
レナウン親会社の中国企業の資金繰りが厳しさを増している
2020年2月28日 企業研究 1
先日、レナウンの2019年12月期決算が発表され、またもや赤字でその赤字幅は拡大したが、これまでとはその赤字の内容は異なる。
レナウンの19年12月期は79億円の営業赤字、減収と貸倒引当
https://www.fukeiki.com/2020/02/renown-2019-loss3.html
営業損失79億円、純損失67億円という業績だった。
決算期の変更(2月期から12月期へ)のため、10カ月の変則決算となるが、今回の巨額赤字は貸し倒れが発生しているためである。
https://www.wwdjapan.com/articles/1042165
レナウンの2019年12月期は、営業損益が79億円の赤字、純損益が67億円の赤字だった。同社は今期から決算期を2月期から12月期に変更。そのため10カ月間の変則決算での比較になるが、赤字幅は19年2月期(営業損益19億円、純損益39億円)と比較してさらに拡大した。
とあるが、そのうち大半は巨額の貸倒引当金が発生しているためである。
見出しの付け方からいえば、不景気ドットコムの方が正しい。
親会社山東如意のグループ会社・恒成国際発展有限公司への売掛金の回収が滞ったことにより、53億円の貸倒金引当金を計上したため、販管費がはね上がった。
これが巨額赤字のほとんどを占めている。
これまでのレナウンの業績不振はレナウン自身の問題によるところが大きかった。しかし、今回の減収の要因はともかくとして赤字幅拡大の原因は、親会社である中国企業の山東如意集団グループの不振である。
レナウンが中国企業の山東如意集団に買収された際には、国内業界は騒然となった。「不振に陥っていたとはいえあの名門レナウンが中国企業に買収されてしまうのか」と。
20代~30代の若い世代の人は「名門レナウン」と言われてもピンとこないだろうし、「レナウンの凄さ」というのはよく分からないだろうと思う。
実は、今年50歳になる当方だってイマイチピンと来ない。
ただ、当方が若い頃はまだかつての栄光の残滓があって勢いもあったし、人気ブランドもあった。人気ブランドの存在はレナウンルック(現ルック)が当時はグループの一員だったことも大きいだろう。
ただ、当方が若い頃ですら、レナウンの商品はほとんど買ったことがなかった。多分、一枚も買ってない。
すでにレナウンといえばオッサン向けというイメージが強かったからで、実際に商品もオッサン向けだった。
Jクルーも当時はレナウンがライセンス生産していて、ランズエンドとかLLビーンみたいなオッサン向けベーシックカジュアルで、当時上陸したばかりのGAPとテイストは似ていたが値段が1・5倍くらい高かったので結局買ったことがない。
ただ、当方より上の世代の若い頃というとレナウンはすごいアパレル企業だった。それは今の我々が想像できないほどの「イケてる」存在だった。
それはさておき。
中国企業に買収された後もレナウンは現在に至るまで苦しみ続けてきた。一方、中国という国の勢いを象徴するかのように山東如意集団は成長を続け、次々とブランドを買収し続けてきたが、実は昨年あたりから山東如意集団は不振に陥り、資金繰りが極端に悪化していた。
今回のレナウンの巨額貸し倒れはその一端を証明している。
理由はそのダボハゼ的な企業買収・ブランド買収である。言ってみれば「貯金額以上に買い物をしてしまった」ということである。
だが、なかなかこれは報道されなかったが、今回のレナウンの決算発表を受けて各紙が報道し始めている。
先に引用したWWDの一節もその一つだが、2月27日の繊維ニュースには
「山東如意科技グループ 資金繰り悪化で問題噴出 買収予定先が提訴」
という見出しの記事が紙面に掲載されている。
紙面の画像をそのまま掲載することはできないので、一節ごとの引用をしながらの紹介になるが、「山東如意科技グループの資金繰りがつかなくなっている」という一節から記事は始まる。
当方には時々、紡績や合繊メーカーの社員から情報が流れてくる。
彼らによるとすでに昨年の時点で山東如意の資金繰りの厳しさは話題になっていて、もしかするとデフォルトするかもしれないという情報もあった。
今回のレナウンの発表の少し前にも「巨額借り入れを行って山東如意がデフォルトを何とか今回は回避した」という情報も流れてきた。
巨額借り入れ額は〇十億元単位だと言われている。
そのため、昨年から企業の買収予定を次々とキャンセルしており、その予定先企業から提訴されている。
また記事中には、山東のブランド「アクアスキュータム」向けの生地代金10万ユーロの支払いがポルトガルの生地メーカーに滞っていてここからも訴えられているとある。
当方に寄せられた紡績や合繊メーカーからの情報によると、昨年秋ごろは
「レナウンは長年の膿をようやくほとんど取り除きこれから反転しようというムードになっていたが親会社の山東如意の資金繰り悪化が冷や水を浴びせている」
とのことだった。
国内アパレル企業には未だに「中国企業に買われれば助かる」とか「中国市場なら売れる」という安易な発想がはびこっていると感じられるが、すでに中国企業だから大丈夫という状況でもないし、中国市場でも淘汰は始まっている。以前にも書いたがアリババの昨年11月11日のイベントでは衣料品の売上高は前年割れ(1・6%減)している。
繊維ニュースの記事は
同社(山東如意)の資金繰りの悪化の影響は今後、さらに広がっていく可能性がある
と締めくくられている。
山東如意とは我が国の伊藤忠商事も提携しており、山東如意の苦境が続けば伊藤忠商事にも影響を及ぼすし、伊藤忠商事の中国での損失額をさらに増やすことにもなる。
買収しすぎて、買い物をしすぎて資金繰りの悪化というのは、我が国でもバブル崩壊直後にはよくあったことだし、近年だとライザップがそれによって業績を急落させた。
我が国に起きることは他国でも起きるということで、「中国だから安泰」という安直な考え方は通用しなくなってきているといえる。
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南さんのお話聴いていると,最近の若い人たちは百貨店ブランドを(レナウンもオンワード樫山も山陽商会も,あるいはタケオ・キクチもコムサデモードも)知らないかのようでありますね。
「それはまあそうだろうな」とも思うのだけれど,服飾の専門学校通っているような子ですらそんな風なのかしらん。だとしたらよく分からない。そういう子たちは一体どんな服やデザイナーやスタイリストに憧れて入学してくるのやら,僕みたいなジジイには不可解と言うほかないですな。