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南充浩 オフィシャルブログ

国内デザイナーズブランドが売れないのはコレクション開催時期の問題ではない

2019年11月20日 デザイナー 2

先日、東京コレクションブランド「ノゾミ イシグロ」が経営破綻した際、東京コレクションの開催時期が話題となった。

開催時期を変更すればコレクションを見たバイヤーが発注する可能性が高まるのではないかという論である。

今の開催時期は欧米コレクションの後に開催されている。このため、バイヤーは「欧米コレクションで予算を使い果たしたから注文できない」と断ることが常となっている。

これを欧米コレクションに先んじて開催すれば受注があるのではないかというのがその主旨である。

 

しかし、これはまったくの誤解で、開催時期を早めようが遅らせようが、バイヤーは端から国内デザイナーズブランドを仕入れる気がない。開催時期が前だろうが後ろだろうが、欧米デザイナーズブランドしか仕入れないと決めているのである。

それを以前にもこのブログで書いた。

 

Amazonが東京ファッションウィークのスポンサーから降板

それは国内のバイヤーの多くが極端に欧米崇拝が強すぎるためではないかと思う。

開催時期を早めたときは

「欧米のコレクションを見てから仕入れを決めたい」

と言い、
開催時期を遅らせたときは

「欧米のコレクションで先に仕入れを決めたから予算が残っていない」

と言うそうだ。

はっきり言って、もとから仕入れる気がないのである。(笑)
国内の有力売り場のバイヤーの多くがこの姿勢では、いくら工夫を凝らしてみたところで、国内デザイナーズブランドを売る店は増えない。
逆に言えば、独自イベント「アットトウキョウ」を開催するAmazonの方がよほど国内デザイナーズブランドを重視しているといえる。

それにしても衣料品業界人のこの手の過度な欧米崇拝がなくならない限りは、どこがスポンサーになろうと、東京コレクションは今以上には盛り上がらないのではないかと思う。」

 

実は東京コレクションも試行錯誤していて、開催時期を遅らせたり早めたりそれなりに工夫を凝らしている。そして、何年か前には欧米ブランドよりも早めたこともあった。しかし、受注は変わらない。理由は上で述べている通りである。

 

これについて、デザイナー自身がついに言及し始めた。

AKIRA NAKA さんである。自身のNOTEで書いておられる。

https://note.mu/akiranaka/n/na7403b53d7b4

 

ただ国内のバイヤーが海外に出る前にコレクションを見せる事によりメリットがあるという意見には疑問を感じた。ほとんどのバイヤー(※ここではインターナショナルバイイングのバジェットを保有しているバイヤー)は東京でコレクションを見ても海外のバイイングを終えるまで日本でのバジェットを大きく動かす事はない。

 

それは何故か?日本のデザイナーのプライオリティーが海外のデザイナーに比べて低いからだ。もし日本でマルジェラやドリスをセールスで凌駕出来るデザイナーがいれば話は別だが、彼らにも消化を確保出来るデザイナーを優先して買い付けをするのはとても真っ当な事だと思う。

また例えばNYの前にファッションウィークを持ってきても、ファッションウィークの後に展示会を組むスケジュールを考えるとどうしてもNY出張組、ロンドン組を逃す事に繋がるのではないかという懸念がある。よほど前倒しにするか、本当に数日に凝縮するかしなければスケジュール的にメリットは生まれない。

 

とのことで、当方のような外野ではなく、現場にいる人ならではの感想だといえる。

 

氏は日本のデザイナーズブランドでビジネス感覚を持っているところは少ないと説いておられ、これは当方が接触したことのあるデザイナーを思い返してもビジネス観点を持った人は少なかったから深く賛同する。逆にその観点のあるデザイナーはビッグネームになれずともスモールビジネスとして成功させている。

 

スモールビジネスとしての成功とはどのような基準かというと、

1、売上高が1億円を越えている

2、自身が人件費を受け取っても営業黒字であること

である。

 

ノゾミ イシグロの経営破綻の際にもこのブログで書いたが、この2点が達成できていない国内デザイナーズブランドはあまりにも多い。

 

国内デザイナーズブランドの厳しい実情

 

東京コレクションに10年前後も出展を続けていて売上高が数千万円レベルしかないというブランドは、世間が想像している以上に多い。体感的にいえば7割~8割はそういう、食うや食わずのブランドではないかと感じる。

 

売上高が5000万円程度しかないのに、1回の出展コストが1000万円もかかるといわれている東京コレクションに年2回ずつ出展していれば、それだけで2000万円を失う。残りは3000万円しかない。この3000万円にはサンプル製作費、人件費、事務所家賃、水道光熱費、通信費、運送代、備品代などが含まれる。

サンプルはタダで作ってもらえると思っているアホな業界人も多いが、サンプル製作には多額の費用がかかる。1着の縫製工賃が何万円もして、それのパターン製作にも何万円かかかる。生地代も副資材代も必要になるから、だいたい1型1着で3万円とか4万円になる。

50型やれば150万~200万円が必要となる。

3000万円なんてあっという間に吹き飛んでしまう。

これが国内デザイナーズブランドの現実である。

 

それを回避するためには、デザイナー自身がビジネス的観点を持つようになるか、ビジネス的観点のある人や会社と組むかのどちらかしかない。

しかし、洋裁教室や中学校の被服クラブの延長線上のような国内のファッション専門学校でそれを教えることはないし、そこに進学する学生自身もそこに興味を持たない者も多い。

そうして、食うや食わずの独立系ファッションデザイナーが毎年量産され続けてていくわけである。

 

 

 

 

アクアガールのAKIRA NAKAのニットをどうぞ~

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 comment
  • kde より: 2019/11/20(水) 12:49 PM

    東コレに参加するブランドで所属していました。コレクションひいては業界全体で漏れなく海外ブランドを買う方のが大多数だと思います。自分らの仕事をまず肯定できない人達で溢れ返っているんでしょうね。

  • fen46 より: 2020/04/22(水) 8:28 PM

    東コレに参加していなくても実力があり
    売上もあるドメスティックブランドは
    数多く存在すると思うのですが?

    弊社も大手セレクト10社に地方87社、
    海外30社程に展示会で卸売をして年商
    12〜15億はあります。社員数も5名です。

    売れないのはバイヤーが欧米崇拝している
    わけでも無く、海外のブランドのプライオ
    リティが高いわけでも無く、ただ単にその
    ブランドの商品に魅力が無いからです。

    バイヤーはプロですから自分の感情で
    バイイングしません。単純に売れるか?
    だけをみています。目の前に必ず売れる
    魅力的な商品であれば、有名/無名に関係
    無くバイイングしていきます。

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