知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす
2013年3月11日 未分類 0
土曜日・日曜日とイベントで大阪泉州産地の細川毛織とご一緒した。
もう何年も前から顔見知りだが、じっくりとご一緒したのは初めてで楽しかった。
細川毛織が自社を紹介するためのA4サイズのチラシを持参しておられたのだが、これはなかなか良くできていると思った。
通常、この手のチラシには、自社のキャッチコピーと連絡先、特徴が書かれている。
繊維産地の企業の場合、自社のキャッチコピーと連絡先だけしか書かれていないこともあり、「それって意味ないやん!!」と突っ込みたいこともしばしばある。
もう少し、考え深い企業なら自社の特徴や自信のある点についても書いてある。
これなら合格点である。
今回の細川毛織さんのチラシには自社の「得意とする点」だけでなく、自社の「不得意な点」も書かれてあり、非常に秀逸だと感じた。
得意とする点について「期待してください!」として
・紡毛糸を使ったダブルフェイス
・シルクをまるでファーのように起毛
・カシミヤの極細糸でストール
・ナイロンとウールのまったく新しい交織
・ニードルパンチで異素材貼り合わせ
と挙げておられる。
一方、不得意な点については「期待しないで!」として
・量や納期のみを追求したもの
・すでに他社が作っている物のコピー
・色展開で即出荷出来るような汎用生地
・メンズのスーツ生地
・メーター単価が2000円を切る生地
とある。
中には筆者がコピーライターならもう少し違う文言にすると感じるものもあるが、概ねわかりやすい。
とくに不得意な点を明記しておられるところが良い。
このご時世なので、世間には、売り上げ高を増やすために自社ではまったく手に負えない案件でも「とりあえず受けてしまおう」というという企業も多い。
その結果、納期に間に合わなかったり、当初の意図とは全然異なる物が出来上がってしまったりする。
これは発注先も不幸だし、発注先への謝罪と対応に追われることになる受注側も不幸である。
このように「不得意な点」について明記されていれば、1メートル当たりの単価が1000円くらいのメンズのスーツ生地を細川毛織に発注しても無駄だなということが即座にわかる。
論語にこういう言葉がある。
「これを知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす。これ知るなり」
要するに自分が知っていることと知らないことを明確化すること、これが真に「知る」ということになるという意味である。
自分が何を知っているのか、何を知らないのかを区別する力が「知る」ことであるというわけだ。
本当に物を知らない人は、自分が何を知ってて何を知らないかも区別できない人である。
世間には、自社で何ができて何ができないかもわかっていない会社もある。
そういう会社の経営者に限って自社にその機能とノウハウがない案件に対しても「気合いで何とかしろ」と叱咤しており、非常にナンセンスである。
自社の出来る点と出来ない点を明確化する細川毛織の姿勢は評価されるべきだろう。