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南充浩 オフィシャルブログ

大衆との激しい乖離

2013年7月30日 未分類 0

 関西圏というローカルな土地を話題にして恐縮だが、この夏もご多分にもれず大阪市内は暑い。
先週は35度前後という猛暑が続き、一段落したら気温はそこまで高くはないが、70%を越える高い湿度で何とも不快な日が続いている。

そういう状況で外回りをしていると、筆者が汗かきということもあるが、水を被ったようにびっしょりになってしまう。
Tシャツの2枚がさねとか、ポロシャツ1枚だとかの格好が多いので、まだ汗の吸収は助かっているが、こんな気候下で肌着なしにワイシャツを着ていたら悲惨なことになるだろうなと想像していると、先日、日経ビジネスオンラインにこんな記事が掲載された。

結局、ワイシャツの下は何を着ればいいのか
宮崎俊一・松屋銀座紳士服バイヤーに聞く
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130723/251444/

紳士服のバイヤーとして名高い方であるが、もちろん面識はない。

このインタビューを読んだ感想は、純粋にファッション論としては面白いが、世のビジネスマンに対する着こなし指南としてはあまり適切ではないなあというものである。

基本的に「イタリアでは~」「欧米では~」とおっしゃっておられるが、世のビジネスマンの大半が活躍する場所は残念ながらイタリアでも欧米でもなく、日本である。
日本の気候はイタリアとも欧米とも異なる。
このファッション論を活用できるビジネスマンがいるとするなら、内勤の方か、そこそこの大手以上の役員クラスの方ではないかと思う。外回り業務をメインにする方が活用するととんでもないことになる。

ちょっと長くなるが気になった個所を抜粋引用する。
興味のある方は全文をお読みいただきたい。

宮崎:半袖シャツを全否定するわけではないし、松屋銀座でも半袖をご用意してはいる。ただし、これは積極的な提案ではない。できればスーツやシャツの素材を工夫して、夏場でもきちんとしたドレスコードに則ったビジネススタイルをしていただきたいというのが本音です。

 理由はいくつもあります。まず、日本国内ではよくても、国際社会、特に欧州では、ルール違反の格好をしていると、それだけで「交渉すべき価値ある相手」と見なされないことが多い。半袖・ノーネクタイで欧州の要人を空港で迎えでもしたら相手は「馬鹿にしているのか」と立腹しかねません。

はあ、なるほど。
しかし、一般のビジネスマンは欧州の要人を空港では出迎えないし、逆に「欧州でも役員クラスか銀行員以外は暑い夏は半袖シャツを着用している」というコラムもある。
個人的にはこの記事を鵜呑みにはできない。

彼はこのあと、上着を着用することを前提に半袖シャツの不利と不機能を説くのだが、そもそもクールビズは「冷房設定温度を高めに保つため、暑すぎないように上着着用を止めましょう」という主旨である。
なぜ、上着着用が前提で話が進むのか理解に苦しむ。

続けて

欧米はもちろん新興国でも、国や経済を動かしている層は例外なく国際的なファッションルールを守っている。

という一節があるのだが、新興国とはどのあたりを指しているのか漠然としすぎているが、中国南方や香港、台湾は大企業になればなるほど、オフィス内の冷房温度は低い。
日本が推奨している「28度設定」なんぞはアホらしくて比較にならないほど低い。
おそらく20度弱にまで下げている。そういう空間の中なら長袖シャツも楽々と着用できるし、反対にジャケットを着用しなければ寒くて体調を崩す。
日本のオフィス環境とは比較する前提条件が異なりすぎる。

で、ここからようやく本題のワイシャツの下に何を着れば良いかという話題になる。

宮崎:対策の1つは、白いワイシャツの下に着ても透けにくい「ステルスカラー」の肌着を着ることでしょう。ただ、国際的な基準では、ビジネスシャツは下着として扱われており、例えば欧州では、ビジネスで着るシャツの下にアンダーウェアを着る人はほとんどいません。下着の重ね着になるからです。個人的にも、シャツの下は何も着ないのが正解だと思う。

えーと、典型的な「オウベイガー」でまったく賛同できないが、唯一最初の部分だけは賛同である。
ステルスカラーの肌着着用である。一般的にベージュの肌着がもっとも透けにくいとされるが、筆者が試してみた範囲ではライトグレーの肌着もベージュに次いで透けにくい。

で、それ以降はお話にならない。勝手にやっていてください。

さらに最後の部分はもっと驚く。

宮崎:実は私自身、「シャツの下から男性の乳首や胸毛が透けることを不快に思う人が増えている」という話を最近になってメディアなどで知り、戸惑っているところです。私のようにイタリアでファッションの基礎を学んだ者にとっては、これは難題です。というのもイタリアでは、胸毛が透けて嫌がれることはありません。むしろ逆で、男性の中にはわざわざ植毛して目立たせようする人すらいる。同様に、「乳首透け問題」など最初から存在しないんです。

はあ、そうですか。勝手に乳首でも胸毛でもスケスケにしていてください。

ビジネスマンとしては半袖シャツ着用よりも乳首&胸毛スケスケの方がはるかに相手に不快感を与えると思う。
イタリアでは嫌がられないかもしれないが、胸毛をモロ見せするのは日本では女性だけでなく、同じ男性でも好まれてはいない。

結論から言うとこの人は日本ではなく、イタリアで働くべきではないかと感じられてならない。

こういう「大衆の感覚を理解できない人」が品ぞろえを行い、着こなしを提案しているから、「大衆向け」販路である百貨店が不振なのではないだろうか。

さらにいうと、こういう「イタリアガー」とか「オウベイガー」と声高に主張する人がファッション業界の主流を占めているから、「ファッションはめんどくさい」「あんな着こなしは真似できないし、真似したくもない」という気持ちを世の男性に抱かせ、ファッション販売店(もちろん百貨店も含む)から遠ざけているのではないだろうか。

クールビズが進められ、定着しつつある現在において、ファッションの専門家(自称も含む)が行うべきことは、「イタリアでは」とか「欧米では」という着こなしを押し付けるのではなく、かっこ良く、それでいて涼しいクールビズの着こなしを大衆に提案することではないのか。

筆者は過度な欧米準拠派が却って、日本人男性のファッションを阻害していると感じるが、皆さんはいかがお考えだろうか。

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