ブランドファンではなく安売りファン
2013年7月16日 未分類 0
これまで土日の2日間週末値引きを行っていたユニクロが、週末値引きを4日間に拡大したことに気が付いたのは、3月ごろになってからだ。
正確には週末値引きではなく、金・土・日・月の4日間なので、週末から週始めの値引きとでも言うべきだろうか。
で、月曜日に期間限定値引きが終わると、火曜日には一定時間が経過した在庫品を値下げするのだから、年中セールをしているような印象を受ける。
識者によってはこの4日間値引きを「英断だ」と評価される方もおられるようだが、実際のところ、値引き期間を増やせばそれだけ利益は下がる。これについてはどなたも異論がないだろう。
先日の東洋経済オンラインではこの4日間値引きによる減益が指摘されていた。
ユニクロ、“悲願達成”目前の悩み
好評「4日連続セール」に、思わぬ反動
http://toyokeizai.net/articles/-/15394
ここ数年は客数の減少が続き、国内ユニクロ事業は前年度までに2期連続で既存店売上高で前年割れ、連続減益と収益力の低下が続いた。
そこでユニクロが集客の起爆剤として、12年秋から始めたのが「4日連続セール」だ。従来行っていた毎週土曜、日曜の2日間のセールを金曜、月曜も含む4日間に拡大。12年8月期の決算説明会で柳井会長兼社長が今13年8月期は「プライスリーダーシップを取る」と宣言したとおり、一層の低価格路線を打ち出した。
その一方で、セールの反動が出た。大規模な値引き販売で商品販売の儲けが減り、集客のために投入したTVCM、チラシなどの広告宣伝や、什器の入れ替えなど費用がかさみ、利益を圧迫した。利益柱である国内ユニクロ事業だけを取り出すと、同4.7%減益となっている。
国内ユニクロの採算悪化を受けて、ユニクロは春夏商戦の途中から低価格路線を一部軌道修正している。4日連続セールこそ継続しているが、セール対象商品の品目数を一部絞るなどして、行き過ぎた値引き販売の抑制に動いている。
だが、「お客様が賢くなられた。安いものに対する感応度が高い」(岡崎健CFO)と、セール対象商品の「エアリズム」や「レギンスパンツ」などに販売が集中してしまい、客単価の減少傾向は止まっていない。その結果、値引きのコントロールを計画通り進めることが出来ず、粗利率が会社の想定以上に悪化している。
とのことだが、何を今更と思わずにはいられない。
値引き期間が伸びればその分、利益が減ることは自明の理だし、特定のセール商品に販売が集中するのも当たり前の話である。
なぜなら、ユニクロのお客の大多数はその「特定のセール商品」を買いに来ているのであり、だれも定価でユニクロ商品を買おうとは思っていまい。
定価でユニクロを利用するのは、仕事中に服が破れたとか、急に雨に降られてズブ濡れになって着替えが必要になったとか、何かのアクシデントで服が酷く汚れてしまったとか、そういう緊急事態の人のみだろう。
待っていれば金曜日には安くなるものをわざわざ定価で買おうというのはよほどの酔狂な消費者である。
それを指して「お客様が賢くなられた」という指摘は、ちょっとピントがずれていると言わざるを得ない。
「賢くなられた」というよりは、極めて当たり前の反応をしているとしか思えないのだが。
よく指摘されるように「人は同じ物なら安い方で買う」のが当たり前である。
以前の百貨店ブランドやファッションビルブランドのように、バーゲンセールが半年に1度しかないという状況なら待ち切れずに定価購入するお客も相当数存在した。
しかも生産数量もそれほど多くはないから、半年後もその商品が残っているかどうかは不明だ。
残っていない可能性の方が高い。
しかし、ユニクロはそういうブランドではない。
大量生産だし、毎週金曜日になれば値段は安くなる。
1,2週間待ったところで、特定の商品が売り切れるという心配はほぼゼロに近いだろう。
それが新商品として入荷した直後ならなおさらである。週末値引きまでに定価で完売するような事態は絶対にない。
だったら、週末値引きまで待つ。
どうせ消費者のタンスには洋服が溢れている。定価でユニクロの商品をぜひとも今すぐに購入しなくてはならない理由はまったくない。
さまざまな時代背景もあることは承知しているが、定価で買わないようにお客様を教育したのは、ほかならぬユニクロ自身である。
ユニクロがマクドナルドと異なる点は、客単価を下げて客数を増やすことに徹しているところで、この点は評価されるべきだろう。
しかし、「定価で買いたいブランド」としてはまったく評価されていないところも留意する必要があるのではないか。
「安売りは悪だ」と指摘されているが、安売りをすることで利益が下がるからだけではない。安売りを頻繁に行うことによって、そのブランドのファンではなく、「安売り」ファンが集まるようになるからである。
個人的には、現在のユニクロに集まるお客の多くはユニクロファンではなく、安売りファンだと感じている。
さてさて、今後ユニクロが利益率を改善するためには、安売り期間を縮小するか、人件費を削減するか、製造コストをさらに下げるかのどれかである。
ユニクロの縫製は低価格の割には今でもしっかりしているが、使用素材は、数年前に比べるとずっとチープになっている。
綿花高騰の影響もあるのかもしれないが、Tシャツもポロシャツも布帛シャツも綿花の使用量がグっと減っている。生地が薄くなっている。
今夏の無地オックスフォードボタンシャツ(半袖)は、4年前の商品と比べると体感的には生地の薄さは半分くらいだろう。
Tシャツもパンツもしかりだ。
これ以上、使用素材のクオリティが落ちれば、その辺りの安物ブランドとなんら変わらなくなる。
安売りの逆効果がようやく、ユニクロをも直撃し始めた。そんな印象を持ったニュースだった。