かぎ針編みとパシュミナとデニムと
2013年2月4日 未分類 0
製造業とアパレル企業のデザイン・企画担当者の会話がかみ合わない原因の一つに「専門用語を知らない」または「間違って覚えている」ということが挙げられる。
で、その原因の一端をファッション雑誌が担っているのではないか。
ニット企画を得意とする方によると、先日、某ファッション雑誌に「かぎ編みニット」なる物が掲載されたという。
細かいことだが、これもおかしな用法で正しくは「かぎ針編みニット」と言いたかったのだろう。
しかも掲載されている製品は写真を見る限り、「かぎ針編みニット」ではなく、単なる透かし編みのように見える。
その方によると、これは自動編み機によるもので、かぎ針編みですらないという。
今回のような事例は事欠かない。
以前にも書いたことがあるが、パシュミナストールという商品がある。
カシミヤを越える高級素材とされているが、パシュミナとはカシミヤ山羊からとれる最高級の細番手ウールのことである。だから「パシュミナ100%」という表示は間違っており、「カシミヤ100%」と表示するのが正しい。
これだけならまだしも、インターネット通販の商品解説なんかを見てみると「パシュンからとれた最高級のウール」などと書かれていることもある。パシュンというのはどういう動物なのだろうか?
パシュンという動物は地球上には存在していない。
先日、某メンズファッション雑誌を読んでいると、シャンブレーという素材の解説記事があった。
これの中に気になる一節がある。
原文をそのまま書き写す。
「縦糸と横糸ともに3本以上で織ったものはデニム生地」とある。
縦糸と横糸という表記からして間違っているのだが、経糸3本で緯糸3本ならデニムにはならず、デニムの綾目が走るためには経糸3本に緯糸1本で織らなくてはならない。
シャンブレーは経糸に先染めの色糸、緯糸に染めていない白い糸で織るが、これは経・緯ともに1本ずつの「平織り」である。
デニムと同じように見える綾織物にダンガリーというのがある。こちらは経糸が白、緯糸が色糸である。
しかし、生地メーカーや取り扱い商社によっては、自社内独自の用語用法として、シャンブレーとダンガリーをごっちゃにしている場合もあるので注意が必要となる。
さて、経糸・緯糸という表記に対して、ファッション雑誌出版社や一般消費者から「縦糸・横糸の方がわかりやすい。古い用語にしがみつくのはいかがなものか」という反対意見があるのは承知している。
けれども「経緯」という日常用語があるように、それから地球の「経度・緯度」でもおなじみであるように、経糸と緯糸という用法は決して過去の遺物ではない。
経糸・緯糸問題は置いておくとして、ファッション雑誌のライターや編集者も製造の用語の基本的な部分は勉強する必要があるのではないか。