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南充浩 オフィシャルブログ

欲しい物に気付かせる作業

2013年2月1日 未分類 0

 なんだかんだと15年くらい繊維・アパレル業界を見てきていると、すでに出来上がった市場に向けて、大手企業が新しいブランドを打ち出すことが多いように感じる。

何度も書くがランチェスターの法則によると、強者の戦略は追随戦略なのでそれで正しいのだが、多くの場合、武器は「価格競争力」ということになる。
色柄をプリントしたステテコなんていうのが好例だろう。数年前から中堅肌着メーカーのアズが開発した商材に2011年春夏にヒットの兆しが見えた。そこで2012年夏にユニクロが投入した。ユニクロの投入の前にはグンゼなどの大手肌着メーカーも参入している。

「○○テイストに流行の兆しがあるからそれの廉価版ブランド立ち上げちゃおうぜ」。
などというのも似たような動きだろう。
個人的な印象で言うならそういうブランドの立ち上げ方がほとんどだと感じる。

そこにあるのは、すでにある(もしくは出来始めつつある)消費者ニーズにいかに早く安く対応できるかということしかない。
これが極端になると、大型合同展示会に出品したら、来場した中国や韓国のバイヤーがコピー商品を作って、本家の商品よりも早い時期に市場に投入してしまったという行動にもつながる。

極論を述べている部分もあるのだが、すでに存在する商品に対して追随するなら価格競争をするか、機能性をさらに高めるかのどちらかしかない。
「○○社の製品は1度保温できるが、当社の製品は3度保温できます」という具合だ。
過去10年以上、デフレ一直線を走ってきた繊維・アパレル業界は総じてそういう思考方法を採ってきたと思えてならない。

そこから脱却するためには、今、消費者が気付いていないニーズを教えてあげるという取り組みが必要ではないか。もちろん、キレイ事に過ぎてこれだけでは有効な手段とは言い難いが、参考になる部分もある。

POPで欲しいものに気づかせる。『白い犬とワルツを』
http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-11459999152.html

この事例、知っていますか。

『白い犬とワルツを』という本。
新潮文庫、180万部ぐらい売れました。

最初は全然売れない本でした。
そうですよね? 

だって、これを見ても欲しくないでしょう?
 

これを見て欲しくなる人がいるとすれば、それは、白い犬が好きな人か、ワルツが好きな人くらいですよね?
おまけに作家は、テリー・ケイという知らない人です。
 

村上春樹だったら欲しくなる人はたくさんいると思うけれど、誰も欲しくない。
だから全然売れなかった。

それでは、何故180万部も売れたのか?
 

千葉県津田沼駅前の本屋さんの副店長、木下さんがこの本を読んで感動しました。
こんなにいい話だったのか!
 

これならたくさんの人に読んでもらいたいな、と彼は思いました。
そこでPOPを作りました。

———————————————-
妻をなくした老人の前にあらわれた白い犬。
この犬の姿は老人にしか見えない。
それが他のひとたちにも見えるようになる場面は鳥肌ものです。
何度読んでも肌が粟(あわ)立ちます。
感動の1冊。プレゼントにもぴったりです。
———————————————-
 

木下さんが手書きでこういうPOPを書いて、本を平積みしました。
すると、この本は徐々に売れるようになります。
 

そして、この本屋さんのベストセラーになるんです。

(中略)

その原因を知った新潮社は、木下さんの許可を得てこのPOPを印刷し、全国の書店に置きました。
その結果、180万部の大ベストセラーになりました。

そんな感じです。

 
ニーズにこたえてなんかいません。
欲しいものに気づかせてあげているわけです。
これがすごく重要なことなんです。

とのことである。
今回の事例は本屋だが、他の業種にも応用できる部分が潜んでいるように思う。
BtoCにもBtoBにも活用できる。
相手が消費者だろうが、法人だろうが、取り引きする理由を気付かせてあげなくてはならない。
欲しい物に気付かせてあげなくてはならないということである。

まあ、言うは易し行うは難しなのだが、常に心がけていると何かの拍子でそれが具現化することがある。

そういうことを模索していかなければ、繊維・アパレル業界は永遠に価格競争と機能性積み上げ競争と、コピー商品が横行するだけの業界だろう。

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