
アパレルのいう「直貿」に結局は中間業者が介在している現実
2020年10月30日 未分類 3
利益率を高めるために中間業者を排除しようという動きが国内アパレル業界に広がっている。
国内アパレルは自家工場や自家工場とほぼ変わらないほどの契約工場を持っている場合もあるが、90年代以降に成長した新興アパレルの多くは工場を持っていたり、契約したりしていなくて、それを商社の製品事業部(要するにOEM・ODM担当)やOEM会社・ODM会社、振り屋と呼ばれる人たちが窓口となってまとめてきた。
で、今回の新型コロナ休業によって利益どころか売上高も圧迫されたアパレルは、この中間業者を外せば、そのマージン分だけでも利益が増えるのではないかと考えて、中間業者外しに取り掛かっているというわけである。
数量ベースでいうと(金額ベースは別)、現在は98%が中国や東南アジアなどの海外生産だから、当然、これらの中間業者の多くは海外工場への取りまとめを行ってきた。
これを外して「直」でやるから「直貿」と呼ばれている。
恐らくは、本来は「直接貿易」という言葉で、これが略されて「直貿」となったのではないかと思われる。
「貿」という漢字は「貿易」以外の活用法がほとんどない。また、読みも「ボウ」しか使うこともほとんどない。そのため「直貿」が「直接貿易」以外の略語であるとはかなり考えづらい。
一方、国内生産でもやっぱり自家工場無し・契約工場無しという新興アパレルの場合はやっぱり、OEM・ODM、振り屋などの中間業者が介在して、その受注や品質管理などをまとめてきた。これを「直貿」と呼ぶかどうかはちょっとわからない。語感なのかもしれないが「直貿」というと海外とのやり取りがどうしてもイメージが強いと感じる。
中間業者を外すとなると、アパレル各社が年間100型以上にものぼる各アイテムをそれぞれに適した工場に振り分け、それを自社で生産管理するということになる。これが国内外を問わず本来の「直貿」である。
ちなみに自家工場があるアパレルでもアイテムに対する得手不得手があるため、外注工場や協力工場に発注する場合も珍しくない。
言語だけで説明するのはちょっと難しいが、例えば、ジョンブルを例にさせてもらおうと思う。
ジョンブルというとジーンズやワーク・ミリタリーテイストのカジュアルアパレルで、国内自家工場も所有している。
自家工場を使ったワーク・ミリタリーテイスト、ジーンズなどは定評がある。
そんなジョンブルは、メンズとレディースの両方を展開していて、同じブランド名だが、テイストはメンズとレディースでやや異なっている。
当たり前だが、レディースにはそういう「どカジュアル」以外に、フェミニンなアイテムも3分の1くらい含まれている。何年か前からレディースの工場を変更した途端、フェミニンアイテムがグっとフェミニンらしさを増した。従来の先だとフェミニンはフェミニンでもやっぱり「どカジュアルなニオイ」があったが、工場を変えると、フェミニンさが増した。
これなどは、工場によって仕上がりが変わることの好例ではないかと思う。
まあ、そんなわけで、アイテムごとに得意な工場を探してそこに発注するというのは、国内外を問わずアパレルの基本中の基本と言える。
海外での「直貿」の理想や基本はやはりユニクロだろうと思う。生産に詳しくない人も思い浮かべるモデルケースはユニクロではないかと思う。
海外の各工場を短サイクルで定期的に回って、商品の出来や品質をチェックする。あれである。
当方も最近言われる「直貿」とはそれを実現させようとしているのかと思っていた。だから、あれを実現するのはなかなか難しく、今のアパレル各社では実現できにくいのではないかと思っていた。
しかし、繊維商社で現役のベトナム駐在員を勤める、よしきさんから先日こんなツイートをいただき、先日、ZOOM会議でレクチャーをいただいた。
「アパレルの直貿」は以前から叫ばれていますが、少し広義に使われている印象です。
例えばアパレルが商社を飛ばせば直貿と言いますが、厳密にいうと商社が委託している現地メーカーへの直接依頼になるというだけで、海外での生地手配や付属手配、工場選定をしているのは海外メーカーだったりします。— よしき 🇻🇳🇰🇭🇲🇲正直アパレル (@Yoshikistic) October 28, 2020
今、業界やメディアで言われている「直貿」は「広義の直貿」なのである。
どういうことかというと、今までは、国内の商社やOEM会社を通じて、海外の生産委託窓口に発注していたが、今言われている「直貿」とは国内の商社を飛ばして、直接海外の生産窓口に依頼することを指しているのだという。
海外でもやはり、振り屋的な人や、生産のエージェントなどがいる。
また、広大で一貫生産している海外工場では、工場内にそういう「まとめる窓口」みたいなものがある。
今までは、国内の商社やOEMを通じて、海外の振り屋やエージェント、工場の「まとめる窓口」に依頼していたものを、アパレルが直接それら窓口とコンタクトを取るわけである。これが「広義の直貿」である。
何のことはない。国内の中間業者を飛ばして、海外の中間業者を直接使うだけの話である。
当方は、以前のブログで、中間業者は完全に排除できないと何度も書いてきたし、今もそう思っている。また中間業者が介在した方がアパレルの生産はスムーズに流れると思っている。(過度に介在させることは非効率的だが)
その理由については、字数が長くなるので今回は触れないが、現状の「直貿」を見ても、結局のところ現地の中間業者に頼っているわけである。これだけを見ても「中間業者の排除で割安な商品」ということは、実現不可能であるということが理解できるのではないか。よく言えば「広義の直貿」、悪く言えば「名ばかり直貿」が今の国内アパレルの多くが採っている政策だといえる。
comment
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おーまめ より: 2020/10/30(金) 11:10 AM
直貿は確かに広義で使われていると思います。
当方の場合は自社工場をもってる中国工場の方と直接やりとりしてやっていますが文中にあるように外注工場や協力工場に依頼する場合もありますし広義な直貿ですね笑。スムーズにいくのであれば外注を頼るのは普通にありだと思うんですが不思議ですね。何をコストと捉えているのかの差もありそうです。
国内の場合、生地・付属手配など本当に多方面とやり取りが発生し管理も大変なのでめんどくさいなーと思ってる人は多いと思います。
裏を返せばそのめんどくさいを人に任せるわけなのでそれを必要経費と考えるかどうかですよね。
その点、中国等では生地や付属の手配をしてもらえるケースが多いので作業と管理が楽なのは魅力です笑(もちろん指示するのは重要ですし、作成ベースであれば確認の時間的手間や伝える手間は発生しますが)要するにどんな業界でもニーズがあるから中間業者は存在しているということですし、品質にかかわってくることも多いですし、下手したら価格にも、、、
多角的にとらえることは忘れちゃダメですよね~ -
ナカハマ ナミ より: 2020/10/30(金) 11:29 AM
仰る通り、生産上で手間がかかるのはもちろんですが、
国際輸送における想定外のトラブルや、輸入経費の為替リスクなど、
直貿には様々な課題がありますね。中間業者は複数の取引先の製品をまとめてFCLで輸入することにより、
輸送期間の短縮と輸入経費の削減を行っています。
年々と小ロットになっているアパレルはLCLで輸入することもあるのでは…と思いますが、
LCLは経由地の港で数週間放置されることも頻発しますし、輸入経費も割高になるでしょう。国内取引であれば納期遅れによるディスカウントを要求できるかもしれませんが、
直貿で国際輸送の遅延により販売期間が短くなってしまっても、自社で責任を負うしかありません。
貿易書類の作成、海外送金手続きなど、輸入業務に人件費を割くことにもなります。国内の中間業者を通せばコストは高くなりますが、
それだけのメリットもあると思います。
本当の意味合いの直貿を出来るのはアパレルではユニクロだけではないですかね
あとニトリと無印も確立していますよね
国内アパレルで商社を使わず成り立つ事は不可能ですよね
デザインまで丸投げしているところ
問題点と思いますが