年における国内アパレル総小売市場規模の販売チャネル別では、百貨店が1兆6797億円で前年比6.4%減、量販店は7993億円で同1.8%減、専門店は5兆514億円で同0.3%減、その他(通販など)が1兆6428億円で5.4%増
とのことである。
またジャンル別では
2019年の国内アパレル総小売市場規模は前年比0.7%減の9兆1732億円。品目別に見ると、婦人服・洋品市場が同0.3%減の5兆7138億円、紳士服・洋品市場が同1.5%減の2兆5453億円、ベビー・子供服・洋品市場が同0.5%減の9141億円。
とのことで、婦人服の市場規模の大きさと子供服の市場規模の小ささがわかる。
よく考えてもらいたいのが、この統計はコロナ禍が始まる前の2019年のもので、2019年は絶好調とまでは行かないまでもインバウンド需要もあり業界は一息ついていた。
コロナ禍が始まる前、業界が一息ついていた2019年でさえ、百貨店のアパレル売上高は6・4%も減っていたということである。また、アパレル小売の総額も1・7%とわずかながらではあるが減っていたということである。
販路別ではその他(通販など)にネット通販も含まれると考えられるが、希望の星wwwであるネット通販も含めて5・4%しか伸びていない。
そして何より重要なことは、その他が伸びてもアパレル小売総額は1・7%減と微減になっているのである。
これがどういうことかというと、まず、
ネット通販の売上高が伸びても市場規模は変わらない
ということであり、すなわち、アパレル需要自体は増えていないということになる。
さらに言えば、
買う場所が少しだけ変わった(少しだけ実店舗からネットへ移った)
ということでしかない。
「ネット通販さえやれば売れる」という謎の思考回路のアパレル幹部はまだまだ多いが、その考えはまったく当たっていないということである。
ネット通販草創期なら、「開設しただけで売れる」かもしれないが、これだけ乱立してしまうと「開設しただけ」では売れない。そもそも「集客すらできない」のである。
また記事では
経済産業省が2020年7月に発表した2019年度の電子商取引に関する市場調査によると、2019年の衣類・服装雑貨等におけるEC市場規模は1兆9100億円で前年比7.74%増。EC化率は13.87%だった。
と言及しており、ECへどんどん参入してプレイヤーが増えに増えた状態で7・74%増にしかなっていないという点も考慮に入れる必要があるだろう。プレイヤーが増えれば売上総額は増えるのが当たり前である。

https://netshop.impress.co.jp/node/8197
記事から表をお借りするので、よく見てもらいたい。
例えば「急速なEC化」と言われるが、EC化率は2018年から比べると1%弱しか高まっていない。2020年はコロナ禍の影響で実店舗売上高が下がるので自動的にEC化率は上がるだろうが、小売総額は間違いなく9兆1700億円からさらに低下するだろう。
この記事で示されている事実だけを鑑みても、EC売上高はたしかに増えているが、実店舗の落ち込みをカバーしきれていないということがわかるし、ECは決して新しい需要を創造しているわけではないから、アパレル小売総額は微減しているのである。
アホなアパレルの経営陣がお気楽に「ECしたら売れるんやろ」と言うのは全くの誤りであるということがわかる。
当方は決して、ECを否定しているのではない。コロナ禍ではECが必要だったし、各社も取り組む必要があると考えている。しかし、「ネット通販をやれば必ず売れる」みたいなお気楽な考え方や、それを吹聴して法外なカネをむしり取っているイイカゲンなコンサルに警鐘を鳴らしたいのである。
また先ほどの表の各ジャンルのEC化率にも注目してもらいたい。
家電類で32・75%
書籍・音楽ソフト・映像が34・18%
事務用品・文房具が41・75%
となっており、EC化率の高さでいうとトップ3となっている。自分の買い方を考えてもこの3つはネットで買うことの方が便利で抵抗感が少ない。
今使っているパソコンもネット通販で買ったし、洗濯機もネット通販で買った。自分は音楽は聴かないが、書籍は書店になければAmazonで買うし、消しゴムとかプリンターのトナーなんかもネット通販で買う。
このトップ3についでEC化率が高いのが
家具・インテリア・生活雑貨の23・32%
である。
自分は家具やインテリアには全く興味がないが、衣類の収納ケースなどは持って帰るのが大きくて億劫なのでネット通販で今後は買おうかと思っている。
衣料品のEC化率はこれらに比べると伸びにくい傾向にあることも認識しておく必要がある。
平均して14%弱しかないということは、86%強はいまだに実店舗で買っているということである。どちらが大口の顧客なのかは普通に算数ができる人なら理解できるだろう。
成熟社会となった我が国において、諸問題を一挙に解決できるような「魔法の杖」は存在しないということである。
服はネットで買いにくいが、こういうのはネットで買いやすい
南さんはファッションの学校で教鞭を執っておられたようですが
そのような学校ではEコマースやDtoCへ対応した授業をすでに
やっているのでしょうか?
就職先がEコマースにシフトしているのですから
それなりの対応はしていると思いますが
機会があれば 取り上げてください