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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロのステテコの販促は理論的に正しいが好きにはなれない

2012年6月8日 未分類 0

 ユニクロの販促の謳い文句は、大げさで鼻につくが、見事だと思う。しかし好きにはなれない。
今日は好き嫌いという感情でユニクロの「ステテコ」に対する販促を見てみたい。

80色柄以上の圧倒的なバリエーション、ユニクロが”ステテコ”を世界に発信
http://www.uniqlo.com/jp/corp/pressrelease/2012/06/060614_steteco.html

ユニクロ銀座店にはステテコBARが開店~

 ”ステテコ”は、日本の文化の中から生まれた、夏を快適にすごすのに最適なアイテムです。ユニクロは、”ステテコ”の快適さや利便性をより多くの方に知っていただくために、圧倒的なバリエーションのステテコをご用意。世界へ向けても初めて展開していきます。
 また、ユニクロの店舗では「ステテコアドバイザー」が、”ステテコ”の様々な履き方や、シーンに合ったおススメの1枚をご提案。

中略

ステテコは、スーツなどのボトムスや着物の下に履くアンダーウェアとして、明治以降の日本の近代化に伴い一般に広く普及しました。スーツの裏地に肌が直接触れず、ステテコが汗を吸い取るので、汗で裏地が肌に張り付くことを防ぎ、快適に過ごすことができます。また、汗ジミも防げるのでスーツを清潔に保つことができ、クリーニングの回数を減らせるエコアイテムとしても注目されています。

とのことである。

まず、真意はともかくとして、最後発ながら商品の「文化的側面」をキチンと説明する手法と、無理やりにでも昨今ブームの「エコ」に結び付けるプランニングは見事なものである。
「エコ」に無理やり結び付けることで、一般マスコミに対して「社会的意義」を説明している。
プレスリリースの書き方講座としてはほぼ満点に近い点数がもらえるだろう。
プレスリリースの書き方が分からない人は参考にしてもらうと良い。

しかし、である。
今夏からステテコを発売するユニクロは、肌着業界の中では最後発である。
もともと白無地のステテコというアイテムに色柄を着けることで、ファッション化しようというアイデアを組み立てたのは、中堅肌着メーカーのアズである。
アズは「ステテコドットコム」というサイトを立ち上げて、取り組んでいる。

http://steteco.com/

記憶をたどると、2008年秋に確認した時点ではすでにこのサイトも立ちあがっており、繊維業界の中では注目されていたので、このプロジェクトが開始されたのはそれよりも2年ほど前に遡るのではないだろうか。
そして2009年夏の時点ではこの色柄ステテコに追随しようとする他社は少なかった。
百貨店やアーバンリサーチなどの有名セレクトショップにも商品が置かれ始めると、他の肌着メーカーも追随して類似商品を提案することとなった。

色柄ステテコが注目をにわかに集め始めたのは、昨年夏のことである。
東日本大震災の原発事故による電力不足の懸念から、節電意識が高まり、これまでお遊び感覚だった「クールビズ」への取り組みが真剣さを増した。
その中で、色柄ステテコは肌着として、さらにはルームウェアとして俄然注目されることとなりテレビ番組でも特集が組まれた。

2011年夏の時点では、有力な肌着メーカーは各社とも何らかの類似商品を完備しており、2012年夏への期待が高まっていたのも事実である。

そして満を持して、ユニクロの商品投入である。ユニクロが最後発であるという流れを御理解できただろうか?

衣料品販売最大手のユニクロの戦略は「ランチェスターの強者戦略」に照らし合わせると、まったく正しい。
圧倒的物量を誇る強者は「追随戦略」で戦うのが正しいのである。
アズという個性派が先行し、他の中堅・大手メーカーが追随して市場が成熟しきったところを、圧倒的大手であるユニクロが追随して廉価版で市場を占有してしまうというやり方である。

正しい。が、到底好きにはなれない。

とくに今回のステテコの販促に関して何が嫌いかというと、
「日本の文化」という文言を持ちだしたことである。

ユニクロは「日本の文化発信」なんてちっとも興味がない。そうですよね?柳井さん。( ー`дー´)

それほど日本の文化に興味があるなら、なぜ2012年夏までステテコを提案しなかったのか。
それより以前に提案しても市民権を得ていない色柄ステテコが売れる保証がなかったからではないのか。
さらに言うなら、「日本の文化」とやらを発信したいのであれば、どうして浴衣から撤退するのか。

それはユニクロが製造販売してもうまみを感じられるほどの数量にしかならないからである。しかし、値崩れを起こしたとは言え浴衣は、15年くらい前とは比べ物にならないほど市民権を得ている。

筆者が大学生の頃、同級生で浴衣を着て夏祭りに出かけるという風習は皆無だった。
同級生や年下の女性が浴衣を着ている姿などついぞ見たことがなかった。

着物業界の人から言わせると、着こなしが邪道であるとか、商品自体が安物臭いとかいろいろと批判はある。
しかし、若い女性が夏に「浴衣」を着るという文化が再定着したのは、この15年ほどのことである。
そういう意味では、廉価版の浴衣を提案し続けた各アパレルは結果的に「日本の文化」を守ったことになる。

当然、昨年まではユニクロもさらに廉価版を販売していた。

しかし、今夏からは在庫は販売するが新規投入は止めるという。

この姿勢のどこに「日本の文化尊重」が感じられるだろうか。
そこまで文化を尊重するなら、多少リスクを冒してでも浴衣を提案し続けてはどうだろうか?
筆者はユニクロの使う文言が「売るための方便」にしか聞こえない。

そろそろ長くなってきたので、続きは次回にでも。

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