国内工場が持つ3つの悪癖
2020年2月27日 未分類 3
国内にある縫製工場や加工場への発注が減り、中国を中心とする海外に移っているのは、人件費の高さとか、設備の老朽化とか、工員の高齢化とか、そういう理由だけではない。
国内の縫製工場や加工場の多くには3つの悪い点がある。そこが忌避される理由となっている。
1、長年の提携先よりも突発的な大口の依頼を優先してしまう
2、できることとできないことの区別の説明が曖昧で結果的にできないという
3、一旦受注して仕事をやり始めてから「難しい」とか「やりにくい」と文句を言う
である。
もちろん、そうでない工場もあるが、こういう国内工場は珍しくない。
そのため、国内回帰したブランドでも「やっぱり国内工場は使いにくい」と言って、また海外へUターンしてしまう。
実際、交流のあった某ブランドのデザイナーも「国内工場は使いにくい」と言って、また中国や東南アジア生産に切り替えてしまったことがある。
最近、日本製中心のOEM会社の社長と話す機会があった。現在仕事依頼が殺到しているが、提携関係にある工場が急遽仕事の入ってきた大手の大口の仕事を優先し、長年提携関係にあったその社長の依頼は後回しにされ困っているとの話だった。金が大事だが、義を重んじないその行為に自分は嫌悪を感じた😑
— 佐藤正臣(マサ佐藤) (@msshouhinkeikak) February 27, 2020
マサ佐藤氏のツイートだが、これははっきり言うと、今回に限らず日常茶飯事として耳にする。
今回、国内生産の依頼が殺到している理由は、新型コロナウィルスによる中国工場の停止が理由だろうと考えられる。例えば、3月に開催する展示会用のサンプルが到着しない危険性が高まっているブランドも多いから、国内工場の生産に急遽切り替えるという選択になる。
今回のコロナに限らず、中国で何かトラブルがあるたびに突発的に国内回帰が増える。
そのたびに、同じことが繰り返されてきている。
工場としては業績が厳しいから余計に大口の注文は逃したくないのだろうと思うが、それでも長年に渡って少量ずつとはいえ、毎月一定の仕事を流し続けてきた先を後回しにするのは、いかがなものか。
生産に携わっていない人にはピンとこないかもしれないが、衣料品の生産というのはだいたいどこも同じ時期に集中し、閑散期との落差が激しくなる。
毎月安定的に工場に発注するということは、閑散期にも無理をしてでも仕事を流しているということで、その苦労は並大抵のことではない。
それを何年も続けてきたのに、突発的な大口発注をいとも容易く優先させてしまうのは商道徳として決して良いとはいえない。
その突発的な大口発注は、中国の再稼働が軌道に乗れば確実に中国に戻ってしまう。何回も繰り返されていまだにそれが理解できないのだろうか。
できることとできないことの区別が曖昧というのも大問題である。
先日、ある業者が、某加工業者の苦境を伝えてきた。大口の難しい加工を引き受けたものの結局失敗して大損害になっているとのことで、この加工業者へ発注歴のある業者は、「だいたいのことを『できますよ』と引き受けるが何回かに一度は失敗する。それなら『これはできません』『ここまでならできる』というきちんとした説明が欲しい」という。
この加工業者に限らず、過去に携わったことのあるOEM業者もしょっちゅう工場とこのことで揉めていた。
「最初に『できるよ』って言ったじゃないですか」
「そうは言うけど、やってみたらやっぱりできませんでした」
なんていうやりとりは珍しくなかった。
製造の素人からすると、最初にサンプルなり仕様書なりを見せられた時点で、プロならできるかできないかはある程度わかるのではないかと思う。
縫製や加工に限らず、プロなら自分には何ができて何ができないかがある程度わかっているはずだろうと思うし、できるかできないかの確率が半々なら、「半々だ」と伝えるべきではないかと思う。
少なくとも自分はそうしてきたし、周りにもそういう人が多い。
これも注文欲しさが原因なのだろうか。
最後も国内工場とのやり取りでは珍しくない。
商品も工賃も納得して仕事をやり始めているはずなのに、やり始めると「思っていたより難しい」「複雑な工程なので時間がかかる」と言い出す。それは最初に言えよって話である。
その挙句に
「工賃を上げてほしい」とか
「納期を遅らせてほしい」とか
そういう要望を途中で突きつける。
それも最初の時点で言えよって話である。
海外の工場は途中で工賃アップを要求してくることはあまりない。その生産が終わってから、次の生産の前に「次回から工賃を上げたい」「納期を遅らせてもらいたい」という交渉になる。
どちらがスマートで注文しやすいかは言わずもがなだろう。
国内生産を維持しようというような動きが業界内にはあるが、この3つの悪癖を治さない限りは、衣類の国内生産や国内加工は今以上に増えることはないだろう。
例外を除いて、国内工場は仕事に対する姿勢を一度顧みてはどうか。
こんな本をどうぞ~
comment
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とおりすがりのオッサン より: 2020/02/27(木) 3:42 PM
あと、できるかどうか微妙なのも受注したがりますね、うちの従業員と社長は。私なんかは、微妙なやつを受けて出来なかったら困るじゃん、と思うんですけどw
うちのアホ2代目社長は金属加工の素養とかないから、機械のボタン押せば出来るくらいに思ってるフシがあって、二言目には「なんで出来ないんだ?」とか言ってきます。そして、アホ幹部は社長の顔色伺うことしか出来ないんで、何でもやろうとして上手く加工できずに工具をイッパイ破損させながらどうにか作ったりしてますが、アホなんで社長には報告せず、社長もアホなんで現場を見ないから、儲からない仕事なのが分からないという体たらくですw
同じようなことが衣服の工場でもあるんじゃないのかなぁ?世の中、アホな人が多すぎて、自分が頭良いんじゃないかと錯覚しますw
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工場出身 より: 2020/02/27(木) 4:33 PM
「そうは言うけど、やってみたらやっぱりできませんでした」
こうなる理由は幾つかあるでしょうね…
サンプルもやらずに量産加工に入れば、仕様書や絵型からじゃ解らない問題が見つかる事は当然あるでしょうし、仕様的には出来るけどこの生地じゃ難しいとか。
当然そう言う事を想定して、受注しないとならないのは当たり前なのですが、おっしゃる通りこう言う工場は多いと思います。「長年の提携先よりも突発的な大口の依頼を優先してしまう」
これに関しては、その時期に事前に長年の提携先が加工依頼を入れて、加工資材を全てそろえていたのであれば、工場側は突発の仕事を入れたのであっても提携先の納期は必ず守るのが当然でしょう。
加工の話だけしておいて、その時期の資材等が何も揃わないなんて事もあります。その間工場は何とか手を埋めなくてはならない…
加工期間や納期に影響するような事を、相手に連絡も無く進めてるのであれば問題でしょう。
このような問題は、突発的に仕事を出す側と受ける側にが多い気がします。
そもそも問題無い工場は提携取引先が囲ってる事が大半です。
常に工場を探しているようなメーカーは、工場とのトラブルが多く常に新規の取引相手同士ですから問題も多い。
工場側に問題があることが多いのは事実だと思いますが、その問題を双方で解決出来る様な間柄になれば、良いものつくりが出来ると思います。
金属加工業で客からの注文の見積とかやってますが、うちの業界だとまず見積もる人が加工を分かってなかったり、図面をちゃんと読めてなかったり、仕様を見落としてたりってのもありますね。
私は加工の現場経験があるからある程度は分かりますが、現場に図面持っていって加工できるかどうか訊いていても見落とす時はありますしね。加工段階になってやっと気が付くとか何度かありました。他の作業員が加工してる図面を通りがかりに見て「この材質で焼入れしないのおかしいんじゃね?」とか訊いたら、焼入れ指示があるのを見落としてたとかいうのもありましたw
なので、衣料の工場でも忙しくて現場の人間がちゃんと確認せず、見積もる人間もよく分からず仕事受けちゃうとかあるんじゃないですかね?