
「プロパー消化率を高めるために定価設定を下げる」という画期的な手法に笑った話
2021年1月21日 企業研究 2
新型コロナ感染症による不況によって、マス層を狙うアパレルは今年さらなる低価格競争を余儀なくされるだろう。
すでに昨年秋から無印良品が値下げを行い、ジーユーが今年春からの値下げを発表している。
特にジーユーは、10年前のリーマンショック時にも一早く「990円ジーンズ」を打ち出し、価格競争の先頭を走ったので、今回も同様の狙いがあるだろうと考えられる。
話しは少し横道にそれるが、990円ジーンズを一早く打ち出したジーユーだが、一早くシレっと廃止したのもジーユーである。
すでに2010年代からジーユーには定価990円ジーンズは存在しなくなっていた。もちろん売れ残り商品は990円、790円、590円に値下げされるが、「定価が990円のジーンズ」というのは一早く廃止された。今のジーユーのジーンズの定価はだいたい2490~1990円くらいである。
今回の新型コロナによって、企業倒産、解雇、契約打ち切り、給料削減が相次いでいる。そのため、収入減となった人が多い。
収入が減ったら、普通の人は、だいたい支出を削減しようとする。削減される支出項目は「それが無くても命や健康に支障のない物」である。
衣食住の必需品と言われながら、嗜好品に限りなく近づいている衣料品なんて、真っ先に削減されて当然の項目である。
となると、定価を引き下げねば売れにくくなるということになる。
よほどの災害やアクシデントに見舞われた人以外、今の日本で「明日着る服がありません」という人はいないだろう。オシャレを気にしなければ、ほとんどの人は半年か1年くらいは服を買わずに暮らせる。当方なんて3年くらい服を買わなくても過ごせるほどの枚数を持っている。全部ユニクロとジーユーの値下げ品だが。(笑)
こういう動きに素早く対応したのが、ストライプインターナショナルである。
「小ロット低価格」という「最強の矛と盾」みたいなコンセプトを持った新ブランド「フラー」をスタートさせることは以前にもこのブログでご紹介したが、新ブランドだけではなく、全社的に「更なる低価格化を目指す」と2代目社長がメディアで公言している。
【トップに聞く 2021】ストライプインターナショナル 立花隆央社長 アース ミュージック&エコロジーは値下げに踏み切る (fashionsnap.com)
― 一方で苦戦しているブランドは?
「アース ミュージック&エコロジー(earth music&ecology、以下 アース)」が若干苦戦したかなと。来期はリブランディングに近い規模で価格帯とMDを大幅に見直す。
― いまも3500円〜と手に取りやすい価格帯ですが、さらに引き下げる形となります。その狙いは何でしょうか。
消費者が年々、低価格をどんどん求めるようになっているので、今のニーズに価格帯を合わせるといったところまで思い切って踏み込もうと。今後は「適正価格」で値引きせずに売り切っていく。
とのことである。
在庫処分店業界からすれば、昨年・一昨年とストライプインターの商品がかなり出回った。当方の手伝っている在庫処分店にも多数入荷された。同じ商店街でも2017年には違う在庫処分店でアースの靴が290円で売られていたこともある。
在庫処分店というと「タグを切って売られる」と広く思われているが、正確にいうと「タグを切って売るブランド」と「タグはそのままで構わないブランド」とに別れる。
これは買い取り契約の際に先方がそう要望するかしないかで変わる。
ストライプの場合、タグを切らずに販売している在庫処分店が多い。
正直、この社長インタビューには驚かされた。アースというとすでに世間では「低価格ブランド」の一角として数えられている。これをさらに定価を引き下げるというから驚く。
ではどのようにして引き下げるつもりだろうか、その具体的な手法はインタビュー記事では全く語られていない。
通常、最も簡単な引き下げ手法は
1,仕入れ原価を下げる
2,製造原価を下げる
である。
恐らく、ここからは推測になるが、ストライプは両方をサプライヤー側に強いることになるのではないかと個人的には見ている。
すでに以前から、かなりの安値で仕入れたり製造したりしていると言われているストライプインターナショナルだが、そこからさらに仕入れ値を叩き、工賃を叩き、原材料費を叩くとすると、なかなか厳しいものがある。コロナ不況で経営が悪化している納入業者やサプライヤーは従うほかないということだろうか。
―値引き販売が恒常化していたという認識?
アースが特に値引き販売していたわけではないが、世の中の市場がそれに慣れていたというのはあると思う。価格の見直しはあくまでプロパー率を高めるための施策だ。
この社長の認識には恐れ入った。今は一時期に比べてタイムセールが減ったが、毎日毎日タイムセールを連発していただけでなく、バーゲン時期末期には「定価から70%オフ、レジでさらに30%オフ」が常態化していた会社が「特に値引き販売していたわけでない」という認識なのである。(笑)
また「プロパー消化率を高めるために定価を下げる」というのもなかなか笑える話である。
これこそ「プロパー消化率」なるものを重要指標化することの最大の悪弊ではないか。はっきりと言えば、値引きセールをやって売ることと何も変わらない。サプライヤーにさらにシワ寄せをして実現するのであるなら、以前の値引き体制より悪質である。
定価を下げてプロパー消化率を高めたところで一体何の意味があるのだろうか?それこそ「数字のマジック」で誤魔化しているだけではないか。
だから「%」表示される「ナンタラ率」を重要指標化することは危険なのである。お分かりだろうか。指標には「絶対額」を据えるべきなのである。
まあ、そんなストライプインターナショナルは、今後も次々とアメイジングな施策や発表を続けてくれることだろうから、ワクワクが止まらない。(笑)
そんなアースミュージック&エコロジーの商品をどうぞ~
comment
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xian より: 2021/01/21(木) 2:45 PM
アメホリではしょっちゅう買い物してます。
掘出し物が多くてジーユーより安いですw
目標と目的の取り違い、手段のためには目的を選ばず、本末転倒、無知蒙昧。虫歯になるのが嫌だから、虫歯になる前に歯を抜いちゃえ作戦w
世の中、本当にアホな経営者ばかりっすねぇ、うちのシャッチョーさんも含めてw