最後の高級素材
2013年7月19日 未分類 0
ユニクロが今秋の新作としてレディースでシルク素材のアイテムを打ち出している。
ブラウス、ワンピースなどである。価格は2990~5990円だ。
高級・中級アイテムを低価格で販売するという手法はユニクロの王道で、ユニクロが支持された最大の理由はこれだと思う。
MDがどうのこうのとか、グローバル戦略が云々とかそんなものはほとんど後付けの説明ではないか。
ユニクロブームのきっかけは1900円のフリースジャケットである。
それまでフリースジャケットというアイテムは、比較的高価だった。
最低でも7000~8000円はしており、1900円というのは破格値だった。
10年以上前に買った「Rニューボールド」のフリースジャケットをいまだに所有しているが、定価で9800円だった。
正確に言うなら15年以上前ではないだろうか。
おそらく定価で買っているのだが、なぜこれを定価で買ったのかという理由を思い出してみると、9800円というのが一番安かったからである。
ほかのブランドはすべて1万円を越えていた。
次にユニクロが評価されたのはジーンズである。
今は3990円だが、ユニクロのジーンズはもともと2900円である。
2900円の割には品質が良い。というのが支持された理由で、その当時も4900円くらいの値打ちがあると言われていた。
量販店には低価格帯ジーンズも元から存在していたのだが、6000円以上するナショナルブランドの商品とは見劣りしていた。それよりも品質の良いユニクロのジーンズに注目が集まった。
この次がカシミヤ、ダウンである。
カシミヤもセーターが9800円くらいというのは破格値だが、フリース1900円ほどのインパクトはなかった。
カシミヤの原料も徐々に高騰して行ったから、ユニクロも以前ほど力を入れているようには見えない。
カシミヤ混で2990円とか3990円とかのセーターを打ち出している。
個人的にはカシミヤが10%しか入っていないセーターを「メリノカシミヤ」と名付けるのは過大広告に当たるのではないかと感じており、あまり好きな手法ではない。
カシミヤ混メリノウールセーターとか、カシミヤ混セーターと名乗るべきであり、まるで新しい素材のように「メリノカシミヤ」と謳うのはどうもフェアではないと感じる。
ダウンの低価格化は成功したといえるだろう。
ダウンジャケットもご存知のように元々は高価なアイテムであり、それを中身の羽毛を少なくしたとはいえ、5990円にしたのだから、カシミヤセーター以上のインパクトは間違いなくあった。
今秋からシルクが始まる。
たしかにシルクも高額素材という認識は広く持たれている。
しかし、疑問もある。
シルクという素材を欲しがる消費者がどれほどの数、存在するのかという点である。
シルクにはフリースやダウンのようなあからさまな機能性はない。
ジーンズほど利用人口が多いわけではない。
お手入れはけっこう難しい。カシミヤセーターだってお手入れは難しいが年間に3カ月ほどしか着用しないのだからそれほどこまめに洗濯する必要もない。
今回のシルクアイテムはブラウスにワンピースである。
中衣料・軽衣料に分類されるアイテムで、ブラウス類などはとくに洗濯の回数が多い。
ユニクロのホームページには「デリケートなので手洗いしてください」と書いてあるが、果たしてそんなめんどくさい商品をいくら低価格とはいえ、欲しがる消費者がどれくらい存在するのかは未知数である。
高級素材を安くというのはユニクロの基本的な勝ちパターンであるし、ブランドの根幹にかかわる取り組みなので、取り組みとしては面白いとは思う。
けれども、ユニクロ側が期待するほどの売れ行きにはならないのではないかと予想する。
今回のシルクがおそらく、最後の高級素材ではないか。
これ以外にユニクロ未使用の高級素材・高級アイテムが存在するだろうか?
筆者はあまり思いつかない。それだけにどのくらいの売れ行きになるのかは興味深いところである。