「まず触ってみてくださいよ」というセールストークは究極の俺様プレイ
2012年7月5日 未分類 0
生地産地にお邪魔することが多い。
白生地を織る産地もあるので一概には言えないが、色柄物を製造している産地ですら「この生地触ってみてくださいよ」という会話から商談がスタートするケースが多い。
相手先を訪問してテーブルの上に並べられた状況ならそれもありだが、展示会でも同じことが行われる。
自社展示会ならまだしも合同展示会ならこれは失敗である。
聞きかじりのVMDの基礎の知識として、距離の問題がある。
例えば、最も離れた場所から認識できるものは「色柄」である。
基礎知識の中には、「4~8メートル先から真っ先に気付くのは色柄」と説明されている。
これに合同展示会場を当てはめてみる。
来場者が入口をくぐってすぐに目にするのは「色柄」である。
地味な色柄で遠目から分かりにくいのでであれば看板やモニュメントのような物が必要になる。
続いて、ちょっと近づいて2~4メートルの距離ではデザイン。
生地産地なので製品のデザインはないが、色柄のより細かい部分と受け取ることができるだろう。
次は1~2メートルの距離に近づくと素材感である。
45センチ~1メートルまで近づくと着回し。
45センチ以下は着心地感となる。
生地産地なので着回しは考慮に入れないとして、着心地感はゼロ距離での肌触りと解釈することが正解だろう。
こう考えると、遠い距離から認識する順番として
色柄→素材感→肌触り
ということになる。
先ほどの「まず触ってみてくださいよ」というセールストークはこの距離感を無視していることがおわかりいただけるだろう。
いきなり「ゼロ距離に来て触れよ」と言っているに等しいのである。
いきなり「触れ」と言われて「触る」人間はまずいない。これはかなり高圧的な俺様プレイである。
超ドMの客しかひっかからない。
だから生地製造メーカーは、もっとも遠くから認識できる「色柄」を工夫するべきである。
とくに広い会場で行われる合同展示会に出展する際には、人目を惹きつける色柄を前面に押し出すのが正しいやり方ということになる。
白生地メーカーなら、看板やモニュメント、ブース全体の飾り付けで人目を惹くことを考えれば良い。
そうやって寄ってきたお客に対して初めて「触ってみてくださいよ」というセールストークが効力を発揮する。
合繊産地は、綿などの天然繊維産地に比べて製造ロットが大きい。
プリント柄が鮮やかな場合もあるが、現状の市場で注目されているのは、多くの場合、無地の機能素材であろう。
例えば発熱繊維、吸水速乾繊維、軽量炭素繊維などなどである。
この合繊を使って大規模なファッションショーをした場合、その良さはちっとも伝わらずに単なるお祭りとして終わる可能性が高い。
色柄と衣料としてのデザインに工夫を凝らさないと、4メートル先のお客からは単なる無地生地のショーとしか見えないだろう。
「産地がやっているから、出来栄えの善し悪しは別として注目しろ」と言う理屈はまるっきり成り立たない。
産地合同展や産地ファッションショーは、「見せる」という一点に関しては色柄、そしてデザインに工夫を凝らすのが正しく、素材感や肌触り、機能はその後に付随するものと考えた方が良いだろう。