日本で売れない物でも海外なら売れると考えるのは何故?
2013年2月28日 未分類 0
国内産地の方々や行政に携わる方と話すと、「国内は成熟社会でこれ以上の市場開拓は無理なので、新興国の市場開拓を目指したい」と言う声をよく聞いた。とくに3年くらい前がピークだっただろうか。
当時はよく中国出店だという声を聞いた。
しかし、ちょっと待ってもらいたい。
ユニクロのように国内で6200億円の売上高があり、国民の90%以上が所有しているようなブランドなら話は別だ。もう国内では飽和点に達しており、海外に販路を求めざるを得ない。
またカイハラのようにデニム生地のみを製造販売して売上高が100億円以上あるならこれも話は別だ。
しかし、国内で年商2~3億円程度しかない小さなブランドや、2~3億円程度の生地メーカーが「日本では売れないがアジアでは売れる」と考えるのはいかがなものだろうか?
日本で売れなかった商品がもしかしたら海外で売れるかもしれない。可能性は決してゼロではない。
けれどもその前に、日本国内で売る努力をもう少ししてみてはどうだろうか?
年商2~3億円ならまだまだ伸ばせる余地はある。
日本で売れない商品をアジアに持って行って売れる可能性の方が低い。
それはあまりにも今のアジア市場を舐めているのではないか。
もっとも、綿密なリサーチを重ねて、インドネシア向けだとか中国向けだとかシンガポール向けの専用商品を開発していれば話は別だが・・・・・。
3年ほど前、某生地産地の生地をストールだかマフラーだかにして中国の富裕層に販売しようという幼稚なプランを地元の商工会議所が発案したことがある。
おそらく県も後押ししていたのではないかという記憶がある。
その生地産地はこれまで製品を作ったこともない。
製品作りのコツさえまったくわからない。そりゃマフラーやストールは縫製する部分が最小限で済むから、生地そのものの風合いで勝負できる要素は大きい。
けれども、そのマフラーだかストールだかが消費者の購買意欲をかき立てるような色柄に仕上げられるのだろうか?産地の方々に「売れる」色柄のデザインはできない。じゃあまた誰かにデザインを丸投げするのだろうか?
さらにいうなら細かいディテールはどうするのだろうか?フリンジを付けるのか付けないのか?フリンジの長さは5センチが良いのか10センチが良いのか?そういう細かいディテールを産地の方々がプラニングできるのだろうか?
失礼を承知で言わせていただくなら、産地のほとんどの方がこういう色柄やディテールのプランニングにはまったく適性能力がないと感じる。(一部に例外はいらっしゃるが)
色柄やディテールがお粗末な物が中国やアジアの富裕層に売れるだろうか?筆者は売れるとは思わない。
結果的にこのプランは立ち消えになったので良かったのではないかと思う。
海外市場に打って出るという心意気は良い。
ならば、デニム生地製造のクロキのように自社の費用だけで、海外の展示会に出展したり、海外のブランドに販売するのは大いに結構なことである。
しかし、海外市場に自社の「新しい商品」を販売するのに、行政からの補助金頼みという姿勢はいかがなものだろうか?
自社にとって「不可欠な生存戦略だ」というなら、リスクをもっとも負うべきは自社であろう。
そこまでの決意であるなら、自社がリスクを取るべきであり、行政の補助金・助成金はあくまでもアシストにとどめるのが筋であろう。
日本で売れていない(発売したこともない)商品を、行政の助成金を使って海外展示会に出展して、それで売れるほど市場は甘くないと思うのだが。
国内はだめだけど、アジアは新興景気に沸いているから売れる。
この考えは典型的な「隣の芝生は青い」ではないかと思えてならない。