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南充浩 オフィシャルブログ

手段の目的化は絶対に成功しない

2018年11月21日 考察 0

世の中には、手段と目的を間違えるケースが数多くある。
本来は手段であったはずなのに、なぜかその手段を取ること自体が目的になってしまうことがあり、その場合、絶対に成功しない。
つい、先日大赤字を計上したライザップグループだが、グループ拡張の「手段」であった企業買収(M&A)がいつの間にか「目的」と化していた。「買収のための買収を繰り返していた」ということになる。そのツケがあの大赤字である。
ライザップグループの瀬戸社長はこれを素直に認めている。
このあたりが、ビッグマウスを繰り返すばかりのトウキョウベースやZOZOの経営者との違いであり、少しだけ高感度が高い。(笑)
瀬戸社長「M&A、手段が目的になっていた」
この記事のタイトルが結論である。
もっとも、不採算企業のM&Aによる「負ののれん」がこの会社の収益源だったという見方もあり、それなら話は別で、M&Aは目的だったということになるが、真相はどうだろうか。
さて、ライザップグループの真相は置いておいて、アパレル業界には「手段の目的化」なんていうのは日常茶飯事で掃いて捨てるほどある。
例えば、インターネット通販である。
本来は物が売れれば売り方は何でも構わない。インターネット通販は手段の一つである。
にもかかわらず、アホなコンサルタントとアホなメディアはなぜだか「インターネット通販比率が高ければ高いほど優秀な企業」だと煽る。そしてアホな経営者は何も考えずにそれに乗っかる。
某大手通販会社は、アホなコンサルが「一気にカタログ通販からインターネット通販に切り替えるべきだ」と進言し、アホな経営者がそれを受け入れ、企業存亡の危機に陥っている。
かつて1000万人ほどいた会員の7~8割が脱退してしまい、現在では200万~300万人しか残っていないと言われている。これなんぞは完全に「手段と目的を履き違えた」例だといえる。
売れているならカタログ通販のままでも構わなかったし、時代の趨勢でインターネット通販に切り替えるにしたって、もう少しマシなやり方があったはずだ。
だいたい、大手企業の老経営者は自分がインターネットをそれほど触ったこともなく、インターネットで買い物をしたこともないくせに、なぜ「インターネット通販がバラ色の市場」だと思うのだろうか。
それこそ、自分が消費者となったときのことを考えていないのではないか。
自分がネットで買わないなら、そういう消費者も少なからずいるということになぜ気が付かないのだろうか。だから会社が潰れかけているのである。
 
ユニクロはインターネット通販比率が低いことを散々、コンサルにもメディアにも叩かれてきた。しかし、単独ブランドでもっともインターネット通販の売上高が大きいのはユニクロである。
一方、インターネット通販比率が3割あって褒められていたのがトウキョウベースだが、そのインターネット通販売上高は30億円くらいしかない上に、直近の中間決算では大幅減益に転じてしまった。これのどこが優秀な企業なのだろうか。しかもそのインターネット通販が苦戦に陥っている。
何度も書いているが、インターネット通販なんて「売るための手段の一つ」に過ぎないから、インターネット通販が苦手で実店舗に集中して、その実店舗で確実に収益があげられればそれはそれで構わないのである。
なぜ、インターネット通販を行うことが目的と化してしまうのか、まったく理解に苦しむ。
インターネット通販をやったって売れなくて儲からないなら意味がない。反対に売れて儲かってるならインターネット通販でなくても構わない。
実店舗の保険、補完としてインターネット通販をやるのは当然だが、一概に「インターネット通販比率が高ければ高いほど良い」という指標はまったく意味がない。
それぞれの企業に合ったインターネット通販の使い道がある。
それこそ、企業は売れてなんぼ、儲けてなんぼである。「インターネット通販をやってなんぼ」ではない。
そして、今度は人工知能(AI)に多大な期待を寄せる。人工知能だって単なる道具である。しかるに学習しないアパレル業界は人工知能導入こそが目的になっている。
そしてポジショントーカーたちがそれを煽る。
例えば、卸売りメーカーなのに、やたらと人工知能の話題が好きで、店頭の在庫処分に熱心な人がいる。興味の範囲内で熱心に調べるのは構わないが、それを業務のように行っているのはどうかと思う。
卸売りメーカーだから人工知能を導入したところで店頭の消化には何の関係もない。
卸売った後は、小売店の仕事であり、資本関係も何もない小売店に指図することは不可能である。そんなことに熱心になるより、卸売り業務の方に熱心になるべきではないのか。
当方にはまったく理解できない。
結局、業界こぞって破綻したQR(クイックレスポンス)対応も同じで、QRは売るための道具でしかない。しかし、他社の成功に引きずられたのか、QRをやることが多くのアパレルの目的と化してしまった。
それで各社が売れれば問題はなかったが、結果はどうか?
2008年以降、QR対応を導入した大手総合アパレルはそろって苦戦に陥った。
売れていて儲かっているならQRなんてやらなくても良い。逆に売れなくて儲からないならQRなんて廃止しても良いのである。
 
結局、アパレル業界はずっと「手段を目的化」してきて、それが今も続いている。オリンピックではないんだから「参加することに意義がある」わけではない。売れて儲かるなら参加しなくてもいいし、売れなくても儲からないなら参加しても意味はない。
これが理解できない限りはこれからも同じ過ちを繰り返すだろう。
 

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2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
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