ブルックスブラザーズの経営破綻と盛者必衰の理
2020年7月30日 ネット通販 4
日本ではクールビズ施行によってネクタイ需要が減ったとされ、ネクタイの業界団体が毎年クールビズ廃止を訴えているが、正直なところ、今更クールビズを廃止したところでネクタイ需要は元には戻らない。努力するベクトルが決定的に間違っていると思う。
今回のコロナショックによって、日本だけではなく、世界中で自宅勤務が増えている今、いわゆるビジネススーツスタイルの需要は激減した。なので、以前このブログで、リモートワークのビデオ会議用にネクタイを提案してみてはどうか?と書いたことがある。
キャンペーンでやられたんなら、キャンペーンで取り返せと当方は思うのだが。
人々のスタイル変化によって、需要が激減するというのは、何も日本に限ったことではなく、世界でも同様だということが改めてわかった。
米国のブルックスブラザーズの経営破綻である。
もちろん、当方は米国に行ったこともないし、住んだこともない。これからも行く予定もない。なので、様々な記事を読んでの感想みたいなものになる。
ブルックスブラザーズは近年また弱っていたとはいえ、やっぱり著名なブランドだけに改めて経営破綻するとそれなりの驚きがある。
ただし、当方は他のファッション業界の皆さんほどの思い入れがないから、ショックはほとんどない。
これに関する記事で最も賛同できたのがこの記事である。
今時の若い人たちにとっては数あるブランドの中の一つに過ぎないだろうが、一定の年齢以上の人にとっては憧れのブランドだった。私が社会人として仕事を始めた頃は、ブルックスやラルフ ローレン(RALPH LAUREN)を着ている上司たちを見て「イカしている」と感じ、「あれを着るような大人の男になりたい」思い、せっせと買って着たものである。だからとりわけ私にとっては、この破綻は青春時代を思い出して切ないのである。
とある。面識はまったくないが、多分、当方とこの記事を書かれた鈴木さんは同年代だと思われる。ただし、当方は就職してから衣料品に対して興味が湧いたので、大学時代は積極的に衣料品を買わなかった。
そんな浅い当方にとっては、大学時代といえば、地図の模様が描かれたバッグとラルフローレンのポロシャツだった。もちろんそんな高い物を当方が買うはずもない。そういうファッションの人が周りに多かったというだけのことである。
なので、そんな浅い人間にとっては、ラルフローレンというブランドはそれなりに親しみ?憧れ?があったが、ブルックスブラザーズは全く存在さえ大学生時代は知らなかった。
ブルックスブラザーズの存在を知ったのは働き始めてファッション雑誌を買うようになってからである。90年代前半のメンズクラブは毎号何かしらブルックスブラザーズに言及していて、「へー、そんなブランドがあるんや~」と初めて知ったわけである。
だからまったく思い入れがない。
さて、肝心の破綻原因だが、
この20年間、ブルックスが輝きを取り戻したことは一度もなかった。ヴェッキオの経営力欠落が破綻に至った根本的な原因ではないか。
ちなみにデジタルやECへの対応の遅さが破綻の要因とする日本の記事を散見したが、私の知る限りブルックスは積極的な方だった。業界に先駆けての取り組みもかなりあった。主要な敗因はやはりマーチャンダイジング(MD)にあったと見るのが妥当だ。
とある。
最近の国内の「ECガー」の論調にはうんざりである。なぜすべての成功と失敗の原因がECなのか。EC比率が低くても儲かってりゃ間違いではないし、いくらEC比率が高くても赤字垂れ流しならその事業は失敗である。
そのため私自身のネクタイが不要になった。締めるのは日本人と会うときだけとなってしまい、いつの間にかネクタイをするのを止めてしまい、そのためスーツを着る機会もなくなってしまった。ブルックスで買うものがなくなったのはこれが大きい。
このアメリカのカジュアル化を引っ張っているのがフリーランスである。2年前のNYマンハッタンでの試算では働いている人の38%がフリーランスで、そのためオフィスのデザインが急速に変化していると報じられている。ウィワーク(WE WORK)の成長もフリーランサーが増えていることが背景にある。
もう一つはかっちりしたフォーマルな着こなしを好んだベビーブーマーのリタイヤが始まり、ミレニアルズやジェネレーションZが職場に増えてきたことも大きい。彼らは小さいときからすでにカジュアル化が始まっていた世代である。
とある。要するに
1、カジュアル化が進んだ
2、フリーランスが増えてさらにカジュアル化が進んだ
ということである。
これはある意味で、日本でネクタイ需要が激減したのと同じ原因だといえる。
あと、個人的にブルックスブラザーズの経営破綻の原因としては450店舗という店舗数の多さもその一つではないかと思う。
アメリカに住んだことも行ったこともない当方の意見なので間違っているかもしれないが、いくら広大なアメリカとはいえ、売り上げ不振なのに250店舗はあまりにも多すぎると感じる。
これが、もっと安いカジュアルウェアならそれでも大丈夫だったのだろうと思うが、高価格帯に属しているうえに、近年ジリジリと需要そのものが減少していたビジネス、フォーマルウェアを売っているのだから、この店舗数を維持する必要があったのかと疑問に感じられる。
需要はゼロではないだろうから、例えば、5店舗とか10店舗とかそういう規模に縮小していたなら経営破綻しなかったのではないだろうか。
安いカジュアルウェアの場合は、そのターゲットとなる人口が多いから、250店舗体制が必要だったと思うが、買う人が限られる高価格帯で、しかも需要そのものが減少しているビジネス・フォーマルウェアの店で250店舗体制を維持する必要があったとは到底思えない。
結局は経営陣の判断ミスだったと言わざるを得ないだろう。
それにしても、人間の服装というのは、全く変わらない部分もあるが、時代とともに少しずつ変わる部分もある。セシルマクビーを筆頭とするギャルブランドの凋落もその一つで、往年のギャル服というスタイルそのものの需要が減っていたことが原因の一つだろうと思う。ブルックスブラザーズの破綻もビジネススタイルのカジュアル化というスタイル変化がもたらしたもので、コロナショックはその背中をほんの少し押しただけに過ぎない。
それにしても、永遠不変の需要がある商品やスタイルなどこの世には存在しないということを改めて強く感じる。
そんなブルックスブラザーズのシャツをどうぞ~
comment
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BOCONON より: 2020/08/13(木) 3:49 AM
僕はトラッド育ちで,今でも紺ブレザーにチノ,ネクタイなんて格好すると「綺麗に着てますね」などと言ってもらえるのはそのお陰と思っています。
しかしブルックス・ブラズについてはむしろ「今までよく持ったな」と思う。理由はアメトラ/アイビーなんてものは日本に紹介された頃本国では既に衰退期に入っていたから(よくある話ですね)。アイビーの象徴みたいに言われていたケネディのスーツはブリオーニだったし,彼以来東部上層階級出身の大統領なんて出ていない。三つボタン段返りのスーツなんて着た大統領はパパ・ブッシュが多分最後でありましょう。 -
BOCONON より: 2020/08/13(木) 4:10 AM
最近はスティーブ・ジョブスのいい加減なファッションがカッコイイとされる時代だから尚更で,これでは東部エスタブリッシュメントに「うっとり」と言うか,憧れを持つ唐変木なんているわけがない。
理由の二つ目は B.B. が中途半端な一流ブランドなこと。若い頃ダサいって定評のあったオバマでさえ大統領になればヒッキー・フリーマンなど着る時代だ。つまり日本で言えばスーツ1着20万円以上するような高級ブランド以外は生き残りがむつかしいという事。バーバリーの方向転換を見れば分かりますね。
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BOCONON より: 2020/08/13(木) 4:17 AM
もう一つ,僕は実は(NEW YORKER は好きですが)B.B. の服はマドラスチェックのシャツ以外買ったことがない。これと言って特徴がない割に高価だからです。まあ細かい事を言えばいろいろやってはいるらしいけど,日本の百貨店の売り場を見ると「無難」としか言いようのない=特に目を引かない実につまらない服ばかりである。(J.Press も似たようなもので,ここも確か既に30年以上前に業績不振で樫山に買収されていたはず)。
今百貨店向きトラッドブランドは雑誌広告も出さなくなっていますが,B.B. 日本法人だけは別で「正統派アメトラ B.B. だけは死守する」と云ったオモムキがある。
いや,ラルフ・ローレンも見かけるけど,彼は「モード系トラッド」といった感じのわけの分からない方向へ行ってしまった。
R.L. はとも角,悪いけど(ほかと同じく)B.B. は日本でもそう遠くない将来に消滅するだろうと僕は思います。
憧れを売る産業が厳しいということでしょうかね
梅田の第4ビルにあったBBは重厚感のあるショップでしたね
私は コンサバは嫌いでしたが 一つ上の先輩社員がBB好きで
会社の帰り 飲みに行く前に付き合わさせられました
私からすれば 面白くもおかしくもない服によくこんな金だせるなと
感心とあきれた感情が交ざった思いを持ちました
のちに青山のショップの前を通ったので覗きましたが
結局はそういうショップで買える自分にうっとりするということなんでしょうね
でも 今のファッションにはうっとりの要素は不要になりましたからね
そりゃ 廃れますよ
ダイヤモンドの倒産危険度ランキングアパレル部門でも
BBを扱う企業がランクインしてますしね